- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004311416
作品紹介・あらすじ
午門から太和殿へと連なる壮大な権力装置としての宮殿群、皇帝の執務や生活の場であった乾清宮や養心殿、后妃の生活した東西十二宮…華麗な色彩にいろどられた宮殿群を現代の参観コース順にたどりながら、黄金色に輝く屋根の下に秘められた栄光と悲惨の歴史を解き明かす。まったく新しい発想にもとづいた故宮ガイド。
感想・レビュー・書評
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紫禁城の各宮各殿を具に辿っていくことでこれほど手際よく清朝中国史を概観できるものなのか。文体は簡潔で歯切れよくとても読みやすい。
中心となるのは紫禁城を「征服した」と著者が語り増改築が繰り返された西太后の時代。その前にドルゴンから道光帝に至る隆盛期の清がコンパクトに語られ、晩清に繋がる流れが明瞭になった。清朝と紫禁城のダイナミックな歴史を眺めた後だと、溥儀の紫禁城追放はいかにも侘しく映る。
北京故宮訪問はまだ叶わないでいるけれど、どれだけ本を読んでも、実際に訪れてあちこち見て回っても、この宮城の全貌をつかむことなんてできないのだろう。本を読んでますます行きたくはなっても、何一つわかった気がしない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/705795 -
建築物の説明と共に、皇族を中心とした清朝史と言える。皇帝の住まいは乾清宮かと思っていたが、雍正帝以降は養心殿。皇太子にスパルタ教育を行って心身を歪ませた康熙帝、南巡に寧寿宮地域建設にとやり過ぎ乾隆帝、亡国の危機でも熱河に籠もっていた咸豊帝と、逸話には事欠かない。同治帝を見ると、幼少で即位するのは弊害が大きいと思わされる。戊戌変法は明治維新をモデルとしたが、当事者たちはその血みどろの前史を知らなかったようだ。
西太后時代は本書の半分弱を占める。光緒帝即位の理由付けなど政治介入はもちろんだが、西六宮の改築で東西のバランスを崩したことを著者は「伝統への挑戦」と呼ぶ。また東太后毒殺説をとる。
民国の溥儀時代の紫禁城では建福宮が燃えたほか、身分による住まいの厳格な格差という秩序が乱れたというのが、まさに王朝の衰退を象徴しているようだ。 -
古本で購入。
明末期の李自成の乱に乗じた清軍による北京入城から廃帝溥儀の退去まで、そしてその後の故宮博物院の開館を描く。
視覚化された権威そのものであり、その内部に複雑なヒエラルキーの構造を内包した紫禁城を、ひとつの「主役」としているところが特徴と言えるかもしれない。
朝廷に仕える女官(宮女)や宦官(太監)の制度や日常業務に触れられているのも、なかなかおもしろい。
基本的にはすっきりとした清史概説になっているが、所々に不親切な点もあって困ることも。
たとえば西太后が表舞台へ登場するくだり。
宮女選考試験「選秀女」に応募した葉赫那拉(エホナラ)氏こそ後の西太后なのだが、この後、帝位継承に絡むところで唐突に
「今や皇太后に昇格した載淳の生母・懿貴妃と~」
という文が出てくる。
葉赫那拉氏(西太后)=懿貴妃という繋がりがそれまでに全然出てこないので、やや面食らってしまうのだ。
筆者の引用する、1921年(大正)に中国を旅した芥川龍之介が『支那游記』で紫禁城について記した文が印象的。
「紫禁城。こは夢魔のみ。夜天よりも厖大なる夢魔のみ」
大宮殿が抱える光と闇の強烈なコントラスト、とそこに蠢く人間に興味がある人にはオススメできる1冊。
でも清史の概説だったら、同じく「紫禁城」をタイトルに冠した『紫禁城史話』(中公新書)の方がいいかも。 -
「紫禁城」をキーワードに清朝を読み解く。
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紫禁城に行ってみたいのですが、当面中国に行く予定がありません。
しかし、春に台湾へ行く予定なので、故宮博物館で清朝の雰囲気だけでも味わいたいです。 -
中国に行ってみたいです。
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たまたま北京に行くことがあって見学したので、無性にこの宮殿のことが知りたくなりまず読んでみた。
清朝と紫禁城の歴史の概略がとてもよくわかります。
[10.1.7]