好戦の共和国アメリカ―戦争の記憶をたどる (岩波新書)

著者 : 油井大三郎
  • 岩波書店 (2008年9月19日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004311485

作品紹介

植民地・建国期から、二一世紀の対テロ戦争・イラク戦争に至るまで、戦争を繰り返してきたアメリカ。デモクラシーの先駆者を自負する国が、時として、戦争へと前のめりに突き進んでしまう。この好戦性はどこから来るのだろうか。戦争とその記憶の変遷を通史的にたどりながら、アメリカにとっての戦争の意味を考える。

好戦の共和国アメリカ―戦争の記憶をたどる (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • 名著、いや、おもしろい。その一言に尽きる。

  •  アメリカが建国してから、2001年のテロを経てアフガン戦争、イラク戦争に至るまでの様々な戦争とその記憶の変容を解説した本。戦史、という切り口から迫ったアメリカ政治の通史。
     「なぜデモクラシーを標榜するアメリカが戦争好きなのか」というテーマで書かれた本で、各時代によって戦争の意義が変わっていったのが分かる。南北戦争の悲劇性というのがよく分かった。また、第二次世界大戦が「よい戦争」として記憶されている、というのも興味深い。そこからベトナム戦争が「史上初の敗戦」として記憶され、そういったことが現在のイラクの情勢に影響を与えているという流れがよく分かる。この本は、オバマが大統領になる前の選挙戦のところで終わっていて、もっと先が読みたい気になる。(14/01/24)

  • アメリカの戦争の記憶(歴史)を辿るという副題がついていますが、この本はアメリカが植民地時代から現代までの400年間にわたって、戦争をすることで国が栄えた歴史を解説しています。

    シェールガス革命が進行中のアメリカでは今後状況が変わる可能性もありますが、最近までは軍事産業がアメリカの景気を牽引してきたように思います。戦争をし続けないと繁栄が保てないのは少し悲しいような気もします。

    この本を読んで、アメリカが植民地時代から第一次世界大戦あたりまで、新興国から先進国へステップアップする間の様子が詳しく書かれていて、今のアメリカのベースを得られたような気がしました。

    以下は気になったポイントです。

    ・イギリス本国でも君主の統制下にあった常備軍とは別に「民兵制」の伝統があったので、植民者もそれを維持することに抵抗感はなかった(p4)

    ・英仏間で植民地戦争が多発するようになると、各部族は英仏それぞれと同盟して戦った、仏領の場合は、貿易関係にあったが、英領の場合には、土地を所有する欲求が強く衝突が多かった(p5)

    ・16世紀末からイギリスは航海条例を制定して、植民地と本国の貿易を自国船で独占しようとした、その結果、自由貿易を主張するオランダと対立、1650-70年代にかけて3回、英蘭戦争が勃発、勝利したイギリスが制海権を得た(p13)

    ・アメリカの独立戦争時、イギリスの人口は800万人に対して、アメリカは250万人に過ぎなかった(p24)

    ・1778.2に、アメリカの独立を承認して、英仏同盟が締結、1778.6には英仏間で海戦勃発、フランスにとっては、7年戦争の敗北に対する報復戦の始まり、1779.6にはスペインも対英参戦した(p29)

    ・1783.9.3にアメリカ独立を承認する講和条約が締結、アメリカが主張したカナダ併合は拒否されたが、ミシシッピ以東の土地をイギリスは譲渡した(p32)

    ・独立戦争に動員された正規兵と民兵の合計は1.0%、南北戦争の1.6%に次ぐ多さ(p32)

    ・ジェファソン大統領の最大の業績は、1803年にルイジアナを1500万ドルで購入したこと(p42)

    ・1842年にメキシコ政府が奴隷制を禁止する憲法を制定すると、奴隷制を容認するテキサスの慣行と対立し、1830年にメキシコ政府はアメリカ人の入植を禁止した(p59)

    ・リンカーンが大統領になって、南部諸州は、サウスカロナイナ州を先頭に、続々と連邦から離脱を表明して、1861.2にアメリカ南部連合(最終的に11州)をつくり、バージニア州リッチモンドを首都とした(p71)

    ・リンカーンは、南部連合に加わった反乱州に限定してのみ、奴隷制を廃止する予備宣言を発表し、1863.1にその内容を正式の「奴隷解放宣言」とした(p78)

    ・南北戦争を勝利に導いた共和党の影響が圧倒的で、大統領も共和党から選ばれた(p89)

    ・第一次世界大戦での死者は民間者も加えて、1500万人となった、第一次世界大戦が、前線と銃後の区別がなくなる「総力戦」として戦われたから(p131)

    ・第一次世界大戦で、英仏はアメリカから巨額の借金をしていたので、その返済をするためにもドイツから巨額の賠償金を取り立てる必要があった(p133)

    ・トルーマン大統領は、朝鮮戦争を半島に限定するように強く求めるとともに、中国の姿勢を軟化させるために、台湾に代えて中国を国連に迎え入れることを提案した(p176)

    ・朝鮮戦争は、双方合わせて146万人の死傷者、韓国側の民間人の死傷者は99万人、北朝鮮側は難民68万人を加えて268万人にも上った(p178)

    ・ベトナム戦争は、のべ270万人を投入、戦死者5.8万、負傷者27万、ベトナム側は120-170万、徴兵拒否者は21万、不名誉除隊は56万人、アメリカは南ベトナム政府防衛に失敗したのでアメリカにとって史上初の敗戦(p197)

    ・湾岸戦争において、スマート爆弾は非常に高価であり、実際に投下された8.8トンのわずか7%、残りは命中率25%の通常爆弾を使用した(p213)

    2013年9月16日作成

  • 『ぼくらの頭脳の鍛え方』
    文庫&新書百冊(立花隆選)131
    アメリカ

  • アメリカを知るには建国期を知らなければならない・・・
    通史として植民地時代から現代までのアメリカを戦争を通して見ていく。
    とてもわかりやすく、アメリカの外交観、アメリカ人の戦争観、その変遷を知ることができる。

  • ウェストポイントの陸軍士官学校と並んで1845年には海軍もアナポリスに士官学校を開設した。
    南北戦争を通じてアメリカ人は武器によって連邦制が守られたという実感とともに、実際に銃によって個人の生命や財産を守ろうとする意識を強めたのであり、アメリカは武装した民主制という性格を強くした。

    19世紀末にフロンティアの消滅が宣言されるとともに、重工業化によって労使対立が激化したうえ、プロテスタント系でない新移民が東欧や南欧から大量に流入したため、この時代のアメリカは社会的にも思想的にも危機に直面していた。

    アメリカは連合国の中では唯一本土の戦災を免れたうえ、急速な経済成長によってアメリカ中心の戦後世界経済体制の樹立に成功した。

  • アメリカの戦争史をメインに据えながら、アメリカ人の戦争観にまで踏み込んだ良書です。

  • [ 内容 ]
    植民地・建国期から、二一世紀の対テロ戦争・イラク戦争に至るまで、戦争を繰り返してきたアメリカ。
    デモクラシーの先駆者を自負する国が、時として、戦争へと前のめりに突き進んでしまう。
    この好戦性はどこから来るのだろうか。
    戦争とその記憶の変遷を通史的にたどりながら、アメリカにとっての戦争の意味を考える。

    [ 目次 ]
    第1章 独立への道―植民地戦争と独立戦争
    第2章 対欧「孤立」と大陸内「膨張」―第二次米英戦争とアメリカ・メキシコ戦争
    第3章 内戦の悲劇と海洋帝国化―南北戦争と米西戦争
    第4章 新世界秩序の構築―二つの世界大戦
    第5章 「パクス・アメリカーナ」と局地戦争―朝鮮戦争とベトナム戦争
    第6章 ポスト冷戦下の民族・宗教紛争とアメリカ―湾岸戦争と対テロ戦争

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 東京大学名誉教授、現・東京女子大学教授の油井大三郎による「戦争」をキーワードにしたアメリカ史の通史。

    【構成】
    第1章 独立への道-植民地戦争と独立戦争
     1 北米植民地の誕生
     2 激化する対先住民戦争
     3 頻発する植民地戦争
     4 辛勝の独立戦争
    第2章 対欧「孤立」と大陸内「膨張」-第二次米英戦争とアメリカ・メキシコ戦争
     1 憲法制定と第二次米英戦争
     2 アメリカ・メキシコ戦争
    第3章 内戦の悲劇と海洋帝国化-南北戦争と米西戦争
     1 南北戦争の勃発
     2 戦争の記憶と愛国的な和解
     3 米西戦争と海洋帝国化
    第4章 新世界秩序の構築-二つの世界大戦
     1 第一次世界大戦-世界政治への参入と挫折
     2 戦間期アメリカのディレンマ-中立と反ファシズムの間
     3 「よい戦争」としての第二次世界大戦
    第5章 「パクス・アメリカーナ」と局地戦争-朝鮮戦争とベトナム戦争
     1 朝鮮戦争-勝利感なき戦争
     2 ベトナム戦争-史上初の「敗戦」
    第6章 ポスト冷戦下の民衆・宗教紛争とアメリカ-湾岸戦争と対テロ戦争
     1 米ソ冷戦の終結と湾岸戦争
     2 「対テロ戦争」とアメリカ
     3 2008年選挙と「対テロ戦争」の影

     本書は、18世紀の独立戦争から21世紀の「対テロ戦争」まで、アメリカ合衆国が経験した「戦争」について、その政治外交を概括するとともに、戦争遂行の原動力となった社会的文化的背景に焦点をあてている。
     そして、構成を見てもわかる通り、前半3章が19世紀まで、後半3章が20世紀以降となっている。ごく一般的な見方として、アメリカの戦争と言えば、第二次大戦であったり戦後冷戦下の限定戦争などが中心となると思うが、本書では相対的に建国期から独立戦争までの記述が多くなっている。

     巻末に依拠するならば、アメリカの戦争体験は5つの時代に区分できるという。
    【第1期】
     植民地時代であり、ヨーロッパ諸国間の「植民地戦争」と「対先住民戦争」が多発していたが、前者は限定的なものであったのに対して、後者は無限定的な戦闘が行われるという二重基準状態であった。
    【第2期】
     独立から19世紀末までの時期であり、「対先住民戦争」の継続や米墨戦争により西部への領土拡大が進行した。独立期に形成された非戦的世論は領土拡大が進むにつれ薄れていき、19世紀半ばには多大な犠牲をうんだ南北戦争の悲劇を体験する。
    【第3期】
     19世紀末から第二次大戦までの時代であり、「大国化」「帝国主義国化」が進む。キューバへの人道的援助というきっかけから始まった米西戦争が、いつの間にか太平洋を横断するかのように海外領土を獲得する戦争にとってかわったことがそれを象徴している。しかし一方で、これに反対するという論調も生まれ、「門戸開放」のような「非公式帝国」路線が主流となった。反帝国主義は、アメリカ自身の自由主義への自負と相まって、ウィルソンのような「民主主義の輸出」という名目での戦争をも肯定する風潮が産み出されることになった。そして2つの世界大戦において、徴兵制が敷かれ、かつて広く覆っていた非戦的世論が声高に叫ばれることは無くなった。
    【第4期】
     第二次大戦後の冷戦下の時代であり、第二次大戦を「よい戦争」として認識したアメリカ国民であったが、自由主義の絶対化による対ソ封じ込め戦略が形成されるとともに平時での大規模兵力の維持を行うことに違和感を感じなくなった。そして、局地戦としての「勝利無き」朝鮮戦争と「敗戦」ベトナム戦争の経験がアメリカの対外政策への長期的介入を拒絶する「ベトナム症候群」を生むことになった。
    【第5期】
     冷戦終結後、ブッシュ(父)政権は、湾岸戦争で勝利を収め「ベトナムの亡霊」をアラビアの砂漠に封じ込め、「新世界秩序」の建設を謳った。同時多発テロ以後、ネオコン主導の単独での軍事介入主義が露骨に現れたが、その後イラク戦争の戦後処理の泥沼化を受け、再び国際協調が主張されるようになっている。

     著者はこう時代区分を行い、好戦論と非戦論とが交互に現れた400年であったことをふまえて、アメリカが好戦的である源泉を列挙する。すなわち、①領土・市場の拡張主義、②勢力均衡重視の軍事的リアリズム、③国民・国土の防衛という「被害」意識、被害者への共感、④民主主義のための戦争という論理という4つが「デモクラシーの先駆者」を自負するアメリカが好戦的になる理由であると述べている。

     全体を通して目新しさは無いが、思想的潮流としての「好戦」「非戦」がせめぎ合うアメリカのジレンマが簡明に説明されており、特に予備知識を必要とせずに読み通すことができる。ごく個人的な意見を述べれば、建国期に形成された「民兵制」や「文民統制」が、いかに変容したのかという記述がもう少し欲しかった。

  • とても興味のある分野なのであっという間に読んでしまいました。
    すごく読みやすく、アメリカという国がどういう国なのかがわかります。
    ただ、これだけでアメリカを判断するのもあれですが。
    否定的な面も肯定的な面もあってなかなか読みやすかったです。

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