日本の教育格差 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 23
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312581

作品紹介・あらすじ

所得格差が広がるなか、教育の機会が不平等化している。高学歴を目指して塾や私立学校が隆盛する一方、経済的理由で学校を中退する者も目立つ。格差問題の第一人者である著者が豊富なデータによって、親の所得の影響、公立・私立の差、学歴と進路の関係など、教育をめぐる格差の実態を検証。教育の役割や意義を問い直し、打開策を探る。

感想・レビュー・書評

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  • 経済学者が教育について語るとこんな感じになるのだな、と実感する。教育をめぐ格差について、よい意味でも悪い意味でも「広く浅く」論じている。著者のものの見方は、常識的というか通俗的というか、さばけていてこだわりがない。本書の前半では、広く世間で言われていることを、様々なデータや様々な学者の見解を紹介することで跡づけていく。本書の要旨は終章にまとめられているので、まずここから読んで、必要に応じて本書前半の各種データを確認する、という読み方の方が効率的かもしれない。

  • 2010年刊。著者は京都大学大学院経済研究科教授。

     タイトルどおりの書。
     著者の他書や苅谷剛彦氏などの著作を読んでいれば、内容にさほど新奇なものはない。

     論点で言えば、これまで進展してきた高校生への援助枠の拡大に鑑みると、今後これが改悪されない限り、今後は就学前教育と、大学生や専門学校生にどれだけ財政的援助ができるかが肝になるのだろう。
     例えば大学。勿論、給付型奨学金の拡充が当然の前提で、望ましいことは確かだが、それに加えて無利子貸与型も組み合わせると随分違う。

     ところで、かつてこの種の類書は散々読破した。それは、子供達(特に上の子)が幼稚園の頃、ゆとり教育が議論の俎上となった時期に符合するが、本書自体、その時期と比べ大きく議論が進展し、あるいは新たなデータが付加されたという感は生まれなかった。子供の貧困=格差社会の亢進という問題の根深さと解決の道筋がついていないことが、心に引っかかった感じである。

  • 生徒間の学力の差はDNAや親が教育熱心かそうでないかの家庭環境によると思っていた。本著は教育学の観点からだけでなく経済学の視点からも見ており①家庭の所得格差が生徒の学力に影響を与えている。例えば塾などの学校外教育を受けられるかどうかが生徒の進学に大きく関わっている。②ヨーロッパでは多くの国で大学の授業料が無償。日本では高等教育は私的財とみなされ、公費負担額が非常に少なく、家計に負担を強いられる。③日本の企業において、学歴間の所得格差はOECD諸国と比べてそれほど大きくなく、現代は有名大学出身者でなくとも昇進に不利というわけではない。というのが興味深かった。
    親の年収が子どもの学力に影響を与え、教育の機会の格差が人生における格差につながるならば、経済的に恵まれない生徒の学習を積極的にサポートしたり、より多くの優秀な生徒に給付型の奨学金を与えたい。そして生徒自身が明確な夢を持てるよう、世の中の職業について十分知る機会が学校と家庭の両方であると良い。

  • だいぶ前に読み終えた本。格差論で有名な橘木さんの著書で、やはり格差は教育格差からもたらされている面が強いとの事で、教育格差に特化して書かれている。私は教育経済学が専門なのでとても楽しく読ませてもらった。一方、欲を言えば近年アメリカで注目度の増している幼児教育に関してどのように考えているか、その意見を書いてほしかったところ。いずれにしても良書である事は間違いない。

  • 教育における格差、その要因と問題点を検証し、リベラリズムの立場に基づいて日本の教育改革の方向性を示唆するもの。

  • 資料に溢れていて論文とか書きたいときに役立ちそう。
    教育学と経済学だけでなく哲学にも踏み込んだ良書。
    岩波新書って学術論文を切り貼りしたような内容が多くて、実質的に論文を読んでいると言っても過言ではないんじゃなかろうか。

  • 経済学的な知見を踏まえて、日本の教育格差について書かれている。高卒と大卒間の格差に加えさらに、大卒間の間でも有名ブランド大とその他大の格差が存在しているという主張は繰り返しなされている。

  • 著書への要望は2点ある。

    第一に、pp.5の卒業学校段階の格差でのOECDデータについて。
    なぜそのデータを用いたのか具体的な説明がなされておらず、明らかに不足している。
    「卒業学校段階の違い」という説明で進んでおり、卒後の賃金稼得に関する説明や、根拠となる深い分析結果が得られず、ゆえに、更なる調査が読者に求められる。

    第二に、pp.72からの高校、大学に進学する要因の変化というところでも同様に、説明・データ共に不足している。
    新書なのだから、2010年度までの日本の進学率上昇との国際比較の比率があっても良いのではないだろうか。

    新書ゆえの問題ともいえる。
    しかしながら、読者自身が更なる調査を行わなければならず、何を根拠に物語っているのか予測を立てて読まなければならない点が多々ある。
    もっと調べてみたいと読者に思わせる、著者の思惑かもしれないが、その点が非常に残念でならない。

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プロフィール

橘木俊詔(たちばなき・としあき)1943年兵庫県生まれ。小樽商科大学卒業。大阪大学大学院修士課程修了。ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。京都大学教授,同志社大学教授などを経て,現在京都女子大学客員教授,京都大学名誉教授。専門は労働経済学,公共経済学。元日本経済学会会長。著書:『21世紀日本の格差』(岩波書店,2016年),『日本人と経済』(東洋経済,2015年),『「幸せ」の経済学』(岩波現代全書,2013年),『女性と学歴』(勁草書房,2011年),『日本の教育格差』(岩波新書,2010年),『女女格差』(東洋経済新報社,2008年),『格差社会 何が問題なのか』(岩波新書,2006年),『日本の経済格差』(岩波新書,1998年)など多数。

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