ヤマト王権〈シリーズ 日本古代史 2〉 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312727

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  • 「謎の四世紀」といわれる四世紀から7世紀にかけての王政の歴史について述べられたもの。「古事記」「日本書紀」には、記述の正確性といった問題がつきまとうため、この分野の研究には、どうしも考古資料に頼らざるを得なくなる。「魏志倭人伝」「広開土王碑文」、「七支刀」「金錯銘鉄剣」の象嵌された銘文、その他、多数の遺跡出土品、それから「魏志」「宋書」「三国志」中国の古書から紐解いてゆくといった、地道な努力を積み重ねた成果であることがよくわかる。通史を知る上で、極めて貴重な研究成果であると思う。

  • 丁寧に史料と考古学的調査を調べて慎重に書き上げている感じです。

  • <目次>
    はじめに
    第1章  東アジアの倭・倭人・倭国
    第2章  ヤマト政権の成立
    第3章  東夷の小帝国と倭の五王
    第4章  継体天皇の即位と伽耶
    第5章  仏教の伝来と蘇我氏

    <内容>
    古墳時代のヤマト政権の成立期を文献史学側から描いたもの。漢書・後漢書・魏志などを中心に、記紀の使える部分を差し込みつつ、まとめられている。
    分かったことは、現在では4、5世紀ごろに倭は朝鮮半島に攻め込み、伽耶を中心に半島南部を支配下に置き鉄資源を中心に確保していたこと。6世紀に入ると、文化的なものを確保していたこと。

  • 2010年刊。著者は明治大学文学部教授。
    21世紀の岩波新書古代史シリーズ第二巻。
    叙述時代は邪馬台国(プレ朝貢使節往来含む)~崇峻天皇暗殺までと、相当に広範である。

     まず問題点。
     この点、著者は、他説の理論展開を推測と断じるところ、その一方で、著者が展開する見解も、推測に依拠し、また相当程度の牽強付会が存在することは否定できない。
     河内王朝の否定はまだしも、例えば、記紀以外の根拠なしに継体を応神五世孫と承認する点、また継体死後の二王朝並立・列島内乱を直ちに否定することには?の感が強い。
     無論それは文献不足とその限界、考古史料不足とその限界に由来するもので、何れの見解も推測の域を越えないのだ。

     このような場合、根拠なき放談なら兎も角、著者が行うような根拠の乏しきの非難の応酬は果たして非建設的なのだろうか。

     もちろん、実際には、著者自身、慎重かつ批判的に文献史料を見ている。また、不明な点を不明とする点は買いである。
     そういう意味で、記紀を衒いなく妄信するだけの凡百のそれとは違うことだけは明快である。
     具体的に言えば、
    ① 好太王碑文から三世紀後半朝鮮南部に倭の侵攻があった点(恒常的支配かは不明)。
    ② 人制から部民制への変遷とその内容。
    ③ 神武以降9代を非実在と明示する点。
    ④ 天皇号前に存したとされる「大王」号そのものも確たるものではなく、「王」号と使い分けている。
     あるいは、そもそも大王号は、部下の王に対する尊称に過ぎない可能性も指摘している件。
    ⑤ 日朝はいずれか一方的な文物の流出入ではなく、相互往来の盛んな地域であった。特に九州と半島南部に顕著(ただし、山陰・北陸といった日本海側と半島東岸にも注意は向けられるべきだが)。
     具体的にはまず銅鐸。従来は近畿様とされてきた銅鐸につき、小銅鐸ではあるが、遺物と鋳型が半島南部と北九州で出土している。
     逆に、前方後円墳。3C以降に列島で隆盛したが、5~6C半島南部でも築造されている事実。
    ⑥ 大伴金村失脚要因となった任那の百済への割譲は、文物・技術者を百済が日本に派遣するという交換条件付き。
    等だろうか。

     なお、あとがきにある古代史研究の姿勢は納得。歴史・考古・文学の学際的観点と、日朝中の国際的観点(これら三国間での、三国内部での異同の視点)とを併有した総合的学問という指摘だ。

     さらに補足。①邪馬台国所在地論は史的には重要。だが、天皇陵を含め古墳発掘が進展し、「親魏倭王」印などの明快な遺物が出てこない限り確定的なことは判らん。文献史学的な議論は行き着くところまで行き、本書自体「邪馬台国論」として新奇なところは全くなし。
    ② また謎の4~5世紀も判らないことだらけで、結局、かなり前の史跡・遺物たる好太王碑文の解釈や稲荷山古墳金錯銘鉄剣の文字解釈を延々と続けている現状。

  • 日本史の中でもっとも謎の多い4世紀を含むヤマト王権の姿を文献史学、考古学等の成果を駆使しつつわかりやすい概説書を書くというのは大変な苦労かと思うが、大変興味深く読んだ。中国の文明を取り入れつつ「文明化」の道を踏み出していく王権の姿が描かれている。

  • 古墳時代の我が国の歴史についての入門書。古代の文献等をできるだけ忠実に解釈しようとしているところが魅力的に思えます。1000年も前の古代から「日本」という国名が使われていたことに感銘を受け、また、職業柄、地方の行政組織の在り方には興味を持ちました。シリーズ本なので、次の『飛鳥の都』も読みたいです。

  • 主に文献資料から、可能な限り正確な史実に迫ろうとする。

    中国・朝鮮からの技術・文化流入による文明化の進展や南朝鮮諸国をめぐる政治的軍事的駆け引きといった「ヨコの視点」と、国内では階層秩序・中央集権化が進行していくという「タテの視点」から、古代日本のダイナミックな動きが分かる。

  • ヤマト王権についてまとめて記述してあり、概論を理解するのに重宝した。4世紀の謎などいくつも不明な点があるのに驚いた。

  • 確かに華のない時代ではあるが、ヤマト王権をめぐる人間模様と外交に、ここにも歴史があったのだという、当たり前のことに気持ちが動く。古事記の天皇の系譜の解釈、連と臣の説明、仏教伝来と古墳建設の消滅など面白かった。

  • 一世紀〜六世紀にかけての日本を、史学や考古学等の多方面の史料から考察した論著。
    著者が「歴史学や考古学や文学等から構成される"日本古代学"を学問的に構築できないか」と思っておられる方なので、非常に多角的視点からフラットに考察されていて、押し付けがましくなく通史文献として良書だと思います。

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著者プロフィール

吉村 武彦(よしむら たけひこ)
明治大学名誉教授。日本古代史。
〔主な著作〕『日本古代の社会と国家』(岩波書店、1996年)・『シリーズ日本古代史2 ヤマト王権』(岩波新書、2010年)・『大化改新を考える』(岩波新書、2018年)・『日本古代の政事と社会』(塙書房、2021年)

「2023年 『墨書土器と文字瓦 出土文字史料の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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