- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004310952
作品紹介・あらすじ
いい文章を書くために、作家・文章家たちは何を心がけているか。漱石・荷風から向田邦子・村上春樹まで幅広い人びとの明かす知恵を手がかりに、実践的な方策を考える。歩くことの効用、辞書の徹底活用、比喩の工夫…。執筆中と推敲時だけでなく、日常のなかの留意点もまじえて説く、ロングセラー『文章の書き方』の姉妹編。
感想・レビュー・書評
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書き方の本はありふれているが、本書は、文章上達するための秘訣をこれでもかと詰め込んでいる。それも名だたる書き手の作品を渉猟したアンソロジーテイスト。
トップバッターから吉本ばななと名うてをぶつけてくる。
基本→書く→推敲→修行 と段階を踏めるように配列されているが、好きなところをめくっても楽しく読める。
僕の好みは吉本ばななの次に来る鶴見俊輔の項。
鶴見は「うまい文章だと思うものをノートに抜き書」いたそうだ。蒐集癖の僕と鶴見はもしかしたらウマが合うかもしれない!
修行という言い方だと堅苦しいのだが、ウイットに富んだ筆致で、面白く読みながら良い文章にするための心構えが鍛えられるよい本だと思いました。
著者は、日本エッセイストクラブ理事長。なんと学生時代に社会心理学の権威 南博から指導賜っていたという。驚き!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
文章のみがき方
著:辰濃 和男
紙版
岩波新書 新赤版1095
まえがきに、これまで書き抜いた言葉の数々から、文書論に関するものだけを整理しようとして散らばっていたものを集めまとめたものとあります。
その中から、納得したものを以下に抜き出してみました。
■基本
・毎日書く
・いいなとおもった文章を書きぬいておく、書き写す
⇒すると、自分の文章との違いが分かる
⇒自分の肉声で普通にしゃべるように文章を書くことが大切
・繰り返し読む
⇒その本を好きになるように努力する
⇒疑問点を並べてみる
⇒暗記するぐらい読み込め⇒繰り返し読むことで、その本は読む人の血肉になっていく
⇒多くの本を読む
⇒精読(書き抜く、傍線を引く、感想を書く、要約を書く、その本と対話し、格闘し、感謝し、また繰り返し読む)
・乱読を楽しむ
⇒異質な本を読むことで自分の世界を広げる、未知の世界に出会うことで脳に刺激を与える
⇒乱読と精読とは矛盾しない、乱読しているとその中から精読する書が現れる
・現場感覚
①全感覚を鋭く働かせて書く
②現場の驚きを、文章で表現する
③綿密な描写を心がける
④人の見ないものを見る努力をする
・神は細部に宿りたもう⇒精密なものに目を止めてそれを書く
■さあ、書こう
・辞書を手元に置こう、類語辞典を使おう
・まず書く、当たり前だが、書かなければなにも起こらない
・書きたいことを書く
⇒何かにとりつかれたように、ただもうがむしゃらに書く
⇒書いて、書いて言葉が止まらなくなるときはためらうこともなく、書きつくすこと。書いて書いて書きなぐることです
・観察眼、解釈力がものをいう⇒いい文章を書くためには、それらの力を強めていくことが重要
・借り物でない言葉で書く
⇒現場へゆく、現場の様子を見て、人に話を聞き、五感で得たものを大切にして、それを自分の言葉で表現する
⇒自分にしか書けないことを、だれにでもわかる文章で書く
・分かりやすく書く
⇒平明、平易、そして達意
⇒浅田次郎曰く、「いい文章は分かりやすい。古今東西、名文といわれるものにわかりづらい文章などひとつおないのである」
・分かりやすい文章に求められるもの
①自分がどうしても伝えたい、自分の思い、自分の考えをはっきりさせる
②単純な文章で書く。難しい言葉は使わない
③書いたものを誰かに読んでもらって、感想を聞かせてもらう
④自分が自分の文章の読み手となり、自分の文章がわかりやすいかを自己評価する
⑤何度も書き直し、さらに書き直す
・具体性を大切に書く
・正確に書く
■推敲
・文章の書き直しでは、視覚的なイメージを大切にする
・削る
⇒もう削るところがない、これ以上はもったいなくて削れない状態からさらに、10字、100字と削っていく
⇒読み返してみると、同じ言葉の繰り返しが多いことに自分ながら気が付く
・紋切型はさける⇒なにも器用でなくてもいい
・文末に気を配る
⇒井伏鱒二曰く「私は文章を書くとき、語尾にてこずっている」
・流れを大切にする
①平明、そして、明晰
②リズムがある
③いきいきとしている
④主題がハッキリしている
■文章修業
・感受性を深める
・想いの深さを大切にする⇒君が読んで感心するればそれが名文である
・渾身の力で取り組む
⇒渾身の気合で書く、そして、肩の力を抜いて書く。この2つをどう融合するか、折り合いをつけるか、それは決して矛盾することでありません。
目次
まえがき
Ⅰ 基本的なことを、いくつか
1 毎日、書く
2 書き抜く
3 繰り返し読む
4 乱読を楽しむ
5 歩く
6 現場感覚をきたえる
7 小さな発見を重ねる
Ⅱ さあ、書こう
1 辞書を手もとにおく
2 肩の力を抜く
3 書きたいことを書く
4 正直に飾りげなく書く
5 借りものでない言葉で書く
6 異質なものを結びつける
7 自慢話は書かない
8 わかりやすく書く
9 単純・簡素に書く
10 具体性を大切にして書く
11 正確に書く
12 ゆとりをもつ
13 抑える
Ⅲ 推敲する
1 書き直す
2 削る
3 紋切型を避ける
4 いやな言葉は使わない
5 比喩の工夫をする
6 外来語の乱用を避ける
7 文末に気を配る
8 流れを大切にする
Ⅳ 文章修業のために
1 落語に学ぶ
2 土地の言葉を大切にする
3 感受性を深める
4 「概念」を壊す
5 動詞を中心にすえる
6 低い視線で書く
7 自分と向き合う
8 そっけなさを考える
9 思いの深さを大切にする
10 渾身の力で取り組む
ISBN:9784004310952
出版社:岩波書店
判型:新書
ページ数:224ページ
定価:920円(本体)
発売日:2007年10月19日第1刷発行
発売日:2008年04月07日第5刷発行 -
各項目が2.3頁ずつにまとめられ、それぞれのテーマが明確で読みやすい。
筆者のことばを補強する、あるいは展開するために引用が多く使われている。引用の数の多さと、引用元の多彩さに驚く。筆者はよほど多くの本を読んでいる人なんだろう。
本来引用なのだが、その本の良い解説にもなっていて、読みたいと思う本がたくさん出てきた。 -
大学の課題図書で読んだのだが、読みやすく且つタイトル通りのエッセンスがわかりやすくいい切り口で書かれていてとても勉強になった。
文章を書くことの奥深さが伝わる
2023.6.10
95 -
初めて文芸創作っぽいことを始めたのが中学高校時代。以来恥をかき貶されながらも懲りずに書くのをやめず、細々と続けてとうとう10年くらいが経ちました。そして、文章論、佳い文章の書き方についてしっかり読むのはこれが初めてです。
文章論としては、10年は読まなくていい本だったかもしれません。単純に文章書きのノウハウ集として「この本、便利だなぁ」と思い、その便利さ故に☆5つ評価です。その点で、この本を手に取ってレビューを書いた大半の方と評価軸が違うかと思います。
私はもともと我流で文章を磨くことの楽しさもあって、創作に当たって昔は文章論をあまり参考にしたくなかったのです。影響されやすい性分だという自覚もあり、下手に読んだら「佳い文章とはこういうものだ」という考えにズルズル引きずられてしまうからです。10年は読まなくていい本だったというのはそういう意味です。
そして、読んでみて、やはり、思いました。苟も、これから自分の書いた文章で食っていこうとする人なら、こういう本に安易に手を出すものではない、と。
確かにこの本の通りに実践すれば佳い文章は書けるかもしれません。しかし、お利口と言わざるを得ません。「読む人に優しい、伝えたいことが一本筋の、よく整理されたお利口な文章」を目指すなら大変参考になります。だから、便利です。そういう文章を書きたくなったときに限りですが、ね。
この本における佳い文章の対極にあるのは「悪文」ではなく、おそらく「野性的感情的で、迷いだらけの、ごちゃごちゃした、泥臭い文章」かと思います。出版社や新聞社が一番嫌う文章だろうとも思いますが、これはこれで表現出来る独特の領域があり、かつ高度なテクニックも要る、オツなもんでございます。筆者の辰濃さんは朝日の元記者だからやはりお利口な文章の書き方を紹介してしまうのであって、引用した漱石や井伏鱒二や谷崎潤一郎や井上ひさしその他大勢の作家文筆家せいではありません。
まぁ、こんな風に相対化出来るのも、文章の質や書き方について、実際に書きながら考えこれまでずっと追求してきたからですがね。今までの私の実践と照らし合わせてみれば、この本の中身は「何だ今まで当たり前にやってきたことじゃないか」が半分、「いやいやそうとも限らないんだよなぁ」が半分。 -
文章のみがき方
【要するに】
「文は心である」
著者がさまざまな文章論や作品から学んだ「いい文章」の書き方をまとめたもの。
【感想】
いい文章のための具体的な「書き方」というよりも、具体的な「心構え」。
各項末の参考文章だけでも興味深い。
【いただきました】
・繰り返し読むp13
・借り物でない言葉で書くp65
・自慢話は書かないp77
・夏目漱石は寄せ通いが好きだったp175 -
題名からハウツー本みたいだが、作家の文章を例示し筆者の長年の文書修行の蓄積を綴っている。だから、カテゴリーを随筆に。今までどこかで聞いたことある文書論だが、達意の文で読ませる。井上ひさしの作文の秘訣、姫野カオルコのピエロ的文章論…なるほど。
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これは以前いたリサーチ会社でアンケートのコンテンツ企画をしていたとき、上司に薦められて買った本だったがようやく読むことができた本だ。
私はどちらかといえば構えて文章を書く傾向があるので、この本は参考となった。
奇をてらわず、「正直に飾りげなく書く」こと、そして、「わかりやすく書く」ことが大事だと本書は伝えている。
著名な作家たちの文章を引用し、納得できる『文章のみがき方』が書かれているのだ。
この著者は朝日新聞の天声人語を1975~88年に担当していた方。なるほど、文章の基本を押さえて的確に、教えていただけるものとなっている。
少し教条的な感じもするが、いい本だ。
著者が以前に書いた『文章の書き方』もぜひ読んでみたいと思う。 -
多くの文章論から書き抜いて集めた言葉を整理し、38個のいい文章の条件にまとめた本。様々な作品から抜き出したいい文章と、それらの文章への筆者の感想が興味深い。中でも、35番目の「自分と向き合う」にとても共感できた。才能のある人でさえ、自分の書いたものに不満、劣等感、引け目を持っている。しかし、そう感じるからこそ、彼らはさらなる高みを目指すことができるのだろう。劣等感のようなマイナスな感情でさえ自分の力にできると、僕は思う。
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朝日新聞の天声人語欄を長年担当した著者による、文章の書き方本。
堅苦しいタイトルですが、内容はわかりやすく、すいすいと読んでいけました。
さまざまな作家たちの文章論を紹介しながら、良い文章についての定義や描き方など、文章のみがき方をやさしく説いていきます。
漱石、荷風、三島、向田邦子、村上春樹、瀬戸内寂聴、ばなな、江國香織、レイチェル・カーソンなどの文章が掲載され、その出典情報が記載されているのが親切です。
「正直に飾り気なく」「単純・簡潔に」「具体性を大切にして」書くこと、「紋切り型を避け」「外来語の乱用を避け」「流れを大切にして」推敲すること、などが章ごとにまとめられているため、目次を読むだけでステップがわかるようになっています。
ビギナー目線で、一般読者に歩調を合わせ、文章を書く方法について教えてくれているため、肩肘張らず、難しさに投げ出すこともなく、興味を持って最後まで集中力を切らさずに読み通せる本となっています。
やはりそれは、この著者の長年の努力とキャリアによる文章力ならではだろうと思いました。
全編を通じて、刺激的、つまりは攻撃的な批判めいた言葉は一切ないため、心理的に煽られることもなく、落ち着いて読める一冊です。