仕事道楽: スタジオジブリの現場 (岩波新書 新赤版 1143)

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  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004311430

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  • 開始:20080814、完了:20080814

    スタジオジブリのプロデューサーである鈴木敏夫氏が語る宮崎俊と高畑勲像。それぞれのジブリ作品の裏話のようなものが描かれている。以下、気になった言葉。高幡さんという人のおもしろさにひかれ、用もないのに毎日行くようになりました。宮さんは岩波新書の中尾佐助「栽培植物と農耕の起源」の話ばかりしていた。彼らが読んできた本をひととおり読もう、わかってもわからなくてもいいから、ともかく読もう。そう思って機械あるごとに聞き出して、それを読むということをくりかえしてたんです。わかりもしないのに、わかったように相槌を打つ人。これは僕は弱さだと思う。知らなければちゃんと聞けばいいんです。これはジブリの新入社員にはいつも言うこと。自分のわからないときには相槌など簡単に打つものじゃないと思う。相槌を打つにはもとになる教養が必要、ベースが必要、データが必要。高畑さんは物事をなんでも原理原則に戻って考える人だから、これまでの常識とかみんながやっていた方法にはとらわえrない。考えながら勉強しながらだから話はぐたいてきになって素人にもわかりやすい。ぼくにとって大きな勉強になりました。つまりぼくは高畑さんからプロデュース業とは何かを学んだといってもいい。プロデューサーで一番大事なことは何ですか、高畑さんの答えは、それは簡単、監督の味方になることです、だった。ジブリとはサハラ砂漠に吹く熱風のこと。、日本のアニメーション界に旋風を起こそう、という意図。宮崎氏「いやしくも絵を描く商売をめざすならいろんなものに好奇心を持って、日常的に観察はしているものだというのです。その積み重ねこそが大切だというのです。」彼はほんとうに真剣に見る。彼はよく「企画は半径3メートル以内にいっぱい転がっている」という。ジブリでおきていることは東京でも起きている、東京で起きていることは日本中でおきている、日本中でおきていることはたぶん、世界でも起きている。好奇心旺盛、人間が好き。宮さんが言う映画づくりの3つの原則、①おもしろいこと、②作るに値すること、③お金がもうかること。映画とはまずおもしろくなければならない。次にいいテーマでなければいけない。最後に商売なんだから儲ければいい。トトロのときはこの原則をやぶった。彼は映画で儲からなくてもいいと思った。宮崎氏、女性を大事にするフェミニスト。ルパン三世を何歳と思うか。見る人にとって全然違うというのがおもしろい。子どもにはおじさん、10代には20代、20代には30代、あらゆる世代にとってすこし上に見えるんですよ。どんな世代にも見られるというのはすごい。信頼はするが尊敬はしないという関係。
    高畑さんは一回もジブリの正式なメンバーになったことはない。「ジブリを作るべきだ」言ったが自分がそこに参加するとは言ってない。ずっと「顧問」というかたち。ホタルの墓のB29の飛んでくる方向が気になる。「どこから飛んできたか?」当時の記録を全部調べる。方位・方角などもちゃんと正確。宮崎駿がいちばん作品を見せたいのは高畑勲。徳間、高畑、宮崎、尾形、みんな正直で、いたずらっ子で、言いたいことを言う。そしてアイディアマンである。何か共通項があある。いつもどこか野次馬。当事者なのに傍観者の立場に自分を置くというのか。ふつう野次馬というと悪い意味。でも僕は評価していい言葉だと思う。だいたい野次馬というのは好奇心旺盛でしかもけっこう正確に物事をとらえる。堀田善衛「広場の孤独」を読んだとき、第三の立場があるというのはいいな、と思った。日本テレビの氏家斎一郎さんは82歳でまだ好奇心にあふれていて「現代をとらえたい」の一点に集中。業界の常識として新商品の宣伝費は10億円必要。「ものの名前を覚えてもらうのに5億、それが何か知ってもらうのに5億」という。ぼくにはもともと「わからないものをわかるものに置き換えたい」という欲望がある。その手段として言葉が必要。地図が書けないというのは子どもたちが自分の生活している街に現実感がないということ。でも映画のなかの地図は喜んで書くし、正確。いいものを作るには小さい会社のほうがいいに決まっている。いいものが作れなくなったらジブリなどつぶしてしまっていい。ひとりの職業人になりなさい。どこでも通用する職業人。若い人に、ジブリにいるのが大事なんじゃない、重要なのはアニメーターとして通用するようになることだ。「十五少年漂流記」、それぞれが他人とは違った何かを持っていて、ひとりの落ちこぼれもリストラもださない。そういう集団。才能と誠実さのバランスは難しいけど、その両方が絶対に必要。お金のことを気にしながら作っていたら、ロクなものはできない。経営責任をとる社長とぼくらとは別にいたほうがいい。ぼくにとって何が楽しいといって人と付き合うことほど楽しいことはない。好きな人ととことん付き合う、好きな人に囲まれて仕事をする、これは最高じゃないですか。精神衛生上もいい。つねに念頭にあるのは「人」。「おちこぼれをつくらない」、「反対があるときは徹底的に説得する」、これを鉄則としてきた。僕は挫折感はない。何より目標がないんだから挫折がないのは当たり前。ぼくにはライバルだと思う人はいません。人をそんなふうに捉えない。好きな人と好きなことをやってそして好きな人だからいっしょにいい仕事ができた、ということ。好きな言葉「道楽」。仕事道楽。

著者プロフィール

スタジオジブリ代表取締役プロデューサー。1948年、愛知県名古屋市生まれ。
徳間書店で「アニメージュ」の編集に携わるかたわら、1985年にスタジオジブリの設立に参加、1989年からスタジオジブリ専従。以後、ほぼすべての劇場作品をプロデュースする。宮﨑駿監督による最新作『君たちはどう生きるか』(23)が、米・ゴールデン・グローブ賞のアニメーション映画賞を受賞した。「仕事道楽 新版──スタジオジブリの現場」「歳月」(ともに岩波書店)、「スタジオジブリ物語」(集英社)など、著書多数。2021年、ウィンザー・マッケイ賞を受賞。

「2024年 『鈴木敏夫×押井守 対談集 されどわれらが日々』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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