空爆の歴史 終わらない大量虐殺 (岩波新書 新赤版1144)

  • 岩波書店 (2008年8月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784004311447

みんなの感想まとめ

空爆の歴史をテーマにしたこの書籍は、過去から現代に至るまでの空爆の進化とその背後にある理論的な枠組みを丁寧に整理しています。特に、空爆がどのように正当化されてきたのか、その変遷を追うことで、戦争の論理...

感想・レビュー・書評

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  • 空からの爆弾投下や戦闘機による爆撃。地上では狙われた標的物が手の届かない機体から放たれる機銃掃射や爆弾により破壊される。至近距離から狙いを定めて打つのに比べ、高速移動しながら遥か離れた位置にある標的に向かって重力に任せての爆弾投下は、相当に慣れたパイロットであっても難しかった。地上を流れる風の強さ、時には高高度からは標的は雲に阻まれ目視ができない。日本が戦争に敗れた80年前。国内の100万人近い人口が密集する主要都市の多くは、アメリカの新型爆撃機B29による空襲で破壊され尽くした。東京、横浜、大阪、名古屋、福岡、そして工業地帯の広がる川崎。これらの都市以外にも終戦までには横須賀や北九州、富山など数十の都市が空襲被害にあり、空襲警報と共に防空壕に避難する経験は戦前生まれの多くが持つ経験だ。私も幼い頃に田舎に帰省した際にはいくつか家の周りに掘られた防空壕の入り口から、恐る恐る中を覗き込んだ事を思い出す。
    空爆の歴史は第一次世界大戦より始まる。当時は飛行技術自体が現代と比べて貧弱なものであったから、空から手榴弾を始めとする簡易的な爆弾を兵站を狙って投下するなど被害はかなり限定された。とは言え人命に対する被害がゼロではなく、何より防御が難しい空から雨のように降り注ぐ爆弾は、地上の兵士や民間人に対する恐怖心を植え付けるには十分であった。その後、飛行技術の進歩=推進力の向上は搭載可能な爆弾の量、威力を増加させ兵器としての有効性を飛躍的に上昇させる。空爆が戦争の行方を左右するほどのゲームチェンジャーになっていく。
    本書はそうした空爆の進化の歴史を辿ると共に、それに伴う被害の大きさや、人道に反する行為として成立していく空爆規定などを振り返る内容となっている。第二次世界大戦の訓練的な位置付けでドイツ空軍が関与したゲルニカの空爆、ドイツによるイギリス本土爆撃、日中戦争や太平洋戦争に於ける日本の中国の爆撃など、主要な空爆の歴史を辿りながら、その非人道的な行為(化学兵器の投下含む)としての空爆を見ていく事になる。そして、日本敗戦の要因となった東京大空襲を始めとした各都市への攻撃、原子爆弾の投下と、時代を経ていく中で十万人以上の人命と都市文明そのものを破壊し尽くす空爆へと進化していく。その過程には様々な政治的背景と研究の繰り返しが存在し、最早、効率的に「人間の数を減らす」手段として暴走を始める単なる計算式としての空爆。
    その後も現代に至るまで、クラスター爆弾や劣化ウラン弾使用の禁止など、一定程度の抑止が加えらるものの、その規定すら無視されながら繰り返される空爆。本書は朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、アフガニスタン紛争など戦争の歴史自体を振り返る内容となっているが、その被害が常に無辜の市民に集中する事を教えてくれる。兵器・戦術としての発展は確かにあるものの、ガザやウクライナ市民が泣き叫ぶニュース報道を見ながら、自国の兵士を守るため、戦争を早期に終わらせ、全体の人命損傷を抑えるために、攻撃決定者の頭の中で常に繰り返される計算がある事を想像して止まない。そこには被害者が恐怖に怯えながら空を眺める気持ちは微塵もない事を改めて感じた一冊。

  • 飛行機の開発、ドゥーエの航空万能論から始まり、総力戦体制下における無差別爆撃、そしてそこからの進化という空爆の歴史的展開をまとめた本。空爆というテーマにしぼって近現代戦争史を鳥瞰する本は珍しい。

  • 主に時系列で空爆そのものの歴史や時代背景を踏まえた理論的整理、国際的規制の枠組み等が解説されている。空爆の特徴は過去から現代まで変化し続けていることがよくわかったし、爆撃する側の主張も変わり続けているが結局攻撃を何らか正当化さえできればそのロジックは何でもいいのだろうこともまたよくわかった。考えれば当たり前なのだが。テーマが重いこともあってか特に前半がなかなかペースよく読み進められない…。

  • 「歴史の考え方」(岩波新書)で解説された本の1冊である。日本の空爆と原爆投下についても詳細に書かれている。米国が記録にも残すことなく原爆を投下したこと、日本は原爆投下の影響ではなく、ソ連の参戦で日本が社会主義化されて天皇制が護持されなくなることが書かれている。そして、米国が日本の天皇制を護持することで、無条件に敗戦を受け入れたと説明している。大都市空襲では軍事施設ではなく、労働者を含む住民を積極的に殺すという米国の目的が説明されていた。最後の方に米国から古いクラスター爆弾を売りつけられた自衛隊がまだ処分をしていないということで話が終わったいる。クラスター爆弾の不発は10%であるということも説明されていた。その後どうなったのであろうか。
     日本の空襲や原爆問題を考える歴史教育のためには必読書であろう。
    3101冊目の記念すべき読書記録である。

  • 非人道性とその隠蔽、背景にある差別意識。現在まで何も解消されていない問題について考えなくてはならない。

  • AS5a

  • さすがに歴史といっても20世紀以降になる。
    当然、飛行機を有する国が行うことになるので、軍事テクノロジーの格差を見せつけるのが空爆になる。さらに当初から無差別の被害をもたらすもので、人道的には最悪としか言えない。軍が声高にいう「ピンポイント爆撃」なんて紛い物にしかすぎない。「戦略爆撃で無差別に攻撃し継戦意欲を奪う」ってのが空軍の戦略思想だけど、実はこれに成功したことはない。憎しみが募るだけ。人間の愚かさが際立つばかりだ。驚いたのは、日本がクラスター爆弾を保有してるってこと。いつ使う前提なんだろう?

  • 空爆を一般住民に対するテロとして位置づけたうえでその通史を概観する。

  • 第1章 二〇世紀の開幕と空爆の登場―幻惑された植民地主義
    第2章 「ファシズム時代」と空爆―無差別爆撃を許す「文明世界」
    第3章 総力戦の主役は空戦―骨抜きにされた軍事目標主義
    第4章 大量焼夷攻撃と原爆投下―「都市と人間を焼きつくせ」
    第5章 民族の抵抗と空戦テクノロジー―「脱植民地」時代の空爆
    第6章 「対テロ戦争」の影―世界の現実と空爆の規制

    著者:荒井信一(1926-、東京、日本史学者)

  •  アフガニスタンにおける国境なき医師団の施設の誤爆問題で、アメリカ軍はけしからんと思っている人たちに是非読んでいただきたい。
    空爆とは、プロペラ機から手榴弾を投げることから始まった第一次世界大戦当時から、一般市民をも標的に含んだテロ的側面が想定されていたことがよくわかる。
    つまり、軍事施設だけをねらって攻撃を行うが、不本意ながら、稀には民間人への被害が起こることもあるという嘘に100年間だまされ続けている愚民=俺たちってこと。
    自分の頭で考えるクセをつけなきゃ、いつまでも時代や、いわゆる指導者に翻弄されますよ。

  • 空爆の歴史を追う。日本以外のことも詳しく
    あるが・・・ただ筆者はひどく偏向ががかってる。

  • 感想未記入

  • [ 内容 ]
    ヨーロッパ諸国による植民地制圧の手段として登場した空爆は、現代にいたるまで、戦争の中心的な役割を果たし、その“負の発展”を支えてきた。
    加害の側の力の圧倒的な優位性を背景に、とめどなく繰り返されてきた破壊と虐殺の実態を追究。
    「早期に戦争が終結できる」など、脈々と受け継がれてきた正当化論の虚構を浮き彫りにする。

    [ 目次 ]
    第1章 二〇世紀の開幕と空爆の登場―幻惑された植民地主義
    第2章 「ファシズム時代」と空爆―無差別爆撃を許す「文明世界」
    第3章 総力戦の主役は空戦―骨抜きにされた軍事目標主義
    第4章 大量焼夷攻撃と原爆投下―「都市と人間を焼きつくせ」
    第5章 民族の抵抗と空戦テクノロジー―「脱植民地」時代の空爆
    第6章 「対テロ戦争」の影―世界の現実と空爆の規制

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  • 分類=戦争・空爆。08年8月。人殺しをするのに何でもありになってしまった、人間のたがが外れた1コマです。

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