- 本 ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004311553
感想・レビュー・書評
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参考文献として読んだ。132ページからの10のステップはすごくわかりやすかった。
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著者は、1980年初頭から日本とアメリカで子ども・女性への暴力防止専門職の養成に携わり、現在は日本で虐待や人権問題全般に携わる専門職研修を全国で行っている。子どもへの性的虐待について、その実態を誰よりもくわしく知り、虐待防止と被害者救済に尽力してきた人なのだ。
本書は、著者の長年の経験と研鑽をふまえて書かれた、子どもへの性的虐待問題の優れた概説書である。テーマがテーマだけにヘビーな内容だが、この問題について知りたい人が一冊目に読むべき本になっている。
とかくベールに隠されがちな被害の実態について、著者は実例や豊富なデータを通じて傾向性を明らかにしていく。
その過程で、我々が抱きがちな先入見が次々と突き崩される。たとえば、第5章は「男子への性的虐待」と題されている。女子に比べれば少ないものの、男子への性的虐待はけっして例外的ではなく、よくあることなのだ。
また、加害者が社会不適応者であるともかぎらないという。
《多くの性的虐待は子どもの生活の場、家庭や学校や塾や習い事や知人宅の場で起きている。加害者は親、親戚、教師、コーチ、友人など子どもが知っている人であることが多い。加害者の多くは、良識があり、仕事に就いており、まっとうな市民であり、ごく普通の男性である。しかしただ一つ異常なのは、子どもに性的行為をひそかに強いる人たちなのである。》
米国のミーガン法(性犯罪者の個人情報の公開制度)が必ずしも再犯防止に結びついておらず、むしろ再犯率を上昇させてしまう恐れがある、との指摘も興味深い。
《性犯罪者の更正を妨げる最大の条件は、孤立とストレスである。ミーガン法施行の影響で、住居や職業を奪われ、生活の基盤を失った者たちは、孤立とストレスという再犯の条件をそなえることになった。
排除と隔離は性犯罪の効果的な対処策ではない。DVであれ、虐待であれ、あらゆる暴力加害者の更正回復が効果を発揮するのは、家族や地域の支援の中で行なわれるときである。》
では、日本で子どもへの性的虐待を防止するためには、どのような改革が必要なのか? 著者は、その処方箋をさまざまな角度から提示する。
その一つが、児童相談所とは別に、性的虐待に対応するための専門機関を設置すること。「性的虐待は、身体的虐待やネグレクトよりさらに介入に困難が伴う虐待であるために、児童相談所がその役割を集中的に担う今までの制度では対応しきれない」からである。
本書を読むと、子どもへの性的虐待に対する日本の公的な対策が、いかに遅れているかがよくわかる。たとえば――。
《今日の日本の制度の中では、性的虐待が起きていることがわかっていても対応できないことがしばしばである。特に加害者が保護者の場合、加害者に退去命令を出すことができず、たいていの場合逮捕することもできず、子どもが家を出されなければならない法制度の矛盾がある。学校や友人から離れて、知らない場所で暮らすことは、子どもにとって大きなストレスになる。性的虐待を受けた子どもには一人になるスペースが必要だが、一時保護所でも、児童養護施設でも個室がないところがほとんどである。》
その他、被害者たちはどのように苦しんでいるのか、またどのように被害を乗り越え心の平安を取り戻すのかなど、問題の全体像がさまざまな角度から素描される。
性的虐待は、子どもにとって「自分の心と身体が他者によってコントロールされてしまった出来事」だから、被害者に無力感をもたらす、と著者は言う。そしてその無力感は、放置しておくと、被害者を2つの方向へ導くという。一つは「自分を痛め傷つける暴力行動」(自傷行為、自殺未遂、拒食や過食など)であり、もう一つは「自分の意のままになる相手」(動物や自分より年少の子ども、優しい大人など)への暴力行動である。
《被害者は他者に暴力を振るうことで相手をコントロールする体験を得る。自分がコントロールされたことで奪われた力を、今度は自分が誰かをコントロールすることで取り戻そうとするのである。》
さらには、性的虐待が疑われる事態に直面したとき、どのように相手の子どもに接したらよいのか、というケーススタディまで書かれている。じつに懇切丁寧な概説書である。
そして、本書を読んで何より慄然とさせられるのは、データから浮き彫りにされる加害者たちの実像だ。ぞっとするような記述を2つ引こう。
《ペドファイルに共通することは、彼らの大半が男性であり、その五~六割が性的虐待行為を一○代で始めていることである。彼らは、子どもに簡単にアクセスできるような職業や活動を選ぶこともあり、子どもの関心を引く話術に長けている。》
《カウンセラーやセラピスト、精神科医からの(児童虐待サバイバーに対する/引用者補足)性的加害は決して珍しい出来事ではない。女性だけでなく、男性も被害を受けている。患者は、心身が弱っている状態の自分の内面をあらいざらいさらけ出すという弱い立場で医者やカウンセラーと密室にいる。①力関係の大きな違い、②心理的に裸になって治療者の前にいる状態、③誰も見ていない二人だけの時空間。この三条件は、性的加害者にとっては理想的な環境である。》 -
読後は重苦しくなるが、分かりやすい良書だと思う。猥褻、いたずら、小児性愛と曖昧な言葉はあるが、それは児童虐待である。子ども相手に、全く知らない人が犯罪を犯すように感じる人もいるかもしれないが、近親者など身近な人が加害者である場合が多い。日本は虐待、特に性的な事に関し、寛容な法制度だと思う。許す許さないという道徳感情はあるにせよ、やはり法制度でしかないと思う。加害者が親であっても、子を早い段階で救い出せる制度を整え、ヒトの子であれ見守る大人達が正しい知識を身につけ、子供を守っていきたいと真に願う。
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「それは児童虐待である。」
山岸凉子のマンガで、相手に対して優位に立つコトで成り立つ。と知って、卑怯な大人に嫌悪感が、、、「それは児童虐待である。」
山岸凉子のマンガで、相手に対して優位に立つコトで成り立つ。と知って、卑怯な大人に嫌悪感が、、、2014/04/22
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SDGs|目標16 平和と公正をすべての人に|
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/705801 -
資料用②。
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小説家、ヴァージニア・ウルフの紹介が印象的だった。
『オーランドー』『灯台へ』『ダロウェイ夫人』 -
少し古い本なので、現在はこの本に書かれているような提案が実行されているのかどうかが知りたくなった。「『性愛』ではなく『暴力』」という見出しが印象的だった。もし、身近で相談を受けたらと想像したときに、感情的になってダメな対応例やっちゃいそうで怖い。もしもの時のために対話の技法は頭に入れたい。
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性的虐待について、本はたくさん出ているけど、ルポ形式のものがおおい中で、データに基づいて、あるいは先行研究から現状とこれからについて語られている、とてもよい本。
性的虐待は二の足を踏んで踏み込みにくい領域であるのは間違いなく、そこに冷静にメスを入れて、対処していくことが望まれるデリケートな分野。
自身も能力を発揮できるように、勉強を進めていきたいと共に、司法面接等、専門的な技量についても学んでいきたいと思う。
著者プロフィール
森田ゆりの作品





