ミステリーの人間学: 英国古典探偵小説を読む (岩波新書 新赤版 1187)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004311874

作品紹介・あらすじ

読者を謎解きに導く巧みなプロット。犯罪にいたる人間心理への緻密な洞察。一九世紀前半ごろ誕生した探偵小説は、文学に共通する「人間を描く」というテーマに鋭く迫る試みでもある。ディケンズ、コリンズ、ドイル、チェスタトン、クリスティーなどの、代表的な英国ミステリー作品を取り上げ、探偵小説の系譜、作品の魅力などを読み解く。

感想・レビュー・書評

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  • 著者は、NHK Eテレ「100分de名著」、シャーロック・ホームズスペシャルで解説者として登場した。
    本人の解説が面白かったので、テレビの画面にうつっていた著作を読むことにした。

    ミステリーとは「人間の描写」であると著者はいう。
    特に面白いのは、コナン・ドイル、そしてアガサ・クリスティ。
    私はそこまで古典のミステリーに詳しいわけではないが、一般常識程度には知っている。
    この二人は作品や人柄、キャラクターなど非常に多く語られている。
    人間の描写という視点から見てみると、ただミステリーを読んで面白い、ではなかったことに気付く。
    その面白いという感覚が何なのかという深い考察に至ることができる。

    「英国ミステリーのその後」では、ドラマでもお馴染み、主任刑事モースも挙げられている。
    モースは、ドラマでしか見たことがない(しかも、endeavorなどスピンオフの方が好き)。
    人間という点に視点を置いて見てみると、インテリという設定があることで、彼の言葉の端端にあるイギリス文学の香りを楽しむことができる。
    また、時代設定を現代にすることで現代の人間についても深く感じさせる。
    ミステリーとは、人間。
    トリックだけがミステリーの面白さではない。
    そのことがよりミステリーの面白さを引き立てるのだ。

  • 図書館より。
    英国ミステリーの歴史とそこで描かれる人間性を解説していった本です。

    読んだことのない小説のあらすじ紹介からの解説は理解しにくかったですが、逆に読んだことのある小説の解説の場合は、なるほど! と思えるところがたくさんありました。

    個人的にはクリスティーの『アクロイド殺し』の解説が興味深かったです。解説されてみるとこの言葉や記述はそういう意味だったのか、と思えるところがいくつかあって、暇を見つけてはまた読み返してみようと思いました。

    ネタばれもいくつかあるのでそのあたりは注意が必要そう。と言っても、自分の場合はカタカナの名前は一度見ただけじゃ覚えられないので、犯人は誰々、と書いてあってもあまり影響はないですが(笑)

    ブラウン神父シリーズの解説が一章分語られていたのですが、全く読んだことがなかったのでもったいないことをしたなあ、と少し後悔…
    そのうちこのシリーズも読んでみないと。ただ筆者チェスタトンのブラウン神父の扱い方は苦笑ものでした。

  • クリスティが含まれていたので読んでみた。

    基本的にネタバレしまくってますが
    そうしないと「人間を描く」ことに関する
    考察ができないから
    そこは承知の上で手を出しましょう〜。
    まぁ、すでに広く知られているトリックが
    主ですけれども。

  • ミステリーの人間学 英国古典探偵小説を読む 廣野由美子著 | 読書 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
    https://toyokeizai.net/articles/-/10457

    ミステリーの人間学 - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/book/b225975.html

  • 今季最高に面白かった!

     読了5時間? 時間がかかったのは、本文中に出ている作家や本や出来事について並行してググりながらだったのと、興味を引いた部分を久しぶりに読書ログノートに落とし込んだりしていたから。

     イギリスの作家ディケンズを筆頭に、英国ミステリーの根底を流れる「人間洞察」について書かれているのだけれど、作品や作家紹介の文章に愛と知識が溢れすぎていて、久しぶりに熱く胸を焼かれるやら、いっぱい付箋たてちゃうやら。

     中野美代子さんの「カニバリズム論」(「奇景の図象学」も面白かった!)を読んだ時にも似た高揚感で、他に何を書いておられるどんな人だと思って著者紹介を見ると、「視線は人を殺すか」も、この廣野さんの著書で唸る。

     持ってるけど積読にしてる。次すぐ読もうと決める。

     東野圭吾さんや宮部みゆきさんのミステリーが好きな人なら、廣野さんのこの本は、開いて数ページで世に言われる「ミステリー」に感じる「問いたいけどうまく問えない質問」に鮮やかな答えを出してもらえた気がするのじゃないかと思う。

     とにもかくにも、ディケンズもブラウン神父もクリスティもポアロも(作者も探偵もひとっからげだ(;^ω^))片端から読みたくなる一冊!

     研究者ありがとう、万歳!

  • 英国を代表する推理作家の作品に焦点を当て、
    初期のミステリーの成り立ちがわかる。
    ただ、ちょっと言い回しが難解。
    あ、ねたバレ注意!

  • 大学の講義を受けているような贅沢さ。

  • ディケンズ、コリンズ、ドイル、チェスタトン、クリスティーと5人のイギリスの作家のミステリー小説の評論です。
    英国古典探偵小説は単純なトリックの謎とき話ではなくて、人間の心理や暗部について語る人間性の探究の話でもあるということです。
    シャーロック・ホームズ、ポワロ、ミス・マープル、ブラウン神父の話をまた読みたくなりました。

  • ディケンズ、ウィルキー・コリンズ、ドイル、G・Kチェスタトン、クリスティについて記述。

    クリスティは「暴かれるのは誰か」として、
    ・解明のプロセスで起こること「アクロイド殺し」
    ・人間を裁けるか「オリエント急行殺人事件」
    ・誰かに似ている犯人「火曜クラブ」ほか  を記述。

    2009.5.20発行 図書館

  • 文学

  • vol.122
    読者を謎解きに導く巧みなプロットの秘密。ストーリーとプロットの違い?
    http://www.shirayu.com/letter/2011/000242.html

  • 書架で見かけて。

    アンビバランス、という言葉がある。
    ある対象に相反する感情を抱くことだ。
    愛と憎しみとか。

    この本ほど、この言葉にぴったりくる本はない。

    読んだことのなかった、読むつもりもなかった作品を、
    探偵小説の歴史とともに、
    著者の人間観を明らかにし、
    後世への影響も含め、
    面白そうに次々と紹介してくれるのは良いのだが、
    それ以上はもう書かないでくれ、というほど解説してくれる。

    読み進めたいのに、読みたくない。
    とても複雑な気持ちになった。
    実際、何ページが本当に読まずに次の章に行ってしまった。
    長い読書人生、こんなことをしたのは初めてだ。

    後半になって読んだことのある作品を、解説されるようになって、少し落ち着いてきたし、
    紹介されていて嬉しくなってきた。

    特に最後の「フロスト警部」が、ためらいとともに掲載されていたのには、
    ガッツポーズをしたいぐらいだった。
    そう、「フロスト警部」は面白い。

    とにかく、ただのミステリーの紹介の本ではない。
    それなら、ここまであらすじを書かないし、
    こんなに全ての本を読みたくなったりはしない。

  • チャールズ・ディケンズ、ウィルキー・コリンズ、コナン・ドイル、G・K・チェスタトン、アガサ・クリスティを中心に取り上げ、イギリスのミステリの古典における人間に対するまなざしのありようを論じた本です。

    「探偵小説とは人間を描くものであり、とりわけ人間性の暗部を描き出すうえで、特殊な方法論を有するジャンルである」と著者は規定し、こうした側面から、それぞれの作家が作品中でどのようなミステリの手法を用いて、人間についての探究をおこなっているのかを明らかにしています。

    ミステリというジャンルが形成されるプロセスとミステリの特徴について一般的に規定した上で、個々の作品に立ち入って議論をおこなっています。ただし、文学史の中でミステリというジャンルを位置づける議論はあるものの、ミステリ史そのものに立ち入った議論はあまりなされていません。推理小説マニア向けの本というより、英文学史の中でミステリの位置づけを考察した本だと思います。

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  • フランケンシュタインのほうを面白く読んだのでこちらにも手を伸ばしましたが、こちらはそれほどでもなく。
    結論が人間性への興味ということに尽きている感じで、おそらく多くのミステリー好きにとっては分析と感じられない。あらすじ満載なので、個人的には今から読むのはつらいかも?な古いミステリーを少し詳しく知っておくには便利、という位置づけ。

  • ミステリーって響きだけにつられて読み始めたけど、全然ピンとこず、結構最初の方でリタイア。ってか、このタイトルを見て何を求めたんだろう?って、自分でもよく分からんくなった。積読けど、読み返すことはなさそう。

  • 英国古典探偵小説にみる人間性――とはいうものの、
    実際は古典ミステリ(イギリス限定)の中から、何個かをピックアップして紹介している感じ。

  •  ミステリの人間学、と題しているが、読んだ限りでは「英国ミステリ分析」という感じか。題名に期待していたものは得られなかったが、しかし、有益な分析を読んだ。因みに、あらすじ満載なので、未読の本があるときは危険だ。

     「人間に焦点を当てる」ことで、作者と探偵の「橋渡し」をしている。また、探偵比較もしていて、面白い。
     そして、「推理小説」の意義についても考えさせられた。著者が意図した事ではないであろうが、中々に始めの章は重要なものである。

  • ミステリーの歴史が把握できます。

  • [ 内容 ]
    読者を謎解きに導く巧みなプロット。
    犯罪にいたる人間心理への緻密な洞察。
    一九世紀前半ごろ誕生した探偵小説は、文学に共通する「人間を描く」というテーマに鋭く迫る試みでもある。
    ディケンズ、コリンズ、ドイル、チェスタトン、クリスティーなどの、代表的な英国ミステリー作品を取り上げ、探偵小説の系譜、作品の魅力などを読み解く。

    [ 目次 ]
    序章 探偵小説の誕生
    第1章 心の闇を探る―チャールズ・ディケンズ
    第2章 被害者はこうしてつくられる―ウィルキー・コリンズ
    第3章 世界一有名な探偵の登場―アーサー・コナン・ドイル
    第4章 トリックと人間性―G.K.チェスタトン
    第5章 暴かれるのは誰か―アガサ・クリスティー
    終章 英国ミステリーのその後―「人間学」の系譜

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著者プロフィール

廣野 由美子 (ひろの・ゆみこ):一九五八年生まれ。現在、京都大学大学院人間・環境学研究科教授。京都大学文学部(独文学専攻)卒業。神戸大学大学院文化学研究科博士課程(英文学専攻)単位取得退学。学術博士。専門はイギリス小説。著書に、『批評理論入門』(中公新書)、『小説読解入門』(中公新書)、『深読みジェイン・オースティン』(NHKブックス)、『謎解き「嵐が丘」』(松籟社)、『ミステリーの人間学』(岩波新書)など。

「2023年 『変容するシェイクスピア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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