肖像写真: 時代のまなざし (岩波新書 新赤版 1086)

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004310860

作品紹介・あらすじ

肖像写真を撮るまなざしの変遷から歴史が見えてくる。ブルジョワ知識人を撮った一九世紀のナダール。さまざまな職業の人間を撮って二〇世紀の全体像を描こうとしたザンダー。被写体にパフォーマンスさせた現代写真家アヴェドン。彼らの肖像写真からは、記述された歴史ではうかがい知ることがなかった人間の変容が浮かび上がる。

感想・レビュー・書評

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  • まったく何の知識もない分野の本です。とても読みやすかったのは、著者が素人の読者にも流れを辿れるように書いてくれているからだと思います。
    ザンダーが行っていたことは、当時の文化人類学や民俗学に近いのではないかと思いました。それらの学問が1980年前後に置かれていた状況を考えると、アヴェドンのまなざしの意味も理解しやすい気がします。

  • <閲覧スタッフより>

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    所在記号:新書||740.2||タキ
    資料番号:10181152
    --------------------------------------

  • ナダール,ザンダー,アヴェドンという3人の肖像写真を主に撮影してきた写真家の作品をベースに,人間の顔についてユニークな論考が楽しめる好著だ.ナダールは知っていたが後の2人は知らなかった.ただ,写真は見たような記憶のあるものもあった.ザンダーがあらゆる職業の肖像写真を残していることで,第一次世界大戦前後のドイツの状況が分かることが最大の財産だと感じた.アヴェドンは20世後半に活動しているので,既知の人物が多数登場して楽しめた.終章はよくまとまった論考だ.p170の「われわれは顔のイメージを蓄えている」で知った顔への思いを考察しているが,納得できるものだった.

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784004310860

  • 読みやすいような読みにくいような…普通におもしろいけど

  • [ 内容 ]
    肖像写真を撮るまなざしの変遷から歴史が見えてくる。
    ブルジョワ知識人を撮った一九世紀のナダール。
    さまざまな職業の人間を撮って二〇世紀の全体像を描こうとしたザンダー。
    被写体にパフォーマンスさせた現代写真家アヴェドン。
    彼らの肖像写真からは、記述された歴史ではうかがい知ることがなかった人間の変容が浮かび上がる。

    [ 目次 ]
    第1章 ブルジョワの理想―ナダール(カリカチュリストから写真家へ 写真家としての出発 ほか)
    第2章 二十世紀の全体像をめざして―アウグスト・ザンダー(あらゆる階層の人びとを網羅する 分類し、総合する ほか)
    第3章 パフォーマンスの真実―リチャード・アヴェドン(「借りた犬」 顔とは何か ほか)
    終章 肖像写真と歴史(人間の顔 肖像写真を見ること ほか)

    [ POP ]


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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • ナダール ブルジョアジー、名士を撮る
    ザンダー ブルジョアジーだけでなく一般市民、農民、あらゆるものを取る。
    アヴェドン 背景を白にし、写真技術も上がっている。かつて奴隷で会った人物の肖像・・・。

    記述されない歴史の根底に流れるものを肖像写真は与えてくれる。肖像写真を見ることでその時代時代のまなざしの違いが浮かび上がる。

  • アヴェドンを知らなかったので楽しめた。あとは多木さんの書いたベンヤミン本の方が面白いような気がするけど、アヴェドンと終章を読むだけでも元は取れた気がする。買ったのブックオフだけど。

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著者プロフィール

1928〜2011年。哲学者。旧制第三高等学校を経て、東京大学文学部美学科を卒業。千葉大学教授、神戸芸術工科大学客員教授などを歴任。1960年代半ばから、建築・写真・現代美術を対象とする先鋭的な批評活動を開始。1968年、中平卓馬らと写真表現を焦点とした「思想のための挑発的資料」である雑誌『プロヴォーク』を創刊。翌年第3号で廃刊するも、その実験的試みの軌跡を編著『まずたしからしさの世界を捨てろ』(田畑書店、1970)にまとめる。思考と表現の目まぐるしい変貌の経験をみずから相対化し、写真・建築・空間・家具・書物・映像を包括的に論じた評論集『ことばのない思考』(田畑書店、1972)によって批評家としての第一歩をしるす。現象学と記号論を駆使して人間の生と居住空間の複雑なかかわりを考察した『生きられた家』(田畑書店、1976/岩波現代文庫、2001/青土社、2019)が最初の主著となった。この本は多木の日常経験の深まりに応じて、二度の重要な改訂が後に行われている。視線という概念を立てて芸術や文化を読み解く歴史哲学的作業を『眼の隠喩』(青土社、1982/ちくま学芸文庫、2008)にて本格的に開始。この思考の系列は、身体論や政治美学的考察と相俟って『欲望の修辞学』(1987)、『もし世界の声が聴こえたら』(2002)、『死の鏡』(2004)、『進歩とカタストロフィ』(2005、以上青土社)、『「もの」の詩学』、『神話なき世界の芸術家』(1994)、『シジフォスの笑い』(1997、以上岩波書店)などの著作に結晶した。日本や西欧の近代精神史を図像学的な方法で鮮かに分析した『天皇の肖像』(岩波新書、1988)やキャプテン・クック三部作『船がゆく』、『船とともに』、『最後の航海』(新書館、1998〜2003)などもある。1990年代半ば以降は、新書という形で諸事象の哲学的意味を論じた『ヌード写真』、『都市の政治学』、『戦争論』、『肖像写真』(以上岩波新書)、『スポーツを考える』(ちくま新書)などを次々と著した。生前最後の著作は、敬愛する4人の現代芸術家を論じた小著『表象の多面体』(青土社、2009)。没後出版として『トリノ 夢とカタストロフィーの彼方へ』(BEARLIN、2012)、『視線とテクスト』(青土社、2013)、『映像の歴史哲学』(みすず書房、2013)がある。2020年に初の建築写真集『建築のことばを探す 多木浩二の建築写真』を刊行した。

「2021年 『未来派 百年後を羨望した芸術家たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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