金・銀・銅の日本史 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004310853

感想・レビュー・書評

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  • ◆安価簡便な測定器の普及と、材料工学の技術的発展が後押しする新領域。考古学史料や遺跡への材料工学的アプローチを、金・銀・銅ほかの具体的実例を踏まえ解説。そして仄かに見えるのは、研究活動が地域おこしの一面を有すること◆

    2007年刊。
    著者は独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所上席研究員。

     五輪期間はニュースまでもが金銀銅と喧しい。それに触発されたわけではないが、(むしろ貨幣論との関係で)金銀銅をテーマとする本書を紐解く。

     もっとも、本書の対象は貨幣だけではなく、金銀銅その他、金属を利用する文化財につき、採鉱から製錬・精錬までの過程を踏まえつつ、通史的な変遷を具体的財を列挙しつつ解説する書である。

     嘗ては材料工学的分析は不可能だったろうが、当該領域の技術的発展と、安価・簡便な測定器の普及が後押しする新たな研究領域がここにある。しかも考古学のウェイトが相対的に大きい古代史における分析は興味深い。
     就中、注目すべきは古代の工房・飛鳥池遺跡の解説である。

     他方、石見銀山の世界遺産登録。あるいは維新期に江差沖で戦没した開陽丸の引揚げと遺物の展示(水中考古学)。これらは地域おこしの一と言えようが、それが本書の後景に見え隠れする点もまた気に懸るところだ。

  • 金・銀・銅の利用方法が日本の歴史の中でどう変遷していったかが分かります。宝飾から民生品へ一般化していったことなど。図がところどころあるおかげか、読みやすいです。古代から培ってきた精練・加工技術が現在のPC、スマートフォンに続いていると思うと面白いなぁと思いました。

  • 日本人は、かつて渡来人が持たらした採掘や加工の技術を習得し、高度な手技を加えていった歴史を理系の視点で書かれます。開化期にきた外人は、その水準の高さに驚嘆したそうです。今では忘れ去られた旧来の技術。近代化によって得たものは知っていますが、失ったものが何であるかを解明することは現代人の課題だと言います。同感ですね。

  • 石見銀山を調べていたので本書を買って読んでみた。分かったような分からないような。岩の中から金属を取り出して、それを加工する方法が歴史を追って記述されているのだけれど、結局、2000年以上も前の人々がどうやって金属が使えるということに気付いたのか、金・銀・銅・鉄ならまだしも、スズとかアンチモンだとか、そういうモノが何%か混ざっているというのは、わざと混ぜたのか、偶然混ざったのか・・・。それに、ものすごく精巧な加工技術。これはいったい誰がどのようにして発明していったのか。科学技術が進歩して分かることはとても多くなった。古いものを分解せずに、中の様子を探ることもできる。しかし、そのモノが製作された当時の職人たちの思いだとか、発見物語などは想像するよりないのだろう。著者の思いは「おわりに」に良く表れている。石見銀山の遺跡を発掘するにつれ、その当時の人々がいかにまわりの環境を大事にしながら銀を掘り出していたのかが分かるのだそうだ。環境保全が叫ばれる現在、歴史の中で捨て去られてきた過去の技術に、もう一度光を当てる必要がるのかもしれない。

  • 金・銀・銅に注目し、科学的観点から貨幣の歴史を探る。銅銭を構成する鉱物の割合を調べ、比較することで当時の貨幣の生産地がわかる点が印象的だった。銅銭と言っても実際は銅−アンチモン合金であったりする。和同開珎がその例。

    古代日本の金の装飾品の精密さに驚かされる。博物館などで見るとき、その輝きに圧倒されてその作り方まで考えが及ばない。本書では、金の耳飾りを顕微鏡で拡大した写真がある。その精密さに圧倒された。次回からは、見た目の華やかさだけでなく、その技術にも注目して展示品をみたい。

    また、大学の講義「日本社会経済史」における備蓄銭の量・件数からみた貨幣の流通史では、備蓄銭の件数と量の変遷から中世の流通の実態を推測していた。本書の材料史的な観点を合わせて考察すると、興味深い。


    石見銀山において、鉱床によって鋳造方法が違っていたことも印象的だった。中国から鋳造技術が伝来する以前に、類似の技術が日本にもあった。

  • 貴金属からたどる日本史。
    ★3.8ぐらい。
    材料工学の美術の専門家が発掘にたちあった例を紹介しているだけあって、写真も豊富なので雑学程度におもしろい。

  • これは良書だ。金銀銅の材料における理系的な話と、歴史背景の文系的な話がベストミックスされており、大変楽しく読ませていただいた。最後の著者の一言「かつて何を持っていたのかがしっかりと把握し検証されていないため、いったい何を捨てたのかが具体的にはっきりわからない」が特に印象に残った。

  • スポーツ競技の歴史のようなタイトルだが、文字通り金属としての金銀銅の話。
    こうした貴金属の生産(採掘・製錬・精錬)と加工(彫金や発色)について、史料や遺跡から、材料科学という視線で我が国の技術や職人技を読みとく研究成果がまとめられている。歴史学的に秩序だった構成にはなっていないが、文化史と工学技術史が融合された興味深いエピソードが満載。
    金銀銅が当たり前に電子機器に使われ、貴金属から希金属の時代に移っている今、過去より築かれてきた叡知を見直し、後生に残そうとする著者の思いが伝わる。

  • 金・銀・銅、いずれも古代に中国・朝鮮を通じてやってきた金属。
    それが加工・生産面で常にモノ作りの先端をいき、日本独自の発展を遂げる。
    単なる金・銀・銅だけでなく、青銅から始まり、佐波理、黄銅、赤銅、青金、赤金といった数々の合金を精錬で編み出しており、その色彩感覚も言葉として面白い。
    江戸時代の華やかで細かく彩られた漆器の蒔絵は、ヨーロッパの人も魅了した。

    「日本の近世におけるモノ作りの技術は、人類が持ちえた手工業的な技術として最高レベルに達していた。・・・明治維新を境にした西洋技術の導入によって、日本が短期に近代化を成し遂げた背景には、それまでに営々と築き上げられてきた人力で行う手工業的な生産システムが高度に発達していたことが礎になった」
    やはり、三流農業国が奇跡の進化を遂げた、という認識は誤りであろう。
    江戸時代、●●家といった技術を外に明かさない、前近代的な閉じられた「職人の世界」で技術革新がなされたのも興味深い。

    歴史的な資料の金属分析から時代を考察する。
    やっていることはきっと地道かつ相当マニアックな世界だが、それをわかりやすく説明している。特に、1章が平易だったので、以降の多少複雑な話の理解に役立つ。
    優秀かつ謙虚で立派な研究者に違いない。
    そんな魅力が文章ににじんでいた。

  • 日本における金、銀、銅の製造方法と、加工方法を紹介している。
    最後は名古屋城の金の鯱鉾の話題でおわる。
    尾張名古屋は城でもつという落ちでしょうか。

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村上 隆(学芸部長)

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