ノモンハン戦争―モンゴルと満洲国 (岩波新書)

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  • 岩波書店
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レビュー : 40
  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004311911

作品紹介・あらすじ

一九三九年のノモンハン戦争は、かいらい国家満洲国とモンゴル人民共和国の国境をめぐる悲惨な戦闘の後、双方それぞれに二万人の犠牲をはらって終結した。誰のため、何のために?第二次大戦後、満洲国は消滅して中国東北部となり、モンゴルはソ連の崩壊とともに独立をまっとうした。現在につながる民族と国家の問題に迫った最新の研究。

感想・レビュー・書評

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  •  田中克彦氏は言語学者である。その言語学者である氏がなぜノモンハンなのか、そう思ってぼくは最初この本を買いかねていた。しかし、だんだん気になって手にとって、氏がもともとモンゴル学者であることを思い出した。本書はモンゴル語とロシア語の資料を読み解く著者しか書けない本である。ノモンハンと言うと、日本の軍備のお粗末さから多くの犠牲を出し、のちのちまで秘密のベールに覆われていたという凄惨なイメージがある。筆者の田中氏は、この戦争の背景に、コミンテルンの配下にあったモンゴル族と満州国にいたモンゴル族の統一を願う人々がいたことに思いをはせる。実際、モンゴル共和国はこの戦いによって独立を果たしたのだけれど、ノモンハンで死んだ人よりもはるかに多くのモンゴル人たちが、満州国とコミンテルンによって粛正されているのである。

  • 「ノモンハン」という言葉から、とかく戦史として語られることがほとんどの歴史上の出来事について、モンゴルという国または民族の視点からアプローチした本書は、その意味で画期的なものであると言えよう。

  • ノモンハン戦争―モンゴルと満洲国 (岩波新書 新赤版 1191)
    (和書)2010年08月07日 23:46
    田中 克彦 岩波書店 2009年6月


    柄谷行人さんの書評をみて読んでみました。

    とても良い作品でした。

    世界観が変わるぐらい。

    人は外見では解らないように、本も外見では解らないということだね。

  • 1939年。レトロな装備の日本陸軍が、ロシアモンゴル国境で、航空機、戦車や遠距離砲といった最新鋭の現代装備のソビエト軍に圧倒され蹴散らされた戦い。

    ささいな衝突だが、日本軍が現代兵器の戦争に初めて遭遇した地上戦であり、地政学的にも大変デリケートな場所での戦いで、その後の世界第二次大戦の前哨戦として、ヨーロッパの緊張にも少なからぬインパクトを与えた重要な戦い。

    独立を求めてソビエト、日本に翻弄されたモンゴルの志士たちの存在も、哀しい。

    今夏、朝日新聞が現地の衛星写真や再現映像を駆使した素晴らしいノモンハンのドキュメントシリーズを公開している。https://www.asahi.com/special/nomonhan/

  • ノモンハン戦争そのものではなく、それに至る歴史背景が主にソ連、モンゴルの視点から詳述されている。あとがきで書かれているように、この戦争は辻の功名心が引き起こした無謀で無責任な「事件」であると認識していたが、相対するソ・モ側では全く異なる文脈で捉えられていることを知ることができた。満州国・関東軍は悪意があってかつ未熟な組織だったが、ソ連という国は同じように悪意がある上に国際政治に熟達しているから輪をかけて性質が悪い。

    どうでも良いけどこの著者の文章は酷いね。語り手の視点が非明示的にあちこちに移ったり、過去と現在の話が混在していたり、本筋の話の中にどうでも良いトリビアが同じ重要性で語られていたり、とにかく整理されておらず読者を無用に混乱させる。

  • 軍事衝突を描くのではなく、衝突が起こった背景を描くものだ。ソ連コミンテルン支配下のモンゴルと日本の傀儡・満州国に振り回されるモンゴルがどんな状況におかれていたのが分かる。決してモンゴルの独立を認めなかったスターリン。なのでモンゴルの人には満州が「隣の芝生」に見えたらしい。でもソ連についたモンゴルが独立し、満州国は消滅しちゃったわけだからモンゴルの選択は正しかったってことになるのかな。

  • ノモンハン戦争の通史を知るに手頃かと思い、著者が田中克彦であることも手伝って読み始めた。しかしながら、そのような内容のものではなく、この戦争の舞台となったモンゴルが、この戦争にどう関わったかを、モンゴルに関わる、また同時代であったスターリン時代のソ連の関わりとも絡めつつ、編まれた1冊であった。正直、とっつきにくくはあったが、後半にかかったころから、著者の意図していることが分かるようになった気がした。

  • モンゴルの専門家によるノモンハン事件の研究書。資料を公表してこなかったソ連崩壊後に本格的研究が始まり、ようやく全容が明らかになってきた。ノモンハン事件というと日ソの戦いとの認識があるが、モンゴルと漢民族との長い争いの歴史とモンゴルの独立願望、大国に挟まれた地政学的状況下、独立のためのソ連あるいは満州国(日本)への接近など、モンゴルの歴史を理解しなければ、ノモンハン事件の実態はわからないと主張する著者の意見には納得した。著者の熱心な研究により、この分野の研究は大きく進展したことは間違いない。ノモンハン事件を語る中心的研究書といえると思う。

  • 1939年夏に勃発したノモンハン事件について戦力や戦略についての議論は多いが、そこが誰の土地でその人々がどのような状況に置かれていたのかを追求した書は少ないという。著者は言語学者でありモンゴル語を専門とする。1989年以降ノモンハン戦争を解明するためソ連(当時)とモンゴル、日本で開催されてきたハルハ河円卓会議の議論の成果などをもとに、この戦争がモンゴル諸族にとってどのような戦争であったのかを明らかにしている。ノモンハンはモンゴル人民共和国と満洲国の国境地帯であり、モンゴル諸族は両国に分断されていた。分断されたモンゴルの人々は民族の独立を夢見て統一の機会を伺っていた。ソ連の傀儡国家であったモンゴル人民共和国はソ連の圧力を耐えず受け、ソ連によって粛清された人々の数はしれない。満洲国もモンゴル人を通じて作戦情報がソ連に漏れることを恐れ、多くのモンゴル人を排除していった。両国の国境はもとはと言えば、モンゴル諸族のうちのハルハ族とバルガ族との部族的な境界線に過ぎなかった。それが1921年モンゴル人共和国建国と1932年満州国建国により新たな国境問題としてソ連、日本の前に現れた。ノモンハン戦争の前にも国境付近での小競り合いはあり、当初満州国側はそこに居住するバルガ族がその当事者として対処していた。しかしソ連、日本(関東軍)が直接関与することで戦争は拡大し、モンゴル諸族の手を離れていった。モンゴルは今でもモンゴル国と中国内の内モンゴル自治区に分断されている。この分断は直接にはロシア(当時はソ連)と中国(当時は清)の国境争いとして画定したわけだが、日本と無関係ということではない。


  • ユダヤとドイツ側で、ホロコーストとジェノサイドと呼ぶのが異なるように、ノモンハンについても同じなんだな。ノモンハン「事件」だと思い込んでいた。
    まさしく、プロパガンダに嵌め込まれていたわけだ。
    また、満蒙と言う呼称は「満州国とモンゴル国」ではなく満州国に属する東部内モンゴルを意味する、と。

    満州国側よりもモンゴル側に寄った内容だったかな。
    モンゴル人の名前が慣れないので、中々頭に入ってこないが、満州を知る上では仕方がないな。

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著者プロフィール

一橋大学名誉教授

「2021年 『ことばは国家を超える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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