希望のつくり方 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312703

作品紹介・あらすじ

希望は与えられるものではない、自分たちの手で見つけるものだ。でも、どうやって?著者が出会った、さまざまな声のなかに、国の、地域の、会社の、そして個人の閉塞した現状をのり越えて、希望をつくり出すヒントをさがしていく。「希望学」の成果を活かし、未来へと生きるすべての人たちに放つ、しなやかなメッセージ。

感想・レビュー・書評

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  • 希望とは何か。欲望よりはクリーンで、期待よりは自力的な語感がある。志望の方がより具体的か。ただの言葉。しかし、その輪郭を認めなければ、つくり方など語れない。残念ながら、輪郭も金型もよく分からない。

    希望的観測。楽観視、つまり未来は明るいという予感。○○を希望する。その状態を欲する。そうなるとやはり、その世界観が正しいか正しくないかで、希望をつくる価値が変わる。ファシストの希望は叶えられるわけにはいかない。希望は必ずしも、善人の思想ではない。

    本著で何かを得られたかというと、残念ながら、新しい事はない。自問自答、言語ゲームによる定義の暗中模索に終始。やや残念。

  • 近頃感じている言葉にならないモヤモヤした気持ちを理解するための一助を求め近所の書店の棚を見ていたとき、ふと目に留まった本。
    東大経済学の玄田教授が、自身が中心となって進めた「希望学」の研究で得た知見の概要を簡潔に記してくれている。

    本書を読むことで、客観的には幸せな状況にあるはずの自分がなぜこんなに漠然とした不安や欠落感を感じているのか、その一端が見えてきた気がして気持ちが少し楽になった。

    家族にも仕事にも経済的にも恵まれている自分が幸せだという実感はある。
    それでもう十分だと思いたいし、それ以上を求めたくない。でも心は正直で何か満たされないものを感じている。
    というのが今の私の状況。

    本書を読んで少し見えてきたのは、自分には「幸せ」は足りているが「希望」が足りていないのかもしれないということ。
    だから満たされないものを感じているのだ。(これまで人間が目指すべき到達点は「幸せ」であり、「希望」やその他の要素は「幸せ」のための一要素だと思っていたが、どうやら違ったようだ。)

    ではどうしたら十分な「希望」を持つことができるのだろうか。

    そのヒントになったのは、本書に書いてある「幸福は持続を求める。希望は変化を求める」という言葉だ。
    「希望」を感じるためには「変化」が必要で、それはある程度自ら生み出す必要があるが、その変化を起こせていない自分に苛立ちを感じているのだ。

    一言でいえば「攻めよ!さすれば希望はおのずと見えてくるはずだ。」といったところか。

  • 「希望」という言葉に対し様々な方面からアプローチし、希望が失われていると言われる現代日本の中で、それでも希望を見出す事は出来ないのかと模索する話。

    書かれたのが2010年で東日本大震災の前であり、当時は格差も現代ほど酷くなく、国際的立場も安定していた時期だったから2022年現在を著者が見たらまた違う事を考えたかもと思った。

    とは言え、希望を主観的のみに捉えず客観的に捉えなおして、出てきたアウトプットは私たちの日々に活用できると思うし、素晴らしいと思う。

  • 希望学の「希望とは何か?」「希望はどうやったら生まれるのか」「希望の機能とは?」をわかりやすく解説した本。

    学問書ではなく、あくまで語りかけるような内容になっている。大学生などをイメージして書かれているかもしれないが、今社会に出ている20代半ばの人が読んでも十分に得ることはあるだろう。

    すくなくとも、待っているだけで希望が降って湧いてくることはない。また、大人の役割も重要だ。

    今希望が見当たらないならば、なんとか作っていくしかないし、また作りやすい環境を整えていくことも重要。

  • 仏教の経典には「希望」という言葉は出てこない。その一方で、キリスト教では「希望」を持つことの大切さが述べられる(死は貧しい者にとっては希望であり、豊かな者にとっては恐怖だ(内村鑑三著『代表的日本人』日本能率マネジメントセンター、2019年、p.189))。表面的な違いこそあれ、両者に共通しているのは「人間は困難の中で生きざるを得ない存在であることを認めている」という点である。その困難を避けようとするのか(日本)、直視するか(西洋)の違い--これは、日本人と西洋人のメンタリティーの違い(日本人の危機管理の弱さ、「水に流す」文化、辞任で事態の収束を図ろうとする体質)に繋がっているようようだ。

    "Hope is a Wish for Something to Come True by Action (with Others)" 希望はこのように4つの柱から成り立っている。つまり、希望とは、変化に必要なものである。しかし、自分たちが守るべき(誇りを感じる)アイデンティティがはっきりしていてこそ、新しいことにも挑戦する気持ちや行動が生まれるものである。「希望」の有無には、いくつかのファクターとの「関係性」、他者との「関連性」がある。しかし重要なことは、集団(職場)の内外との "Weak Ties" により、お互いの違いを持ち寄り、共有することで新たな希望のある発想や可能性が生まれてくることである。つまり、立場を超えて「話し合うこと」である。 そして、失敗や無駄を恐れず、「自らの挫折を物語として語れる人ほど、明るい希望を持つ」という。
    勉強が「分からないことに慣れる練習である。しかし、簡単に諦めないための練習でもある」という筆者の考え方に、何か目から鱗が落ちる思いであった。

  • 情報の正確さ、証拠不足を感じさせる。そのため、説得力に欠けていると思った。とくに宗教については、知識不足が感じられあまり深く学ばれていないように思う。希望に関することだけではなく、宗教についても深く研究し、書き直したほうがよいと思う。

  • 希望学という言葉が気になったので読みましたが
    ちょっと内容があっちに行ったりこっちに行ったりで読みにくかったです。

    ただ一つ。2006~2008年に行われた岩手県釜石市での調査というのがとても興味深く、詳しく知りたくなったので、「希望学」の2巻、3巻(東京大学出版会)は読んでみようと思います。

  • 当たり前と言えば当たり前なのだけれど、希望について考えるためのヒントがつまっていた。

    希望は物語のかたちをとる。
    現在が苦しいから、かなうかどうかにかかわらず、希望を持つ。
    希望を持てるための条件として、挫折を乗り越える経験、無駄を切り捨てない遊び、ウィーク・タイズなどが挙げられていた。地域の活性化という側面からの研究にも興味を持った。

    実践的なことでいえば、前々から気になっていた「頑張れ」と「大丈夫」の使い方については参考になった。

  • 「かつて、希望は前提だった」。
    とても印象に残る出だしで、ついつい読んでしまった。
    "希望とは何か" を突き詰めて希望学を生んだ著者の唱える論理は、なかなか咀嚼できない。
    でも希望は「無駄」を全てなくしたら、失われてしまうという話は面白かった。

    オススメ度:
    ★★★☆☆

    ノブ(図書館職員

    所蔵情報:
    品川図書館 304/G34

  • 【電子ブックへのリンク先】
    https://kinoden.kinokuniya.co.jp/hokudai/bookdetail/p/KP00048303

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著者プロフィール

1964年生まれ。88年、東京大学経済学部卒業。ハーバード大、オックスフォード大各客員研究員、学習院大学教授等を経て現職。博士(経済学)。
主著
 『仕事のなかの曖昧な不安』(中央公論新社、2001年、日経・経済図書文
 化賞、サントリー学芸賞)
 『ジョブ・クリエイション』(日本経済新聞社、2004年、エコノミスト
 賞、労働関係図書優秀賞)
 『孤立無業』(日本経済新聞出版社、2013年)
 『危機と雇用』(岩波書店、2015年、沖永賞)
 『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』(慶應義塾大学出版会、
 2017年、編著)
 ほか多数。

「2022年 『仕事から見た「2020 年」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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