疑似科学入門 (岩波新書 新赤版 1131)

著者 :
  • 岩波書店
3.22
  • (11)
  • (53)
  • (90)
  • (27)
  • (4)
本棚登録 : 653
感想 : 90
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004311317

作品紹介・あらすじ

占い、超能力、怪しい健康食品など、社会にまかり通る疑似科学。そのワナにはまらないためにどうしたらよいか。また地球環境問題など、科学の不得手とする問題に正しく対処するにはどうしたらよいか。さまざまな疑似科学の手口とそれがはびこる社会的背景を論じ、一人ひとりが自ら考えることの大切さを説く。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • [ 内容 ]
    占い、超能力、怪しい健康食品など、社会にまかり通る疑似科学。
    そのワナにはまらないためにどうしたらよいか。
    また地球環境問題など、科学の不得手とする問題に正しく対処するにはどうしたらよいか。
    さまざまな疑似科学の手口とそれがはびこる社会的背景を論じ、一人ひとりが自ら考えることの大切さを説く。

    [ 目次 ]
    第1章 科学の時代の非合理主義?第一種疑似科学(占い、超能力・超科学、疑似宗教 第一種疑似科学の特徴 超常現象の心理学-なぜ信じてしまうのか)
    第2章 科学の悪用・乱用-第二種疑似科学(科学を装う手口 第二種疑似科学の内幕)
    第3章 疑似科学はなぜはびこるか(科学へのさまざまな視線 自己流科学 科学と非合理主義)
    第4章 科学が不得手とする問題-第三種疑似科学(複雑系とは何か 地球環境問題の諸相 複雑系との付き合い方 予防措置原則の応用)
    終章 疑似科学の処方箋(疑似科学は廃れない 正しく疑う心 疑似科学を教える 予防措置原則の重要さ 科学者の見分け方)

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 792

    今なお存在しているのが「相対性理論は間違っている」とする人 たちである。研究会を組織し(会誌まで発行されている)、アインシュ タインの特殊相対性理論を否定し続ける人たちの集団だ。おそらく 世界中で1000人はいると思われるが、自分たち自身が問違って いる(論理の誤解、計算間違い、思い違いなど)にもかかわらず、飽きず に主張し続けている。

    実際には、各社ともマイナスイ オン効果を厳密に実証しておらず、根拠は至って薄弱であった。 イナスイオンという言葉が客の気を惹きつけられることに目を付け て、こぞって売り出したのが真相だろう。事実、マイナスイオン効 果はあっても微々たるものでしかなく、本質的に意味がないことが 判明している"。そのことが科学者によって明らかにされるにつれ マイナスイオンを謳った商品は減少してきたようだ。

    例えば、最近宝くじの一億円以上の当選者が五〇〇〇人を突破し たという宣伝があった。ちょっと聞くと、実に多くの人が幸運に恵 まれたと錯覚するから、自分も宝くじを買おうという気になってし まう。しかし、これは戦後六〇年の間の全ての宝くじの当選者数を 足したもので、数だけ聞かされると大きいが、長い期間の積分なの である。その間に恐らく何十億という人が宝くじを買ったであろう ことは省かれている。あるいはまた、人生を一〇〇年と言うか、 万六五〇〇日と言うか、三一億五〇〇〇万秒と言うか、さてどれが 一番短く感じられるだろうか。

    実数を比較するだけでは間違うことになる。同じような例で、子ど もを虐待する母親の実数の三分の二は実母で、継母は三分の一しか いなかったというデータを発表し、「実母の方が危険」と書いた新 聞記者がいた。児童相談所に届けのあった数の比がそうであったた めだ。しかし、虐待をしていない母親の数を比べると圧倒的に実母 の方が多い。すると、割合から言えば継母の方が虐待確率は高いの である。実数と割合を区別せず、事実を逆様に報道したのだ。

    日本の一年間の自殺者が三万人を越えていて、実に深刻な事態に なっている。しかし、せっぱ詰まった感じを与えないのはなぜなの だろうか。これを、小さな都市の全人口が消えてしまうとか、東大 の全学生がいなくなるとか、東京ドームの観客がすべて死んだとい うふうに表現すれば、その深刻さが少しは実感できるかもしれな い

    情報を得るにしても「お任せ」の態度ではないだろうか。テレビや新聞、そして今や インターネットから情報を得ることが多くなっている。しかし、果たしてその情報が正 しいと言えるのだろうか。むろん、私たちは独力ですべての情報を収集して真偽を確か めることができないから、それらのメディアに頼らざるを得ない。であるからこそ、 いっそうメディアの言うことは眉に唾をつけて受け取らねばならないのだ。複数のメ ディアを比較したり、メディアでは報じられない事実を探ったりする努力が必要なので ある。

    最近、親の小中学校への見方も変わりつつあると言われる。家庭ですべき躾や日常 生活で獲得すべき知恵も、全て学校で教えることを要求する親が増えているようなの だ。教育の「お任せ」化である。果ては、親の勝手な都合を先生に押し付けて平然とし ているらしい。それでは先生の身体がいくつあっても足りないだろう。事実、家庭から の無理難題に耐えられず心身のバランスを崩す先生が続出している。普通、学校と地域 と家庭が力を合わせて子どもを見守らないと教育効果が上がらないと言われる。しか し、地域は都会化の進行で分断されて機能しなくなり、今や家庭も学校に「お任せ」し てしまう体質になって、学校だけが教育の場になってしまった。それでは学校も悲鳴を あげるしかない。

    科学の修練には積み上げが必要であり、それには長い訓練の時間を要する。基礎的な 学習から自立まで、数年間の訓練を経なければならないからだ。ところが、インター ネットによって「瞬間」で世界とつながることに馴れると、時間を使う営みが時代遅れ に見えてしまう。疑いを持ち、考え得るすべての可能性を検討する時間を無駄とみな し、直ちにシロ・クロの決着を明確につける方を高く評価する。そうでなければチャッ トができないこともある。それは疑似科学との相性が良いことを意味している。インタ ーネットが現代科学の粋でありながら、科学の否定ともつながっているのは皮肉なこと である。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/705732

  • 近代の科学は今ここの現実にしか興味を持たない。科学の誕生前には現実には変えることが有ると信じられていた仮想がいつの間にか変わって、現実が変わると信じていた世界全てが否定されている。科学が進歩し続ける以上、昔のように待っている時間を仮想には使わず現実化していってしまうのだろう。

  • 前半は楽しい
    後半には疑似科学に騙されないための心構えが書いてあるが結局は、反証例を考えるクセをつけることだろう

  • これはナンだ、大槻センセの「最終抗議」の系譜だなあ。もう少し冷静でアップツーデートではあるけれど。

    スピリチュアル系のあれこれや、「水素水」などの科学の意図的な誤用、科学的知見のグレーゾーンを決めつけて乱用・悪用する、といった、現代社会に蔓延する「疑似科学」を分類し、それぞれをあげつらう本。

    カルト教団やサプリまがいなど実害の発生しそうなものへの警告は分かるが、それらの担い手(送り手・受け手両方)はこういう本には目を向けないだろうし、目を向ける人にとってはいささか世知辛い議論になっている。

  • 娘の高校入学前の課題図書

    せっかくなんで、読んでみた。
    娘は何を信じればよいか、疑い深くなったとの感想。

    p67 ホーソン実験の延長で、社長の命令で成績アップみたいなのも、命令すれば成功するみたいに、ワンマン社長に起こりやすいとあり、あらま、それはそうかもと。社長に限らず、オーダーしてお仕舞い、という勘違いは、根強く蔓延るのだなあと。

  • 世の中にはびこる様々な疑似科学について解説し、そこに嵌らないための対策を紹介している。

    疑似科学とは、一見科学的な装いをしていながら非科学的なものやそれを利用した手口を意味している。本書では疑似科学を大きく3つに分類して、説明している。

    《第一種疑似科学》
    精神的、心理的なもの。占い、超能力、スピリチュアル、「疑似」宗教など。

    《第二種疑似科学》
    科学を悪用・誤用したり、科学的な装いをしていながら実体のないもの。「水の記憶」、「マイナスイオン」、統計の操作など。

    《第三種疑似科学》
    「複雑系」であるために現代科学では完全に説明が付かないものへの対応。環境問題での地球温暖化と二酸化酸素の話など。

    それぞれについて、どういうものか、特徴、成り立ち、陥るポイントなどを解説している。そして、疑似科学に嵌らないためには、正しく疑う心を持って、自ら考えることが重要であるとしている。

    特に否定すべき内容はないのだが、インパクトが弱い。「疑似科学とはこういうものです。皆さん、気をつけましょう」的な感じで終わってしまっている。

  • 【要約】


    【ノート】

  • ▼福島大学附属図書館の貸出状況
    https://www.lib.fukushima-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/TB90186039

    例えば福島第一原発事故後の健康を巡る「科学的(とされる)」言説のような,科学の問題ではあるものの,科学だけの問題ではない類の問題に係る言説を読み解くにあたり,一つの重要な視点を与えてくれる良書。もし,この本が原発事故前にベストセラーになっていたら,事故後に「科学的」言説が引き起こした混乱のうち,かなりの程度は生じなかったことであろう。「学問の府」であり「科学の砦」である福島大学が事故後に学長名で発信したメッセージの「疑似科学性」も,即座に看破されていたはずだ。今からでも遅くない。この本を,まずは,福大生必読の書としよう。同種の事件は,おそらく,また起こるだろうから。

    (推薦者:共生システム理工学類 永幡 幸司先生)

全90件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1944年兵庫県姫路市生まれ。京都大学理学部物理学科卒業後同大学大学院へ。1975年に理学博士。北海道大学助教授、国立天文台、名古屋大学大学院の教授を経て現在名古屋大学名誉教授。観測データを用いて宇宙の進化を理論的に解明する研究を行う。『寺田寅彦と現代』(みすず書房)『ふだん着の寺田寅彦』(平凡社)など寺田寅彦に関する著書を発表。『科学と科学者のはなし』(岩波少年文庫)『なぜ科学を学ぶのか』(ちくまプリマー新書)など高校生向きの本もある。

「2021年 『寺田寅彦と物理学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

池内了の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有川 浩
J・モーティマー...
村上 春樹
サイモン シン
村上 春樹
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×