平和構築―アフガン、東ティモールの現場から (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004311904

作品紹介・あらすじ

世界各地で武力紛争が絶えない中、紛争の終結と国家の再建、そして平和の定着をどう実現するか。武装解除、選挙の実施、経済計画…。著者は緊迫するアフガンと東ティモールで、政治指導者や軍閥へのインタビュー、住民の意識調査を実施。その結果から、あるべき「平和構築」を提言する。国連は、日本は、何をなすべきなのか。

感想・レビュー・書評

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  • 平和構築とは安定的な平和を作りだすものであり、
    終戦のあとのいわゆる事後処理がより積極的意味合いをもって要請されていることを意味する言葉だ。

    非常に具体的かつ明晰な報告書のような体裁で、読みやすくある。
    国際貢献という言葉で日本の政治家が言うのはこちらであって欲しかった。

  • 【平和構築の国連の定義】
    紛争後の地域において、国歌の再建を通じ、紛争の再発を防ぎ、平和を定着化させる活動p1 (peacebuilding)
    主要地帯: イラク、アフガン、東ティモール、スーダン、シエラレオネ、ブルンジ、ハイチ、コンゴ民主共和国

    平和構築は「平和を築きたい」と心から希求する国民と、それを支援する国際社会が連携することで初めて実現される。p22

    冷戦のくびきから放たれ、国連が積極的に平和作りに関与できるようになった事態を受け、
    当時のブトロス・ガリ国連事務総長は、1992年、国連の今後の役割を論じたリポート「平和への課題」を発表した。このリポートの中で"Post-Conflict Peace-building"は「紛争後の地域において統治機構の再建を支援し、紛争の再発を防ぎ、平和を定着化させる活動」と定義し、国連の主要課題として明確に位置付けられた。p28

    「和平調停活動」、学校でも平和維持活動」、「平和構築活動」は相互に連携している。p29

    【平和執行(Peace Enforcement)】
    まだ武力紛争が終わっていない状況で、国連によって承認された軍隊(主に多国籍軍)が強制的に介入し、紛争を終結させようとする武力行使を指す。
    →この「平和執行」活動と、「平和構築」活動の違いを理解することは、国連が果たす役割や、日本が今後果たすべき役割を考える上で、決定的に重要である。p30
    平和構築活動は国連事務総長特別代表が指揮する国連ミッションと国連PKO部隊が主役を務めることが多い。つまり指揮権は一元的に国連事務総長と
    その特別代表が握っている。一方で平和執行については、国連安保理がその介入を承認するものの、実際の軍事活動は、多国籍軍に委ねられることが圧倒的である。
    つまり平和執行は多国籍軍が行い、
    その後の平和構築活動は、
    国連PKO部隊と国連ミッションが主体となって行うという一つのパターンが、実際の平和構築の活動の中で生まれてきていることは注目されていい。

    暫定政府をどうつくるかは、極めて難しい問題で、国連をはじめとする和平仲介者が最も苦心する点である。p38

    政治プロセスとして多くの平和構築で行われるのが、
    1. 紛争の軍事的な要因を取り除くため、紛争当事者の武装解除、動員解除、元兵士の社会復帰(よくDDR=Disarmament, Demobilization, Reintegrationと呼ばれる)の支援
    2. 必要に応じて、新たな憲法の制定
    3. 新たな政権を平和的に樹立するための民主的な選挙の実施

    【レジティマシー】
    人々が社会のルールを、強制ではなく、自主的に受け入れ、従うように誘因する心理的な力があると定義される。p46
    軍事力による強制力だけでは、国家の統治は非常に困難である。なぜなら、多数の人々が、新たな政府やそのルールを正統なものと認識し、自主的に従うようにならなければ、いくら軍隊や警察があっても足りないからである。p49

    政府開発援助とNGOの有機的連携を
    P230

    JICAで専門家のプールを- cf. 「平和構築タスクフォース」p234

    【総括】
    著者の紛争地でのケーススタディを下地に書かれた著作。
    実証的に書かれているのでわかりやすい。

  • [ 内容 ]
    世界各地で武力紛争が絶えない中、紛争の終結と国家の再建、そして平和の定着をどう実現するか。
    武装解除、選挙の実施、経済計画…。
    著者は緊迫するアフガンと東ティモールで、政治指導者や軍閥へのインタビュー、住民の意識調査を実施。
    その結果から、あるべき「平和構築」を提言する。
    国連は、日本は、何をなすべきなのか。

    [ 目次 ]
    第1章 「平和構築」の現場から―生と死を賭けた活動
    第2章 平和構築とは何か―その歩みと考え方
    第3章 拡大する負の連鎖―アフガン(1)
    第4章 「非合法武装組織」解体の試練―アフガン(2)
    第5章 タリバンとの和解は可能か―アフガン(3)
    第6章 自立をどう実現するか―東ティモール
    第7章 これからの平和構築と日本

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    [ 参考となる書評 ]

  •  平和構築に関する各種の書物は近年急速に増えているが、そこには以下のような傾向に見て取れるように思われる。
     一つは、平和構築に直接・間接に関わった実務家による経験論、あるいは彼らによる政策論としての書物である。
     もう一つは、上記のような側面を持ちながらも、どちらかと言えば学術的な要素が強く、どのような形で戦後平和構築に取組む事が国家再建や平和安定に繋がるのかという政治・経済学的アプローチに基づく研究書である。こちらの場合は、確かに経済学における開発論からのアプローチが主流ではあるが、他方で政治学の制度論や民主化論、または行政論(あるいはガバナンス)等という問題からも広くアプローチされている。
     こうした上記二つの側面を併せ持った書物も最近では多く、実務と研究の橋渡しも積極的に行われている。本書はまさしくそうした本であると言えよう。著者は、元NHKのディレクターでありながらも退職後、学術界に足を踏み入れ、平和構築の理論的・概念的側面について理解を深めながら、アフガンや東ティムールでインタヴュー等を行い、事例研究に取組んでいる。
     これらの国々で生じている課題を見つめ、政策的に如何にこれを改善する事が出来るのだろうかという命題に取組んでいる書物ではあるが、平和構築に広く関心を持っている一般人、学部生、修士生等には興味深い内容のようにも思う。

  • アフガニスタンや東ティモールでの現地調査の結果が反映されていて、読んでいて説得力があった。

  • アフガン・東ティモールのケーススタディーを下敷きにし、これからの平和構築のあり方を模索する。
    その中で日本のこれからのあり方に対しても提言を行っている。

    アフガン国民から日本人に対する信頼は大きい。
    また、国連のみが持つ、レジティマシーは国連の強みである。

  • 綿密な調査を元にしたレポートです。メディアだけではわからない情報満載です。勉強になりました。
    また、著者の生き方も参考になりました。こんな道もあるのかと、、、全く同じ道はムリかもしれませんが、参考になります。

  • 元NHKディレクターによる、アフガニスタンと東ティモールをサンプルとした「平和構築」に関する研究と考察。

    最近アフガン情勢に興味があること、それから著者がいま在籍している大学院が私と縁のある大学ということから読み始めました。
    元々の職業柄だとは思うけれど、日本人でありながら今の混沌を極めるアフガニスタンの現地に入り、多くの一般民衆にアンケートを取ったというフットワークの軽さには敬意を覚えずにはいられない。

    「Legitimacy(正統性)」という言葉の重さが良く分かった。
    そして、アフガンにおいて日本の支援が高く評価されているということは、(著者の贔屓目に拠るところもあるかもしれないけれど)純粋に嬉しい。確かに、著者が提言するとおり、日本が「平和構築国家」としてのアイデンティティを確立させることは、世界にとっても、日本自身にとっても実りのあることだと思う。

  • アフガン、東ティモールにおける和平調停、平和執行に関する過去の反省、今後の有効な方法の提案が書かれます。様々な立場を調整する必要があり、和解に導くためにどの組織がどの役割を担うのが適切であるかを様々な選択肢から決定せねばならないことが分かる。(新書であることから個々の組織の詳細は各々で調べよう)。現状と提案の箇所については今すぐ読むべき本かもしれない。
     多国籍軍は欧米中心であるため、アジアやアフリカで平和執行に関与した場合と、欧州の一員の意識があるコソボで執行した場合とで(植民地主義の復活か?という意識の有無で)民衆の抵抗感の違いがあるだろうと指摘がある。私は後者のケース(そういう意識が起こらない)を想像したことがなかった。

  • (2009年9月16日読了)
    各地で民族紛争が行われ、国連監視団等が駐留などして、平和への道筋を探るということが行われています。どうしたら、二度と紛争のおこらない状態に持っていけるのかということがこの本のテーマとなります。
    著者は、アフガニスタンや東ティモールの現場に出かけて、住民の声など聴きながらその結果をまとめ、国連機関などに提言して役立ててもらおうとしています。

    「平和構築」は、国連によって「紛争後の地域において、国家の再建を通じ、紛争の再発を防ぎ、平和を定着させる活動」と定義されている。(i頁)
    ●アフガニスタンの現状
    2001年のアメリカの侵攻と、タリバン政権の崩壊を契機に始まったアフガンでの平和構築。2004年頃までは治安も安定し、カブールからカンダハールまで、陸路で行くことができた。2005年から始まった急激な治安の悪化により、現在、国連職員は皆、国連専用機で空路カンダハールに入る。
    ●平和構築の体制
    通常の平和構築活動で行われてきた「国連ミッションが、政治的な役割と、軍事的な役割の双方を指揮、コントロールする」という体制は、アフガンでは採用されなかった。
    政治的な役割を担う「国連アフガン支援ミッション」と、治安の維持と、アフガン軍やアフガン警察の整備を支援する「国際治安支援部隊」、そしてタリバン・アルカイダ掃討作戦を行うという「不朽の自由作戦」の三者が、それぞれ別々の役割を担うことになった。
    アメリカは、「不朽の自由作戦」を主導し、「国際治安支援部隊」は、NATO加盟国が参加し、アメリカ軍も参加している。アフガン住民から見ると2つの区別がつかない。
    アメリカ軍による「不朽の自由作戦」への反感が「国際治安支援部隊」への反感へとつながっている。
    ●武装解除は日本主導(97頁)
    2003年2月から2006年6月まで、「武装解除」、「動員解除」、「社会復帰」プログラムが実施された。
    目的は、アフガンに無数に存在する軍閥を解体し、中央政府が直接指揮するアフガン軍とアフガン警察が、アフガン全土の治安をコントロールするためだった。
    社会復帰プログラムの内容は、「農業に従事するための支援」「職業訓練」「小規模ビジネスの立ち上げ支援」などが主であった。
    ●東ティモール(177頁)
    16世紀前半、ティモール島はポルトガルが征服。
    1859年、島の東側をポルトガルが、西側をオランダが分割統治するようになった。
    1945年、西ティモールはインドネシアの一部として独立。東ティモールはポルトガルが植民地支配を続けた。
    1975年、東ティモール、独立宣言。インドネシアが軍事侵攻し、東ティモール占領。
    1976年、インドネシアが東ティモールを併合。
    1999年8月30日、投票の結果、東ティモールは「独立」を選択。
    9月4日、インドネシア軍や警察、「併合支持派」の民兵が東ティモール全土で略奪と放火。
    9月19日、多国籍軍の派遣により治安回復。
    2002年5月20日、東ティモール独立宣言。
    2005年5月、国連PKO部隊と国連警察撤退。
    2006年4月、暴動発生、治安崩壊、多国籍軍派遣。

    著者 東 大作
    1969年、東京に生まれる
    1993年から2004年までNHKディレクター
    「我々はなぜ戦争をしたのか―ベトナム戦争・敵との対話」(放送文化基金賞)
    「イラク復興国連の苦闘」(世界国連記者協会・銀賞)
    2004年8月からカナダのブリティッシュ・コロンビア大学大学院に留学
    2006年に修士課程を修了
    国際政治を専攻
    (2009年10月1日・記)

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