ビジネス・インサイト―創造の知とは何か (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 52
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004311836

作品紹介・あらすじ

新しいビジネスモデルが生まれるときに働く知を、「ビジネス・インサイト」と著者は呼ぶ。この創造的な知は何なのか。M・ポランニーの「知の暗黙の次元」を手がかりに、ビジネス・インサイトが作用した多くの実例を考察して、ケースを学ぶことで習得できる可能性を探る。マーケティング研究の第一人者による経営学の新展開。

感想・レビュー・書評

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  •  種々の知識、情報、課題を総合的に勘案しながら醸成される、
     「将来を見通す力」は、どうやら私たちに生来備わっている。[more]

     その力を経営者やマーケターが発揮した瞬間を取り出した、
     ビジネス・インサイトの機制(メカニズム)は、
     ポランニーの「暗黙の認識(tacit knowing)」のそれに似ている。

     その機制とは。

     「対象に棲み込むことを契機として、意味ある全体を見通す。」

     対象に棲み込む(dwell in)、
     つまり、自らの身体の中に取り込んだ果てに、
     身体を事物に内在させてしまうことで、
     事物が統合されて生起する「意味」を理解するのである。

     実証主義的な視点とは異なる、
     この機制を受け入れ、自らがその働きとなることは、
     ほとんど生き方の選択に等しい。

     情熱を事業に傾ける経営者にせよ、
     深遠へどこまでも下降しようとする研究者にせよ、
     時として天才やイノベーターと呼ばれる人たちが、
     こうしたインサイトを得るのは、
     結局のところ、この生き方を生きて、
     対象に棲み込んでいるからなのだろう。 

     なお、ビジネス・インサイトへ至る要因を、
     「ケース教育」という概念化された方法を通じて整理すると、
     その道を努力と誠実さによって辿れるような気がしてくる。

      1) 当事者の視点に立つ
      2) 問題を構成する力をつける
      3) 学ぶ姿勢を育てる
      4) 視点の大事さを知る
      5) セオリーや経験の使い方を学ぶ

    【目次】

    序 経営者は跳ばなければならない

    1 実証主義の経営を検証する

    実証主義という枠組み
    実証的経営
    実証的経営の落とし穴

    2 ビジネス・インサイトとは何か

    創造的瞬間
    宅配便ビジネスモデルの発見
    流通革命を生んだビジネス・インサイト
    コンビニのビジネスモデルの発見
    マーケティングにおけるビジネス・インサイト

    3 知の隠れた力 tacit knowing

    暗黙知と形式知
    実証のプロセスだけが科学のプロセスか
    対象に棲み込む機制
    インサイトは学ぶことができるか

    4 ビジネス・インサイトをケースで学ぶ

    語りえぬ知の働きを育てる
    ケース教育の実際
    ケース教育の狙い
    視点の大事さを知る
    セオリーの「使い方」、経験の「活かし方」を学ぶ

    5 ケース・リサーチの可能性

    伝統的スタイルのケース記述
    ビジネス・インサイトに向けたケース記述
    新しいスタイルのケース記述
    創造的な思考のためのケース記述

    6 経営における偶有性

    コミュニケーション・プロセス
    コミュニケーションとしてのマーケティング・プロセス
    新しい経営の実践に向けて

  • ビジネススクール在学中の方は、ぜひ。
    これから進学を考えている方も。

    ・対象に棲み込む。

    いかにして、ヒラメキが生まれるのか、
    に対する著者からの回答かもしれない。

  • イノベーションが企業の成長に欠かせない事、また、イノベーションは創造的破壊によってもたらされる為に大企業では生まれにくい事を冒頭の松下電工の例で示し、それを打開する手段として暗黙知に潜む可能性をビジネスインサイトと称して、その活用を提唱している。暗黙知を形式知へといういわゆるナレッジでは創造的破壊は生まれない事はまさにその通りで非常に示唆に富んだ指摘であった。

  • いまいちだった。ケースが冗長すぎる。

  • 前半部分は経営学の教科書のような退屈さを感じたが,中盤で興味深いところが多数でてきた.
    著者の名前をどこかで見た(経営学者なら知っていて当然なのかも知れないが,残念ながら私の専門は経営ではないので)と思ったら,流通科学大学の学長だったのか.

  • マーケティングで有名な石井 淳蔵氏の新書です。ポランニーの知識論をベースに展開している内容で、野中郁次郎氏が提唱したナレッジクリエイティブカンパニーからの発展になる議論であると思います。ここで言う、ビジネス・インサイトとは、新たなビジネスモデルが生まれる際の知という意味であり、組織のダイナミズムの中に、どのように活用されるかを説明されています。事例などを踏まえて乗っており、理論と事例とをいったりきたりする一冊といえるのではないでしょうか。
    著者もおっしゃっているとおり、ビジネススクールや研修などで学ぶ際は、一つの答えではなく、その問いからどのように考え、その解いが生まれたかを理論を用いて、論理的に話すことは必要ですね。おそらく、著者がご活躍されているなかで、学生あるいは社会人に言いたいことなのではないでしょうか。

  • 模倣 ではいつまでたっても勝てない。経営者は跳ばなけばならない、創造しなければならない。キーワードは、「暗黙に認識する」こと、「対象に棲み込む」こと。

  • 本書は、事業の様相を大きく飛躍させるイノベーション的着想をビジネスインサイトと定義し、その着想が生まれるメカニズムについて探求している。一般的には「(先天的な)センス」の一言で片づけられてしまいがちなテーマに対して真理を暴き出そうとしていて、またその探求した内容が非常に納得できる内容で興味深く読み進めることができた。また、その一環として事業戦略における既存のフレームワークや理論の落とし穴についても言及しており、非常に勉強になる。
    惜しむらくはその着想を得る頭を育てるためにケーススタディによる学習等を紹介しているのだが、創造的な着想を得るクリティカルな方法である印象を持てなかったこと。
    おそらくまだ理解が追い付いていないところがあるので、あと数回読み返したいと思う。

  • 中だるみだったけど、郵便やキットカット、シェイクの事例が面白かった

  • マーケティングの大御所、石井淳蔵の本。”経営者は跳ばなければならない”として、これまでの延長で事業を進めるのではなく、創造的に事業を創りだすビジネス・インサイトが必要なのである。前書きから惹き付けられることが多く、マーケティングにおける定性的研究の重要性が感じさせられる一冊だった。

    ①実証主義の限界(第1章 実証主義の経営を検証する/第2章 ビジネスインサイトとは何か)

     それまでは既に存在している市場を分析すること、つまり実証主義の経営が主流とされてきた。だが、それは裏を返せば既存のニーズを中心に分析しているため、自社にとって新しいニーズであっても市場では馴染みのあるものになりやすい。
     そこで、市場志向ではなく、「消費者の経験の中で生まれる価値」に焦点を置くことが重要となる。消費者にとってその製品はどういった存在なのかから問い直し、新しい市場を生み出すのである。それを見つけ出すためには、インサイト(成功を見通す構図)を発見しなければならない。

    ②ケース教育の意義(第4章 ビジネス・インサイトをケースで学ぶ/第5章 ケース・リサーチの可能性)

     インサイトや、そこに隠された暗黙知を発見するためには、消費者をより深く理解すること、つまり消費者への棲み込みが必要である。棲み込みを学ぶ一つとして、ケースは優れているという。
     ケース教育で大切なことはいくつかあるが、特に「当事者の視点に立つ」ことは重要である。対象を理解するためには、外側を見つめるだけでなく、内側に入り込む(=棲み込む)ことを行わなければならない。現在時点でケースを眺め、50年前よりも進んだ世界を自分が知っているように理解してはいけない。そうではなく、歴史や経緯を入念にたどりながら、当事者になったことを意識する。このようにケースを追うことは、因果関係だけでケースを理解することなく、プロセスやその変化などを解明していくことであり、重要である。

    ③これからの経営、マーケティング(第6章 経営における偶有性)

     なぜケースにおいて、原因や結果だけでなく、プロセスを理解する必要があるのか。それは、マーケティングは、誤解のようなコミュニケーションを繰り返す過程に含まれており、その帰結が偶有性(偶然のたまもの)なのである。そのため、企業と市場や消費者の中で行われる対話の中で、ニーズは生まれてくる。
     これまでの市場調査から消費行為の意味を理解する「消費者理解」が重要となり、対象への棲み込み、そしてそれを通じて得た共感的理解から経営が始まるだろう。

     ニーズはあるようで、存在していない。それを学術的に説明した非常に示唆に富んだ本だった。消費者への棲み込みから出てきたニーズを考えていくことは、今の日本企業には重要なことである。これからケースを読むときにも視点を変え、インサイトを見つけ出せるように丹念に読んでいきたい。

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著者プロフィール

流通科学大学特別教授、神戸大学名誉教授

「2017年 『中内功 理想に燃えた流通革命の先導者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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