金融権力: グローバル経済とリスク・ビジネス (岩波新書 新赤版 1123)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004311232

作品紹介・あらすじ

世界経済をゆるがしたサブプライムローン問題は、「カネこそが商品」となった現在の投機的金融システムの危機と限界を明らかにした。ブレトンウッズ体制の崩壊にさかのぼり、金融が本来の役割を離れて「リスク転売ビジネス」の性格を深めていった過程を具体的にたどる。金融に秩序を取り戻すために何をすべきかを真摯に問う。

感想・レビュー・書評

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  • 覚えてないので、もう一度読む

  • サブプライムローン問題が示したもの―金融システムの危機
    金融の変質―「金融技術」の仕組み
    リスク・テイキングの理論―シカゴ学派の論客たち
    新金融時代の設計者たち―ミルトン・フリードマンを中心に
    リスク・ビジネスのはてに―脆弱な金融
    金融権力に抗するために―新たな秩序への道筋

    著者:本山美彦(1943-、神戸市、経済学)

  • ヒックスによれば、経済学は将来の不確実性に対応するようにはできていない、という。
    これはヒュームの歴史的因果律論にもとづく。
    リスクの計量化手法の発達は、資源の時間的空間的有効利用を大いに助け、経済の発展とより豊かな社会の構築に役立ってきたのだが、それ自体がゼロサムゲームの道具となると・・・、ということか。

  • 978-4-00-431123-2  242p 2008・5・26 2刷

  • 原油先物価格の暴騰を報じるとき、メディアは「投機的資金の流入により云々」と眉をひそめはする。しかし生活基盤が投機により脅かされることに対して、誰も異議を唱える言葉を続けようとはしないことに歯がゆい思いをしていた。何故このような理不尽かつ暴力的な状況に対し、我々はNOを突きつけることすらできないのか、と。
    著者は「原油先物投機を規制することは無知蒙昧の仕業なのだろうか。必要なことは庶民の普通の常識的な生活感覚を忘れないことである」と明言する。金融の自由化は金融市場に群がるグローバリゼーション教の教徒達にとっては重要なテーゼかもしれないが、ガソリンや食品の値上げを押し付けられるだけの「部外者」が有難がらなければならない理由は何一つない。本書は少なくとも直接金融へのシフトに際して「お金は銀行へ預けるな」などと「庶民を啓蒙する」だけの人種には眉に唾して望む必要があることに気付かせてくれる。
    同様に「統計確率論的方法の経済学への適応領域は極めて限定的である」(ヒックス)。先端の金融工学理論が如何に精緻を極めようとも、それ自体、世界人類の福利はもとより、より限定された市場の安定的成長にすら寄与するものではない。著者が「ノーベル経済学賞」の権威の正当性について疑念を呈するのも深くうなずかされるところである。
    本書は主にサブプライムローン問題を題材にしながら、一方で戦後から現代までの金融の変遷を位置づけることで、二つの重要な事実を指摘する。一つは「マネタリストの失敗」であり、もう一点は「ドルの失権」である。特に後者について、堂島米会所の崩壊過程と現在の原油先物やサブプライムの状況、そして進行するドル安が如何に酷似しているか、という指摘は重大であり深刻だ。
    著者の近著はどれも必読であるが、岩波新書という手に取りやすい形で重要な問題提起がなされたことを喜びたい。
    著者は本書の最後で「金融権力に抗するために」と題してアンチ・グローバリゼーションの試みをいくつか紹介しているが、まだその本命は現れていないという気がした。

  • 信用取引をはじめデリバティブやオプション等と金融の最先端をいく技術はすべて金持ちのためにあると言っても過言ではない

    金持ちがさらに金持ちになるテクニック

    金を使って金を稼ぐ利ざや狙いのすべての行為
    リスクこそがリターンの源泉となり・・・

    ・・・そして現在は世界中の投機マネーによってサブプライム問題や商品価格の高騰を招いている

    このグローバル経済社会は生産・流通や消費の健全なる「普通」の世界からは逸脱して金転がしによるマネーゲームに変貌してしまった

    実はこの誤った世界を正常化するのは簡単で人類の生命に直結するような商品先物取引ではレバレッジを一時的にでも禁止する(理想は永久に禁止)ようなチョットした制限をすれば解決が可能な問題であると思う

    世界中の欲望を少し制限する。それだけの話なのだ

    そう考えると完全自由市場と言う理想は幻想であって無秩序である。誤った方向に市場が行き過ぎた場合に政府が規制をかけるのは正しいのである

    そして近代的な先物市場が生まれては消えていった幕末の堂島米会所の歴史P.101~104を日本の指導者は何度も読み返すべきだろう

    「カネは社会的に必要なものを作り出すために使用されるべきである」(P.2)

    日本が世界に向けて発信出来るのは核の廃棄の他にもあるはずなのだ・・・。

  • 何がいったいどうなったのだろう。
    嘘を嘘で塗り固めたようなことが、本当に放置されていたのだろうか。
    10年前に、警鐘を鳴らす本が出ていて欲しかった。

    事後処理は無益ではないが、事前予防が大事のはずではないのか。
    リスク管理といいながら、リスクだだもれだったのだろうか。

    本書は、現状を認識する上で必要となる、情報を整理してくださっています。

  • ■サブプライム
    1.サブプライムローンとは、返済に不安のある長期の住宅ローン債権を「証券化」と「リスクの転嫁」によって、新たな金融商品に仕立て上げたもののことである。
    2.サブプライムローン問題は、ドルの暴落に結びつく可能性が高い。その一方、口シアと中国が、石油産業の躍進や巨額の外貨準備高を背景に、その存在感を急速に高めている。両
    国の動きにEUが同調すれば、米国一極支配は早晩崩壊する。

  • 話題が豊富で結構面白いんだけど、全体的に左翼っぽい感じが強すぎてなんかなーっていう印象。

    お金儲けは悪です、とか真顔で言われてもちょっとねー。
    まーでも同じ岩波新書の「金融商品とどうつき合うか」と合わせて読んだらちょっとは金融のしくみがわかった気分になれたかな。

    とは言え、筆者がくどいくらい強調している「経済は本来、弱い民を救うためのもののはずなんだ」っていう主張には一理あると思うので、イスラム金融とかマイクロクレジットとか金融NPOとかについてもちょっと調べてみようと思います。

    たぶん金融の概観には悪くない本なんでしょう。かなーり思想がかってるけど。

  • [ 内容 ]
    世界経済をゆるがしたサブプライムローン問題は、「カネこそが商品」となった現在の投機的金融システムの危機と限界を明らかにした。
    ブレトンウッズ体制の崩壊にさかのぼり、金融が本来の役割を離れて「リスク転売ビジネス」の性格を深めていった過程を具体的にたどる。
    金融に秩序を取り戻すために何をすべきかを真摯に問う。

    [ 目次 ]
    第1章 サブプライムローン問題が示したもの―金融システムの危機
    第2章 金融の変質―「金融技術」の仕組み
    第3章 リスク・テイキングの理論―シカゴ学派の論客たち
    第4章 新金融時代の設計者たち―ミルトン・フリードマンを中心に
    第5章 リスク・ビジネスのはてに―脆弱な金融
    第6章 金融権力に抗するために―新たな秩序への道筋

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    [ 参考となる書評 ]

  • サブプライム関連の解説には不正確な部分がある。
    堂島米会所が閉鎖された背景はこの本で初めて知った。
    エピソードで採りあげられている話「フリードマンはイエスズ会のロヨラ」等は興味深い。
    筆者の熱意、いわんとするところは良く分かるが、全体としては★3つ。

  • 10年3月14日開始
    10年3月16日読了

  • やっぱり主役はものづくりで、金融は支える側になるべきだろうな。

  • 20090315購入 ¥105 弘栄堂書店バーゲン

  • サブプライムローンについて、世界を牛耳る金融権力について分かりやすく書いてあります。

  • 現在の投機的金融システムの危機と限界を明らかにしたサブプライムローン問題。ブレトンウッズ体制の崩壊にさかのぼり、金融が本来の役割を離れて「リスク転売ビジネス」の性格を深めていった過程を具体的にたどる。(TRC MARCより)

  • サブプライムローン問題に端を発する現在の金融危機をアメリカ型資本主義経済の終焉という歴史的文脈から解説した本。フリードマンのマネタリズムに対する批判が中心となっており、投資銀行に身を置く者としては耳が痛かったが、今後の世界経済がどのような力学で動くかを知るために欠かせない基本的な知識が豊富に記載されており、非常に役立った。比較的ライト級の新書が増える中で、内容もしっかりしており、コストパフォーマンスも良い。
    読後思ったことは、厳しさを増す経済環境の中で今後個人としてどう生き残って行くべきなのかということ。一部の資本家を潤し、その他多数の労働者を貧困に貶めるアメリカ型資本主義は決して賞賛されるべきシステムではないが、それは現代の日本を生きる自分にとっては抗うことができない与件である。であれば、アメリカ型資本主義の脆弱性を認識した上で、その中での「勝ち組」になるべく、というよりも「負け組」にならないために、最大限努力するしかないと思う。

  • 少し難しかった。とりあえず3章と4章は必要ないと感じた。

    1章のサブプライム関連の話は面白かった。サブプライムの原因を深く説明してくれていた。5章以降のドルの下落の話も面白かった。アメリカとロシア、中国、ヨーロッパの間で金融関連はもちろんのこと、石油や外貨準備金の状況まで説明が及んでいたので説得力があった。

    ノーベル経済学賞はノーベル賞と命名するべきではないと感じた。何故かというとアルフレッド・ノーベルの意向にそぐわないからだ。

    サブプライム問題について読みたい人は、他の著書の方がわかり易くていいと思います。この著書は、金融っていうより経済学の著書かと思います。経済=金融って言われると同じですが・・・。

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著者プロフィール

1943年神戸市生まれ。兵庫県立神戸高校、京都大学経済学部卒業。京都大学大学院経済学研究科修士・博士課程を経て、1969年甲南大学経済学部助手、1977年京都大学経済学部助教授、同・教授、2006年同・大学停年退職。福井県立大学経済経営研究科、大阪産業大学経済学部教授を経て、現在、国際経済労働研究所長。京都大学経済学博士、京都大学名誉教授。京都大学経済学部長、日本国際経済学会会長、第18期日本学術会議第3部会員、大阪産業大学学長を歴任。2018年6月より国際経済労働研究所「AI社会を生きる研究会」主宰。

主要著書
『貿易論序説』(有斐閣、1982年)、『貨幣と世界システム――周辺部の貨幣史』(三嶺書房、1986年)、『環境破壊と国際経済――変わるグローバリズム』(有斐閣、1990年)、『南と北――崩れ行く第三世界』(筑摩書房、1991年)、『豊かな国、貧しい国――荒廃する大地』(岩波書店、1991年)、『売られるアジア――国際金融複合体の戦略』(新書館、2000年)、『ESOP株価資本主義の克服』(シュプリンガー・フェアラーク東京、2003年)、『民営化される戦争――21世紀の民族紛争と企業』(ナカニシヤ出版、2004年)、『売られ続ける日本、買い漁るアメリカ――米国の対日改造プログラムと消える未来』(ビジネス社、2006年)、『金融権力――グローバル経済とリスク・ビジネス』(岩波新書、2008年)、『《集中講義》金融危機後の世界経済を見通すための経済学』(作品社、2009年)、『韓国併合――神々の争いに敗れた「日本的精神」』(御茶の水書房、2011年)、『アソシエの経済学――共生社会を目指す日本の強みと弱み』(社会評論社、2014年)、『人工知能と21世紀の資本主義――サイバー空間と新自由主義』(明石書店、2015年)、他。

「2018年 『人工知能と株価資本主義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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