中国侵略の証言者たち――「認罪」の記録を読む (岩波新書)

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制作 : 荻野 富士夫  吉田 裕  岡部 牧夫 
  • 岩波書店 (2010年4月21日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312420

作品紹介

日本軍は戦中、中国でどんな侵略行為を働いたのか-その加害の実態についていまだ論争が続く。そんななか、中国により戦犯として起訴された四五名の元日本軍兵士・「満州国」官僚らの供述書が、近年全文公開された。極めて詳細なこれら証言から、「満州国」統治や侵略行為の実相、そして彼らが罪を認める過程を具体的に検証する。

中国侵略の証言者たち――「認罪」の記録を読む (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • 読みながら何度もなんじゃこりゃと言葉にしてしまう。新鮮な驚きがある本。

  • 2010年刊行。

     問題もないではないが、やはり貴重な書というべきであろう。
     本書は、戦犯として中華人民共和国で裁かれた45名の自筆供述書を元に、戦中の日本軍の行動を解説しようとするものである。

     経過の如何を問わず、自筆供述書が公開され、それを分析していく作業は歴史検討においては不可欠であり、その点は揺るぎない価値を持つ。そういう意味で一読の価値は高い。

     もっとも、①供述書のみで、他の証拠(例えば被害者の調書や人定関係やその他の客観証拠)が開陳されない点は事実確定の基礎を揺るがすこと、②起訴者のみという点。これも問題は残る。

     とはいえ、満州国の指導者層とも言える人物の、満州国経済の在り方が提示されていること。あるいは、中国共産党解放区に対する治安粛清作戦(三光作戦)に関する日本軍による指示等、日本側の終戦時の資料焼却で事実確定を困難ならしめたことに比して、当該事実を明らかにしうる史料が出てきた点は評価すべきであろう。

     著者ら来歴。
     豊田雅幸は立教大学助教(撫順・太原の戦犯者収容所)。
     張宏波は明治学院大学准教授(「認罪」過程)。
     岡部牧夫(満州国の経済・阿片政策)。
     荻野富士夫は小樽商科大学教授(満州国の治安維持・スパイ等弾圧活動)。
     笠原十九司は都留文科大学名誉教授(三光作戦概説)。
     伊香俊哉は都留文科大学教授(三光作戦関連供述書分析)。
     吉田裕は一橋大学大学院教授(日本人のアジア太平洋戦争観)。
     高橋哲郎は中国帰還者連絡会元事務局長(戦犯者の戦後の道程)。
     仁木ふみ子は「撫順の奇跡を受け継ぐ会(中帰連の後継)」代表兼中帰連平和祈念館館長(あとがき)。

  • 1956年、45名の日本人が戦犯として裁かれた。これはいわゆる極東軍事裁判ではない。満州からソ連に抑留され、中国側に引き渡された軍人軍属、官僚などと、大日本帝国再興のために上官の命により強制的に残留させられた軍人など。これら1109名の囚人は強制的に思想改造されたり自白を強要されることなく、「人道政策」に基づいて忍耐強い教育が続けられ、やがて自己の行為の犯罪性に目覚め、自筆調書にまとめた。中国側はその後このうち45人を起訴し、そのほかは釈放。数百人の民間人を殺害、陵辱した戦犯に対しても最高で有期刑20年の刑を宣告されたがすべて刑期を半分以上残して釈放、帰国を許された。帰国した彼らは中帰連という団体を組織し、自らの戦時中の行為について語り続けた。
    民間人であろうと子どもであろうと殺害することは、常に寝首を刈られるかと戦々恐々としている関東軍の方針でもあり、末端の軍人にとっては「上官の命令」であったわけだが、強姦はそうした理由付けができず、しかも人道上恥ずべき行為であるが故にそれを自ら語り続けることの心理的な障壁たるや想像を絶するものであるが、自発的に罪の意識に目覚めた彼らは生涯村仕事を続けた。しかし帰国した彼らへの目は決して優しくなかった。「共産主義に洗脳された」との非難に曝されつづけた。

    改めて世の中には知らないことがまだまだたくさんあるのだなと気づかされた。
    ページをめくる軒が重くなるほど酸鼻を極める記録。河北の抗日根拠地の原有人口9300万余のうち、民間人でもの日本軍に直接殺害された者が287万、拉致連行された者252万、強姦され性病に感染した者62万など、死傷等の被害を受けた者が7人に1人というすさまじさ。ごく一部の地域での犠牲者がドイツ軍によるホロコーストの被害者600万人にも比肩しうるという、いったいわたしたちはどれほどの殺戮を行ってきたのか、背筋が寒くなる。
    しかし、この「幸運な」戦犯たちは、自らの行った行為の恐ろしさに気づき、それを振り返るチャンスを与えられた。しかしその何千倍にも及ぶ将兵、軍属、官僚は永遠にそのチャンスを失ったまま死んでいった。日本の「戦後」は明らかにこの人たちによって始められ、それは今も脈々と続く。私たちはいつまでこれに頬被りしていこうとしているんだろうか。






    これらに向き合わないばかりか、なかったことにしようと躍起になっている今の世の中。事実は動かしがたいのだと、改めて思うのである。

  • 日中戦争後、共産党政権によって太原、撫順の戦犯管理所に
    収容された戦犯らの証言や足取りを追う一冊。
    執筆者が多いためか内容はやや平易で散漫としがちであったが、
    三光作戦や戦後の帰還者を迎えた状況などは興味深く読めた。
    第5章で描かれる実際に収容を体験した高橋氏の証言には、
    人間らしさを感じる反面、
    彼らと日本の、大戦に対する意識差の大きさが印象的であった。

  • 旧日本軍が進出していたことも、戦争行為になり残虐な行為があったことも事実であろう。しかしここに登場する人物は本当に「侵略者」なのだろうか。証言の記録として残っていることは事実であり、その記録が作成された特殊な背景であったことも読み取れる。しかし当時の日本人がなぜそのような「謝罪」をできる心理状態に変わったのかの説明はよくわからない。数字や写真、証言が信憑性を増しており、歴史の捉え方のひとつの立場からの強烈なメッセージとしては理解できるが、内容そのものは100%信じることができない。

  • [ 内容 ]
    日本軍は戦中、中国でどんな侵略行為を働いたのか―その加害の実態についていまだ論争が続く。
    そんななか、中国により戦犯として起訴された四五名の元日本軍兵士・「満州国」官僚らの供述書が、近年全文公開された。
    極めて詳細なこれら証言から、「満州国」統治や侵略行為の実相、そして彼らが罪を認める過程を具体的に検証する。

    [ 目次 ]
    第1章 「認罪」への道―撫順・太原戦犯管理所における体験(撫順・太原の日本人戦犯;「認罪」はどのように行なわれたか)
    第2章 日本は「満州国」で何をしたのか―「侵略」の証言1(「満州国」高級官僚が語る財政・産業・阿片政策;「満州国」の治安体制)
    第3章 三光作戦とは何だったのか―「侵略」の証言2(華北における三光作戦の展開;供述書に綴られた「三光作戦」)
    第4章 なぜ日本は「侵略」という認識をもたなかったのか―戦後日本社会のなかの中帰連(敗戦前後の状況;GHQによる非軍事化・民主化政策 ほか)
    第5章 帰国後の元戦犯たちの歩み―「中帰連」一メンバーの視点から(ある戦犯兵士の軌跡;戦時中の自分を否定する ほか)

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  • 数字が怖かった。射殺481名、刺殺143名・・など淡々と書かれていると怖い。
    読後の感想はむなしさとほっと安心する気持ちが混ざりました。
    とても複雑な気持ちにさせられた一冊でした。

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