アメリカン・デモクラシーの逆説 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312772

作品紹介・あらすじ

恐怖でがんじがらめの自由、負の連鎖にからめとられる公正、他人の心身までも規定してゆく多様性、空洞化してゆく民主主義…。建国の理念を生き抜こうとするアメリカ社会の足下で、さまざまな皮肉な"転倒状況"が起きている。この希有な社会で丹念にフィールドワークを重ねてきた著者が、その実像と向かう先を余すところなく検分する。

感想・レビュー・書評

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  • ○この本を一言で表すと?
     アメリカ内の対立構造について述べた本


    ○この本を読んで興味深かった点・考えたこと
    ・「逆説」という言葉を多用すること、少数派の取り上げ方など、何となく見たことのある書き方だなと思って読み進めていましたが、以前読んだ「アメリカン・コミュニティ―国家と個人が交差する場所」と同じ著者だったことに途中で気付いてすごく腑に落ちました。

    ・リンカーンへの回帰、オバマの最初の選挙で敗北したマケインの高潔な演説、オバマの対立構造の超克としての内包的な手法、情報公開の原則などのポジティブな面を最初に挙げ、その後でニューオーリンズの残留市民の抵抗と、他の地域からの差別、「アメリカで最も優れた公共住宅」の強制退去などのネガティブな面を挙げ、章のタイトル通りの光と影をそれぞれ照らし、影の部分をオバマでも解消できない「逆説」と位置付けていました。(第1章 アメリカン・デモクラシーの光と影)

    ・ゴアの著作で選挙資金集めのために議会に欠席する議員が存在すること、ある程度制限をかけられているものの、それらをすり抜けて個人献金やロビイストの活動が政治に大きく影響を与えていること、むしろロビイスト活動の参入障壁が一部の資金力・影響力のあるユダヤロビーや全米ライフル協会などの特定の団体の影響を強める結果に繋がっていることなど、制度の不備が見られる点が説明されていました。(第2章 政治不信の根源)

    ・二大政党の差異が縮小し続けていることから、中絶・アファーマティブ・アクション・銃規制・死刑・同性婚・教育バウチャー・安楽死などの政治化による文化的な差異のクローズアップが志向されるという状況に陥っていることが述べられていました。(第2章 政治不信の根源)

    ・選挙のマーケティングが重要度を増し、その効果が実証され、かけるコストが大きくなることで市場競争と似たようなものになっていることも述べられていました。(第2章 政治不信の根源)

    ・メディアについても、その政治的中立性を担保してきた「放送の公正原則」や「公共番組枠の義務付け」をFCC(連邦通信委員会)が1987年に撤廃して以降、特定の党派色やイデオロギー色を意図的に流すようになっていることについて述べられていました。(第2章 政治不信の根源)

    ・ゲーテッド・コミュニティやメガ・チャーチのようなセル化した隔離されたコミュニティが増加し続けていること、持つ者と持たざる者の二極化を表す貧困層の増加・第三世界化、その象徴とも言えるマイクロクレジットのグラミン・アメリカの設立など、異なるコミュニティが隔てられていっている状況が述べられていました。(第3章 セキュリティへのパラノイア)

    ・人種別の状況、黒人だけでなく他のマイノリティの増加による多極化と各コミュニティの隔離、個人主義・孤独主義の進展なども、「アメリカン・ドリーム」の「逆説」として列挙されていました。(第3章 セキュリティへのパラノイア)

    ・上流階級として自分たちを他と区別していたボストンの一族、宗教的要素を重視する保守主義者による啓蒙主義者のトーマス・ジェファーソンの「削除」、ティー・パーティー内での右派・左派の分派、カジノを運営するネイティブ・アメリカンの状況など、多様性が市場主義などで歪められて望まれるものとは別物になっていくことが描写されていました。(第4章 多様性の行き着く先)

    ・アメリカの自国例外主義やダブル・スタンダード、帝国的な側面などを列挙したのちにアメリカの自己修正力を挙げ、その「逆説」の事例としてKKK(クー・クラックス・クラン)の本拠地だったジョージア州ディケーターの難民受け入れとその児童の教育を挙げ、これまで述べてきた「逆説」の「逆説」として締めくくっていました。(第5章 アメリカニズム再考)


    ○つっこみどころ
    ・同じ著者の著作の「アメリカン・コミュニティ―国家と個人が交差する場所」は各章ごとがしっかり独立した読み物になっていて、アメリカの中で存在する少数派のあり方がよくわかる本でしたが、それに比べてかなり読みにくく、無理やり詰め込んだ本のように感じました。単行本ではなく新書であること、それなのにそれ以上の論点と結論まで書いているため、仕方のないことかもしれませんが。

    ・著者が「逆説」してメインストリームにあるものの反証として挙げ、うまくいっているように見えてもその中で例外があることを強調しようとしている意図は分かりますが、かなり強引な紐付け方がされていたり、ごく一部をメインにあるものと対等に取り扱ったりして、無理に二極化しているように見せようとしているように感じられるところもあり、公平性に欠けたかなり偏った視点で書かれているように感じました。

  • 現代のアメリカが抱える「逆説」(そしてその最たる問題として挙げられる原理主義と市場主義)を、著者が専門とする人類学の手法であるフィールドワークと思想や哲学の読解を通して読み解いていく。「アメリカ」と聞いて画一的に想起されるイメージの単純性を指摘するその様は、心地良いほど明快であるとともに説得的でもある。また、政治学や社会学で扱われる議論に関しては、その適用も含めて勉強になると思われる。

  • 2016年のアメリカ大統領選挙に向けた運動が激しさを増しています。
    本書はアメリカ研究者として著名な筆者が2009年のオバマ大統領就任後に執筆したもので、
    現代アメリカが抱える様々な社会問題を大統領選挙や当時の政策との関わりから解き明かしています。
    2010年秋に刊行された図書のため、若干古さを感じる部分もあるかもしれませんが、
    オバマ政権を振り返るとともに、これからのアメリカを展望する意味でもおすすめの一冊です。
    (ラーニング・アドバイザー/図情 KOMINAMI)
    ▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら
    http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1384696

  • 今日のアメリカの病巣の根深さ。ゲーテッド・コミュニティ、メガチャーチ。自己責任を強調する新自由主義。貧富の差の拡大。確かに、最下層に移民が続々と入ってきて、しかも独自の言語・文化を保持してアメリカに溶け込まず、社会の治安を脅かすとしたら。これらの人々を社会保障の下で手厚く救済すべきなのか、と考えると、小さな政府の下で自警する道を選びたくなる気持ちも分からなくはないなぁ。勝ち組の論理ではあるけれど。
    後半でアメリカのもつ善なる部分の魅力、自浄作用についても語られているが、それでアメリカの抱える深い闇が振り払えるとはとても思えないなぁ。

  • つまらん。学者の書く文章。

  • わたしにとっては非常に難しい本でしたが、諦めずに最後まで読んでよかったです。
    オバマの話を軸にしつつ、現在のアメリカ社会のいい面も悪い面もしっかり描かれていてとても勉強になりました。

  • アメリカの政治背景の一端がわかりやすく説明されていました。
    読みやすく面白かったです。

  • 全体の印象として、(いい意味で)岩波新書っぽい本を読んだなぁと感じました。アメリカ社会の断面を、奥行きと歴史観を持った切り口で分析します。そして、それでも変化しながら前に進むところに、消えることのない小さな希望を見出していく。

  • アメリカの二大政党制について。どちらもマジョリティの支持を得ようとするとき、大まかな主張は似通ってくる(どちらも、政策は中道化する)。しかし、選挙というイベントを勝ち抜くためには、対立点が明確な「文化的差異」が前面に出てくることになる。些末な「文化的差異」が、政権与党を決めるキャスティングボードを握るというこの不条理。日本の二大政党制も、ホント、些末な点に拘泥したし、そう、あの大正デモクラシーの末期も同じだったのかも・・・その混乱の中で、最終解決を与えられるのは軍部だけだとなる。ナポレオン登場と同じ構図が繰り返された、と。理念先行のデモクラシーが陥る構図なのかもしれない。軍部のような絶対的な力がない、現代の日本では、どうすればよいのか?絶対的な、「空気」を作ったものの勝ちか?

  • アメリカのデモクラシーというのが民主主義を阻害するという・・・
    何とも皮肉・・・だけどこの国は自己批判を通じて改革できる能力がある。

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