生活保障 排除しない社会へ (岩波新書)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312161

作品紹介・あらすじ

不安定な雇用、機能不全に陥った社会保障。今、生活の不安を取り除くための「生活保障」の再構築が求められている。日本社会の状況を振り返るとともに、北欧の福祉国家の意義と限界を考察。ベーシックインカムなどの諸議論にも触れながら、雇用と社会保障の望ましい連携のあり方を示し、人々を包み込む新しい社会像を打ち出す。

感想・レビュー・書評

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  • 【参考文献】
    大沢真理『現代日本の生活保障システム』
    水野和夫『人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』
    阿部彩『子どもの貧困ー日本の不公平を考える』
    日本経済新聞者『地方崩壊ー再生の道はあるか』
    派遣ユニオン『日雇い派遣』
    ジークムント・バウマン『リキッド・モダニティ』
    山岸俊男『安心社会から信頼社会へ』
    ロバート・パットナム『孤独なボウリング』
    ピエール・ロザンヴァロン『連帯の新たなる哲学ー福祉国家再考』
    ポール・ウィリス『ハマータウンの野郎ども』
    ナンシー・フレイザー『中断された正義』
    アクセル・ホネット
    見田宗介『社会学入門』
    岩田正美『社会的排除ー参加の欠如・不確かな帰属』
    ジェレミー・リフキン『大失業時代』
    広井良典『コミュニティを問いなおす』
    宮本太郎『福祉政治ー日本の生活保障とデモクラシー』
    G・エスピン-アンデルセン『福祉資本主義の三つの世界』『転換期の福祉国家』
    宮本太郎『福祉国家という戦略』
    中谷巌『資本主義はなぜ自壊したのか』
    山本亮『ベーシック・インカム入門』
    トニー・フィッツパトリック『自由と保障ーベーシックインカム論争』
    ジョーン・フィッツジェラルド『キャリアラダーとは何かーアメリカにおける地域と企業の戦略転換』
    根岸毅宏『アメリカの福祉改革』
    京極高宣『社会保障と日本経済』
    OECD, Modernising Social Policy for the New Life Course, OECD, 2007
    労働政策研究・研修機構編『日本の職業能力開発と教育訓練基盤の整備(プロジェクト研究シリーズNo.6)』
    田中夏子『イタリア社会的経済の地域展開』
    布川日佐史編『生活保護自立支援プログラムの活用①策定と援助』
    神野直彦、宮本太郎『脱「格差社会」への戦略』
    濱口桂一郎『新しい労働社会ー雇用システムの再構築へ』
    駒村康平、菊池馨実編『希望の社会保障改革ーお年寄りに安心を・若者に仕事を・子どもに未来を』

    【はじめに―生活保障とは何か 】
    p.ⅳ 生活保障とは、雇用と社会保障をむすびつける言葉。人々の生活が成り立つためには、一人ひとりが働き続けることができて、また、なんらかのやむを得ぬ事情で働けなくなったときに、所得が保障され、あるいは再び働くことができるような支援を受けられることが必要。生活保障とは、雇用と社会保障がうまくかみあって、そのような条件が実現すること。

    p.ⅷ 本書は、
    ①各国が、雇用と社会保障をいかにむすびつけてきたか振り返りながら、その連携の新しいかたちを考える。それは、大多数の人が就労でき、あるいは社会に参加できる「排除しない社会」へのビジョン。
    ②排除しない社会が実現するためには、所得保障だけでなく、人々が職場であれ地域のコミュニティであれ、生活の張り合いを得る居場所を確保できることが大切。財の「再配分」だけでなく、誰かに存在を認められていること「承認」を重視する議論が増えている。「生きる場」の確保。
    ③生活保障をめぐる合意可能性の追求、ルールの明確化。普通の人々が合意できる生活保障のルールとはどのようなものか。権利と義務のバランス、「社会契約」の中身。

    【第一章 断層の拡がり、連帯の困難 】
    1 分断社会の出現

    2 連帯の困難

    p.23 市民相互の信頼の強さは「社会関係資本」と呼ばれる。相互信頼が強いと、取引コストや機会コストが軽減され、経済も順調に発展する。現代日本で、信頼と社会関係資本がどれほど蓄積されているかについては、二つの立場。
    ①歴史家フランシス・フクヤマのように、日本が高信頼社会であるとする見方(『「信」なくば立たず』)。
    ②社会心理学者の山岸俊男のように、日本は低信頼社会であるとする解釈(『安心社会から信頼社会へ』)。

    p.24 社会関係資本についての最も影響力ある理論化ロバート・パットナムは、二つの社会関係資本のタイプをあげる(『孤独なボウリング』)。
    ①架橋型の社会関係資本:企業や業界を超えて人々がたとえつながりは弱くとも広くむすびついていく関係。NPOなどの自発的活動におけるむすびつきなど。
    ②拘束型の社会関係資本:企業や業界の社会集団内部での、閉じた盟約関係。
    日本は、拘束型は強かったが、架橋型がその分弱かった。だが今、企業や業界は持続的なコミュニティたり得る力を弱めている。人々が企業や業界の外でつながりをつくるためには、ワークライフバランス推進など、新しい制度がいる。

    p.28 引き下げデモクラシー
    やみくもに特権や保護を叩き、これを引き下げることで政治的支持を拡げようとする言説。あるいはそれを見て溜飲を下げる態度。丸山真男は、このような政治のあり方を「引き下げデモクラシー」と呼んだ(『「文明論之概略」を読む』)

    3 ポスト新自由主義のビジョン

    【第二章 日本型生活保障とその解体 】

    1 日本型生活保障とは何だったか

    p.44 日本型生活保障の特質
    被扶養者は家計を補完するために稼がざるを得ないが、稼ぎすぎても損をする(税制や社会保険料が高くなる)仕組みになっている。ここから、日本の非正規労働市場の低賃金構造が生み出された。この構造は、今日、非正規労働者の増大によって貧困や格差が増大しているとされる背景でもある。男性稼ぎ主の所得を補完するための雇用条件が、家計の主な担い手の雇用条件になってしまった。その結果、現役世代は大きな低所得リスクに直面するが、社会保障は人生後半に偏っているため、現役世代への十分な支援はおこなわれない。

    2 日本型生活保障の解体

    3 「生きる場」の喪失

    p.62 再分配・承認・社会的包摂
    「生きる場」の確保は、社会保障や福祉をめぐる理論の中でいかに取り扱われてきたか。
    政治学者ナンシー・フレーザーは、福祉政策における承認という問題を重視し、福祉国家の役割を「再分配」と「承認」の二つに分けて論じた(『中断された正義』)。再分配とは、これまでの社会保障が自覚的に関わってきた経済的不平等の是正のこと。承認とは、所得保障やサービスの給付にあたって、人々の様々なライフスタイル、文化、宗教などを尊重していくこと。
    フレーザーは、再分配をすすめ立場の弱かった人々を社会に引き入れる際に、当事者たちの元々のアイデンティティが承認されず、ときに放棄を迫られる傾向を指摘。再分配と承認は、しばしばジレンマの関係にある。

    p.63 同じく承認の問題を論じながらも、社会哲学者アクセル・ホネットは、承認をマイノリティ集団の問題として捉えて再分配に対立させるフレーザーに反対。承認はもっと個人の次元の問題で、社会とつながっていくうえで、マイノリティ集団ならずとも誰もが必要とする事柄。
    近代社会では3つの次元での承認関係が、相互に分離しながら形成されてきた。
    ①夫婦や親子など、主に家族を舞台として発展してきた感情的、情緒的な関係。
    ②法的な権利関係。社会的に不利な立場におかれていた集団や個人を社会の他の構成員と同じ権利主体として認める関係
    ③業績達成による承認関係。相互に同じ権利主体であることを前提に、社会的あるいは経済的な業績を認め合う関係。
    人が自己について肯定的な感覚をもつためには、この3つの次元の少なくともいずれかの相互承認の中にある必要。

    p.64 承認という問題を考えていくと、社会保障や福祉の議論が、なぜ貧困そのものより、「社会的包摂(ソーシャル・インクルージョン)」の問題として論じられるようになったか、ということも理解できる。
    社会的包摂は、EUの社会政策では最も基軸的なコンセプトとなっている言葉。様々な貧困、失業、差別などに関わって社会から排除されている人々を、社会の相互的な関係のなかに引き入れていくことを目指す考え方。人々が具体的な社会関係のなかで自立することが大切、という考え方。「生きる場」を失っていることこそが人々を苦境に陥れ、貧困からの脱却を困難にする。社会的包摂とは、再分配と承認の総合として理解されるべき。

    【第三章 スウェーデン型生活保障のゆくえ】
    1 生活保障をめぐる様々な経験

    2 スウェーデンの生活保障

    p.97 柔軟な労働市場、長期にわたる失業給付、積極的労働市場政策の三者の組み合わせは「黄金の三角形」などと呼ばれる。これを支えに、デンマークでは年間に就労人口の1/3が転職。
    雇用保障のスウェーデン型とデンマーク型(フレクシキュリティ)は「翼の保障」という点では共通。相違は、スウェーデンでは労働力を生産性の高い部門へ誘導していくことが強く意図。これに対し、中小企業中心の産業構造を持つデンマークでは、いったん解雇された人々が次にどのような仕事に就くかは、基本的には労働市場の動向に委ねられた。
    1990年代以後の労働生産性の伸びは、スウェーデンのほうが高い。ところが、生産性の高い部門は次第に労働力を吸収しなくなってる。このことから、同期間の失業率を比べると、デンマークの方が失業率抑制に成功してる。

    p.101 社会保障の現金給付というと、就労意欲をそいで労働市場の活力を弱める、という印象が強い。しかし、スウェーデンの場合は、頑張って働けば賃金が上昇し、それに合わせて社会保障の給付が増額される。「就労原則」のもとでのスウェーデンの所得保障には、雇用保障と連携しつつ、むしろ人々の就労意欲を高めることが期待された。
    なぜスウェーデンのような大きな福祉国家が中間層の支持を得るのか、就労意欲を維持できるかというのは、問いの立て方が間違い。中間層の支持を得るために、その就労意欲を高めるためにこそ、福祉国家の財政規模は大きくなった。

    p.103 2003年のスウェーデンの婚外子の出生率は56%、日本は1.93%。婚外子の出生率が高いのは、家族の解体によるものではなく、サンボという事実婚の制度化による。
    スウェーデンにおける家族のかたちはより多様で柔軟。事実婚が多いのはもちろん、育児休暇は養子を貰い受けたときにも適用。「看取り休暇」として紹介した制度の正式名称は「近親者介護手当」だが、仮に近親者と訳したネールシュトエンデというスウェーデン語は必ずしも血縁を意味しない。親類縁者でなくとも、人生でかけがえのない人が重篤のとき、給付の申請ができる。
    スウェーデンの生活保障は、働く場であれ家族であれ、「生きる場」を確保し充実させてきた。対象となる家族は、法的に根拠づけられた家族というより、人々の緊密で多様なむすびつき、いわゆる「親密圏」に相当するもの。

    3 転機のスウェーデン型生活保障

    p.107 レーン-メイドナー・モデルが目指したのは、職業訓練によって生産性が低い企業から高い企業へ、人を動かしながらの完全雇用の実現。ところが、積極的労働市場政策を軸とした雇用保障には大きなジレンマ。生産性の高い企業では、技術革新と脱工業化がすすむにしたがい、一部の高度な管理的、専門技術的な労働を除けば、全体として省力化がすすみ、次第に労働力を吸収しなくなる。労働生産性は上昇しGDP成長率が向上しても、「雇用なき成長」になってしまう。

    p.116 グローバル化と脱工業化がすすんだ今日、労働市場から安定したよい仕事が失われつつあるという事態が出発点。労働者の技能を高めても、仕事がないなら話にならない。
    新たな環境のもとでは、グローバルな市場経済動向もふまえ、地方において、特定分野に絞り込んだ高付加価値の産業創出が必要。具体的には、大学などとも連携しながら、環境技術産業や製薬産業などを地方で発展させていくことが求められる。
    ヤン・エドリングは、スウェーデンでの道州制議論を受け、全国を6〜8つほどの道州に分けて産業政策の権限を委ね、地域の経済力を高めることを提起。失業手当の代わりになっている疾病手当や労働不能給付などの財源は、こうした産業政策にこそ充当されるべき、と主張。職業訓練は軽視されてはならないが、こうした産業政策と連動させながら、より知識重視型の中身に転換を図らなければならない。

    【第四章 新しい生活保障とアクティベーション】

    1 雇用と社会保障

    p.120 生活保障再生への四つの条件
    ①柔軟性。流動化し個人化する社会で、男女を問わず、様々なかたちで働き、学び、家庭をつくり、多様なライフサイクルを生きていくことに柔軟に対応した制度。
    ②就労を軸とした社会参加の拡大。
    ③補完的保障。これまでのように安定した雇用を前提として、社会保険でその所得中断に対処する代替型の所得保障だけでは、生活保障が成り立たなくなってる。最低賃金制度の強化や均等待遇の徹底と併せて、たとえ勤労所得が十分でなくても公的な所得保障との組み合わせで生活を維持できる、補完型の所得保障が求められる。
    ④合意可能性。生活保障の制度は、人々が広く合意できる条件を備えなければならない。その条件とは、制度が特定の人を優遇・差別しない公正なものとみなされること、わかりやすく透明度が高いこと。

    2 ベーシックインカムの可能性

    3 アクティベーションへ
    p.153 一般的に、高度なIT化の進展やサービス産業の比重拡大によって、働く現場は一部の管理的労働と、ルーティン化された大多数の単純労働に二極分化する傾向が顕著に。そして単純労働の増大が、非正規労働増大の背景となってる。こうした現状では、働きながら学べる範囲で技能や知識を向上させても、キャリアの発展にむすびつかない。
    このような労働二極化に対して、少数の管理的業務と、大多数のルーティン業務の間に中間的な業務を設定し、いわば上昇可能なはしご(ラダー)を架けていこうとするのが、キャリアラダー戦略。ノースイースタン大学ジョーン・フィッツジェラルドは、この戦略についてのアメリカの経験を紹介。
    ref.『キャリアラダーとは何か』
    見返りのある労働組織が拡がるためには、あえて中間的な職階を設定することが、長期的にみて経営改善にも結びついていくという見通しが必要。
    日本では、厚生労働省は2007年8月にまとめた社会福祉事業に従事する人材確保のための告示において「福祉・介護サービス分野における従事者のキャリアパス」を示す必要を打ち出し、「キャリアパスに対応した生涯を通じた研修体系」を構築するべきと主張。しかし実施条件は未整備で、介護職の離職率が二割を超えるという状況。

    p.168 都市では、インサイダーとアウトサイダー、正規労働者と非正規労働者の亀裂が深化。しかし、正規労働者の長時間労働と、非正規労働者に対する社会的排除は、参加支援やワークシェアリングによって同時に解決されるべき問題。
    排除しない社会への生活保障ビジョンは、都市と地方、インサイダーとアウトサイダーという社会的亀裂を修復し、双方が構造問題の解決に向けて利益の一致点を確認していく、社会契約でもある。

    【第五章 排除しない社会のかたち】
    1 「交差点型」社会
    p.171 参加支援とは、レーンのいう「翼の保障」。20正規型福祉国家が提供してきた社会保障は、「殻の保障」だった(男性稼ぎ主の典型的リスクが現実化した時に、失業手当、公的扶助、年金などの現金給付によって身をひそめる「殻」を提供する)。
    「翼の保障」は、性別年齢を問わず、人々が社会参加を続けることを困難にする多様なリスクを対象。困難から脱却し引き続き社会とつながり続けるための「翼」を提供。手段は、生涯教育、職業訓練、保育サービスなどの公共サービスと、教育・訓練や出産・子育てなどの期間を支える所得保障。

    p.172 参加支援を組み入れたライフサイクルは、ドイツの労働経済学者ギュンター・シュミットのモデルもふまえつつ。教育を終えて労働市場に入り、家族をもち、退職する、場合によってはその途中で離職し、いったん労働市場の外に出るという、ライフサイクルの5ステージ。
    参加支援をライフサイクルに組み込むことは、この5ステージ(労働市場、教育、家族、失業、体と心の弱まり・退職)に双方向型の橋を4本かける(労働市場を中心に各ステージとの間に)ことに例えることができる。人生の5ステージを行きつ戻りつして社会とつながり続ける。一方通行型ではなく、交差点型の社会への転換。

    2 排除しない社会のガバナンス

    p.193 「生き難さ」に取り組む社会的企業
    イギリスやオーストラリアに拡がった社会的企業のあり方「媒介的労働市場組織」。公営住宅の修繕、緑化事業、環境保全事業などを受注して、長期失業者を雇用しつつ職業訓練と社会的リテラシーの習得を同時におこなう企業で、最終的には正規の労働市場での就労を目指すことからこのように呼ばれる。
    グラスゴーの社会的企業「ワイズグループ」や「グラスゴー・ワークス」などが嚆矢となり、2004年データで、イギリス国内に厄8700人分の雇用を創出。イギリスの公的職業訓練に比べ、訓練途中のドロップアウトが半分程度で、就労後の定着率も目立って高いため注目された。平均1年程度社会的企業に雇用され、実際の仕事をとおして比較的長期の長期的トレーニングを受けることができるため、就労支援の効果が高い。
    日本では、2005年から厚労省の事業(実施は日本生産性本部)として「若者自立塾」が開始。

    p.194 体と心の弱まりを抱えた人、高齢者の就労支援にも、社会的企業が大きな役割。
    イタリアの社会的協同組合。1991年に法制化された公益志向型の協同組合。A型=社会福祉、保健、教育関連のサービスを提供する共同組合。B型=「不利な立場の人々」の自立を支援する組合で、組合員の3割以上は障害者、家庭問題を抱える若者、刑余者などで構成され、製造業やサービス業などを通して人々の社会参加を促進。2004年アン会で、イタリアに約7000の社会的協同組合があり、組合員は20万人以上。
    ヴィチェンツァ県北部のヴェラータ社会的協同組合。A型で知的障害者など対象にトレーニング。その中で就労可能性が高い人は、B型では、タイル製造、バッテリー製造、木工・家具製造、緑化事業のいずれかのセクションで、一般の組合員とともに働き、一般企業への就労の可能性を探る。
    日本では、ワーカーズコレクティブが、近年、育児支援や介護の分野で実績をあげている。ワーカーズコープの系譜に属する高齢者生活協同組合は、高齢者自らが組合員となって、雇用創出や介護事業を担っていこうとする点で、高齢者の就労と社会参加に成果をあげている。

    p.195 困難を抱えた人々を労働市場にむすびつけていく分野で活動する社会的企業は、「労働統合型社会的企業(Work Integration Social Enterprise)」とも呼ばれる。

    3 社会契約としての生活保障

    【おわりに―排除しない社会へ】

  • 2009年刊。著者は北海道大学法学部教授。年金・雇用確保・社会保険等で包摂される生活保障の基礎的情報を開示。日本型の成立・解体から、スウェーデンのそれとの比較を踏まえ、将来の目標(ベーシックインカム・アクティベーションの異同、理念型と折衷型含む。目的の差異)を明らかに。当たり前のことだが、ベーシックインカムといえども多様な内実を持つこと、その違いにより実現する政策目的が大きく変わることが良くわかった。雇用確保の方法論は甘いように感じるものの、教育から生活保護的な現金給付まで広く目配せの効いた好著。

  • S364-イワ-R1216 300053394
    (岩波新書 新赤版 1216)

  •  「生活保障」が「生活保護」と違うことは、何となくわかった。金銭的援助だけの生活保護では不十分であり、皆が意欲を持って生きがいを感じながらフレキシブルに働けることが理想であると思う。

     さすが岩波新書、内容がお堅い。しかも大学院教授(政治学博士)の著作だけあって、大学の講義を聴いているようだった。お世辞にも内容を理解したとは言い難い。数年前の新聞書評欄で「分かち合いの経済学」とセットで紹介されていたのを、セットで購入したままとなっていた。
     数年間もの積読書籍であったところ、何とか消化したい、スッキリしたい気持ちだけで、ようやく最後まで目を通した。ほとんど斜め読みであったが、ページは飛ばさずに繰ることができた。手垢をつけた程度というところか。

     2015年は、「積読書一掃イヤー」として、読みたい本の合間に、積読書籍(ほんの数冊だが)にも手垢をつけていくことができればいいと思っている。

  • 授業の参考図書ではじめに,1,2章,おわりにを読んだ今までの生活保障のやり方を解体し新たな保障が必要と述べてある。

    現代の大きな政府を好むが、税徴収は望まない家計の矛盾を改めて実感し、非正規雇用の危うさもよくわかった。

    政策と家計が乖離しないようより一層の政治参加が求められると思うので、政治に関心を持ちたい。

  • 雇用と社会保障を結び、社会的包摂を目指す論調は新鮮。考える土台とすべき統計データとこれまでの施策が豊富に紹介されている。

    しかし、雇用に関して世界が同時に行き詰まっているからか、決定打となる政策集を描くことに成功しているとは言い難い。示唆はあるのだが。

    本書の範囲を超えるが、働くことの意義を深める必要性を感じた。

    ・パート・アルバイトの21.9%、派遣労働者の17.2%が配偶者の厚生年金を含めていっさいの公的年金に加入していない(平成18年版労働経済の分析)
    ・日本の失業者の内、失業手当を受給していないものは77%、アメリカは59%、ドイツ6%と大きな差がある(ILO、2009)
    ・国民健康保険は低所得者の加入者が多いほど保険料が高くなる。寝屋川市の場合、世帯所得200万円の4人家族の保険料は全国トップの年間約50万円(2008年毎日新聞)
    ・生活保障は所得保障ではなく、人びとが他の人びとと結びつくことを可能とし、生きる場を確保する見通しを提供できるものでなければならない。
    ・P19,日本人が信用する対象:1.家族、2.天気予報、3.新聞。スウェーデン人:1.医療、2.警察、3.大学
    ・政府に対する信頼の強さは、市民相互の信頼の度合いに比例する。
    ・所得制限などをせずに全ての市民に提供される普遍主義的な社会保障や公共サービスに接するとき、政府と他の市民に対する信頼が高くなる。
    ・子ども手当は家計に一息つかすことはできるが、保育サービスなど就労支援などと一体化して、雇用拡大につなげなければ財源を確保できない。
    ・今だけでなく将来に向けた安心とリンクしなければ、現金給付は預金に回る。
    ・広範な権利保障を主張する陣営に限って、国家権力の縮小を求める傾向が強かった。
    ・初めてついた仕事が非正規であった男性は1982年から5年は7%だったのに、2002年から5年は31%に。
    ・1968年の永山事件は社会からの差別的なまなざしが彼の自由を奪ったが、秋葉原事件はまなざし不在の地獄の中でおこった。
    ・スウェーデンでは1971年に所得税を夫婦合算非分割の世帯単位の課税から個人単位にして、女性の就労を促した。
    ・教育休暇制度
    ・日本では現金給付というと就労意欲をそぐと言われているが、スウェーデンでは、頑張って働けば賃金が上昇し、社会保障給付も上昇する。
    ・日本の最低賃金はOECDの中でも低い。フランス60.8%、イギリス41.7%、アメリカ36.4%、日本は32.9%がフルタイム平均賃金に対する最低賃金。背景は男性稼ぎ主が中心ということ。
    ・第6次産業
    ・参加支援は翼の保障。日本型の殻の保障ではなく。
    ・ドイツの育児休暇中は所得比例型の手当。出産、育児と就労、キャリア形成をともに奨励していることになる。
    ・日本の生活保護自立支援プログラム:140万人の受給者。プログラムの対象者5万6000人。実際の支援開始7300人。就職者3000人。
    ・日本では事業主の社会保険料負担が相対的に小さく、GDP比で、4.5%(2002年)。フランス11.4%、ドイツ7.3%。
    ・「貧困はなぜ生じるか」日本では、社会の不公正が原因と答える人の割合がOECDで一番小さい。

  • 賃金や所得保障だけでなく、社会の中に居場所を見つけることが大事。派遣では、その居場所がない。

    福祉重視と小さな政府は成り立たない。政治不信行政不信が関連している。

    政府に対する信頼の強さは、市民相互の度合いに比例する。福祉国家になると人々相互の結びつきが強くなる。

    すべての人に適用される公共サービスは信頼されるが選別的な制度は不信を生む。

    日本は雇用保障があったがそれが崩れた
    スウェーデンは就労原則(皆が働くべき)がある。公正感の確保タダ乗りは許さない。
    労働移動を進める。同一労働同一賃金。
    デンマークのフレクシキュリティ。デンマークは失業を怖がらない。

    大きな社会保障支出は経済活力を奪う、か。

    スウェーデンも雇用なき成長へ。職の減少。失業の長期化。

    ベーシックインカムは、定期給付か一括給付か。定期給付は生活のクッション、一括給付は成功への発射台。
    一定の時期にまとまったお金を給付する。
    トービン 給付付き課税。一定までは給付が多い。
    還付金付き消費税。

    スウェーデンは高齢者にも就労倫理が根強い。支給繰り上げは上限年齡撤廃。

    スウェーデンの年金制度=拠出は固定。保険料を老死で折半。給付は、その年の平均余命で計算される。

  • はじめにー生活保障とは何か
    第1章 断層の拡がり、連帯の困難
    第2章 日本型生活保障とその解体
    第3章 スウェーデン型生活保障のゆくえ
    第4章 新しい生活保障とアクティベーション
    第5章 排除しない社会のかたち
    おわりにー排除しない社会へ

  • 変化への対応が遅いことと、社会への参加を促すような保障制度になっていないことが現行制度へのもやもやの要因か。スウェーデンの社会保障の内容がメリット・デメリットの両面から分かってよかったです。

  • 正直かなりベーシックインカム、アクティベーションの勉強になった。

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