シベリア抑留―未完の悲劇 (岩波新書)

著者 : 栗原俊雄
  • 岩波書店 (2009年9月18日発売)
3.81
  • (8)
  • (10)
  • (12)
  • (1)
  • (0)
  • 本棚登録 :128
  • レビュー :17
  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312079

作品紹介

敗戦直後、旧満州の日本人兵士ら約六〇万人がソ連軍に連行され、長期間の収容所生活を送った「シベリア抑留」。極寒・飢餓・重労働の中で約六万人が死亡したこの悲劇は、今も完結していない。衝撃的な史料の発見、日本政府への補償要求と責任追及…。過酷な無賃労働を強いられた帰還者らは、「奴隷のままでは死ねない」と訴える。

シベリア抑留―未完の悲劇 (岩波新書)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 満州引き揚げあたりから丁寧に追ってくれると思いきや、抑留の話はあまり掘り下げてなかった印象?!山崎豊子の不毛地帯の方が何倍も壮絶さが伝わった。

  • 2009年刊。著者は毎日新聞記者。◆第二次大戦末、満州侵攻ソ連軍の捕虜となった日本兵と民間人。彼らの戦後の来し方を生々しく描く。◆まず、帰還者による国への責任追及・補償制度の制定は、現代も未解決問題である点を重く見たい。加え、ソ連の問題性はもとより、①そもそもかかる抑留を関東軍高官が許容し、それをソ連側に伝えた可能性がある点、②日本軍の階級が収容所でも維持され、結果、食事・労働等、下級兵士に多大な皺寄せとなった点、③所謂「民主化運動」、④帰還者を「アカ」と看做す根拠なき差別等多様な知見に彩られる。

  • 著者は、戦争体験者や遺族への取材に基づいた戦争関連の記事、著作を多く持つ毎日新聞記者。
    本書は、2008年の毎日新聞(大阪)の連載をもとに、新たな構成で書き下ろされたものであるが、著者は本書執筆の目的を、戦争のような国家としての窮地に立たされたときに、日本国家は国民に対して何をし、何をしなかったのかを辿ることであるといい、そのために本書の半分近くが、抑留が終わった後の時代を追ったものとなっていると語る。
    本書の内容を大きくまとめると以下である。
    ◆終戦後、ソ連によって強制抑留された日本人は、日本政府の推計によるとおよそ57万5千人。中には民間人3万9千人も含まれる。死者は5万5千人。但し、この数値はあくまでも推定で、日ロ両国の研究者・機関が示すものとして下限に近いという。抑留者の多くは、ソ連も参加したポツダム宣言の条項に反する、明白な国際法違反によって抑留された。
    ◆抑留者は飢え、極寒、重労働という三重苦を受け、多くの命が奪われた。
    ◆更に、理不尽な旧軍秩序への反発を引き金に始まり、ソ連側がソ連式共産主義・民主主義を植え付ける思想教育に利用した「民主化運動」は、日本人が日本人をリンチする吊し上げや、「アクチブ」と呼ばれた運動のメンバーと反対派が帰国後までいがみあう悲劇につながった。
    ◆1946年に始まった抑留者の引き揚げは、ソ連が貴重な労働力が減ることを拒んだこと、冷戦構造が明確になりつつある中で駆け引きの道具に使われたことから、協定通りには進まずに50年に中断。日本政府は「人質」を取り返すために、北方領土四島の不法占拠を許したままで国交回復を図らねばならなかったが、53年に大半の抑留者の帰還が実現した。
    ◆帰還者の中には「赤い帰還者」も一部にいたが、その影響で「シベリア帰りはアカ」とあからさまな差別を受ける帰還者は少なくなかった。
    ◆戦争に関する賠償請求権をお互いに放棄した日ソ共同宣言の締結により、補償をソ連に求められなくなった帰還者と遺族は、日本政府に補償を求めているが、政府は南方で米軍等の捕虜となった日本人に対して支払った強制労働の労賃を、シベリア抑留者には支払っていない。
    ◆敗戦直後の日本政府・陸軍首脳の間には、「国体が護持されるなら日本人を労働力として差し出してもいい」、「満州の日本人の処遇はソ連に任せる」との方針があったことが、複数の文書から明らかになっている。
    そして最後に、ある帰還者の「生還した戦友に「シベリアでは何をしてた?」と聞くと、食料係とか医務室とか通訳などですよ。うまく立ち回って、重労働を逃れた。誰かが代りにその仕事をさせられたんです。・・・我々生き残った者はね、加害者なんですよ」という言葉を紹介しているが、これは、フランクルが自らのアウシュビッツでの体験を綴った『夜と霧』の「いい人は帰ってこなかった」という呟きと同じもので、収容所での体験を持つすべての人々に残る最も苦しいトラウマなのではあるまいか。
    戦争の生んだ一つの悲劇として、語り継がれなければならないものである。
    (2010年8月了)

  • ソ連の満州侵攻からシベリア抑留,そして抑留された人の「その後」を描いた著作。シベリア抑留はソ連による戦争犯罪であり,日本国家による国民の「棄民」である。南方戦線でも多くの日本人が死亡し,打ち捨てられたままでいる。こうした政府の振る舞いは,今後も繰り返されるだろう。

  • 抑留者の苦労が偲ばれる内容。

  • シベリア抑留がどのような状況で行われたのか。
    実際どのような生活を送っていたのか。
    帰還者たちへの戦後補償など、
    帰還者のインタビューや日本、ロシアが出した資料をもとに書かれた本です。


    あまりにも知識が無さすぎて入門編として読んでみたのですが、時代背景もざっくりと書いてあり、わかりやすく、一気に読めました。

    夜の霧じゃないけど、極限の状況で人間性が崩壊していく様はとても辛いですね。自分だったらと置き換えるととてもそんな自信はない。

    また、捕虜としての教育など、日本政府や関東軍が日本人をモノとして扱っていた様子、
    戦後の補償でも日本政府が人権を認めないような対応をしていることにひどくがっかりさせられました。

    もっと勉強しようと思います。

  • 「不毛地帯」というドラマがあったなぁと思い出して借りてみました。
    断片的ではありますが、経験談を淡々と語られているのでわかりやすかったです。強制労働に加えて思想教育という名の洗脳があったこと、アクチブの存在など初めて知ることもありました。
    同じく捕虜となったドイツ人兵士との違いなども興味深かったです。
    帰国後の抑留者たちの国に対する補償を求める裁判は負け続け、今日まで満足な補償がされずに来たということで、サブタイトルの意味を理解しました。

  • 敗戦と満洲国の崩壊とともに発生したシベリア抑留について、
    その実態と抑留以後の取り組みが記したもの。
    ページ数の割によくまとまっていて読みやすく、
    インタビュー記事や挿し絵も多く雰囲気や気持ちがよく伝わる。
    入門に適した一冊。

  •  本書を読んでその悲惨さと暗さ、歴史の持つ重みに押し潰されるような思いを持った。
     太平洋戦争終戦直後に行われた旧日本兵のシベリア抑留、こんな悲惨なことが現実におこなわれたことに、改めて驚愕する。
     本書によると、1945年の太平洋戦争敗戦時に、ソ連によって満州から旧日本兵60万人が、シベリアをはじめとする広大な土地に連れ去られ、およそ2000の収容所で厳寒の中過酷な労働に従事したという。その収容期間は最長11年。死者は5万5000人とも9万2000人ともいう。その詳細は悲惨としかいいようがない。本書を読んで怒りを覚えた。
     本書によると、悲劇は厳寒の重労働だけではない。零下30度の極寒の中で森林伐採の重労働を兵士が課せられるなかで、将校たちは火にあたりながら作業の監督をするだけ。兵隊たちが火にあたりにいこうものなら、大声で怒声が飛んだという。大日本帝国の秩序があればこそ、下級兵士をこき使い、自分は楽をできるという将官が多くいたという。敗北してもなお特権を維持しようとする日本陸軍の姿は醜い。特権階級の佐官は収容所内でその地位を利用し、特別待遇を維持したものも数多くいたというのだ。
     それに対しソ連はソ連式共産主義運動を兵士に植え付け、共産主義革命の戦士を育成しようとして、収容所内で政治学校を開き、兵士たちを洗脳したという。「アクチブ」と呼ばれる活動家を育成したのだ。「アクチブ」は収容所内で優遇され、「飢え」「寒さ」「労働」の三重苦から開放されたという。その悲惨な姿に同情しつつも、両者共、醜いとしかいいようがない。もっとも悪辣なのは、捕虜を強制労働させた国際法違反のソ連だ。
     醜いのは、個人だけではない。敗戦を目前にした1945年4月、日本政府首脳は連合国との仲介役としてソ連に期待していたという。溺れつつある国の指導者達がわら1本にすがる思いで悪魔のような国家指導者を持つ国にすがろうとしたことは愚かとしかいいようがない。  
     1945年の「関東軍方面停戦状況に関する実視報告」という重要文書が後に発見されている。日本政府首脳と陸軍首脳は、満州の邦人をソ連にまかせる方針だったことの証拠文書だ。当時の日本政府首脳は日本人をソ連に売ることによって、自分たちの利益を測ろうとしたのだ。なんと愚かで醜い指導者達であろうか。
     抑留された旧日本兵たちの困苦は帰国後も続いたという。シベリアの不毛な地から帰国すると、「赤」のレッテルのもと地域社会から排除され、就職にも不自由したものが多数だったという。しかも今に至るまで日本政府は、満足な補償をしていない。未払い賃金請求訴訟は、1989年に原告の全面敗訴(東京地裁)となっている。政府は平和記念事業特別基金からの10万円の記名国債と銀杯という「涙金」で済ませようとしているという。
     旧日本兵のシベリア抑留を書いた「不毛地帯」(山崎豊子)という小説がある。シベリアの収容所はまさに「不毛地帯」だったが、帰国後の日本も「不毛地帯」だったとの意味の題名だというが、本書を読むと、シベリア抑留された旧日本兵にとっての「不毛地帯」は現在まで続いていることを実感するものである。国家や軍隊が守るものは、国体や自己の利益であって、国民や兵隊ではないことを確信させる書であると、本書を高く評価したい。

  • ソ連軍に連行され、長期間の収容所生活を送った『シベリア抑留』。極寒、飢餓、重労働の中で約6万人が死亡したこの悲劇は、今も完結していないことを痛感。小生の父も5年間の強制労働の果てに、心身ともひどく衰弱して帰ってきた。

全17件中 1 - 10件を表示

栗原俊雄の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ヴィクトール・E...
J・モーティマー...
有効な右矢印 無効な右矢印

シベリア抑留―未完の悲劇 (岩波新書)を本棚に登録しているひと

ツイートする