シェイクスピアのたくらみ (岩波新書 新赤版 1116)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004311164

作品紹介・あらすじ

シェイクスピアは、観客の反応を計算し尽くして、その作品を書いた。では観客がどのように劇に向き合うことを、彼はたくらんだのだろうか。『ロミオとジュリエット』から『あらし』に至る戯曲群を、その作劇手法に焦点を当てて丹念に吟味し、ロマン主義以来の見方を一変させる、ラディカルなシェイクスピアの発見へと読者をいざなう。

感想・レビュー・書評

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  • シェイクスピアのおもな作品をカテゴライズし解説しています。少しでも作品について知っていれば、より理解が深まるはずですが、個人的には読んだり観たりしたことのない作品ばかりなので、少し難しく感じる部分もありました。
    それでもおぼろげながらでも作風について理解することができました。
    例えば、観客に主人公と一体化せずに観てもらうには、観客が主人公の身に何が起きるかを先に知っていることが必要で、シェイクスピアの作品にはそのような技巧が施されていることが多いようです。

  • おもしろい、と言うかありがたい一冊!
    イギリス文学における最高峰、シェイクスピアの戯曲を解説した書。
    英語を勉強していながら日本語でも英語でも読めずにいたが、
    この一冊で主だった悲劇、喜劇のあらすじやシェイクスピアの狙いが分かる。

    興味深いところは、観客が登場人物に共感するのを許さないシェイクスピアの巧妙な仕掛け。
    最近の流行りは「わかる」「共感できる」だが、彼はあくまで共感させない。
    主人公が知らないことを観客は知っていて、主人公が勘違いをしたり、罠に嵌まったりするのを分かっていながら見届けるしかない。
    そういうメタ視点を要求する戯曲を400年も前に書いて、今も上演され続けて、シェイクスピアの凄さを垣間見たので、改めて作品を読んでみたいと思った。

  •  全部の作品を読んだが、あらしが一番好きだった。プロスペローのセリフでこの劇は虚構であるとはっきり宣言してしまうところに衝撃を受けたからだ。でも、この本によると人間とはつまり夢の材料ということで劇の現実性を主張しているという。自らがよってたつ認識の現実性を受容させているからだ。

     シェイクスピアが人類愛の伝道者であるという見方が強いが、どちらかというと人間洞察によって徹底的に偏らないように強いてくる厳しさを感じる。

  • 信州大学の所蔵はこちらです☆
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA84934542

  • シェイクスピアの演劇における作品と観客の間について。
    シェイクスピアの作品は、現代では文学として読まれることが多いけれども、本来は演劇のシナリオであるため、小説のような背景説明の手法は取られていない。従って登場人物自身がストーリーを説明したり、或いは説明が無くても観客との暗黙の了解で場面の見方が設定されていたりと、作品は常に観客を意識したものとなっている。当時の観劇の状況を踏まえ、シェークスピアが「観客との間」をいかに取っていたかを代表作別に解説したのがこの本です。シェイクスピアを読んだことがある人には、この本の内容はとても面白く読めると思います。

  • シェイクスピアの手法の吟味を手がかりに、シェイクスピアを、ロマン派の文人たちが思い描いていたのとは全く異るラディカルな作家として、人間や世界のあり方を無条件に是認することをためらった作家として、捉え直そうとします。章たてからしてわくわくしてきます。たとえば、

    結末が分かっている劇はどこが面白いか
    喜劇の観客は何を笑うか
    悲劇の主人公はなぜすぐに登場しないか
    等々

    非常にスリリングで、説得力があり、演劇好きには堪りません。具体的な項目は、コーラスの台詞、演技ができる女へ、不安に取り付かれる双生児たち、道化の歌はすべてを相対化する、主人公と同化しない観客、悲劇的存在としてのマクベス、挑発するシェイクスピア、芝居の虚構、現実の虚構性など、きりがありません。二十世紀のドイツを代表する劇作家、ベルトルト・ブレヒトが、劇の世界や人物との間に距離が生じることを《異化効果》という言葉で呼んだことをひいて、著者はシエクスピア劇を、観客が気楽に享受することを許さない劇であるとします。もちろん新書版なので、全ての作品を十分に論じる紙面はありません。ぜひ将来お願いしたいものです。

  • 劇と観客の関係性という視点を中心に、シェイクスピアが脚本内にどんな工夫(たくらみ)をしたかという解説。劇中人物の知りうる出来事や結末と、観客が知りうる内容の違い、つまり劇中で明示された情報と暗黙に知らされている情報の差異に、シェイクスピアの意図が隠されていると分析する。別にこうした非対称性は、シェイクスピア以外の作品にも言えることだと思うが、ひょっとして後世の作品が、シェイクスピアに影響されているのだすれば、やはりシェイクスピアが大した人だと思わざるを得ない。『ハムレット』『ロミオとジュリエット』『リア王』などの有名な作品以外にも、多くの作品を教材にしている。それぞれあらすじが記されるので、それだけでも勉強になるが、新書一冊に押し込めたので、あらすじの濃縮度が高すぎて消化に苦慮するのも事実。

  • 2015/4/28読了。
    シェイクスピアに対する理解を深めたくて購入。
    全て同じ調子で作品を説明しているのでやや冗長ゆに感じる。だが、それぞれの作品を比較するという意味ではむしろ好ましいか?

    元々演劇というものを深く考えたことがないため、観客との距離感を考えながら作品を作ったというのはシェイクスピアの作品を読む限りでは想像できなかった。

    この著書に書かれていることを意識しながら、シェイクスピアを再読してみたいと思う。

  • 観客の知識、予想される反応、それに見合い自分の期待した反応を得られる演出…というシェイクスピアの緻密な計算。創作をする人は読むとなるほどと思えるはず。

  • [ 内容 ]
    シェイクスピアは、観客の反応を計算し尽くして、その作品を書いた。
    では観客がどのように劇に向き合うことを、彼はたくらんだのだろうか。
    『ロミオとジュリエット』から『あらし』に至る戯曲群を、その作劇手法に焦点を当てて丹念に吟味し、ロマン主義以来の見方を一変させる、ラディカルなシェイクスピアの発見へと読者をいざなう。

    [ 目次 ]
    序章 観客を操作するシェイクスピア
    第1章 結末が分っている劇はどこが面白いか
    第2章 喜劇の観客は何を笑うか
    第3章 悲劇の主人公はなぜすぐに登場しないか
    第4章 不快な題材はどう処理されるか
    第5章 超自然的な存在はどんな役割を演じるか

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