民族とネイション―ナショナリズムという難問 (岩波新書)

著者 : 塩川伸明
  • 岩波書店 (2008年11月20日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004311560

作品紹介

地域紛争の頻発や排外主義の高まりの中で、「民族」「エスニシティ」「ネイション」「ナショナリズム」などの言葉が飛び交っている。だが、これらの意味や相互の関係は必ずしかも明確ではなく、しばしば混乱を招いている。国民国家の登場から冷戦後までの歴史をたどりながら、複雑な問題群を整理し、ナショナリズムにどう向き合うかを考える。

民族とネイション―ナショナリズムという難問 (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  •  国民国家の出現から冷戦後までの期間を題材に、エスニシティ、民族、ネイション、ナショナリズムといった問題(そもそもこれらの語すら定義が一定していないことを筆者自身指摘している)を一般化して論じる本。筆者は極めて価値相対的であり、ナショナリズムの肯定・否定論、良い・悪いナショナリズムの区別のいずれも批判している。
     巻末で筆者は、紛争の歯止めのために、「(ナショナリスティックな感情が)他者への攻撃の形をとろうとする時には、その悪循環的拡大を防ぐための初期対応が何よりも必要だと思われる」と述べている。これ自体は否定できないとしても、ではその「初期対応」は誰が担うのか。国家間での応酬にせよ、一国内での応酬にせよ、当事国政府が自国民のナショナリズムを助長しないまでも、抑えることが果たしてできるのか。民主主義国なら尚更だ。また、第三国の仲裁と言っても、「感情」に対してできることは限られる(例:日韓関係に対しての米国)。もっとも、筆者を批判するつもりはなく、それだけ甘っちょろいことは言えない問題だということなのだろう。
     また筆者は、ナショナリズムは外からは「人為的に作られたもの」、中からは「自然なもの」と見えると指摘し、最近の日本と中韓の間の歴史論争を例に挙げている。自国が現在進行形で当事者となっていると見えにくい相手からの視点、心に留めておきたい。

  • 「はじめに」で示される本書の目的は「民族」「エスニシティ」「国民国家」「ネイション」「ナショナリズム」などの言葉で指されている「多様な事柄の相互関係を解きほぐし、それらを理論と歴史の両面にわたって考えることを目指す」とされている。

    筆者の用語の説明や論の進め方は丁寧で、わかりやすくまとめられながらも読み応えのある中身となっている。各々の時代に各々の国家でどのように「ネイション」が創り上げられたのか、丹念に語られていく。

    第一章では概念や用語の説明、定義と問題提示がなされる。「民族についてある程度以上立ち入って考えようと思うなら、具体的な歴史的経緯に目を向けることが不可欠」という観点から、第二章以降においては近代国民国家の登場、第一次世界大戦後と第二次世界大戦後の「民族自決」、冷戦後の新しい動向というテーマのもと歴史的な視点から論じられる。ナショナリズムは「歴史的な記憶」を重要な要素とすると言われていることからもわかるように、本書での主要な視点となっている歴史的側面からのアプローチという方法はナショナリズムを理解する上で重要であり、醍醐味でもある。

    アンダーソンやホブズボームらの著作をはじめ、さまざまな先行研究の成果も参照されている。また、通説に流されず一旦立ち止まったり批判的な見方で再検討を加えたりするなど、慎重な論の進め方や多面的な見方もなされている。新書という性格上の制約もあるだろうが、簡潔かつ充実したまとまりぶりではないだろうか。

  • 第Ⅰ章 概念と用語法
    第Ⅱ章 「国民国家」の登場
    第Ⅲ章 民族自決論とその帰結
    第Ⅳ章 冷戦後の世界
    第Ⅴ章 難問としてのナショナリズム

  • 新書文庫

  • 【目次】
    はじめに [i-vi]
    目次   [vii-xii]

    第I章 概念と用語法―― 一つの整理の試み 001
    1 エスニシティ・民族・国民 003
    2 さまざまな「ネイション」観――「民族」と国民」 013
    3 ナショナリズム 020
    4 「民族問題」の捉え方 028

    第II章 「国民国家」の登場 037
    1 ヨーロッパ――原型の誕生 038
    2 帝国の再編と諸民族 051
    3 新大陸――新しいネイションの形 065
    4 東アジア――西洋の衝撃の中で 073

    第III章 民族自決論とその帰結――世界戦争の衝撃の中で 089
    1 ナショナリズムの世界的広がり 090
    2 戦間期の中東欧 097
    3 実験国家ソ連 108
    4 植民地の独立――第二次世界大戦後(1) 118
    5 「自立型」社会主義の模索――第二次世界大戦後(2) 129

    第IV章 冷戦後の世界 143
    1 新たな問題状況―グローバル化・ボーダレス化の中で 144
    2 再度の民族自決 154
    3 歴史問題の再燃 168

    第V章 難問としてのナショナリズム 181
    1 評価の微妙さ 182
    2 シヴィック・ナショナリズム? 189
    3 ナショナリズムを飼いならせるか 198

    あとがき(二〇〇八年九月 塩川伸明) [209-214]
    読書案内 [1-9]

  • 読了。

  • 近代における紛争の原因やナショナリズムについてざっくりと理解できる.ところどころで,筆者特有の表現が理解を妨げてしまうのが残念.

  • オススメ度(1~10):7 前知識:地理が必要 
    読みやすさ:○ 
    総ページ数:214p

    第Ⅰ章 概念と用語法ー一つの整理の試み
     1:エスニシティ・民族・国民
     2:さまざまな「ネイション」観ー「民族」と「国民」
     3:ナショナリズム
     4:「民族問題」の捉え方
    第Ⅱ章 「国民国家の誕生」
     1:ヨーロッパー原型の誕生
     2:帝国の再編と諸民族
     3:新大陸ー新しいネイションの形
     4:東アジアー西洋の衝撃の中で
    第Ⅲ章 民族自決論とその帰結ー世界戦争の衝撃の中で
     1:ナショナリズムの世界的広がり
     2:戦間期の中東欧
     3:実験国家ソ連
     4:植民地の独立ー第二次世界大戦(1)
     5:「自立型」社会主義の模索ー第二次世界大戦(2)
    第Ⅳ章 冷戦後の世界
     1:新たな問題状況ーグローバル化・ボーダーレス化の   中で
     2:再度の民族自決
     3:歴史問題の再燃
    第Ⅴ章 難問としてのナショナリズム
     1:評価の微妙さ
     2:シヴィック・ナショナリズム?
     3:ナショナリズムを飼いならせるか

  • 人間集団の区切り方はどれか1つだけ正しいということはない。
    国民国家の形成には長期的な社会変化と短期的な政治変動の影響が重なりあって作用する。

    ポーランドではドイツ人が同化不可能と見做されたのに対し、ユダヤ人はどうかさせるべきではないと見做された。ユダヤ人の多くは貧困な小商人にすぎなかったが、都市への集中が目立つために、あたかもポーランドの都市はユダヤ人に支配されているかのように受け止める風潮が強かった。
    レーニンもスターリンもユダヤ人は民族ではない、と考えていた。
    ヨーロッパではユダヤ人が周囲の主流は言語にどうかしたりキリスト教に改宗する傾向が以前から進んでいたのに対し、ロシアでは20世紀初頭までユダヤ人の大半がユダヤ教とイディッシュ語を維持していた。

    ドイツはユダヤ人に対して、永遠の贖罪がある。

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