金融権力―グローバル経済とリスク・ビジネス (岩波新書)

著者 : 本山美彦
  • 岩波書店 (2008年4月22日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004311232

作品紹介

世界経済をゆるがしたサブプライムローン問題は、「カネこそが商品」となった現在の投機的金融システムの危機と限界を明らかにした。ブレトンウッズ体制の崩壊にさかのぼり、金融が本来の役割を離れて「リスク転売ビジネス」の性格を深めていった過程を具体的にたどる。金融に秩序を取り戻すために何をすべきかを真摯に問う。

金融権力―グローバル経済とリスク・ビジネス (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • 978-4-00-431123-2  242p 2008・5・26 2刷

  • 原油先物価格の暴騰を報じるとき、メディアは「投機的資金の流入により云々」と眉をひそめはする。しかし生活基盤が投機により脅かされることに対して、誰も異議を唱える言葉を続けようとはしないことに歯がゆい思いをしていた。何故このような理不尽かつ暴力的な状況に対し、我々はNOを突きつけることすらできないのか、と。
    著者は「原油先物投機を規制することは無知蒙昧の仕業なのだろうか。必要なことは庶民の普通の常識的な生活感覚を忘れないことである」と明言する。金融の自由化は金融市場に群がるグローバリゼーション教の教徒達にとっては重要なテーゼかもしれないが、ガソリンや食品の値上げを押し付けられるだけの「部外者」が有難がらなければならない理由は何一つない。本書は少なくとも直接金融へのシフトに際して「お金は銀行へ預けるな」などと「庶民を啓蒙する」だけの人種には眉に唾して望む必要があることに気付かせてくれる。
    同様に「統計確率論的方法の経済学への適応領域は極めて限定的である」(ヒックス)。先端の金融工学理論が如何に精緻を極めようとも、それ自体、世界人類の福利はもとより、より限定された市場の安定的成長にすら寄与するものではない。著者が「ノーベル経済学賞」の権威の正当性について疑念を呈するのも深くうなずかされるところである。
    本書は主にサブプライムローン問題を題材にしながら、一方で戦後から現代までの金融の変遷を位置づけることで、二つの重要な事実を指摘する。一つは「マネタリストの失敗」であり、もう一点は「ドルの失権」である。特に後者について、堂島米会所の崩壊過程と現在の原油先物やサブプライムの状況、そして進行するドル安が如何に酷似しているか、という指摘は重大であり深刻だ。
    著者の近著はどれも必読であるが、岩波新書という手に取りやすい形で重要な問題提起がなされたことを喜びたい。
    著者は本書の最後で「金融権力に抗するために」と題してアンチ・グローバリゼーションの試みをいくつか紹介しているが、まだその本命は現れていないという気がした。

  • 信用取引をはじめデリバティブやオプション等と金融の最先端をいく技術はすべて金持ちのためにあると言っても過言ではない

    金持ちがさらに金持ちになるテクニック

    金を使って金を稼ぐ利ざや狙いのすべての行為
    リスクこそがリターンの源泉となり・・・

    ・・・そして現在は世界中の投機マネーによってサブプライム問題や商品価格の高騰を招いている

    このグローバル経済社会は生産・流通や消費の健全なる「普通」の世界からは逸脱して金転がしによるマネーゲームに変貌してしまった

    実はこの誤った世界を正常化するのは簡単で人類の生命に直結するような商品先物取引ではレバレッジを一時的にでも禁止する(理想は永久に禁止)ようなチョットした制限をすれば解決が可能な問題であると思う

    世界中の欲望を少し制限する。それだけの話なのだ

    そう考えると完全自由市場と言う理想は幻想であって無秩序である。誤った方向に市場が行き過ぎた場合に政府が規制をかけるのは正しいのである

    そして近代的な先物市場が生まれては消えていった幕末の堂島米会所の歴史P.101~104を日本の指導者は何度も読み返すべきだろう

    「カネは社会的に必要なものを作り出すために使用されるべきである」(P.2)

    日本が世界に向けて発信出来るのは核の廃棄の他にもあるはずなのだ・・・。

  • 何がいったいどうなったのだろう。
    嘘を嘘で塗り固めたようなことが、本当に放置されていたのだろうか。
    10年前に、警鐘を鳴らす本が出ていて欲しかった。

    事後処理は無益ではないが、事前予防が大事のはずではないのか。
    リスク管理といいながら、リスクだだもれだったのだろうか。

    本書は、現状を認識する上で必要となる、情報を整理してくださっています。

  • ■サブプライム
    1.サブプライムローンとは、返済に不安のある長期の住宅ローン債権を「証券化」と「リスクの転嫁」によって、新たな金融商品に仕立て上げたもののことである。
    2.サブプライムローン問題は、ドルの暴落に結びつく可能性が高い。その一方、口シアと中国が、石油産業の躍進や巨額の外貨準備高を背景に、その存在感を急速に高めている。両
    国の動きにEUが同調すれば、米国一極支配は早晩崩壊する。

  • 話題が豊富で結構面白いんだけど、全体的に左翼っぽい感じが強すぎてなんかなーっていう印象。

    お金儲けは悪です、とか真顔で言われてもちょっとねー。
    まーでも同じ岩波新書の「金融商品とどうつき合うか」と合わせて読んだらちょっとは金融のしくみがわかった気分になれたかな。

    とは言え、筆者がくどいくらい強調している「経済は本来、弱い民を救うためのもののはずなんだ」っていう主張には一理あると思うので、イスラム金融とかマイクロクレジットとか金融NPOとかについてもちょっと調べてみようと思います。

    たぶん金融の概観には悪くない本なんでしょう。かなーり思想がかってるけど。

  • [ 内容 ]
    世界経済をゆるがしたサブプライムローン問題は、「カネこそが商品」となった現在の投機的金融システムの危機と限界を明らかにした。
    ブレトンウッズ体制の崩壊にさかのぼり、金融が本来の役割を離れて「リスク転売ビジネス」の性格を深めていった過程を具体的にたどる。
    金融に秩序を取り戻すために何をすべきかを真摯に問う。

    [ 目次 ]
    第1章 サブプライムローン問題が示したもの―金融システムの危機
    第2章 金融の変質―「金融技術」の仕組み
    第3章 リスク・テイキングの理論―シカゴ学派の論客たち
    第4章 新金融時代の設計者たち―ミルトン・フリードマンを中心に
    第5章 リスク・ビジネスのはてに―脆弱な金融
    第6章 金融権力に抗するために―新たな秩序への道筋

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    [ 参考となる書評 ]

  • サブプライム関連の解説には不正確な部分がある。
    堂島米会所が閉鎖された背景はこの本で初めて知った。
    エピソードで採りあげられている話「フリードマンはイエスズ会のロヨラ」等は興味深い。
    筆者の熱意、いわんとするところは良く分かるが、全体としては★3つ。

  • 10年3月14日開始
    10年3月16日読了

  • 読めば、いまの金融・経済のベースを広く掴めるので、
    とりあえず一通りの知識を仕入れておきたいときに向いている本。

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