- Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004311256
作品紹介・あらすじ
米英軍によって「解放」されたイラクでは、イスラーム勢力が力を伸ばし、政治権力を握る一方で、イラク人どうしが暴力で対立する状況が生まれた。だが、どんなに苛酷な環境にあっても、人びとは食べ続ける。アラブのシーア派やスンナ派社会、クルド民族、そして駐留外国軍の現在を、祖国の記憶と結びついた料理や食卓の風景とともに描く。
感想・レビュー・書評
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【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/705728 -
イラクの90年代から現在(2008年)までの政治の動きに、重要な出来事のあった町の名物料理を絡めて述べていく。
その土地でどんな食材が取れ、どんな食文化が培われてきたかが垣間見えて、とても興味深い。
とはいえ、民族、宗派、政党やテロ組織などが錯綜するイラクの状況を追いかけるのはとても大変。
地図、略年表、人名組織名リストなど、理解を助けてくれる資料をつけていてくれるにもかかわらず…。
読み終わったものの、本当に目を全てのページにさらしただけになってしまい、自分の力のなさにがっかり。
一番理解できたのは、自衛隊のサマーワ派遣を巡る国内の論調と、イラクの反応を対比した分析を含む第四章だった。
機会を作って、もう一度読み直したい。
もう少し理解できるような気がする。 -
S302.273-イワ-R1125 200027431
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(2015.02.10読了)(2012.07.28購入)
副題「革命と日常の風景」
題名からイラクの食糧事情を述べた本だと思って積んでおいたのですが、そうではありませんでした。イラクでよく食べられる料理に触れながらイラクにおける諸勢力の状況を述べた本でした。諸勢力というのは、シーア派、スンナ派、クルド人、外国軍隊、といったところです。イラクの状況が実によくわかる本でした。
【目次】
序章 チグリスの川魚-戦火を逃れるイラク人たち
第1章 祝祭の振舞い料理-シーア派社会の政治力学
1 「シーア派よ、選挙に行こう!」
2 「イランから来た人たち」?
3 キングメーカー、サドル潮流
第2章 ファッルージャの串焼肉-追い詰められたスンナ派社会
1 戦乱のファッルージャ
2 出遅れた政権参加
3 「外国人義勇兵を追い出せ」
第3章 天国から降ってきたお菓子-イラク・クルドの苦難と繁栄
1 虐殺から自治へ
2 石油を巡る戦い
3 トルコの脅威
第4章 肉団子氏、コメ親父、料理親父-外国軍とどう向き合うか
1 占領者としての外国軍
2 自衛隊が来た!
終章 ひっくり返しご飯-革命と日常の風景
本書に登場する主な人物・組織
●シリアのイラク人(4頁)
シリアでは、2003年の英米のイラク攻撃以降、年間20万人以上のイラク人が流れ込み、2007年半ばまでにシリア国内のイラク人は100万、多く見積もる統計では170万人にも昇ったと伝えられている。
●治安悪化(12頁)
2006年、正式政権成立後のイラク国内の治安悪化は、かなりの部分、シーア派政党同士の対立、民兵を巡る政府対応の不十分さに起因するといえよう。
現在「宗派対立」と見えるものは、権力の真空を巡って一斉に勢力拡大を図るさまざまな政治組織が、民兵という暴力装置を保持したまま「選挙」に臨み、暴力を以って票の獲得を目指したことによって起きた現象だ、と言ってよい。
●バアス党排除(50頁)
内務省を掌握したSCIRIは、早速イラク警察の再編に取り掛かる。それまで暫定政府を担ってきたアッラーウィが、バアス党や旧体制の治安機関をある程度残そう、と考えていたのと異なり、バアス党政権に弾圧され続けたダアワ党やSCIRIは、新政府では徹底的にバアス党を排除する方針を取ったのである。
●憲法第二条(56頁)
「すべての法律はイスラームに反してはならない」
●サドル潮流(72頁)
サドル潮流は、民兵を解体するどころか、民兵を使ったさまざまな「自警」活動を展開した。ビデオ店や映画館を襲撃し、街頭で女性に対する服装監視、風紀取締りに力を入れたのは、もっぱらサドル潮流だったと言われている。
●宗教ネットワーク(228頁)
イスラーム主義勢力の伸張の背景には、それがいずれの国でも貧困層や迫害された者たちの強い支持を得ていることがある。底辺の人々を支える様々な慈善活動、寄付という形での集金能力など、大衆への扶助機能を持つことが、宗教ネットワークの強みだ。
☆酒井啓子さんの本(既読)
「イラクとアメリカ」酒井啓子著、岩波新書、2002.08.20
「イラク 戦争と占領」酒井啓子著、岩波新書、2004.01.20
「〈中東〉の考え方」酒井啓子著、講談社現代新書、2010.05.20
「〈アラブ大変動〉を読む」酒井啓子編、東京外国語大学出版会、2011.08.10
☆関連図書(既読)
「イラク歴史紀行」高橋英彦著、NHKブックス、1981.04.20
「サッダーム・フセインの挑戦」小山茂樹著、日本放送出版協会、1990.11.20
「湾岸戦争の嘘と真実」宮崎正弘著、太陽企画出版、1991.05.10
「ヨルダン難民救援への旅」小山内美江子著、岩波ジュニア新書、1991.06.20
「イラクという国」水口章著、岩波ブックレット、1993.10.20
「クルド人 もうひとつの中東問題」川上洋一著、集英社新書、2002.07.22
「イラクの小さな橋を渡って」池澤夏樹著・本橋成一写真、光文社、2003.01.25
「イラクからの報告」江川紹子著・森住卓写真、小学館文庫、2003.03.01
「イラク」田中宇著、光文社新書、2003.03.20
「バグダッドブルー」村田信一著、講談社、2004.02.13
「僕がイラクへ行った理由」今井紀明著、コモンズ、2004.07.20
「イラクの戦場で学んだこと」岸谷美穂著、岩波ジュニア新書、2005.09.21
「イスラーム原理主義の「道しるべ」」サイイド・クトゥブ著・岡島稔訳、第三書館、2008.08.15
(2015年3月3日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
米英軍によって「解放」されたイラクでは、イスラーム勢力が力を伸ばし、政治権力を握る一方で、イラク人どうしが暴力で対立する状況が生まれた。だが、どんなに苛酷な環境にあっても、人びとは食べ続ける。アラブのシーア派やスンナ派社会、クルド民族、そして駐留外国軍の現在を、祖国の記憶と結びついた料理や食卓の風景とともに描く。 -
タイトル買いをした本。イラクの食文化が詳しく紹介されているのかなと思ったんだけど、想像に反してかなりガッツリと近代イラク史について触れてます。料理については、各論に触れるためのほんのちょっとした枕程度。
食文化を知るための本としては、やや不満が残る感じ。逆に、著者の専門性を遺憾なく発揮した、アメリカが -
副題と帯にまんまと引っ掛かった。期待したのは日常食を通してのイラクの人々の暮らしだったが、内容はフセイン政権崩壊後のイラク国内の混乱だった。まぁ…それはそれでいいんだけど、ちょっと肩透かし。
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ありていに言えば「美味しんぼ イラク編」。といってもあくまでイラク戦争後の政治・地域史がメインなので料理は脇役ではあるが。
料理に言及するにはちょっとこじつけかな?と感じる部分もあったが、どうしても政治中心に見られてしまう現代のイラクについて文化や生活の面も垣間見れて面白く読めた。
戦争後のイラクについてアメリカは「世俗的民主主義」が根付くことを期待しながらも、結局イランのようなイスラム教中心の政治となってしまったので、「期待通りにいかなかったし、危険だからあとは好きにやってね」的に世界各国の軍隊が引き上げていく、という結局第二次世界大戦後のイギリスからの独立時と同じことを繰り返しているあたり、何とも無策というか無責任な対応だなと感じた。 -
どんな状況でも食は必須。イラクの現状とともにイラク料理を垣間見る。レシピつきだったから、ちょっと作ってみたいのもあり。