ノモンハン戦争 モンゴルと満洲国 (岩波新書 新赤版1191)

  • 岩波書店 (2009年6月19日発売)
3.61
  • (11)
  • (28)
  • (22)
  • (8)
  • (0)
本棚登録 : 324
感想 : 46
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784004311911

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  田中克彦氏は言語学者である。その言語学者である氏がなぜノモンハンなのか、そう思ってぼくは最初この本を買いかねていた。しかし、だんだん気になって手にとって、氏がもともとモンゴル学者であることを思い出した。本書はモンゴル語とロシア語の資料を読み解く著者しか書けない本である。ノモンハンと言うと、日本の軍備のお粗末さから多くの犠牲を出し、のちのちまで秘密のベールに覆われていたという凄惨なイメージがある。筆者の田中氏は、この戦争の背景に、コミンテルンの配下にあったモンゴル族と満州国にいたモンゴル族の統一を願う人々がいたことに思いをはせる。実際、モンゴル共和国はこの戦いによって独立を果たしたのだけれど、ノモンハンで死んだ人よりもはるかに多くのモンゴル人たちが、満州国とコミンテルンによって粛正されているのである。

  • SDGs|目標16 平和と公正をすべての人に|

    【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/705821

  • 日本の傀儡国家・満州国とソ連の傀儡国家・モンゴル人民共和国、二つの国家に分断されたモンゴル民族が、ノモンハン戦争で対峙する。
    あらためてソ連の全体主義の恐ろしさに震撼させられる。最終章で著者は、この戦争に大きな責任があるとして、辻政信という軍人を糾弾している。

  • 「ノモンハン」という言葉から、とかく戦史として語られることがほとんどの歴史上の出来事について、モンゴルという国または民族の視点からアプローチした本書は、その意味で画期的なものであると言えよう。

  • ノモンハン戦争―モンゴルと満洲国 (岩波新書 新赤版 1191)
    (和書)2010年08月07日 23:46
    田中 克彦 岩波書店 2009年6月


    柄谷行人さんの書評をみて読んでみました。

    とても良い作品でした。

    世界観が変わるぐらい。

    人は外見では解らないように、本も外見では解らないということだね。

  • 1939年。レトロな装備の日本陸軍が、ロシアモンゴル国境で、航空機、戦車や遠距離砲といった最新鋭の現代装備のソビエト軍に圧倒され蹴散らされた戦い。

    ささいな衝突だが、日本軍が現代兵器の戦争に初めて遭遇した地上戦であり、地政学的にも大変デリケートな場所での戦いで、その後の世界第二次大戦の前哨戦として、ヨーロッパの緊張にも少なからぬインパクトを与えた重要な戦い。

    独立を求めてソビエト、日本に翻弄されたモンゴルの志士たちの存在も、哀しい。

    今夏、朝日新聞が現地の衛星写真や再現映像を駆使した素晴らしいノモンハンのドキュメントシリーズを公開している。https://www.asahi.com/special/nomonhan/

  • 軍事衝突を描くのではなく、衝突が起こった背景を描くものだ。ソ連コミンテルン支配下のモンゴルと日本の傀儡・満州国に振り回されるモンゴルがどんな状況におかれていたのが分かる。決してモンゴルの独立を認めなかったスターリン。なのでモンゴルの人には満州が「隣の芝生」に見えたらしい。でもソ連についたモンゴルが独立し、満州国は消滅しちゃったわけだからモンゴルの選択は正しかったってことになるのかな。

  • ノモンハン戦争の通史を知るに手頃かと思い、著者が田中克彦であることも手伝って読み始めた。しかしながら、そのような内容のものではなく、この戦争の舞台となったモンゴルが、この戦争にどう関わったかを、モンゴルに関わる、また同時代であったスターリン時代のソ連の関わりとも絡めつつ、編まれた1冊であった。正直、とっつきにくくはあったが、後半にかかったころから、著者の意図していることが分かるようになった気がした。

  • モンゴルの専門家によるノモンハン事件の研究書。資料を公表してこなかったソ連崩壊後に本格的研究が始まり、ようやく全容が明らかになってきた。ノモンハン事件というと日ソの戦いとの認識があるが、モンゴルと漢民族との長い争いの歴史とモンゴルの独立願望、大国に挟まれた地政学的状況下、独立のためのソ連あるいは満州国(日本)への接近など、モンゴルの歴史を理解しなければ、ノモンハン事件の実態はわからないと主張する著者の意見には納得した。著者の熱心な研究により、この分野の研究は大きく進展したことは間違いない。ノモンハン事件を語る中心的研究書といえると思う。

  • 1939年夏に勃発したノモンハン事件について戦力や戦略についての議論は多いが、そこが誰の土地でその人々がどのような状況に置かれていたのかを追求した書は少ないという。著者は言語学者でありモンゴル語を専門とする。1989年以降ノモンハン戦争を解明するためソ連(当時)とモンゴル、日本で開催されてきたハルハ河円卓会議の議論の成果などをもとに、この戦争がモンゴル諸族にとってどのような戦争であったのかを明らかにしている。ノモンハンはモンゴル人民共和国と満洲国の国境地帯であり、モンゴル諸族は両国に分断されていた。分断されたモンゴルの人々は民族の独立を夢見て統一の機会を伺っていた。ソ連の傀儡国家であったモンゴル人民共和国はソ連の圧力を耐えず受け、ソ連によって粛清された人々の数はしれない。満洲国もモンゴル人を通じて作戦情報がソ連に漏れることを恐れ、多くのモンゴル人を排除していった。両国の国境はもとはと言えば、モンゴル諸族のうちのハルハ族とバルガ族との部族的な境界線に過ぎなかった。それが1921年モンゴル人共和国建国と1932年満州国建国により新たな国境問題としてソ連、日本の前に現れた。ノモンハン戦争の前にも国境付近での小競り合いはあり、当初満州国側はそこに居住するバルガ族がその当事者として対処していた。しかしソ連、日本(関東軍)が直接関与することで戦争は拡大し、モンゴル諸族の手を離れていった。モンゴルは今でもモンゴル国と中国内の内モンゴル自治区に分断されている。この分断は直接にはロシア(当時はソ連)と中国(当時は清)の国境争いとして画定したわけだが、日本と無関係ということではない。


  • ユダヤとドイツ側で、ホロコーストとジェノサイドと呼ぶのが異なるように、ノモンハンについても同じなんだな。ノモンハン「事件」だと思い込んでいた。
    まさしく、プロパガンダに嵌め込まれていたわけだ。
    また、満蒙と言う呼称は「満州国とモンゴル国」ではなく満州国に属する東部内モンゴルを意味する、と。

    満州国側よりもモンゴル側に寄った内容だったかな。
    モンゴル人の名前が慣れないので、中々頭に入ってこないが、満州を知る上では仕方がないな。

  • 2009年刊行。ソ連、中国(清朝から中華人民共和国まで)、そして日本(含む満洲国)といった大国に翻弄され続けたモンゴル。ノモンハン事件を切り口とし、事件前後におけるモンゴルの大国との奮闘史を描く。特に、ソ連(スターリン)への砂を噛むような外交努力は、モンゴル研究者たる著者でしか描き得ないだろう。旧満洲国~現在のモンゴル共和国~ロシア領内バイカル湖周辺まで及ぶモンゴル族の統一・独立機運、すなわち汎・モンゴル主義がソ連・日本にとって脅威であったし、現在の中国でも脅威という点は興味深い。視点転換に有益な書。

  • ノモンハン戦争をテーマに、辛亥革命から今まで残る汎モンゴル主義や、ソ連によるモンゴル人民共和国の政治的虐殺、満州国による満州国内モンゴル民族地域での弾圧、などを解説していく。ノモンハン事件は、両国に分断されたモンゴル人の接触機会として模索され開始した後、ソ連と日本満州によって大々的な衝突へとつながった不幸を持つ。講和会議でも両者はモンゴル民族の統一阻止を最重要視していた。今では、ソ連、中国、モンゴルに分断されたモンゴル民族。中国国内の内モンゴル自治区にはもうモンゴル人は少ないと言われており、ソ連によって建設されたモンゴルという国の歴史の悲劇を伝えている。ソ連崩壊でソ連の軛から開放されたモンゴルは、これからどういう道を模索していくのだろうか。

  • とりあえずこれも、満州界隈の読み物ってことで手に取ってみた。でも、大まかな流れくらいしか知らず、小説くらいでしか読んだことのない状態だと、ここに書かれている内容はちょっと細かすぎて手に余る感じ。という訳で、この時代にもう少し詳しくなったら読み直すかもだけど、今のところは積読ことにします。

  • 1939年,モンゴルと満洲国の間で国境線をめぐって争われたノモンハンの戦いでは,双方の死傷者・行方不明者が2万人にも達した.これは単なる事件ではなく明白に戦争であった.歴史的・地理的条件から説き起こし,最新の研究成果にもとづいて,その真相を明らかにしながら,前史から終結までを生きいきと描きだす.

  • 関東軍が背後に控える満洲軍とソ連が背後に控えるモンゴル軍による衝突「ノモンハン事件」をこれまでにない視点でとらえたらしい本書。

    正直予備知識がなかったので、背景、経緯、戦術レベルまで概要がわかるとよいと思って手にとった。

    しかし、この本は従前の戦術局面にフォーカスしたアプローチにアンチテーゼを示し、むしろ2代大国に翻弄され2陣営にわかれ、指導者をソ連や日本に暗殺されながらも最終的に独立を掴み取ったモンゴル人を中心に展開される。

    従来の史実を十分に知っているうえで新しい視点として読むべき本の様ではある。

  • 著書の主張通り、いわゆる戦史ではない、奥深い近代史に触れることができた。

  • 日中戦争の最中、
    1939年に勃発したノモンハン戦争について記した一冊。
    戦争の経過については序盤にさらりと触れられるのみで、
    紙面の多くを背景やこれに至る経緯の解説に割いている。

    黄禍論としての汎モンゴル主義を
    モンゴル民族に限定させることで逆に利用し、
    モンゴル人民共和国を縛った上で
    関東軍を誘い込んだソ連のしたたかさが興味深い。

    またソ連と中国、日本に翻弄され続けた
    モンゴル民族の歴史に触れることができ勉強になった。

  • ノモンハン事件の概略について書かれた本

    ソ連の戦車部隊に対して、日本軍は日本刀や、サイダーびんにガソリンを詰めた火炎瓶で戦車の下に投げ込み炎上させ、捨て身の戦術で襲いかかったみたいだけど、正気の沙汰とは思えない。それで「玉砕」したら、護国の神として拝められる。
    →この経験を活かしていたら、太平洋戦争でもあのような敗北は無かっただろうし、もう少し機械化(戦車の導入など)進んでいたのではないかなと思う。

    この戦いでソ連の圧倒的な数量と性能の戦車と、航空機に対し、日本軍の貧弱な装備でよく戦ったとあるが、結果的に日本は敗北しているわけだし、どうなのだろうか…
    →負けても次に活かすことの大切さだと思う。

    モンゴル人民共和国(当時、外部との交流をソ連により遠ざけられていた。ベールに包まれていた)は、日本によって成立した満州国に対して好意的に捉えていた。楽園に近いとも思われていた。しかし、日本が満州国のモンゴル人代表リンション興安北省省長を殺害したため、モンゴル人民共和国は満州、日本を信じなくなった。というのも、それまでソ連のモンゴル人民共和国の対応は、抑圧に近く、ソ連の方式を強制的に取り入れさせる形に近かった。しかし、日本の満州に対する対応はそれよりは自由が認められていた。
    →日本も満州国を傀儡国として扱っていたにせよ、ソ連よりは自由度が高かったはず。一時の感情ではなく、長期的な視野で満州国に対して対応していれば、もしかしたらモンゴル人民共和国が日本側についていたのかもしれない…たらればの話だけど。

    かなり前に読み終わった本なので、感想も曖昧で忘れかかっていた。
    これからは、読んだらすぐ感想を書こうと思った。
    結構、深いところまで突っ込んでいて難しかった。でも所々ではっとする所があった。

  • ノモンハンは日ソの戦いとのみ認識し、満州とモンゴル、「満蒙」の関係については認識していなかった。
    しかし、この本でモンゴル側から見た満州、中国について理解できた。

全42件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

田中 克彦(たなか・かつひこ):1934年、兵庫県生まれ。東京外国語大学モンゴル語科、一橋大学大学院社会学研究科、ボン大学哲学部にて、モンゴル語、言語学、民族学、文献学を学ぶ。東京外国語大学、岡山大学、一橋大学、中京大学にそれぞれ在職。現在、一橋大学名誉教授。主な著書に『ことばは国家を超える』(ちくま新書)、『差別語からはいる言語学入門』(ちくま学芸文庫)、『ことばと国家』(岩波新書)、『「シベリアに独立を!」』(岩波現代全書)、『田中克彦自伝』(平凡社)、『言語学者が語る漢字文明論』(講談社学術文庫)などがある。

「2025年 『ことばの道草 言語学者の回想と探求』 で使われていた紹介文から引用しています。」

田中克彦の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×