大臣 増補版 (岩波新書)

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  • 岩波書店
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レビュー : 24
  • Amazon.co.jp ・本 (257ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312208

作品紹介・あらすじ

官僚依存を脱し、政治主導へ-。鳩山政権の副総理・国家戦略担当大臣である著者が「官僚内閣制」から「国会内閣制」へ転換するための具体的な道筋を説く。国家戦略局とは何か。厚生大臣の経験をもとに内閣や大臣の実態を描いた一九九八年の旧著に、新たに民主党政権の理念と方針、イギリス議会政治の視察報告などを加えた増補版。

感想・レビュー・書評

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  • この本を読んでわかるのは
    どれだけシステムを整えても、結局のところ使いこなすのは
    人間だと言うことですね

  • 橋本内閣で厚生大臣としては、多くの実績を残した菅直人が出版した大臣に、民主党政権交代時に増補版として出版した本。

    小さな政党から政治家人生が始まり、さきがけ、民主党と移りゆくなっていくなかで、日本国が政党政治ではなく官僚政治であることを、実体験を元にして書籍にしたのは興味深い。確かに大臣として就任しても、短い任期、多忙な大臣の職務の中では、官僚にいいようにコントロールされるのは仕方ないし、官僚も大企業病と同じで、組織維持になってしまっていると思う。

    しかし、書籍を離れて総理大臣となって、東日本大震災の対応を見てみると、平時の脱官僚・反官僚ではよいが、非常時に国家を適切に導けなかったことの原因は、官僚という対立軸しかもてなかったことだとも本書から感じられた。増補版に入れられたイギリスの政治も、仕組みだけ持ってきても導入はやはりできないと思う。その意味では理想論になっている。

    個人的には、あの菅直人がと個人の責任に帰するよりも、なぜこのような理念が失敗になってしまったのか、どこに問題があったのかを確認する意味でも、一読しておいて良い本だと思う。

  • 「民主主義とは、交代可能な独裁だ。」という名言に菅直人の政治観が顕れている。彼が橋本内閣で厚生大臣を務めた経験から、官僚の実態が良く見て取れるようになっている。
    官僚は行政権を司っているという自負から、あまり仕事について口を挟まれたくないらしい。ただ、菅曰く「国会は国権の最高機関であるがゆえに、行政にも関与できる機能を持っているはずだ。」とする。ただ日本は明治維新以来、内閣ができて、それから議会ができた歴史を持つ。ここに官僚組織の自負があるのだろう、と彼は云う。「行政権は、国家の仕事のうち司法府と立法府を覗いたものすべて。」というのが官僚の認識だ、とする。しかしこれは、行政法学において主流の考え方であることを付記しておく。
    また、菅直人は官僚組織の特徴について「アメリカでは役所の上級スタッフがごっそり入れ替わるが、日本ではそれがない。」とする。実際、大臣が就任すると、待ち構えていたかのように局長級の官僚との会議があり、自分たちがどうしたいのか説明しまくるのだという。それでは大臣がだれでも同じだ。
    彼は厚生大臣のときに、血液製剤によるエイズ問題で揉めていた。菅は調査チームを組織しようとするも、前例がないとして断られた。しかしなんとか組織し、郡司ファイルの公開に踏み切ったのだという。
    官僚組織はボトムアップであり、大臣はそれを追認することしかできなく、スピーディな対応ができない。大臣は人事権を掌握しているわけだから、本来は指導する立場にある。それを独裁だという人もいるのかもしれないが、そこで菅直人は「民主主義とは、交代可能な独裁だ。」ということになる。

    大臣が一人で乗り込むので官僚に丸め込まれるので、2001年に政務官と副大臣の制度を作った。小泉内閣で導入されたが、政権交代までは派閥にまるなげしていたそうだ。ただし鳩山内閣からはそうならなくなったそうだ。
    菅直人は「政府・党一体で政策を作る。」と息巻いているが、今では政調会長が復活したり、あまり代わり映えがしなくなりつつあるように思える。

  • 『大臣(増補版)』/菅直人/岩波新書/★★★★☆/前首相が90年代に厚生大臣を務めた時のエピソードと、民主党政権の運営について、官僚批判をしながら、法律論を使って立論していく構成。統治機構や行政学の勉強の基礎にも向いていると思う。

  •  新総理大臣が1998年に著した本の増補版。行政の問題点や橋本政権での厚生大臣としての経験に基づく記述は旧版にもあったが、昨年10月に出た改訂版(本書)には民主党による政権交代で実現した国家戦略局の設置の目的などが書かれている。

     国家戦略局とは、首相官邸の機能を強化するために官民の人材を集結して、新たなヴィジョンを創り、政治主導で政策を策定するのが目的の内閣直属の組織である。

     興味深い記述は多い。例えば、私は政権交代前には閣僚による最高意思決定会議である「閣議」のニュースはほとんど目にも耳にしなかった。読んだばかりの『日本の統治構造』でも同じような記述があったが、閣議の実態はその前日の事務次官会議で決定された案件に署名するだけの「サイン会(お習字教室)」だった。

     事務次官会議というのは明治時代に内閣制度が成立して以来の法的根拠のない慣習にもかかわらず、100年以上続けられた制度。この制度には任免権者が存在せず、各省次官が横並びで全員拒否権を持つために省益優先の傾向に陥りやすくなっていた。

     そこで鳩山政権はこうして官僚による干渉を弱めるためにこの制度を廃止した。政権交代後に「閣議」という言葉が以前より頻繁に聞かれるようになったのは、そのためだったのか、と思った。

     菅氏はイギリスの官僚制についても言及している。イギリスでは「公務員の政治的中立性」が強く求められる。そのため原則的に政治家と官僚が接触することがなく、省益のために政治運動をすることは固く禁じられている。

     福田内閣の時に道路特定財源制度が問題になったとき、国交省が自分たちに頭の上がらない市町村を利用して制度を維持させる運動をさせた日本とは大違いである。

     他にも、興味深い記述は多い。
    ・自民党では6回当選すれば誰でも大臣になれたが、与えられるのは大臣のポストだけで、裏では官僚の言いなりである省内で孤立する傾向が強かった。そのため、大臣の任期が短くなりやすかった。
    ・政務次官(2001年廃止され、副大臣と大臣政務官を代わりに設置)の権限は事務次官より強いのに、単なる職務代行の傾向が強く、特定議員と結びつきやすかったため、族議員の養成機関になっていた。

     民主党政権が目指す「政治主導」というものが、当初の記述の内容通り、行き過ぎた官僚支配を改めて(=脱官僚)国民主権で政治を決定するものだとしたら私はその方針に賛成する。

     ただ、政治主導というのは、国民が今まで以上に政治に対して真摯に向き合うことを求められる、という責任の重さに対する記述が欲しかった。国民や政治家の官僚に対する敵愾心やルサンチマンだけではだめですよ、と。それから、旧版の記述の古さも気になった。

     『日本の統治構造』と通じる内容が多い当書だが、一方の著者は学者で、こちらの著者は政治家。同じ行政システムに関する記述でも、立場が違えばそれだけ内容が異なり、勉強になった。巻末の「国民主権の予算編成」の資料も参考になる。

  • [ 内容 ]
    官僚依存を脱し、政治主導へ―。
    鳩山政権の副総理・国家戦略担当大臣である著者が「官僚内閣制」から「国会内閣制」へ転換するための具体的な道筋を説く。
    国家戦略局とは何か。
    厚生大臣の経験をもとに内閣や大臣の実態を描いた一九九八年の旧著に、新たに民主党政権の理念と方針、イギリス議会政治の視察報告などを加えた増補版。

    [ 目次 ]
    民主党政権、始動
    第1部 大臣とは何か―一九九六年の厚生大臣の経験から(議院内閣制における大臣;大臣の任期から考える;大臣三百日で見えたもの;大臣の仕事)
    第2部 政治主導への転換―民主党政権の課題(イギリスと日本の「政と官」―イギリス視察から見えたこと;国民主権への道―民主党政権は政治主導をどう進めるか)
    資料1 「政・官の在り方」(平成二十一年九月十六日、閣僚懇談会申合せ)
    資料2 「予算編成等の在り方の改革について」(平成二十一年十月二十三日、閣議決定)

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    [ 参考となる書評 ]

  • 政策や国会運営に関する法律などについての記述が多く、どのような国にというような思いは、いまひとつ。

  • 政治入門のために読むとしたら、かなりの良書。
    詳細な記述。
    内容十分。

  • 菅直人首相が橋本内閣時代に厚生大臣に就任していた際に書かれたものに、政権交代をしてから追加した計七章からなる。
    官僚主導の政治を政治主導、本来の意味での議院内閣制(本書では国会内閣制と呼んでいる)にしようと主張している。
    また、国会議員・大臣として行政・国会を内側から書かれていた。

  • この本が出たころはまだ厚生大臣だった管さんもいまじゃ、総理大臣だからね。でも管さんは総理の器じゃないな。所詮、野党の大臣として騒いでるだけだよ。

    官僚に支配されている官僚内閣制は今も昔も同じ。
    日本も東京都市民政府のようにすればよい、中国の地方行政のように。
    総理大臣がいなくても、副官房長官がいれば内閣はまわる、閣議は行われる。
    自民党では誰でも大臣になれる。議員で6回当選すれば大臣になれる。なれなかったのは、ハマコーくらい。だからみんなが平等に大臣になるために内閣改造を行う。
    大臣も縦割りになっているから、他の省庁のことは他国のようなもの。
    自民党の若手議員が政務官になるが、これは族議員の始まりのようなもの。

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著者プロフィール

1946年、山口県生まれ。第94代内閣総理大臣。東京工業大学理学部応用物理学科卒業。衆議院議員、弁理士。96年、第一次橋本内閣の厚生大臣を務め、薬害エイズ問題を徹底究明、被害者に厚生大臣として謝罪。民主党代表、政調会長、幹事長を歴任。鳩山内閣で副総理、国家戦略担当大臣、財務大臣。著書に、『大臣』(岩波新書)、『東電福島原発事故 総理大臣として考えたこと』(幻冬舎新書)などある。

「2014年 『菅直人「原発ゼロ」の決意』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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