ジャガイモのきた道: 文明・飢饉・戦争 (岩波新書 新赤版 1134)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004311348

作品紹介・あらすじ

栽培面積では全作物中、第四位のジャガイモ。南米で栽培種として誕生した後、どのようにして世界中に広がり、人々の暮らしにどんな影響を与えてきたのか。アンデスの農耕文化を中心に、四〇年にわたってヒマラヤ、アフリカ、ヨーロッパ、日本で調査を続けてきた著者が、ジャガイモと人間の関わりに秘められた歴史ドラマをつづる。

感想・レビュー・書評

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  • 大抵の野菜の原種は食べにくい(えぐみが強かったり、有毒だったり)ものであったというのは、ゲッチョ先生ほかいろいろな本で読んで知っていたし、アイルランドのジャガイモ飢饉も、小説に描かれたりしているので知っていたのだが、そういう断片的な知識がこの本で繋がった。
    古代アンデスの人々がいかに苦労して(他に食べ物がなかったためではあるが)有毒で、小さくて、水分の多い(つまり保存に向かない)ジャガイモを食べられるようにしたかというところは、胸打たれる。原種のジャガイモの写真が載っているが、本当に小さくて(大きめのビー玉程度)、これを食べざるを得なかった苦労を思う。
    アンデス高地は寒冷で乾季もあるため、いわゆるイモ(地下茎や根に養分を貯蔵する塊茎や塊根をつくるもの)類が他にもいろいろ あること。ジャガイモの液胞にソラニン(100g中100mgもあり。栽培種は20mg以下。)があることを経験的に理解し、毒抜きの方法を学ぶ。具体的には凍らせて水を抜き、乾かすフリーズドライ製法。これで長期保存が可能となる。毒が抜けて保存出来れば他のイモ類より良い、ということになる。同時にイモが大きくなり、毒が弱いものを選んで種をとり、栽培し、というドメスティケーションを数百年から数千年続ける。気が遠くなる。
    今私たちが気軽にジャガイモを食べられるのは、古代アンデスの人々の苦労があったからなのだ。ありがたや。
    ちなみにフリーズドライで保存できるジャガイモはチューニョと呼ばれ、今も作られている。食感はジャガイモと全く違うらしい。
    他にもジャガイモ飢饉を含め、ジャガイモが世界に伝播していく過程、世界での栽培の様子など、興味深い内容だった。
    著者は1984年から3年間ペルーに住み、インカ帝国の末裔、ケチュア族の村でフィールドワークを行ったが、当時でも30種類を超える品種のジャガイモが作られていたという。ジャガイモ飢饉を持ち出すまでもなく、あらゆる病害虫に耐えられるように、飢えないように、という工夫ではあるが、実際には収量は極めて低い。先進国企業が作った収量の高い改良品種や、それを栽培するために必要な農薬を買うお金がないため、仕方なく在来種を栽培していたのだ。
    その後治安が悪くなり、著者は現地での研究を断念したが、10年後、政情が安定してから再び訪れると、貨幣経済が浸透し、ケチュア族も改良品種を栽培するようになっていた、とある。ケチュア族の人々の生活は良くなったのだろうが、多数の在来種が消えたのではないか。それは人類にとっては損失ではないのかと『タネの未来』を読んだので危機感を抱いた。
    それにしても、油で揚げたりマヨネーズやバターをつけたりしなければ、ジャガイモは米や小麦よりビタミン、ミネラル、タンパク質が多く、食物繊維豊富で、低カロリーと著者は絶賛するのだが、そういう調理法が美味しいんだよね、ジャガイモは。アンデス高地の農民は一回に1kgのジャガイモを食べ、頑健だとあるけど、何もつけないジャガイモをそんなに食べられません。米や麦にアレルギーのある人はジャガイモを主食にすると聞いたことがあるから、慣れの問題だろうけど。

  • 南米アンデス原産(山岳地帯)のジャガイモが、ヨーロッパ人によって「発見」され、その後、ヨーロッパ大陸、ヒマラヤ、日本の食と文化をどう変えたかについて、筆者のフィールドワークによる研究結果を交えた一冊。
    最後に年米アンデスの原住民と生活におけるジャガイモの関係で終わるのも、円を描いているようで、おもしろい。

    アンデスに驚くほどの種類のジャガイモがあること、それが高低差を利用して非常に効率的に栽培されていることや、世界を通じて、ジャガイモが人類社会に及ぼす影響が大きいことを知ることができる1冊だった。

    良書。

  • 穀物が文明を作り、ジャガイモでは文明は作られないという研究者が多い中、人々の暮らしを支え続けてきたジャガイモに焦点をあてる。インカ帝国時代のアンデスで毒素を軽減されたジャガイモが生まれてから世界各国にどのように広まっていったかを紹介する。欧州では当初、聖書に現れない植物であるが故に、上層階級に忌み嫌われたが、庶民には重要な食料としてすぐに広まった話などは興味深い。日本でも戦時中は食糧はイモしかなかったために体験者はイモを嫌う人が多いとか。

  • 開発目標2:飢餓をゼロに
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac.lib.setsunan.ac.jp/iwjs0021op2/BB99077239

  • 616
    [栽培面積では全作物中、第四位のジャガイモ。南米で栽培種として誕生した後、どのようにして世界中に広がり、人々の暮らしにどんな影響を与えてきたのか。アンデスの農耕文化を中心に、四〇年にわたってヒマラヤ、アフリカ、ヨーロッパ、日本で調査を続けてきた著者が、ジャガイモと人間の関わりに秘められた歴史ドラマをつづる。]


    目次
    はじめに ジャガイモと人間の壮大なドラマを追って
    第1章 ジャガイモの誕生―野生種から栽培種へ
    第2章 山岳文明を生んだジャガイモ―インカ帝国の農耕文化
    第3章 「悪魔の植物」、ヨーロッパへ―飢饉と戦争
    第4章 ヒマラヤの「ジャガイモ革命」―雲の上の畑で
    第5章 日本人とジャガイモ―北国の保存技術
    第6章 伝統と近代化のはざまで―インカの末裔たちとジャガイモ
    終章 偏見をのりこえて―ジャガイモと人間の未来

    著者等紹介
    山本紀夫[ヤマモトノリオ]
    1943年大阪市生まれ。国立民俗学博物館名誉教授。京都大学卒業。同大学院博士課程修了。農学博士。民俗学、民族植物学、山岳人類学を専攻。1976年より国立民族学博物館に勤務。1968年よりアンデス、アマゾン、ヒマラヤ、チベット、アフリカ高地などで主として先住民による環境利用の調査に従事。1984~87年には国際ポテトセンター客員研究員

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1000197006

  • 2022/06/24
    じゃがいもの観点から世界の人々の生活を見てみた一冊。
    じゃがいもがアンデス地方発祥というのは起源や歴史に残る事実として広く知られているが、どうしてアンデス地方だったのか、じゃがいもの普及が世界の人々の生活をどのように変えたのかと言うシンプルに思えて実はとても複雑な歴史や国のことなどがこの本を一冊読むだけでとてもよくわかります。
    また、じゃがいもと人の農耕の歴史を紐解いていくと、じゃがいもを栽培しても危機的状況の飢饉になったアイルランドがある一方で、なぜアンデス地方では500年以上にわたってじゃがいもの高地栽培が続いているのか、ペルーのじゃがいも栽培には現在(当時)で何か課題はないのかなど、深く考えていけばいくほどいろいろな視点から人とじゃがいものつながりや関わりを検証することができるのだなあということも知れました。

  • アンデスの高地の文明はトウモロコシではなく、ジャガイモで支えられていた。毒消しのための加工が水分を減らしジャガイモの長期貯蔵を可能にしたからである。

  • フライドポテト、ポテトチップス、ポテトサラダ。様々な形で私達の胃袋を満たしてくれるジャガイモ。
    その栄養価の高さのわりに「主食」扱いされていないことは、もしかしたら不当な評価なのではないか。本書を読むと、そのような気持ちさえこみ上げてくる。

    様々な国でジャガイモが受け入れられるきっかけになっているのが「飢饉」のような危機である、というのはなんとも示唆に富んだ出来事だ。
    窮地に追い込まれてからでないと、なかなか変化を受け入れたくないという人間の有様が凝縮されたようなエピソードだ。

  • [評価]
    ★★★★★ 星5つ

    [感想]
    以前にもジャガイモに関する本を読んだことがあるが、そちらと比べるとジャガイモが各地域でどのように扱われたのかが書かれている。
    しかし、驚いたことにジャガイモでは文明を生むことはできないと認識されていたことだ。現代でジャガイモが世界中に普及していることを考えると非常に意外だった。
    もうひとつ驚いたこととしてはジャガイモがアラスカでも栽培され、主食となっていることだ。ジャガイモが南米産であることを考えると地球上をを半周に迫るぐらい移動した食材が主食となっていることに驚いた。
    終章のジャガイモに対する偏見というのは自分も同じような偏見を持っている部分もあり、ジャガイモに対する認識を改める良い機会になったよ。

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著者プロフィール

1943年生まれ。京都大学大学院博士課程修了、農学博士。現在、国立民族学博物館教授、総合研究大学院大学併任教授。専門は民族学、民族植物学、山岳人類学。1968年よりアンデス、アマゾン、ヒマラヤ、チベット、アフリカ高地などで主として先住民による環境利用の調査研究に従事。1984〜87年にはペルー、リマ市に本部をもつ国際ポテトセンター社会科学部門客員研究員。主な著書に『インカの末裔たち』(日本放送出版協会、1992年)、『ジャガイモとインカ帝国』(東京大学出版会、2004年)、『ラテンアメリカ楽器紀行』(山川出版社、2005年)、『雲の上で暮らす——アンデス・ヒマラヤ高地民族の世界』(ナカニシヤ出版、2006年)、編著に『世界の食文化——中南米』(農産漁村文化協会、2007年)。アンデス・ヒマラヤにおける高地民族の山岳人類学的研究により今年(平成18年)度の秩父宮記念山岳賞などを受賞。

「2007年 『アンデス高地』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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