生物多様性とは何か (岩波新書) (岩波新書 新赤版 1257)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312574

作品紹介・あらすじ

クロマグロの大量消費は何が問題なのか?人類を養う絶妙な生物ネットワークの破壊が進んでおり、生物多様性条約もその歯止めになっていない。今なすべきことは何なのか。世界で最も多様性に富み、脅威にさらされているホットスポットの現状と、保全のための新しい仕組みをレポートし、人間と自然との関係修復を訴える。

感想・レビュー・書評

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  • 【メモ】
     どう評価したらいいか分からない本。
     新書だが一冊目に読める入門書ではない。タイトルもそれっぽいが決定版でもない。後半部では生物多様性保全のための種々の取り組みを多数紹介しているが、知識をインストールするためだけの本でもない。個々の用語・概念・出来事の説明はとても分かりやすいが、全体としては本の輪郭(意図)がボヤケている印象を受ける。おおむね公平な書き方だが、ちょくちょく著者の意見も顔を覗かせている。……そのわりに尖った意見や少数意見や著者の卓見が載っているわけでもないので、不真面目な読者が珍奇なものを面白がるわけにもいかない(私が読む限り著者の問題意識はハッキリとは伺えない)。
     以上のように色々書いたが、出来の悪いわけではない(失礼な表現だが、入門書になりきれなかった本、というと一番伝わりやすいと思う)。個人的な収穫は、国際的な(=地球規模の)問題はやはり、先進国をはじめ様々なアクターの利害が絡んでおり余計に難しくなりうるということを、本書を読み返して再認識できたこと。


    【書誌情報】
    著者:井田徹治[いだ・てつじ](1959-) 記者。
    定価:902円
    通し番号:新赤版;1257
    刊行日:2010/06/18
    ISBN:9784004312574
    仕様:新書 並製 カバー 238ページ
    https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b226044.html

    【簡易目次】
    はじめに――築地で生物多様性を考える [i-vi]
    目次 [vii-ix]

    第1章 生物が支える人の暮らし 001
    1 破れてわかる生物のネットワーク 002
    2 生態系サービスという見方 015
    3 生物多様性の経済学 024
    ●コラム サメとナマコの危機 041

    第2章 生命史上最大の危機 043
    1 増える「レッドリスト」 044
    2 地球史上第六の大絶滅 056
    3 生態系の未来 066
    4 里山――日本の生物多様性保全の鍵 078
    ●コラム 侵略的外来種 090


    第3章 世界のホットスポットを歩く 091
    1 ホットスポットとは 092
    2 開発と生物多様性――マダガスカル 098
    3 南回帰線のサンゴ礁――ニューカレドニア 106
    4 農地化が脅かす生物多様性――ブラジルのセラード 113
    5 大河が支えた生物多様性――インドシナ半島 120
    6 日本人が知らない日本 129
    ●コラム 地球温暖化と生物多様性 136


    第4章 保護から再生へ 137
    1 漁民が作った海洋保護区—漁業と保全の両立 138
    2 森の中のカカオ畑――アグロフォレストリー 14
    3 森を守って温暖化防止 155
    4 種を絶滅から救う――人工繁殖と野生復帰 161
    5 自然は復元できるか 170
    ●コラム 種子バンク 177

    第5章 利益を分け合う――条約とビジネス 179
    1 生物多様性条約への道のり 180
    2 ビジネスと生物多様性 195
    ●コラム ゴリラと「森の肉」 211

    終章 自然との関係を取り戻す 213

    参考文献 [1-2]

  • 多様性の重要性を説く啓蒙書

    タイトルから、生物多様性のシステムを解説しているのかと思ったけど違った
    生物多様性に関して特に新しい概念の知識を得られなかったのは残念

    ただ、生態系によるサービスの定量化と経済的価値への換算をしている点は評価する
    ま、これにしてもいくらでもでっち上げる事はできるので、そう信頼できる数値ではないけど、数値化する意義はあると思う

    出版年から察するに、COP10に乗っかって出版されたのだろうと推測
    生物多様性の重要性を世間に知ってもらう教科書的にはいいのではかなろうか


    目次
    第1章 生物が支える人の暮らし
    第2章 生命史上最大の危機
    第3章 世界のホットスポットを歩く
    第4章 保護から再生へ
    第5章 利益を分け合う―条約とビジネス
    終章 自然との関係を取り戻す



    生態系による自然の恵みを「生態系サービス」とし、役割による分類を行っている紹介

    ・供給サービス
    食物、木材など、物質的な資源を供給する役割
    これが一番目に見えて実感しやすい

    ・調整サービス
    水資源の涵養、生物廃棄物の処理物など、物質やエネルギーの流れをコントロールする役割
    汚染や気候変動を防いだり、特定生物の大量発生を防ぐなどの役割

    ・基盤(維持的)サービス
    植物の光合成のような生態系そのものを維持するのに必要な役割
    水、土壌、栄養、エネルギーの生成・循環・保持など

    ・文化的サービス
    人間が文化的な活動に利用できる役割
    森林セラピー、ダイビング、エコツーリズムなどのレクリエーション


    一時的な供給サービスの利益を得るために、他のサービスから得られるはずの将来的利益を失っているというのが一番の主題だろうか
    各種サービスの定量化と経済的価値への換算はものすごく大雑把だけど、潜在的な価値がどのくらいあるかという主張には使える
    では、実際に守ろうとうするのであれば、守ることで得られる実際の経済的価値を提示しないと難しいのではないかと思う


    限られた資源を守るために、特に重要とされる地域を「ホットスポット」に指定し、優先的に保全していくという仕組み
    ホットスポットは、マダガスカル、ブラジルの大西洋岸の森、日本などを含み、面積は地球の地表面積の2.3%にすぎないが、絶滅が最も危惧されている哺乳類・鳥類・両生類の75%がそこに生息しているらしい

    そのための条約など、国家間の思惑とその背景
    ホットスポットは途上国に多く、ホットスポットを守ろうとすればより貧しくなっていくというジレンマ
    なので、生物利用の経済的な補償は必要でしょうね

    「カーボンオフセット」と同じアプローチで「生物多様性オフセット」という概念を広める必要がある



    主張の概要としてはだいたいこんなことろだろうか

    残念なのは、多様性が失われているという裏付けのデータがないものがある
    確かに絶滅している生物種はいる
    でも、新種の供給量については未だ明らかになっていないのは本文にも書かれてある

    そもそも、どの程度の多様性があればいいのか?
    以前の生態系とは異なっていても、新しい生態系が保たれていれば問題ないのではないか?
    この辺はずっと昔からリベット仮説が提唱されているだけで、定量的な評価はされていないからな
    まぁ、調査のしようもないんですけどね

    学者による学術紹介ではなく、ジャーナリストによる啓蒙書という評価が適切な本かな

  • 生物多様性とは何なのかを、様々な事例をとりつつ説明している本。世界の各地で起きている生物環境などの問題点を知れた点では良かった。

  • ふむ

  • SDGs|目標15 陸の豊かさも守ろう|

    【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/16184

  • 学校の夏休みの小論文課題としてこの本を使わせていただきました。
    また、違う科目の課題でも、生物多様性というワードが大切になってくる小論文を書かなければならなかったので選ばせていただきました。

    内容としては、世界各国の事例が沢山載せてあり、私のような高校生でも読みやすく分かりやすいものでした。世界全体のざっくりとした環境問題の現状について知りたい、という方にはおすすめな本だと思います。

    感想です
    自然を守ることは、人類の未来を守ることにも繋がるはずなのですが、どうして短期的な経済発展の方を重視し、環境破壊を簡単に行ってしまうのでしょうか。今の私たちは、確かに環境破壊をすることによって生活が成り立ってしまっています。その事についてもっと向き合い、どうすればよいかということを興味のある人だけではなく、全ての人が頭の隅にでも置くべきだと思います。

    これから、もう少し他の本などを読んで環境問題についての理解を深めていきたいと思います。

  • 「ホットスポットは途上国に多く、それを守ろうとすることでただでさえ貧しい国がさらに貧しくなる」

  • 第1章 生物が支える人の暮らし
    第2章 生命史上最大の危機
    第3章 世界のホットスポットを歩く
    第4章 保護から再生へ
    第5章 利益を分け合う―条約とビジネス
    終章 自然との関係を取り戻す

    著者:井田徹治(1959-、東京、ジャーナリスト)

  • 発掘したので遡って登録。以下,読了当時(2012/09/01)の感想: 世界各地の実例を挙げて説明されていたので,どうしてまずい状態なのか,改善することでどのような効果が得られるのか,がわかりやすかった。と同時に,日本の海の資源についてはきちんとした調査を進めた方がいいだろうし,どうして勧められないのだろう,と思ってしまった。【大学】

  • 共同通信社記者による、生物多様性の維持が何故必要なのか、世界のホットスポットの現状、生物多様性の維持のための世界的な取り組みについてのレポートである。
    本書で著者は、
    ◆国際自然保護連合の「レッドリスト(絶滅危惧種リスト)」には、2008年現在約45,000種が指定されており、その中には、かつては日本のどこでも見ることができたメダカや秋の七草であるキキョウなども含まれている。
    ◆地球では、40億年前の原始的生物の誕生以来、急速に種が減少した時期が過去にも5回あったが、今回の危機は人間の活動による人為的な環境変化が原因である点において、過去のものと性格が異なっている。
    ◆こうした中、最も効率的に生物多様性を維持するためには、限られた資源をどこに投入すればいいのかという考え方から「ホットスポット」と呼ばれる地域が指定されており、それは、マダガスカル、ブラジルの大西洋岸の森、日本などを含み、面積は地球の地表面積の2.3%にすぎないが、絶滅が最も危惧されている哺乳類・鳥類・両生類の75%がそこに生息している。
    ◆現在、世界各国で様々な試みが進んでいる一方で、世界レベルでは、1.生物多様性の保全、2.持続的な利用、3.利益の公平な配分の実現の3点を主要な目的とした「生物多様性条約」が193ヶ国に批准されているが、3に不満を持つ米国は同条約を批准しておらず、その取り組みは一枚岩とは言えない。
    ◆だが、生物多様性リスクは、企業のビジネスチャンスともなっていることも事実で、その中でも、「カーボンオフセット」と同じアプローチである「生物多様性オフセット」は特に注目されている。
    と述べている。
    地球温暖化も生物多様性低下も、現代人の活動が原因のひとつであり、人類として何らかの手段を講じるべきことに疑問の余地はないが、私はこの種の問題を資本主義的手法で解決しようとすることには、なぜか違和感を抱く。
    著者は終章で「重要なことは、地上にわれわれが残す「足跡」を小さくし、地球の生態系の許容範囲の中で豊かな暮らしを実現することなのである。われわれの日常生活や目の前にある製品が、どのような形で生産され、場合によっては海外の生物多様性にどのように関連しているのかを知る努力も必要」と結んでいるが、その主張に大いに共感する。
    (2010年9月了)

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著者プロフィール

井田徹治:共同通信社科学部編集委員。本社科学部記者、ワシントン支局特派員などを経て、2010年より現職。環境と開発、エネルギー問題をライフワークに、途上国の環境破壊の現場や、多くの国際会議も取材。著書に『生物多様性とはなにか』(2010年)など。

「2021年 『BIOCITY ビオシティ 88号 ガイアの危機と生命圏(BIO)デザイン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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