アフリカ・レポート: 壊れる国、生きる人々 (岩波新書 新赤版 1146)

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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004311461

感想・レビュー・書評

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  • アフリカが独立を果たしてからしばらく時間がたつ。しかし、すべての国が順調な発展を遂げているわけではない。何が起こっているのか。

    著者は、アフリカの国々を以下のような視点で見ている。
    ①政府が順調に国づくりを進めている国家―ボツワナぐらい
    ②政府に国づくりの意欲はあるが、運営手腕が未熟なため進度が遅い国家―ガーナ、ウガンダ、マラウィなど10カ国ほど
    ③政府幹部が利権を追い求め、国づくりが遅れている国家―アフリカでは一般的で、ケニア、南アフリカなどの多くの国
    ④指導者が利権にしか関心を持たず、国づくりなど始めから考えていない国家―ジンバブエ、スーダン、ナイジェリア、赤道ギニアなど

    利権にしか関心がない国では、国民のために使われるお金を役員がどこかで横取りしてしまっている。
    治安、医療、衛生、すべてが不安定で、犯罪が多発する。教育も行き届かず、国民の生活レベルは上がらない。

    外部からの支援も、「与える」だけでは意味をなさない。支援が終わったらまた元に戻るから。
    外部のサポートで、「自分たちが頑張る」ように整えると、支援が終わってもその状態を維持できる。

    まさに、心理学でいう外発的動機づけと内発的動機づけの違いだと思った。

    国が貧しいと、若者が絶望して国外に出ていく。そうすると、ずっと国は良くならない。
    希望を持てる国、そのためには自分たちが頑張れば報われるという状況を作ること。
    わかりやすくまとまっている良書であった。

  • 日本やパリで生きるアフリカ出身の移民の話が最も印象深かった。アフリカ各国の政治、官僚の腐敗は言わずもがななので。

  • まだ中学生だった私に強烈な印象を与えた、朝日新聞の「カラシニコフ」という連載を執筆したのと同じ著者によるルポ。
    一応地理選択で地理は得意だったのですが、アフリカってあまりイメージが無くて、一括りに広大な自然があって技術力はあまりなくてでも地味に高層ビルが建っているような都会もある、くらいにしか知らなかった。あとは1960年ごろにたくさんの国が旧宗主国であるヨーロッパの国々から独立したことくらい。人々がどうやって暮らしてるとかあまり知らなかったので、そういうのを垣間見えるかなと期待して読みました。
    実際に読んでみると、多くは「苦しむ」アフリカの人々をクローズアップしていて、まあタイトルに「壊れる国」とあるのでそういった国だからこそなんだろうけど、ほんまにそんなに悲惨なのかとちょっと懐疑的になってしまいました。
    中国人移民の話はまったく知らなかったので非常に興味深かった。
    ジンバブエのインフレといえばit's cheaper to print this on money than paperのイメージが強烈。

  • 亀井さんの「アフリカのろう者と手話の歴史」をまだ読んでいる最中なんですが、書店で見かけて読み始めたら面白くて先にこちらを読み終えてしまいました。
    著者は元朝日新聞の記者さん。
    岩波書店サイトの要約には、
    「豊かなジンバブエの農業を10年で壊滅させ、アパルトヘイトを克服した南ア共和国を犯罪の多発に悩む国にしたのは誰か。中国の進出、逆に国を脱出するアフリカ人の増加などの新しい動きを追い、同時に、腐敗した権力には頼らず自立の道を求めて健闘する人々の姿も伝える。30年にわたるアフリカ取材経験に基づく、人間をみつめた報告。」
    とあります。亀井さんの著書を読んで、アフリカに関心を持つようになった私は、「植民地時代の陰が今のアフリカ社会に影響を及ぼしているのだろうな」くらいに考えていたのですが、「独立」からまもなく「独裁」へと突き進んでしまった、しかも独立を担った人たち自身が権力の座に着いたとたんに腐敗へと進んでいったという現実にちょっと衝撃を受けました。
    books117

  • 無知は恥ずかしい!!もっと知らないと!!

  • アフリカの現状が分かる入門書。一般的にアフリカの貧困は植民地時代の後遺症であると、私自身認識していたが、アフリカ各国の政府の無策にも原因はあると本著では主張されている。その例としてジンバブエや南アがある。これらの背景を認識したうえで先進国はどのような援助をアフリカに対して行う必要があるのか考えさせられる本である。

  • ジンバブエ、南アフリカ、ケニア、ウガンダ、セネガル。
    パリ、歌舞伎町でのアフリカ人についての報告もある。
    「レイシスト」とは何であるかの説明がわかりにくい。
    産業や生活の記述があるが、方向性が見えない。

    新聞社のアフリカ取材の一部を切り出したためだろうか。

    アフリカの息吹は感じることができる。
    大地から響くような。

  • ▼さすがジャーナリストの方が書かれた文章である。現地での取材に基づいた事実が、アフリカの「いま」を浮かび上がらせている。
    ▼確かに、国境や国家といった概念に馴染まない部族社会地域を植民していったのはヨーロッパ列強である。しかし、だからといって「独立」まで果たしたアフリカ諸国に、今さらそれをなかったことにしろとは言えないだろう(と、言いつつも、新たな「独立国」を目指す機運は絶えないが)。
    ▼そんな中、政府の無能(行政の不在・非効率)にはやるせなさを感じずにはいられない。結局、植民地時代の方がマシだった……なんて、笑えない、しかしそれが現状なのだ。
    ▼ちなみに「レイシズム」というタームで事あるごとに反論される方々がいらっしゃるようだが、まさに切り崩すべきは彼/彼女らであり、どんなにちっぽけなことに思えても、私たちがすべきことは、壊れる行く国の中で、必死に生き抜こうとする人々を理解し、励ましていくことなのだと思う。

  • アフリカの現実が分かる本。R25に載ってて、そのまま買った。買ってよかった~。続編出ないかな。

  • アフリカについて知りたくて読書。

    昨年のW杯開催で注目された南ア。その後はどうなっているのだろう。何かのドキュメンタリーで、南ア北部の国であるジンバブエの常軌を逸したインフレと経済破綻。そして、難民が南アへ流入している現状を見たことがある。そして、その流入したジンバブエ人を低賃金労働者として受け入れる南ア政府の政策。それが要因となり治安悪化と失業率悪化で、南ア国民の移民に対する嫌悪感と募る不満。

    日本からはアフリカは地理的にも、心理的にも非常に遠い。ニュースで報じられるコソボの海賊、難民問題。今年、分離独立を果たした南スーダン。そして、現在紛争中のリビア。増え続ける中国系投資と移民。10年後には、アフリカ諸国はチャイナタウンだらけになるのではないかと思われる。

    そんなアフリカ諸国に未来はあるのかと感じてしまう・・・・・。

    本書では、政治の腐敗と公の欠如が大きな要因と紹介されている。ジンバブエのムカベ大統領など独裁者が国を所有物くらいにしか思っていないトップが多い。しかし、根本的な要因は、ヨーロッパ諸国の分割植民地時代にすべての文化を破壊させたこともあると思う。つまり、教育、インフラ、制度などの基礎が存在しない。不幸だと思う。

    将来の希望として、最終章で民力の注目している。特に30年後のための教育が重要だと改めて思う。

    読書時間:約50分

    本書は友人Kさんからいただきました。どうも有り難う。

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