外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004311508

作品紹介・あらすじ

英語、韓国語、中国語など外国語を学ぶ人は多く、また日本語教育に携わる人も増えている。だが各種のメソッドや「コツ」は、果たして有効なのだろうか。言語学、心理学、認知科学などの成果を使って「外国語を身につける」という現象を解明し、ひいては効率的な外国語学習の方法を導き出す、「第二言語習得(SLA)」研究の現在を紹介する。

感想・レビュー・書評

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  • 第二言語習得論について、科学的なエビデンスを説明した本。ここで「第二言語」とは、母語(第一言語)以外のすべての言語を指す。日本語では第二言語のことを「外国語」と呼ぶが、ではアイヌ語や沖縄語は外国の言語なのかという問題があるので、これはよくない言葉である。

    今にして思えば、中学校の英語の授業は悲惨なものだった。教師が黒板に、英単語と対応する日本語を書く。教師が英単語を発音し、生徒が一斉にその真似をする。次に、教科書のテープを細切れにして一文ずつ聞き、その後について一斉に発音する。しかるのちに、その英文を日本語に翻訳する。これを延々と繰り返す。こんな授業をいくら受けたって、英語を喋れるようになるはずがない。

    「インプット仮説」というのがある。これは、人はインプット(聞くことと読むこと)だけで言語習得が可能だ、という仮説である。この仮説に対しては、テレビからは言語習得ができないことや、受容的バイリンガル(聞いて理解することはできるが、話すことはできない)が存在することから、アウトプット(話すことと書くこと)も必要なのだ、という反論がある。この反論に対してさらに、アウトプットそのものではなく、「アウトプットの必要性」だけがあれば良いとする仮説もある。

    しかしいずれにせよ、アウトプットを行うためには脳に知識が蓄積されている必要があるから、アウトプットよりもインプットの方が重要であることは確かだ。実際、インプットがアウトプット能力に転移することが示されている。(だから、TOEICはヒアリングとリーディングのテストしかなくても、充分意味があるのだろう。)自分が受けてきた英語教育は、このインプットが圧倒的に不足していたのだ。もっとも、英語教師が英語を話すことができないのだから、いかんともしがたいのだが。

    効果的な教授法というのは薬の効き目のようなもので、多数のサンプルを集めて比較して、初めて有意差が現れてくる。だから、第二言語習得論の知識は語学教師にとっては極めて重要だが、個々の学習者にとっては、効果的とされる学習法が必ずしも有効とは限らない。自分に最適の方法は、自らが試行錯誤的に発見していくしかない。

    第二言語習得の成否を決める要因はなんだろうか?最も重要だと考えられているのは、次の3つである:

     1. 学習開始年齢
     2. 外国語学習適性
     3. 動機づけ

    それでは、外国語学習の適性とはなにか?本書によればそれは、

     1. 音声認識能力
     2. 言語分析能力
     3. 記憶

    である。どちらも、当然といえば当然かもしれない。

    IQは認知学習言語能力と強く相関するが、日常言語能力とはあまり相関しない。そのため、IQの高い学習者にとっては文法中心方式が、そうでない学習者にとってはコミュニカティブ・アプローチ(口頭練習中心)が効果的であるという報告もある。

    大部分の日本人にとって、第二言語とは英語に他ならないから、本書に出てくる例文のほとんどすべてが英語なのは致し方ない。ただその例文は、英語として面白い。次の2つの文章のうち、一方は正しく、他方は間違っているが、どちらが正しいか分かるだろうか?これに答えられれば、あなたの英語力はネイティブに近い・・・かもしれない。

     a. Open me a beer.(ビールを一つあけてください)
     b. Open me the door.(ドアをあけてください)

  • 第二言語習得に関してエビデンス・ベースに科学した本。母語習得はほぼ間違いなく成功するのに、第二言語はなぜ失敗することが多いのか。子供ほど成功しやすいが、習得に臨界期が存在するのか。適性や動機付けの影響はあるのか。また、言語を習得するというのはどういうメカニズムか。母語と第二言語で異なるのか。などなど、この分野での現在までの研究結果の到達点を解説しています。効果的な学習法を手っ取り早く知りたいという人というよりも、第二言語習得という言語学に興味ある人にオススメです。
    一番興味深かったのは、アウトプットが習得に与える影響の有用性に議論がある点。素人考えでは、効果あるのが常識かと思っていたが、内的なリハーサルだけでも効果があるので、インプットのみが習得に有用という見方もあるのだなと。
    個人的に、4月から管理部門の有志を集めて英語講座のストリーミング放送を聴いているのですが、学ぶ立場だけでなく教える立場としてもどうしたら効果的なのか考える機会も多く、ちょいネタとしての活用の余地も含めて非常に参考になりました。

  • 大人になってからの言語習得は難しいと身の程を知る。
    ネイティブに近いといわれるのは凡人には無理で、圧倒的な記憶力が必要。
    一般的には意味を理解した大量のインプットと、アウトプットの必要性で上達する

  • 現代に至っても外国語学習がほとんどの場合成功体験だったり(しかも先生個人の体験だったりする!)昔からの伝統だったりとほとんど論拠のない事柄で教授されているというのが驚き。

    最近の知見とそれに基づく学習法。
    ・英語子育て・母語をたっぷり与えていれば影響はない。

    He held his horses ×

    リスニング能力は他の能力に転移する。
    母語も外国語に転移する。

    Open me a beer ◯
    Open me the door ×

    インプット インプット ちょっとアウトプット
    例文暗記も自動化には効用がある。

  • 日本語教育能力検定試験の準備をしていた頃、この手の本をたくさん読んだことを懐かしく思いだした。当時読んだ本と比べて非常に読み易くコンパクトに纏まっている。内容はオーソドックスで当然のことながら奇跡の速習法は出て来ない。第二言語習得理論についてまんべんなく触れているがインプット重視の立場のように思える。先日、読了した『英語学習7つの誤解』では外国語を話すのが自然な環境に身を置く重要性(これは外国に住むこととはイコールではない。)を学び。本書ではインプットの重要性を再認した。語学教師を目指している方にお勧め。

  • 科学に基づいた外国語学習法に関する本を初めて読んだ。今まで筆者自身の体験による英語学習法などは十何冊目を通してきたが、ほんとに将来きちんと英語を教えるなら、科学的な学習法を知る必要があると感じこの本を手に取った。

  • 語学はもっと科学されるべき、との思いで読んでみた本であったが想像以上に奥が深かった。また語学は言語学だけでなく、脳科学、心理学またバックグラウンドも大きく影響を与えることは何となく理解していたがここまでの複雑性は意外であった。筆者の仮説と実践を丁寧に示すアプローチはまさに科学であって論理的思考能力を見つめ直す機会となった。あれ、語学勉強法を知りたかったのではなかったっけ?笑

  • 概要: 言語間距離(日本語と英語は遠い、日本語と韓国語は近い); 言語転移(母語の知識が外国語に影響); 臨界期仮説(思春期をすぎたらだめ):生理的な問題か人との関係の質の問題か不明; 適性はまあある; 動機付けも影響; インプット+アウトプットの必要性: 頭の中でアウトプットをリハーサルする; 流暢さと正確さはバランス
    感想: 自分の勉強法の参考になるかというといまいちだった

  • 中身は前著とかなり被る。とはいえ、どういう人間がどういう学び方をするとなにができてなにがしにくいかなどが述べられていて面白い学問だなというのは変わらず。

  • 一番驚きだったことは、アウトプットよりもインプットのほうが重要ということでした。もちろんインプットする際も、ただインプットするだけではなく、インプットされたものがいったい何なのかをしっかりと理解しなければいけないということでした。ですので、漠然と外国語の本を読んだり、音声を聞いたりするだけではNGということでした。やはりダイアログを通じて自分の中のデータベースを増やしていくことが重要、ということで、いわゆる暗記力により習得に差が出るというのが・・・。暗記は苦手な私は人一倍努力せねば、と痛感しました。

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