開発主義の時代へ 1972-2014〈シリーズ 中国近現代史 5〉 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312536

作品紹介・あらすじ

文化大革命の嵐が過ぎ去り、中国は新たな試練の時代を迎えようとしていた。疲弊しきった経済をどう立て直すか。雌伏の時を乗り越え、厳しい権力闘争を勝ちぬいた〓(とう)小平が、改革開放に向けて舵を切る。計画経済から市場経済へ。社会を根底から変える大転換が始まった。中国台頭の起源をさぐり、その道すじをたどる。

感想・レビュー・書評

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  •  対象時期の通史。まず、本書では改革開放は1978年の第11期三中全会が発端との立場を取らない。文革中の70年代初からプラント輸入の動きはあった。また78年の三中全会でも、鄧小平は華国鋒との権力闘争に勝ったとは言え、政治路線転換は不徹底だった。
     その後も90年代初まで改革開放をめぐる攻防は続く。この過程で、80年代、鄧小平など長老グループを単なる保守ではなく、市場化と対外開放には基本的に賛成し、行政の効率を高め大衆の意欲を喚起する限り政治改革も必要だとする「独裁重視型の政治改革論者」と位置づける。趙紫陽ら「協商重視型の政治改革論者」とは異なるが、両者とも政治改革論者ではあったということだ。
     90年代は「社会主義の中国的変質」という語で評される。アジア金融危機には各部門内の党組織を強化して統制する、という極めて社会主義的な手法で対処したものの、2000年には「三つの代表」論により、中国共産党は「開発主義とナショナリズムに拠って立つ政党であることが明らかに示された」とある。確かに、改革開放以降の中国は社会主義とも資本主義とも言い難い。「開発主義」という語がよりふさわしいのだろう。
     なお、中国の経済路線を見るにあたり、改革か保守か以外に、中央集権か地方の自主権かという視点もあった。改革開放初期、広東省に自主権を認めるにあたり、太平天国の乱や孫文の革命運動まで挙げて南北の緊張関係を説明している。21世紀に入っても、中央のマクロコントロールと地方経済の活性化の争いが記述されている。

  • 改革開放から習近平路線までの開発政策を辿る。出版後6年で新たな動きも当然多々生じているが、約50年の歴史をおさえることで現状の理解が深まる。

  • 毛沢東の行動、特定の個人やグループが影響力を持つようになると、常にその力遅いでバランスを取ろうとする。

    鄧小平、韜光養晦政策 能力を隠し、低姿勢を保って時を待つ、

    愛国主義教育、現代の中国では愛国主義と社会主義は本質的には一致する。

    社会主義制度と市場化との矛盾を内包

    資本家の共産党円の入党、中国共産党は、社会主義ではなく、開発主義とナショナリズムによってたつ政党

    政権の求心力を強化する上では対日闘争が有利に働く。現場への不満と将来愛の不安を募らせる国民をまとめていくためには、今林国との闘争が1番手っ取り早く、かつ有効である。

  • 12月新着

  • 毛沢東以降から現時点までの中国現代史を振り返る。
    全体的には広く浅くの内容であり、
    分かりづらい表現もあったが、せめぎ合いつつも
    徐々に改革開放路線へシフトしてゆく流れを
    細かに解説しており、また第二次天安門事件以降
    高まった愛国主義教育についても興味深く読めた。

  • 1972年から2014年までの中国現代史を扱ったシリーズ第5巻。第4巻出版からだいぶ間が開いたが、執筆のご苦労は並大抵ではなかったように思う。それだけ、とくに最近の中国情勢はわかりにくい。

    本書は2名の著者による共著だが、全体にバランス良く叙述されており、読みやすかった。鄧小平時代に導入された「社会主義市場経済」と言っても、マクロ政策(財政金融政策)重視派や生産重視派がある一方で、依然として中央統制派の力もあったことなど、詳細に分析されていて興味深かった。

    近年の動向でもアベノミクスと並んでリコノミクスと呼ばれた李克強総理の経済政策についても「鄧小平よりも毛沢東に似ている」とされる習近平体制の中で影をひそめているが、その辺りも非常に不透明だ。

    いずれにせよ、「超大国候補の自信と不安」を抱えた現代中国を知る上で必読の好著だと思う。

  • ホントに・・・中国はどこへ行くんでしょう。
    漢民族のそもそもの性格なのか、それともまだまだ精神的には発展途上にあるのか・・・・。
    「品生」をもう少しつけていただくといいのですが。

  • 文革時代は経済成長もした。賃金がほとんど上がらないから、消費を抑えて、投資にまわすことができたから。
    70年代半ば、マレーシア、タイ、フィリピンと国交を正常化した際、中国は華僑、華人の二重国籍を否定し、中国籍を保留した華僑に対しても現地の法律の順守と風習の尊重を要望する旨を表明した。

    友好的な対日政策を打ち出す時の政権は比較的安定しており、厳しい対日政策を取りがちになるのは権力基盤が不安定な時だった。

  • 222||Y8||Ch=5

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著者プロフィール

東京大学大学院法学政治学研究科教授

「2023年 『日中関係 2001-2022』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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