思い出袋 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 41
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312345

感想・レビュー・書評

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  • 鶴見氏の様々な戦前からの体験談が書かれていて非常に興味深い。
    日本を代表する哲学者の青年時期にどのようなことを考えていたのかがわかる。
    19歳で開戦を迎えて、その時ハーバードに留学していたのか。
    私も鶴見氏のように生きていきたい。

  • 人生の大先輩の言葉ひとつひとつが重みをもってのしかかり、激励してくるかのような読後感だった

  • 言葉が、心にしみいる感覚がたまらない
    一気に読んでしまいました。あふれでる言葉が少しの抵抗もなく、心にしみいる感覚が好きです。ほんとうに文章を読むことの心地よさを充分に味わいました。この一年間に何度も読み返しています。たしかになによりも名文ですね。知人、友人に幾度となく一読することを進めています。ひとつのエッセイに千文字ほどの文字からあふれる言葉から、文章に含まれた普通の人生哲学が、ふっと湧き上がるのを感じます。疲れた気持ちを解きほぐすエネルギーが、かすかに力強く満ちてくる息遣いを感じ取るのです。戦前戦後の日本と世界について、良きも悪いもすべてをはっきりと見据えた個人としての思考が著者の八十年におよぶ経験と行動において、静かなうちにも脈々とわきでる生命力にあふれんばかりです。淡々とつづられた言葉をまたあらためて読みなおしています。今日もまた、先輩の知人に一読するようにうっかりつぶやいてしまったしだいです。

  • 著者、鶴見俊輔が80代で連載していたエッセイを纏めた本。著者は、ハーバード大の哲学科卒の哲学者であるが、文章は平易で読みやすい。
    青年の頃にアメリカに留学(放逐された?)した経験もあり、日本への視点も鋭い。その主義・主張・軸は加藤周一に通じるものがある。
    この主義・主張・軸は明治を知り、戦前、戦中、戦後を知る者の感性から生まれてくるものであり、現代社会の我々も心に留めておきたい。

    (引用)
    ・ベネディクトが日本文化を「恥の文化」としておおざっぱに規定したのに対して、作田啓一は、日本文化の流れに恥とは別に「はじらい」の感覚があることを、太宰治の作品の分析をとおしてくり広げた。

    ・「〇〇は古い」は、明治以来百五十年で最も長持ちしている文化遺産かもしれない。・・・文明はエスカレーターに乗っているように二階三階と進んでゆく、というまぼろしが日本の近代史にはあり、それは敗戦をはさんで復活した。・・・・温故知新は、新知識の学習とともに、私たちの目標としてあらわれる時がくる。

    ・なぜ、日本では、「国家社会のため」と、一息に言う言い回しが普通になったのか。社会のためと国家のためとは同じであると、どうして言えるのか。国家をつくるのが社会であり、さらに国家の中にはいくつもの小社会があり、それら小社会が国家を支え、国家を批判し、国家を進めてゆくと考えないのか。

    ・心は自分以外のものを見ていないと、正気を失う。アウシュビッツの強制収容所に閉じ込められたフランクルは、おなじ仲間の老女がいきいきと毎日を過ごしているので、どうしてかとたずねた。すると、彼女は道に見える一本の樹を指して、「あの木が私だ」と言う。

    ・日本の大学は、日本の国家ができてから国家がつくったもので、国家が決めたことを正しく正当化する傾向を共有し、世界各国の大学もまたそのようにつくられていて、世界の知識人は日本と同じ性格をもつ、と信じている。しかし、そうではない。若い国家であるアメリカ合衆国においても、ハーバード大学は1636年創立、アメリカ合衆国の建国は1776年で、そのあいだのしばらくの年月は、米国の知識人の性格に影響を与えてきた。

    ・2百年前の渡辺崋山、高野長英、百五十年前の横井小楠、勝海舟、坂本龍馬、高杉晋作、百年前の児玉源太郎、高橋是清、さらに夏目漱石、森鴎外、幸田露伴たちは、大づかみにする力を、その後の人たちにくらべてもっていた。

    ・日本の国について、その困ったところははっきりと見る。そのことをはっきり書いてゆく。日本の国だからすべてよいという考え方をとらない。しかし、日本と日本人を自分の所属とすることを続ける。

    以上

  • 岩波の「図書」で読んだはずだが,記憶のない話もかなりあった.でも,哲学者というのはものを考える基本が異なっている感じがする.
    膝を打つ話が満載だ.

  •  戦中、戦後を通して出会ってきた多くの人、本、出来事について語る。歯に布着せぬ物言いで読んでいて心地よく、簡素な文体であるにもかかわらず非常に滋味溢れている。気が利いたこと、本質を突くようなこと、その鋭さは、二人は全く違ったタイプの人間であるが小林秀雄先生を思い起こさせた。

    吉本隆明の『追悼私記』「三島由紀夫」には、こうある。

    「知行が一致するのは動物だけだ。人間も動物だが、知行の不可避的な矛盾から、はじめて人間意識は発生した。そこで人間は動物でありながら人間と呼ばれるものになった。
     <知>は行動の一様式である。これは手や足を動かして行動するのと、まさしく同じ意味で行動であるということを徹底してかんがえるべきである。つまらぬ哲学はつまらぬ行動に帰結する。なにが陽明学だ。なにが理論と実践の弁証法的統一だ。(中略)こういう哲学にふりまわされたものが、権力を獲得したとき、なにをするかは、世界史的に証明済みである。こういう哲学の内部では、人間は自ら動物になるか、他者を動物に仕立てるために、強圧を加えるようになるか、のいづれかである。」

     他方著者は今もって三島について感想をまとめられないという。三島の自死のしらせを聞いたときのうろたえがまだのこっているのだと。
     追悼の言葉は日常の言葉とかわらない。まにあわないことがあるのだ。と

    そして今日、アップルのCEOであるジョブズの死の知らせを聞いた。追悼の心はある。しかし感想はまとめられない。
    言葉がいま感じているその心に足りないこともある。

  • 知性というものについて、命というものについて、再度検討する視点をあたえていただきました。

  • 11/09/30。

  • [ 内容 ]
    戦後思想史に独自の軌跡をしるす著者が、戦中・戦後をとおして出会った多くの人や本、自らの決断などを縦横に語る。
    抜きん出た知性と独特の感性が光る多彩な回想のなかでも、その北米体験と戦争経験は、著者の原点を鮮やかに示している。
    著者八十歳から七年にわたり綴った『図書』連載「一月一話」の集成に、書き下ろしの終章を付す。

    [ 目次 ]
    1 はりまぜ帖
    2 ぼんやりした記憶
    3 自分用の索引
    4 使わなかった言葉
    5 そのとき
    6 戦中の日々
    7 アメリカ 内と外から

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 名前も知っているし、原稿を読んだこともある。
    けれども、自分にとっての読み時があると言うのか、
    突然、その人の文章が身体に沁み込んでくる感覚がある。
    鶴見俊輔『思い出袋』を読む。
    岩波の雑誌「図書」に著者80歳の時から
    7年かけた連載をまとめた新書である。

    鶴見はハーヴァードの哲学科に学び、
    戦時中はシンガポール、インドネシアで短波放送の解読や
    幹部向けの新聞づくりなどの任務を果たした。
    後に鶴見がベ平連の活動として
    良心的兵役拒否の米兵を助けたことは
    幼少から大学時代、そして戦時中の体験に連続した行動であった。

    僕が鶴見に共感するのは、
    国家から意識の距離を置き、国家の過ちも見逃さないことと
    それでも国家に属することを受け入れる個人を貫く生き方だ。
    本書はそうした鶴見の考え方、生き方が
    平易な文章で書かれている。
    難しいことを平易に書くのが真の知性である。
    自分の中に生きる不良の自分に水を枯らさぬようにする
    と断言する80代。
    鶴見の全著作と時間をかけて対話したいと僕は思った。

    昨日は若手同僚の結婚パーティに出席した後、
    電車を乗り継ぎ、西太子堂の会員制角打ちKに寄り道した。
    うまい酒と簡素なつまみで鶴見の著作と対話してみたかった。
    Kの親父がで愛を込めて綴る
    名酒「小左衛門超活性にごり」は季節ものだけに
    店にあるうちに味わっておきたい。
    親父や常連らしき客が「あわあわ」と呼ぶのがこの酒だ。

    家族経営のこの店で「チーズ盛り合わせ」を注文すると、
    忘れかけた頃合いにおばあちゃんが運んできてくれる。
    わずか300円のつまみと侮るなかれ。
    4種のチーズ(ブリー、ほうれん草、トマト、クリーム)
    と軽く焼いたプレーン・ラスク3枚が小皿に並ぶ。
    これが日本酒に実に合う。
    親父の日頃の研究成果の一端を披露するつまみなのだ。

    テーブル代わりの酒樽に酒とつまみを並べ、頁を繰る。
    いい感じに酒が回り始めて、
    鶴見の言葉がするりするりと身体に入ってくる。
    にごりは気づくと腰を取られるから用心が要る。
    が、この「あわあわ」、もう一合だけ飲んで帰りたい。
    家までちゃんと帰れるかな?

    (文中敬称略)

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著者プロフィール

1922年東京生まれ。哲学者。15歳で渡米、ハーヴァード大学でプラグマティズムを学ぶ。アナキスト容疑で逮捕されたが、留置場で論文を書きあげ卒業。交換船で帰国、海外バタビア在勤部官府に軍属として勤務。戦後、渡辺慧、都留重人、丸山眞男、武谷三男、武田清子、鶴見和子と『思想の科学』を創刊。アメリカ哲学の紹介や大衆文化研究などのサークル活動を行う。京都大学、東京工業大学、同志社大学で教鞭をとる。60年安保改定に反対、市民グループ「声なき声の会」をつくる。六五年、ベ平連に参加。アメリカの脱走兵を支援する運動に加わる。70年、警官隊導入に反対して同志社大学教授を辞任。著書に『鶴見俊輔集』(全17巻、筑摩書房)『鶴見俊輔座談』(全10巻、晶文社)『鶴見俊輔書評集成』(全3巻、みすず書房)『戦後日本の大衆文化史』『戦後日本の精神史』(岩波書店)『アメノウズメ伝』(平凡社)ほか。

「2015年 『昭和を語る 鶴見俊輔座談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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