ダーウィンの思想―人間と動物のあいだ (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312024

作品紹介・あらすじ

ダーウィンはいかにして生物学から神を追放し、人間と動物をつないだのか。ビーグル号の航海に始まり、主著『種の起源』と『人間の由来』に至る思想的成長の道筋をたどる。自然淘汰・種の分岐の原理、進化の偶然性とデザインの問題、進化と道徳の関係を明快に解きほぐす。徹底して人間を動物界に投げ戻すダーウィンの真骨頂。

感想・レビュー・書評

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  • ダーウィンの進化論は、大仮説であり、よくわからない
    ところがある。
    この本は、よくわからないところを、うまく、編集している。

    ピーグル号に乗ったダーウィンが、ライエルの 地質学原理を
    読み進めながら、現場で、自分で観察し、思考することで、
    ライエルの突き当たった壁を突き破って行く。
    地質学原理は、地質学だけでない視野の広い本なのですね。

    ダーウィンの中で、進歩説、転成説から、進化論に
    突き進んで行くことが、巧みに描かれている。
    読みながら、ダーウィンは、徹底して 神と戦った人だと思った。

    種の起源を作り上げて行く過程で、様々な出会いがあり、
    徐々に、一つの物語になる。
    この本で面白かったのは 分岐の原理である。
    ダーウィンが、遠慮し、戸惑いながら書いているのを、
    内井惣七が 、丁寧にまとめている。

    ダーウィンのデモンという切り口もユニークでわかりやすい。

    今西錦司の棲み分け論に対して、痛烈な言葉をはなっているのが、
    感情的で、大人気ないようにも見える。違った表現があるだろうに。
    何か、今西錦司に対して嫌な思いもあったのだろうか。

    道徳哲学に対して、ダーウィンが、興味深く、幅広く追求したのは、
    ライエルの言葉にあった。
    『人間の卓越性は、人間が下等な動物と共有するそのような性質や
    能力に依存するのではなく、理性にあって、
    それより、人間は彼らから区別されるのである。』
    動物と人間を連続的につなぐことを拒絶していた。
    さらにライエルは思っていた。
    『動物界に道徳性や高い知性はないが、人間にはある。
    ではその道徳性は、どこからきたのか?』

    ダーウィンはノートに書く
    『蜜蜂の巣がミツバチの本能なしでは存続できないのと同様、
    社会は道徳感覚なければ存続できない。』
    いやー。あっぱれ。

    内井惣七は、ダーウィンを褒め称える。
    『人間から文明の衣を剥ぎ取り、
    自然界に投げ戻して、道徳の機能に着目して、
    他の社会動物と比較する。』

  • 今一つよく理解できなかったので、機会を見て再読の所存。

  • (2015.09.23読了)(2015.09.18借入)
    副題「人間と動物のあいだ」
    著者の専門は、科学哲学ということですので、生物学や地質学の専門家ではありません。従って、ダーウィンの進化論の妥当性を論じているわけではありません。
    ダーウィンの読んだ本とダーウィンの書いたものを丹念にたどりながら、どのようにしてダーウィンの思想ができあがったのかを解明しようとしたものです。

    「第一章では、ダーウィンのビーグル号航海中の思想的成長と、いくつかの業績を確認する。」(ⅱ頁)
    フンボルト『南アメリカ旅行記』
    ハーシェル『自然哲学研究に関する予備的考察』(1830年)
    ライエル『地質学原理』
    ダーウィン『ビーグル号航海記』初版(1839年5月)
    ダーウィン『スケッチ』(1842年)
    匿名『創造の自然史の痕跡』(1844年)
    ダーウィン『エッセイ』(1844年)
    ダーウィン『ビーグル号航海記』第二版(1845年)
    ダーウィン『ビーグル号日記』(1988年)
    ライエルの『地質学原理』は、題名からすると地層とか地殻変動とか岩石の花だけなのかと思っていたのですが、生物の化石やその変化についても触れていて、進化論につながることも述べられている、ということです。

    「第二章では、彼がイギリスに帰国後、進化思想をはぐくむなかで、「いかにして、自然淘汰説と妻とを同時に手に入れたか」を明らかにする。」(ⅱ頁)
    ダーウィン『ノートブック』(1987年)
    ロバート・マルサス『人口論』
    ランドール・ケインズ『ダーウィンと家族の絆』(2001年)
    ヒューム『人間本性論』(1740年)
    ヒューム『人間知性研究』

    「第三章では、自然淘汰説のエッセンスを、彼が創作した「ダーウィンのデモン」という架空の存在者の比喩を借りて解説しておく。」(ⅲ頁)
    ラプラス『確率の哲学的試論』
    ダーウィン『スケッチ』(1842年)
    ダーウィン『エッセイ』(1844年)

    「第四章では、彼の自然淘汰のなかで「分岐の原理」がどういう役割を果しているのかの謎を解明した。」(ⅲ頁)
    ダーウィン『種の起源』(1859年)
    ウォレス『ダーウィニズム』(1889年)
    ダーウィン『種の大著』(1975年)
    ベイツ『アマゾン河の博物学者』(1863年)
    ワイナー『フィンチの嘴』(1994年)

    「第五章では、神のような知性的な設計者を要請せずに、いかにして生物の複雑な機能や見事なデザインが生まれたことを説明できるのか、を扱う。」(ⅲ頁)
    ダーウィン『ランが昆虫によって受粉させられるための様々な仕組み』(1862年)
    リチャード・ドーキンス『ブラインド・ウォッチメイカー』
    ダニエル・デネット『ダーウィンの危険な思想』
    ダーウィン『飼育栽培下の動植物の変異』(1868年)

    「第六章は、ダーウィンの道徳起源論について扱う。」(ⅳ頁)
    ライエル『人間の古さ』(1863年)
    トマス・ヘンリー・ハクスリー『自然界での人間の地位についての証拠』(1863年)
    ダーウィン『人間の由来』(1871年)
    ダーウィン『人間および動物における感情の表現』(1872年)
    内井惣七『進化論と倫理』
    ミル『功利主義』(1863年)
    リチャード・ドーキンス『利己的な遺伝子』
    ド・ヴァール『政治をするサル』(1982年)
    ド・ヴァール『利己的なサル、他人を思いやるサル』(1996年)

    【目次】
    まえがき
    第一章 ビーグル号の航海
    (1)ライエルに導かれるダーウィン
    (2)ライエルからの離反のきざし
    第二章 結婚と自然淘汰説
    第三章 ダーウィンのデモン―進化の見えざる手
    第四章 種はなぜ分かれていくのか―分岐の原理
    (1)ウォレスの影
    (2)分岐の原理とは?
    (3)フィンチのクチバシ
    第五章 神を放逐―設計者なしのデザイン
    第六章 最後の砦、道徳をどう扱うか
    (1)ライエルの最後の砦
    (2)動物と人間の連続性
    (3)道徳性の起源
    (4)道徳性進化のシナリオ
    (5)動物のまつりごとと仁義
    文献

    ●ライエルの地質学における方法論(13頁)
    (1)自然の基本法則は時間を通じて不変であると見なすべきである。
    (2)われわれが現在見ることのできる原因のみに基づいて地質学的変化を説明すべきである。
    (3)それらの原因は、今も昔も、強さが変わっていないと見なすべきである。
    ●道徳感覚(50頁)
    ミツバチの巣がミツバチの本能なしでは存続できないのと同様、社会は道徳感覚がなければ存続しえない。
    ●神のデザイン(143頁)
    自然淘汰による「創造」や「デザイン」は、盲目的に働いてなおかつ「あたかも前もって見通したかのような」見事な適応を結果としてもたらすところに値打ちがある。
    ●『人間の由来』(159頁)
    『人間の由来』全体を貫くダーウィンの最も印象的な主張は、「動物と人間の連続性」のテーゼである。簡単に言えば、人間の身体的特徴や能力、心的能力、そして道徳的能力に至るまで、すべて動物的特徴や能力に起源をもち、連続的につながるはずだという主張である。
    ●人間を特別視する論拠(164頁)
    (1)人間のみが漸進的な改善能力をもつ。
    (2)人間のみが道具を使う能力をもつ。
    (3)人間のみに抽象能力、自意識、あるいは心的個性が備わっている。
    (4)人間のみが言語を使う能力をもつ。
    (5)人間のみに美的感覚がある。
    (6)人間のみに信仰心が備わっており、宗教が可能である。
    ダーウィンの反論
    「彼らに少なくとも萌芽的な形で備わっている能力と人間の能力との間に越えがたいギャップはない」

    ☆関連図書(既読)
    「ダーウィン先生地球航海記(1)」チャールズ・ダーウィン著・荒俣宏訳、平凡社、1995.06.23
    「ダーウィン先生地球航海記(2)」チャールズ・ダーウィン著・荒俣宏訳、平凡社、1995.10.02
    「ダーウィン先生地球航海記(3)」チャールズ・ダーウィン著・荒俣宏訳、平凡社、1995.11.20
    「ダーウィン先生地球航海記(4)」チャールズ・ダーウィン著・荒俣宏訳、平凡社、1996.01.20
    「ダーウィン先生地球航海記(5)」チャールズ・ダーウィン著・荒俣宏訳、平凡社、1996.02.23
    「ダーウィン」八杉龍一編、平凡社、1977.01.14
    「種の起原」チャールズ・ダーウィン著・堀伸夫・堀大才訳、朝倉書店、2009.05.10
    「ダーウィン『種の起源』」長谷川眞理子著、NHK出版、2015.08.01
    「さよならダーウィニズム」池田清彦著、講談社選書メチエ、1997.12.10
    「失われた化石記録」J.ウィリアム・ショップ著・阿部勝巳訳、講談社現代新書、1998.03.20
    「NHKスペシャル 生命大躍進」生命大躍進制作班著、NHK出版、2015.07.10
    (2015年9月26日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    ダーウィンはいかにして生物学から神を追放し、人間と動物をつないだのか。ビーグル号の航海に始まり、主著『種の起源』と『人間の由来』に至る思想的成長の道筋をたどる。自然淘汰・種の分岐の原理、進化の偶然性とデザインの問題、進化と道徳の関係を明快に解きほぐす。徹底して人間を動物界に投げ戻すダーウィンの真骨頂。

  • 請求記号:S2307
    資料ID:50052853
    配架場所:図書館1階東館 テーマ展示

  • 人間の動物に対する優位性を捨てる。「進化」という言葉は進化が優位性を獲得するものだと思われがちだけど、ダーウィンはメタ的な視点を持っているのでそこに関してはふれていない。。。?

  • 著者の専門は科学哲学であり,ダーウィン「自体」についての研究成果である.
    進化論として有名なダーウィンであるが,進化論自体と同時に同時代の研究者とのつながりについても解説される.最終章では道徳について考え,人間と動物に本質的な違いがあるのかどうか,ダーウィンの思想が語られる.

  • 哲学者である著者が、ダーウィンの功績を論じた本。
    やや読みにくいので星2つ。
    ダーウィンが「種の起源」(1859)を発表した頃、万能の神がデザインして人間と動物を作ったというキリスト教の教えに則り、人間とその他の生き物は違うという考えが残っていた。それに対しダーウィンが著書「人間の由来」(1874)にて人間特有とされてきた道徳を獲得したことも自然淘汰の結果であることを論証した点、彼がそれに気づいたのは、かなり早い時期であるものの、発表に当たっては自身の評価が学会に定着してから行ったことが興味深い。
    ダーウィンは、同時代の哲学者J.S.ミルの「功利主義」(1863)を以下のように批判した。
    ダーウィンは「進化論によれば動物と人間との連続性は疑いえない。したがって、社会的動物の社会的感情が本能的である以上、人間の社会的感情にも本能的な部分があることを否定することはできない。また、人間の道徳に生得的(遺伝的)な側面があることも否定できない。」(p173-174)
    20世紀末にオランダ出身のフランス・ド・ヴァールが、ダーウィンの頃は進んでいなかった類人猿の研究によりダーウィンの説を強力に裏付けている。「道徳の素材となるような能力や心証がほかの動物にも見られること、あるいは霊長類には萌芽的な道徳さえ見られること」(p200)
    動物と人間が連続した存在であるという説が定説となっている今日、人間がその他の動物の尊厳を意識する時代になってきました。
    今後も全ての生き物にとって幸せをもたらすことができたら、生命の起源から進化を解き明かしたことの意義もあるのではと思います。

  •  ビーグル号の航海。過去の地質の変化を、聖書の権威によってではなく、現在活動している原因すなわち時間において不変な自然の基本法則によって説明しようとするライエルに、ダーウィンは魅かれた。地層に含まれる化石を根拠にしたラマルクの転成説を批判し、動物と人間との連続性を拒否するライエルは、野生フェーゴ人にショックを受けることもないのだろう。

  • [ 内容 ]
    ダーウィンはいかにして生物学から神を追放し、人間と動物をつないだのか。
    ビーグル号の航海に始まり、主著『種の起源』と『人間の由来』に至る思想的成長の道筋をたどる。
    自然淘汰・種の分岐の原理、進化の偶然性とデザインの問題、進化と道徳の関係を明快に解きほぐす。
    徹底して人間を動物界に投げ戻すダーウィンの真骨頂。

    [ 目次 ]
    第1章 ビーグル号の航海
    第2章 結婚と自然淘汰説
    第3章 ダーウィンのデモン―進化の見えざる手
    第4章 種はなぜ分かれていくのか―分岐の原理
    第5章 神を放逐―設計者なしのデザイン
    第6章 最後の砦、道徳をどう扱うか

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 本書の主要なテーマは2つある。

    1つは、サブタイトルにもなっている、
    「人間と動物の連続性」である。
    進歩説にしろ、転成説にしろ、
    単純で下等な生物から高等な生物への連続的変化を唱える説は、
    ライエル初め、当時多くの研究者が反対していた。

    「動物界にはない、人間固有の理性や道徳性はどこから来るのか」
    この問いを答えない限り、
    人間と動物が連続的につながっているとはいえない。
    ライエルはこう主張し、
    自然界における人間の特別な地位を保持しようとした。

    それに対して、
    ダーウィンは次のように述べている。
    「ミツバチの巣がミツバチの本能なしでは存続できないのと同様、
    社会は道徳感覚がなければ存続しえない。」
    人間固有と考えられてきた道徳性を、
    何の抵抗もなく自然界に投げ戻し、
    ほかの社会的動物と比較したのである。
    そして自然主義に基づいたダーウィン独自の道徳論を展開していく。

    このような自然主義的世界観は、
    もう1つのテーマである、
    「目的論的世界観の克服」にも大きく関係している。

    知的創造者によって世界は設計されている。
    これは、当時の一般的な考え方であった。
    研究者たちの間でも、
    「それぞれの器官は、
    それ固有の目的のために設計され、機能するのだ」
    というような目的論的見方が主流であった。

    ダーウィンは自然淘汰説や分岐の原理を通して、
    神のような設計者がいなくても、
    生物の複雑な機能やデザインが生まれることを説明しようとした。
    しかし神の配慮がない世界では、
    自然界における人間の特別性が損なわれることになる。
    ライエルを含めた多くの研究者が、
    自然淘汰説と神の配慮をなんとか両立させ、
    人間の尊厳を保持しようと試みた。

    その意味では、
    当時多くの人々が乗り越えられなかった壁を、
    徹底した自然主義のもと、
    ダーウィンはいとも簡単に乗り越えてしまったのである。
    ここに彼の独自性とすごさがある。

    以上が本書の核となる内容である。
    しかし本書の構成では、
    この2つのテーマが交錯しており、
    「一体何のためにこの話をしているのだろう?」
    とわからなくなることが多々あった。
    おもむろに転成説や分岐の原理の説明をし始めても、
    それを通して何が言いたいのかを述べなかったら、
    本書の全体像が見えてこない。

    さらには、
    ダーウィンの伝記的エピソードや
    色々な人物の説がまとまりのない形で出てくるので、
    非常に読みづらい。

    生物学者でもなく、ダーウィン研究者でもない、
    哲学者としての視点が明示的に打ち出されていなかったのは
    期待はずれであった。

    扱っているテーマが面白いだけに残念である。

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