ベースボールの夢: アメリカ人は何をはじめたのか (岩波新書 新赤版 1089)

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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004310891

作品紹介・あらすじ

二〇世紀資本主義への転換期、開拓フロンティアの消滅や都市の時代の始まりを背景として、ベースボールは成立した。当時、衰退の波にさらされていたミドルクラス・白人男性の「夢」として、数々の神話や幻想を織り込みながらつくられた、壮大なスペクタクル。アメリカ人はそこに何を託したのか?豊富な図版とともに読み解く。

感想・レビュー・書評

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    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/705682

  • 講義の教科書として。
    1920年代までのベースボールを扱う。
    起源の内外やルールの深化、また、都市・農村、ミドルクラス・それ以外の対比を考察し、
    アルバート・スポルディングが主張した「ダブルデー=クーパーズタウン神話」に、「アメリカ人」(白人中産階級やホワイトカラー)にとってのベースボールは農村や男性性の幻影を孕んだ、自国特有の自己投影の場であるという意味づけがなされていることを見出す。
    「神話」は疑似イベント(ダニエル・ブーアスティン)となり、今やアメリカ合衆国においてベースボールは市民宗教、民俗宗教、準宗教(quasi-religion)となった。

    言及された学者・作家

    社会学
    ダニエル・ブーアスティン『幻影の時代』
    C・ライト・ミルズ
    ロバート・H・ウィービ
    キャロル・スミス・ローゼンバーグ
    リンド夫妻『ミドルタウン』

    文学
    スコット・フィッツジェラルド『華麗なるギャツビー』
    フィリップ・ロス『グレート・アメリカン・ノベル』
    ダニエル・ローゼンズウェイグ『レトロ・ボールパーク』
    ヘンリー・ソロー『森の生活』
    チャールズ・ディケンズ『アメリカ紀行』
    エドガー・アラン・ポー
    ハリー・シンクレア・ルイス『本町通り』
    ウィリアム・D・ハウエルズ『少年の町』
    エドガー・L・マスターズ『スプーン・リヴァー・アンソロジー』
    シャーウッド・アンダーソン『ワインズバーグ、オハイオ』
    ウィリアム・フォークナー
    ジェームズ・フェニモア・クーパー『開拓者たち』
    ヘミングウェイ『老人と海』

    など

  • [ 内容 ]
    二〇世紀資本主義への転換期、開拓フロンティアの消滅や都市の時代の始まりを背景として、ベースボールは成立した。
    当時、衰退の波にさらされていたミドルクラス・白人男性の「夢」として、数々の神話や幻想を織り込みながらつくられた、壮大なスペクタクル。
    アメリカ人はそこに何を託したのか?豊富な図版とともに読み解く。
    20世紀への転換期、開拓フロンティアの消滅と都市化の始まりに機を同じくして、ベースボールは成立した。
    当時、衰退の波にさらされていたミドルクラス白人の不安を癒す「夢」として、数々の神話や幻想を織り込みながら作られた壮大なスペクタクル。
    そこに託されたものは何だったのか?
    豊富な図版とともに分析する。

    [ 目次 ]
    第1章 ベースボールの起源と神話(将軍、アブナー・ダブルデー イギリス生まれか、アメリカ生まれか 起源の不在、起源の永続 ベースボールの幼年時代)
    第2章 ニューヨーク・ゲームの覇権―ルールの進化と都市の欲望(最初のゲームをめぐって ルールの変遷―ゲームの進化 都市の政治学)
    第3章 愛国主義の虚実―ビジネスとしてのベースボール(アメリカ人の生の様式 図像の虚実 ナショナル・ゲームの虚実 ビジネスの時代)
    第4章 ミドルクラスと肉体の幻覚―男性的なスポーツの発見(男性的なスポーツ ミドルクラスと「男性性」への執着 資本主義と「肉体」の幻覚 観客のまなざし、観客の時間)
    第5章 都市のファンタジー(田園のアメリカ スモールタウンの幻像とベースボール 人性の陶冶 群集への社会科)

    [ POP ]


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    共感度(空振り三振・一部・参った!)
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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  •  社会学者である著者が、成長と繁栄を謳歌しながらも競走と物質主義の中で病みつつある当時のアメリカ社会がBaseballという娯楽に見いだした精神性を分析することで、「創られた"Baseball"の歴史」とアメリカの「白人中流階層」のマッチョ幻想の関連性について歴史的に紐解いていく。

     イギリス由来のラウンダースなどを起源とするだろうbaseballが、アメリカ的なスポーツとしての属性を喧伝され、それにふさわしい歴史が時に捏造されされる。それはミドル・クラスの自己意識の再生産である。だが資本主義と商業主義によって成立したプロ野球の成立によって、逆説的にその「マッチョなミドル・クラス」は現実には手が届かず、野球場で観戦する「外的アイドル」となっていく。ついに野球のヒーロー像はミドル・ホワイトの手から滑り落ち、労働者階級の理想像である豪放快闊なベーブルースへと至っていく様はとても面白い。そして彼らに対応するように、「田園で親しまれたBaseball」というイメージが、近代都市文明の中で生きる都市民達の理想の牧歌的幻想を受けて、創造される。

     Baseballを通してアメリカ社会の歩みを理解することが出来る秀著。

  • 資本主義アメリカ始まりの時代。開拓フロンティアが消滅し、大陸鉄道が完成し、都市の時代が始まる。19世紀末から20世紀へ向けて、アメリカの姿が変化していくのが、ベースボールの分析を通して学ぶことができる。これによりアメリカがどのようにしてきたか、また、野球のことをどのように考えているかわかることができる。ベースボールというのが生まれた時から今まで野球の原点を詰めたこの本によって、野球をやっているものは野球が生まれた意味などを学べていい本だと思う。

  • (新書 - 2007/8)

  • なぜ内田隆三がこれを書いたのかが最大の謎。

  • 日本でも野球人気が衰退する中、旧き良きボールゲームのイメージは語り継がれている。やはり父親は息子とキャッチボールできることを願い、ボールパークに足を運んで好きな選手に声援し、敵の選手に野次を飛ばすことを願う。そんなアットホームな光景を与える野球の「起源」をめぐる、アメリカの“スキャンダル”を追う一冊。
    野球を抜きにしてアメリカを語ることはできないとよく言われるが、南北戦争後のアメリカを支える神話として野球が機能したことが詳しく述べられている。新中間層の台頭、大衆社会化、都市の匿名性と群集の社会化。きわめて社会学的な内容。

  • ベースボールの起源はどうだったのか。そこからスタートして、アメリカ人にとってのベースボールとはどんなものか書かれた本。あくまでもベースボールの文化論であり、野球に関する本ではないので注意。

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著者プロフィール

1949年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授専攻は現代社会論・社会理論著書に『消費社会と権力』(岩波書店)、『ミシェル・フーコー』(講談社現代新書)、『柳田国男と事件の記録』(講談社)、『生きられる社会』(新書館)など

「2000年 『故郷の喪失と再生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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