集団的自衛権とは何か (岩波新書 新赤版 1081)

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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004310815

作品紹介・あらすじ

憲法改正とともに日本の今後を占う最大の焦点に浮上した集団的自衛権。その起源を検証し、戦後の日米関係においてそれがいかなる位置づけにあったのかを歴史的にたどる。そして今日の世界が直面する脅威の性格を冷静に見すえながら、集団的自衛権の行使による日米安保体制の強化という路線に代わる、日本外交のオルタナティヴを提起する。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は多くの発見を与えてくれた。その中から一つを紹介する。
    日本においては集団的自衛権が独特に発展している。いわく、集団的自衛権のなかでも自国と密接な関係にある外国まで出向いて実力行使をするという狭義のそれは認められないが、基地を提供したり、経済援助をするといった広義の集団的自衛権については、認められる余地もあるとされてきたのである。
    広義の集団的自衛権については、周辺事態法やイラク特措法に代表されるように様々に範囲を拡大させてきており、これについては別で触れる。重要なのは、安倍政権の集団的自衛権は、タブーとされてきた狭義の集団的自衛権を突き動かしたという点にある。また、以下の集団的自衛権は狭義の集団的自衛権を指す。

  • 記憶が曖昧なのでいい加減だが、安倍前総理が集団的自衛権を行使できるよう解釈改憲をする前に著された書で、日本国憲法において集団的自衛権が従前、どのように解釈されてきたか解説し、安倍の主張に対し論理的矛盾を指摘し、その危険性を訴えている。

    私は、このような類の主張に対し以前までは、その危険性の考え方が飛躍していると考えていたが、台湾有事の発生に備え防衛費の増額や、様々な法整備が行われている現状、この危機感を共有できつつある。

    台湾の平和的統一を果たすことができないと、軍事行動を起こすという法律を中国が制定(間違っているかも )しているので、米国の政策次第(国家としての承認等 )によっては、軍事衝突が起こる可能性は十分あるのではと感じた。

    軍事衝突が起こった場合、当然米国は日本にも何らかの行動を求めるだろうが、以前とは、法環境も異なっているのでより踏み込んだ対応が求めてくるだろう。

    これまでは米中間の緊張が高まると日本は、米国と歩調をあわせ様々な政策がとられてきたが、肝心の米中間では緊張が融和され、日本だけ勇み足をとってきた歴史があるという。日本には災難であるが、こうなったほうがむしろ好ましいだろう。

    これは結局、日本が実質的に米国の庇護下にありそれに振り回されてきたからであるが、過去様々な政権は米国の強い影響から逃れ自立しようと手を打ってきたという。

    しかし湾岸戦争での日本の対応への国際社会からの非難、細川?村山?政権での対米依存の脱却を図る方針への米国の危機感等から、米国の関与はますます強くなり結局は米軍が大きな権益を握る現状を肯定し、さらに集団的自衛権も行使可能にするという環境が築かれたのだ。

    正直、今の現状に恐怖を感じる。なかなか声を挙げづらい現状、政府間の外交努力に身を任すしかないように思える

  • 2007年刊であり、その時点までの歴史的経緯については比較的よくまとまっているとは思う。ただし、その後事態は大きく変化したので情報的には古さも感じる。また、基本的には当時誕生した第一次安倍政権批判の書というテイストなのでイデオロギー的な偏向が感じられる。よって、題名にある「集団的自衛権とは何か」という本質的なテーマには迫りきれておらず、全体的には「集団的自衛権はケシカラン」という内容になっているのが残念ではある。

  • 2014年の憲法解釈変更の時にはほとんど興味がなかったが、最近のトランプ発言(日米安保は不平等だから廃棄したい)を聞いて少し勉強してみたくなった。随分専門的な内容だが、素人にも十分理解できるよう懇切丁寧な解説で読みごたえあり。

    安部やその取り巻きが説明する集団的自衛権のあり方が、まったくデタラメであることは本書から十分に伝わった。意図的に間違った情報を流して世論誘導したいのか、本当に理解できていないのかは知る由もないが、米国の日本防衛義務と基地の自由使用権はセットであることを日米両国の指導者層はどこまで認識しているのか?仮に米軍が日本から出て行けば日本も同程度の戦力を持つことを選択せざるを得ないが、それが米国の国益にかなうとはとても思えない。

    唯一残念なのが最終章のオルタナティブの提案である。机上の空論を地で行くポエムである。日本にそんなことができるならアメリカの属国状態を自ら望んで選択したりはしない。日本には東アジア諸国を束ねていくだけの経験も実力も信頼も備わっていない。悔しい事ではあるが、吉田茂、小泉、安部の米国お追従路線しか採りようがないのだ。

  • 【由来】
    ・「尖閣とは何か」を読んで。

    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】
    ・序章のみ。いわゆる「世界スタンダード」をふりかざした推進擁護の理屈はおかしいという話。法律の概念上、保有すれども行使せず、というのは何らおかしくない。ただし、我が国の安全保障上は、という視点をちゃんと持っていそうな本だったので、引き続き読みたい。

    ・図書館の延長ボタンを押すタイミングを逃して、予約が入ってしまった。

    【目次】

  • 参考文献

  • 選挙の前に理解を深めようとして借りた本。
    確かに、日本には集団的自衛権よりも特徴的で1番平和なやり方ができる国のような気がする。

    なんとなく自分の意見をまとめることができて良かった。

  • 力作。よく書かれている。
    集団的自衛権とは、一言で言えば、自国が直接攻撃されていなくても実力をもって阻止すること、かな。
    アメリカの為に集団的自衛権を発動する。憲法上許されない。アメリカの作った憲法を改正したい。この矛盾。
    日米地位協定とか、本当に日本は独立国家なのかと疑問に思うことがある。

  • 昨今話題の「集団的自衛権」についての書籍。
    ただし初版が2007年であるので、前自民政権時での憲法改正の気運に対して書かれていることに注意。

    最初から集団的自衛権の憲法改正または憲法解釈の変更について反対の立場で書かれているので、公正な議論になっていない(公正な書籍というものは存在しないことは重々承知であるが、それに対してもタイトルと内容との齟齬に対して公正でないという意味)。

    本書の内容は、安倍首相のロジックは「A」であるが、そもそもAというのは過去の歴史を踏まえると正しくないという論理、もしくはAということを正しいと仮定しても日本の将来は悲観的なものにしかならない。ゆえに「A」はAgreeできない。というもの。

    そもそも歴史的には集団的自衛権を解釈上は否定しているので、歴史を踏まえると転換しているのは当たり前である。問題なのは、日本国憲法という最高法規に対して「A」という解釈は成り立つのか、ということである。もちろん歴史的な背景は重要であるが、解釈の変更という主眼を踏まえると、この見解はフェアーではないと思う。
    また、「A」という解釈が正しいとした場合も日本の将来について悲観的なものにしかならないという姿勢であるが、これはひとつのシナリオを出して(多少現実的なシナリオの方が説得力はます)、こんなに大変なことが起こるのだから「A」という解釈は危険であると結論する。
    冷静になると、このシナリオはかなり恣意的に選べる。
    たとえば、「A」の命題に集団的自衛権を行使すると北朝鮮が発射したミサイルを迎撃できるというメリットが有る。筆者は、なぜかミサイルを核弾頭を先端につけたミサイルが日本の原子力発電所に向けて発射されることを例示している。
    ここで、迎撃できる能力がないので意味が無い、または迎撃できたとしても迎撃周辺が放射性物質で汚染して住めないので結局集団的自衛権というのは意味が無いと結論している。
    まず、100歩譲って迎撃能力がないのであれば、集団的自衛権という名目で兵器の開発を進められるし、迎撃が無意味なら原子力発電所にクリティカルヒットしたほうが良いのであろうか。
    もっとも筆者は、このようにデメリットの方が大きいので集団的自衛権に頼らない方法を模索するべきであると最後に結論づけている。
    こちらには、Agreeであるがすべての国がこれでYesと言えれば戦争は起こらないわけで。。

    戦争については、どのようなロジックでもそれを正当化できることはないが、今般の国際情勢を踏まえると集団的自衛権の行使という選択肢も真剣に考えたほうが良いのではないだろうか。
    そのためには、ただしい憲法の解釈、過去の背景を正確に理解する必要があるが、本書はそれに資っしないとかんがえる。

  • 今流行の集団的自衛権について知るために読んだ。そもそも集団的自衛権がアメリカのいうがままに必要性が議論されているということがわかる。

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著者プロフィール

前関西大学教授

「2014年 『冷戦と同盟 冷戦終焉の支店から』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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