文学フシギ帖――日本の文学百年を読む (岩波新書)

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レビュー : 31
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312611

作品紹介・あらすじ

鴎外・牧水・百〓(けん)から三島・寺山・春樹まで、いずれ劣らぬ腕利きぞろい。さまざまな「フシギ」を秘めた作品に、当代随一の読み巧者が挑む。少し違った角度からあの名作を眺めてみると、思いもかけない新たな魅力が見えてくる。読めば世界を見る眼がかわる、文学の魅力満載!読者力を鍛える、老若男女におすすめの文学フシギ入門。

感想・レビュー・書評

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  • 「カフカ」の翻訳や「旅のエッセイ」でお馴染みの著者だが、先般、新潮社がこの100年間に発表された中短篇の中から“名作”を厳選するアンソロジーの全集『日本文学100年の名作』全10巻を刊行するに際し、その選者に川本三郎らと共に池内紀の名前があり「?」と思ったのですが、この本を読んで十分に納得した次第です。

    鴎外・漱石から始まって・・・与謝野晶子、宮沢賢治、内田百閒、久保田万太郎、深沢七郎、三島由紀夫、開高健、池波正太郎・・・・村上春樹と51人の作家を俎上に乗せ、縦横無尽に切り刻んでいる。
    切り刻むというのは、オーバーだが、これまでとは少し違った視点で作家の別の顔を浮かび上がらせており、見方を変えれば、読書の見方が何倍にも広がる面白さを教えてくれる。

    「織田作之助」の「夫婦善哉」
    原作を読んだ人より、映画で知った人(若い人ではなく高齢者)が多いと思うが、映画では森繁久弥と淡島千景が、風変わりな夫婦を演じている。
    要するに森繁演ずる「柳吉」は生業があり女房も子供もいるのに、家を出て若い芸者と一緒になり、色んな仕事に手を出すのだが、何をやっても長続きせず、挙句の果てに芸者の蝶子の稼いだ金を放蕩三昧してしまう、女の紐のような「どうしようもない男」である。
    映画では、森繁がそのだらしない柳吉を見事に演じる。
    この男は反省してもよくはならず、悔い改めて何一つ変わらない。そんな男に何度も愛想づかしをしながら蝶子は柳吉から離れない。
    「この二人の男女の機微と意味深い子悪党とを描ききった作者・織田作之助は当時27歳だった。20代の青年がどうしてこんなに鮮やかに男女を書きとめることが出来たのか、そのことに驚かずにいられない」

    「深沢七郎」の「楢山節考」
    こちらは現実の世相を半世紀前に予告したようで、余りにもリアリティがあり過ぎる。
    現代は「楢山」ではなく、シャレた片カナで、個室・完全介護をうたっている。別れの手を振ってから、家族一同マイカーに乗り込んで、一目散に我が家へと帰っていく。
    「小説では『一つ、山から帰る時は必ず後ろを振り向かぬこと』と、その作法まで小説はきちんと書きとめている」

    「夫婦善哉」や「楢山節考」はこれまで、読む対象とは違う本だと思っていたが、この著書を読んで一気に身近なものになってしまった。

    さまざまな謎を秘めた作品に、当代随一の読み巧者が挑み、ほんの少し違った角度からスポットを当てるだけで、その本や作家の新たな魅力を見せてくれる。
    本の帯にあるように、読者力を鍛える文学フシギ入門の一味違う文学入門書です。

  • 年齢を重ねた自分には懐かしい文学者の名前ばかりで楽しませていただいた。
    若い頃は作品ばかり読んでいたので、ヒトとナリまでは知らなかった。
    この本で「血と肉」をいただいた気がする。

  • 有名無名の文学者の作品と、ちょっとしたエピソードをまとめた一冊。
    著者あとがきの「いい本、またいい作品は~」の部分は読んでいて膝を打った。

  •  明治からの、50人を超える小説家を、見事にとらえなおしてくれます。まぁ、今後何人の作家を読むことができるか心もとないが、興味は掻き立てていただきました。文体も、とても惹かれます。都会の迷路のよう。

  • 日本近代文学の著名な作家について、ちょっとユニークな視点を追加してくれる、手軽な新書です。

  • 池内紀氏の「文学フシギ帖」(2010.7)、読み応えがありました!あぁこんな見方もあるんだと~。53人の著名な作家と作品がとりあげられています。あらためて読んでみたい作品がたくさん生まれました!幸田露伴「水の東京」、幸田文「流れる」「父ーその死」、若山牧水「石川啄木の臨終」、和歌山県新宮の旧家に生まれた佐藤春夫の「熊野路」、永井荷風を意識した滝田ゆうの「寺島町奇譚」、林芙美子「風琴と魚の町」、死後に発表された太宰治の「家庭の幸福」、森鴎外への羨望を抱き自らは自作自演の「宴」を演じた三島由紀夫の「作家論」!

  • 公共図書館から借りた本。 066 図書館本

  • 北海道新聞にれんさいされたエッセイをまとめた本。
    だから一編の長さが一定で、短い。
    日本近現代の文学作品の面白さを、掬い取って、キュッとまとめた感じだ。

    いくつも初めて知ったことがあった。
    例えば井伏鱒二の翻訳した漢詩。
    有名な「サヨナラダケガ人生ダ」の、あれ。
    種本があったそうだ。
    江戸中期の俳人、中島魚坊(潜魚庵)の『唐詩選和訓』がそれだという。
    たしかに、かなり似ている。
    寺山修二が啄木の短歌をパロディにして、啄木の未発表歌編として発表していたこととかも、興味深い。

  • S910.26-イワ-R1261 300115714

  • 近現代に活躍した作家たちのエピソードと、作品に関するエッセイ。サラッと読めます。
    知らなかったエピソードがたくさんあり、作家の意外な一面を見ることができます。もっと文学史に詳しくなれたら、また読み返してみたい。
    個人的に衝撃だったのは、三島の『私の遍歴時代』というエッセイの抜粋。高みからおびき寄せられる気持ちというのはどんなものなんだろう、と考えてしまいました。

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著者プロフィール

1940年兵庫県生まれ。ドイツ文学者、エッセイスト。著書に『諷刺の文学』『海山のあいだ』『出ふるさと記』『池内紀の仕事場』他。訳書にE・カネッティ『眩暈』、『カフカ小説全集』,G・グラス『蟹の横歩き』他。

「2018年 『澁澤龍彦の記憶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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