- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004312581
作品紹介・あらすじ
所得格差が広がるなか、教育の機会が不平等化している。高学歴を目指して塾や私立学校が隆盛する一方、経済的理由で学校を中退する者も目立つ。格差問題の第一人者である著者が豊富なデータによって、親の所得の影響、公立・私立の差、学歴と進路の関係など、教育をめぐる格差の実態を検証。教育の役割や意義を問い直し、打開策を探る。
感想・レビュー・書評
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SDGs|目標4 質の高い教育をみんなに|
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2010年の民主党政権下に発行された本
高校の授業料無償化や最近の幼保無償化など家計負担を軽減することの意味を再確認できた
小学校の少人数指導や英会話の導入は塾に行けないこどもも質の高い教育を受けられることになる
これらは一律に行われるので、余裕のある家庭は浮いたお金をさらに教育に充てることができ、格差は縮まらないのかもしれないが全体的な底上げにはなるか
格差対策としては奨学金が効果的なのだろうが日本では充実していないとのこと。自分もお世話になったのでより多くの学生が受けられるようになってほしい
賃金で見ると日本は学歴間格差が最も小さい…ことの理由が「大卒皆が昇進するわけではないしそのスピードもそれぞれだから」と考察しているがその根拠は示していない。また、
1)賃金水準の国際比較
2)女性活躍の問題
この2点にほぼ触れていないのは疑問だった
男女格差についてはあえて避けたのだと思いますが -
面白いなと思ったのは市場原理をどこまで義務教育に導入していくかのところ。公共財であるはずの公立中学に完全中高一貫の学校がバシバシできていて、しかも進学実績をあげまくっていることからも、割と国や自治体としては賛成なのかなと思う。これはおそらく公立中と私立中の学力差を縮めるという意図があるんだろうし、学費面で私学を尻込みする貧困家庭にとって、優れた教育機会の門戸は広がったはず。
その一方で、公立一貫校が人気になればなるほど入学難易度は上がるし入試問題も難しくなるんだから、その分特別な対策が必要になる。つまり予備校に費用がかかる。そして結果的に貧困家庭は締め出されてしまうケースは多々ありそう。それこそここは、最低限度の成績を足切りにしてあとは面接やら作文やら抽選にしたらいいのにね。公共性を担保する意味では、都立中高一貫があえて進学実績を伸ばしまくることに対しては少し懐疑的。インフラとして都内に点在だけしてたらいい。
あと文系学部が職業教育に繋がりにくい現状云々のくだりは、端的に著者がバカで無知なだけ。商学部、経営学部、経済学部→民間企業の文系総合職って専門教育です。ガチのゼミナールが大学内外でやってること調査してみたらいい。チャラチャラウェーイの大学生が嫌いなだけでは?あとなんで文系学部のが年収高いんだと思う?逆に、医学部除く理系の職業教育って価値がないのでは?
・大学の存在理由を再考すべき。学問の延長線上にある企業実務を学生に勝手に期待するのでなく、フォーマットを提供できるビジネススクールを興して職業教育押し出していけば、いい会社に入れたりするんじゃないのか。全寮制の進学校のように。
・寺子屋や藩校は授業料がなかった。慶応義塾はその点では学生から授業料を取りはじめたという意味で意義がある。現代私学の走りである。 -
840円購入2010-09-27
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2012/06/19
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現代日本の教育格差にまつわるテーマを一通り提示している。著者のリベラル的な思想も、個人的には概ね同じ傾向であり違和感はない。
しかしながら新書とはいえ考察が浅すぎないか。学生のレポートみたいである。経済学者だから仕方ないかもしれないが実際の労働市場へのインサイトみたいなものも全く感じられない。さらに言うと数字の扱い方にも疑問符がつくような箇所も。
読みながら思ったこと。。。
・私立中学へ子供を通わせようとする傾向は、自己成就予言的な性質がないか。経済力のあって意識の高い家庭が子供を私立に通わせるようになると、ますます公私の差が開く。困ったものだ。
・日本では母子家庭での子育てが非常に辛いと。これはまったくその通りだろう。とにかく子持ちの貧困家庭はもっと積極的に公的な支援をして良い。 -
経済学者が教育について語るとこんな感じになるのだな、と実感する。教育をめぐ格差について、よい意味でも悪い意味でも「広く浅く」論じている。著者のものの見方は、常識的というか通俗的というか、さばけていてこだわりがない。本書の前半では、広く世間で言われていることを、様々なデータや様々な学者の見解を紹介することで跡づけていく。本書の要旨は終章にまとめられているので、まずここから読んで、必要に応じて本書前半の各種データを確認する、という読み方の方が効率的かもしれない。
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生徒間の学力の差はDNAや親が教育熱心かそうでないかの家庭環境によると思っていた。本著は教育学の観点からだけでなく経済学の視点からも見ており①家庭の所得格差が生徒の学力に影響を与えている。例えば塾などの学校外教育を受けられるかどうかが生徒の進学に大きく関わっている。②ヨーロッパでは多くの国で大学の授業料が無償。日本では高等教育は私的財とみなされ、公費負担額が非常に少なく、家計に負担を強いられる。③日本の企業において、学歴間の所得格差はOECD諸国と比べてそれほど大きくなく、現代は有名大学出身者でなくとも昇進に不利というわけではない。というのが興味深かった。
親の年収が子どもの学力に影響を与え、教育の機会の格差が人生における格差につながるならば、経済的に恵まれない生徒の学習を積極的にサポートしたり、より多くの優秀な生徒に給付型の奨学金を与えたい。そして生徒自身が明確な夢を持てるよう、世の中の職業について十分知る機会が学校と家庭の両方であると良い。 -
だいぶ前に読み終えた本。格差論で有名な橘木さんの著書で、やはり格差は教育格差からもたらされている面が強いとの事で、教育格差に特化して書かれている。私は教育経済学が専門なのでとても楽しく読ませてもらった。一方、欲を言えば近年アメリカで注目度の増している幼児教育に関してどのように考えているか、その意見を書いてほしかったところ。いずれにしても良書である事は間違いない。
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教育における格差、その要因と問題点を検証し、リベラリズムの立場に基づいて日本の教育改革の方向性を示唆するもの。
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資料に溢れていて論文とか書きたいときに役立ちそう。
教育学と経済学だけでなく哲学にも踏み込んだ良書。
岩波新書って学術論文を切り貼りしたような内容が多くて、実質的に論文を読んでいると言っても過言ではないんじゃなかろうか。 -
経済学的な知見を踏まえて、日本の教育格差について書かれている。高卒と大卒間の格差に加えさらに、大卒間の間でも有名ブランド大とその他大の格差が存在しているという主張は繰り返しなされている。
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著書への要望は2点ある。
第一に、pp.5の卒業学校段階の格差でのOECDデータについて。
なぜそのデータを用いたのか具体的な説明がなされておらず、明らかに不足している。
「卒業学校段階の違い」という説明で進んでおり、卒後の賃金稼得に関する説明や、根拠となる深い分析結果が得られず、ゆえに、更なる調査が読者に求められる。
第二に、pp.72からの高校、大学に進学する要因の変化というところでも同様に、説明・データ共に不足している。
新書なのだから、2010年度までの日本の進学率上昇との国際比較の比率があっても良いのではないだろうか。
新書ゆえの問題ともいえる。
しかしながら、読者自身が更なる調査を行わなければならず、何を根拠に物語っているのか予測を立てて読まなければならない点が多々ある。
もっと調べてみたいと読者に思わせる、著者の思惑かもしれないが、その点が非常に残念でならない。 -
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20110123読了
興味深かった。
自分が思ってたことを再考するきっかけとなった。
ざっくりと。
学歴三極化という考えは確かにそうかも。
↓
1.名門大学卒業
2.その他大学卒業
3.高校以下卒業
以上の3つで就職が別れるということ。
教育学的には人間性の向上をめざす、経済学的には社会の一員として働くための力をつけるといったようなこと。
どちらのバランスも大事。
その教育の機会をなるべく不均等・不公平にならないように考えられていること。 -
経済学的視点からの教育問題へのアプローチ。
本屋さんで立ち読みをする時、「あとがき」から読んでいたりしませんか?小説の文庫だと「あとがき」に評論や著者の紹介なんかが記載されていて、参考になったりしますよね。
本書については、あれと同じような読み方を推奨します。というか、「結論先取り読み」は新書を読む際の鉄則とまで言えるかもしれません。小説ばかり読んでいたせいか、「本を読むのに終わりから読むなんて邪道だ」という固定観念があったんですが、終章を読んでから、内容にいく方が理解が早いということにこの本を読んで気づかされました。
その点で、本書は私にとっては、読書スタイルの良い勉強になったといえます。
内容はといえば、いろいろと新しい知識の発掘もあり、教育問題や格差問題に関する論点を深めていく際の啓発にはなると思います。
ただ、どうしても冗長な感を拭えないため、評価は2で。 -
2010.11.4
大学の授業にて。 -
:::::::::MEMO:::::::::::
p.25.
新堀通也著『学歴意識に関する調査』(1967、広島大学)
p.68. 文化資本の進学意欲に与える影響のジェンダー差:
片瀬 一男 2005 『夢の行方―高校生の教育・職業アスピレーションの変容』
pp.189ff ジョン・ローマーの教育機会平等論(に、橘木氏は大きな刺激を受けたらしい):
Roemer, J. E. 1998. Equality of Opportunity. HUP
p.207. 非進学校系普通科の職業教育・進路指導
「ここで問題にする必要があるのは、普通科の中位・下位校である。寺田盛紀は、このような高校においては、職業や進路を学ぶ機会は進路講話ぐらいが与えられているにすぎず、実質的な進路指導は皆無に近いと述べている...(中略)...これらの学校でも基礎科目の国語、数学、英語などが重視されているので、働き手としての技能教育はほとんど行われていない。」 -
新しく得られたものはない.学生でも読める.
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物見遊山的な格差論ではなくて、ちゃんと「ではどうするか」まで論じられていてよかった。
ただ、高校の職業科については「荒れ」現象には触れられていないので、机上の空論っぽい。
また、同様に小学校の「崩壊」による私立への「逃げ」にも論究していないのも現状を充分に把握しておられないような気がした。 -
同志社大学経済学部教授の橘木俊詔(1943-)による教育格差論。
【構成】
第1章 学歴社会の実相―「三極化」の進行
1 日本は学歴社会なのか
2 大学進学の壁
3 学歴格差は三極化
第2章 家庭環境の影響力をどうみるか
1 子どもの学歴を決めるもの―親の階層と学歴の関係
2 文化資本か、学力資本か
3 高校、大学に進学する要因の変化
第3章 学校教育の進展と新たな格差
1 教育の目的・方法の変遷
2 公立か、私立か
3 エリート単線型の学歴コース
第4章 不平等化する日本の教育―家計負担が増加するなかで
1 学費負担と教育の不平等
2 低い公費負担、増える家計負担
3 貧困家庭の増大と教育
第5章 教育の役割を問う
1 教育の目的を検証する
2 リベラリズムと教育政策
3 働くことと教育の連携
終 章 教育格差をどうするか
著者は、既に同じ岩波新書から出版されている『日本の経済格差』(1998)、『格差社会』(2006)等で所得格差が拡大する現状分析を行ってきた。本書はそれを「教育」に限定した議論である。
紹介されている分析は、既に著者自身の著作で何度も触れられているもの、苅谷剛彦、本田由紀、吉川徹といった教育社会学研究者の手がけた新書の内容を要約したものであり、目新しさは全くない。上記構成を見れば内容は一目瞭然なので、本レビューで紹介は行わない。同じネタで何冊も本を出すあたり、研究者として新しい分野・課題に挑戦する気が無いのかと感じてしまう。
とはいえ、論旨は非常に明快であり、①名門大学卒のエリート、②一般的な大卒、③高卒(含む中卒)の3階層のうち、家庭の収入や文化資本、インセンティブ・ディバイド等により階層的に固定化しつつある③高卒低学歴層への対応策を考えるヒントになる。
終章で行われてる著者の提言について2点だけ言及したい。
評者自身は、著者が終章で提示するような少人数学級編成については、教員の安直な増員は将来的な教員の採用計画を見据えた上で慎重に検討すべきだと考える。著者は学習塾など学校外教育支出が日本的な格差の要因であるとして、その対策としての教員の質向上を挙げている。しかし、良質の教育を受けている(はずの)進学校の生徒であっても、学校外教育に多くの時間と費用を費やしていることを考えれば、教員の質とそれは関係が無い。
それよりは、義務教育課程における諸費用(給食費、副教材費)等への生徒数に応じた一定額補助による家計負荷軽減などの方がよっぽど直接影響があるのではないのか?
また、職業教育の充実についてだが、就職するという1点だけを考えれば普通科の減員、職業科の増員という安直な話になるだろうが、中学卒業時点でその後50年の人生に道を限定させてしまうことが本当にいいのか、著者は真剣に考えた上で主張しているのか?これも疑問符がつく。
最後の提言はともかくとして、現状の教育格差論の概要がつかめるという意味では、お得な一冊と言えるだろう。 -
様々なデータを基に、グラフなどを織り交ぜて教育格差の問題(特に経済に関わる部分)を論じている。が、「検証している」というわりにはデータの背景の説明にや結論の根拠が乏しい。正直に言って本書を鵜呑みにするのは良くないと思われるが、実に興味深い部分もあるので、別の書物などで「グラフにだまされない」知識を身につけてから読むと良いかなと。
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経済学の視点から、教育について書かれた本です。
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経済学が専門の著者が、教育学の視点から語られることの多い、教育に関する格差の実態や要因、それがもたらす要因を検証した一冊。学校では学問・教養の習得だけでなく、仕事を行う際に有用となる技能の習得や、働くことの意義などをもっと学ぶ必要があるという著者の主張はなるほどなと思う。