- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004312789
作品紹介・あらすじ
私たちは、ことばを通して世界を見たり、ものごとを考えたりする。では、異なる言語を話す日本人と外国人では、認識や思考のあり方は異なるのだろうか。「前・後・左・右」のない言語の位置表現、ことばの獲得が子どもの思考に与える影響など、興味深い調査・実験の成果をふんだんに紹介しながら、認知心理学の立場から明らかにする。
感想・レビュー・書評
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ゆる言語学ラジオを聴いて興味を持ち手に取った今井むつみ先生本。ラジオ内で語られていた内容がちょくちょく出てきて、相乗効果で楽しめた。
言語によって認識の仕方や思考に影響が出るという話は、非常に興味深い。言語によって世界にそれまで無かった線を引く、ってこととかすごく腑に落ちる。いやー、おもしろいわ。高校生がこれ読んだら言語心理学とか認知科学とかの道に進みたいって思ったりするんじゃなかろうか。文系学問もおもしろいなって改めて思えた1冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
言語の多様性を紹介した上で、「言語が異なれば認識も異なるのか」「多様な言語の中にも普遍性はあるのか」「ことばを学ぶなかで子供の思考はどう発達するか」といった問いに迫る。そのアプローチは科学的で、実験によって明らかになったことを積み上げて論を展開していく。科学的な本を読むのが好きな人には楽しい一冊。
発見に満ちて面白かった。面白かったけど、この分野の話に日頃から関心が高いのか、知っていることも多かった。例えばこのTed talkと扱っている分野は近い。
https://www.ted.com/talks/lera_boroditsky_how_language_shapes_the_way_we_think/up-next
一番最後に外国語を習得する意義が書かれていて「翻訳機が発達したら人は外国語を学ばなくて良くなるのか?そうではない気がするんだけど…」という疑問に対する一つの回答を提示してくれていた。
222p 外国語を勉強し、習熟すると、自分たちが当たり前だと思っていた世界の切り分けが、実は当たり前ではなく、全く別の分け方もできるのだ、ということがわかってくる。この「気づき」はそれ自体が思考の変容といってよい。 -
中国語や英語では、時計は“鐘”clock“表”watch、カギも“yaoshi”keyと“鎖”lockに分けられる。こんなふうに、言語によって、世界がいろんなふうに切り分けられていることは、鈴木孝夫さんの『ことばと文化』『日本語と外国語』(岩波新書)等によって、日本でもよく知られるようになった。しかし、ことばの分化が認識に影響するかどうかは、サピア・ウオーフの仮説をどう評価するかにもかかわる古くて新しい問題だ。色の種類を二つしかもたない民族でも、色の識別はできるということがわかって、認識はことばに関係ない、ということも言われるようになった。たしかに、人間の認識というものは基本的なところでは、驚くほど一致する。しかし、ことばが認識に影響を与えることはないのだろうか。本書は、著者がそのような問題意識にたち、実験心理学の成果をふまえ、人間の認識の普遍性と、ことばが認識に影響を与える事例を興味深く提示する。普遍性にかかわるものを一つあげれば、英語や他の言語では「歩く」や「走る」を表す動詞がたくさん存在するが、「歩く」と「走る」の間は、多くの言語ではっきり分かれるとか、色の認識は確かにその核となる部分では一致するが、周辺部の色名が変わる部分ではことばに左右されることがあることをロシア語の例を引いて述べている。日本語と中国語はともに助数詞をもっているが、中国人が「椅子、傘、包丁」を共通のものとしてくくろうとする傾向は、同じ助数詞(“把”)を使っていることから来ている、などの指摘はとても興味深い。(ぼくも「言語文化論」の授業で実験してみたが、その通りだった)バイリンガルの思考と言語がどうかかわっているかの記述も興味深いが、それは本書を手にとって読んでほしい。もっとも、今井さんの関心は、認識が先か言語が先かということではなく、わたしたち人間の認識と思考に言語がどれほどかかわっているかを明らかにすることだという。熟読玩味に値する、深い本である。
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違う言語を使う者同士の認識はたしかに違う部分がある、しかし、それ以上に、言語が思考に与える影響、違う言語感の違う認知を知ることが大切。
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とても興味深い本でした。
日本に生まれて、日本語の観点で自然にものを見ている事を改めて知ることが出来た。
色を「明るい・暗い」の2語しかない言語や「1と2しかない」言語
世界中の様々な言語についても取り上げている。
その言葉を使いこなす民族の思考をいろんな実験から解く。
生き物としての人とねずみやチンパンジー・オラウータンなどとの比較もおもしろい。
まだ言葉を習得していない赤ちゃんたちの反応も面白く、子供の発達に興味がある方はぜひ読んでほしい。 -
「英語独習法」に続く、今井先生2冊目。
「英語〜」はタイトルの通り、英語と日本語の違いを軸に、言語感覚と認知のつながり、言語の違いによる認知の違いを教えてくれた。
この本はもっと幅広く、英語ドイツ語フランス語ロシア語中国語、更にはイヌイット語、ゴドベリ語(どこよ?)、グーグ・イミディル語(ゆる言語学ラジオで言ってたやつだ!)まで、様々な言語の様々な差異を通して、サピア=ウォーフ仮説を検証する。
イヌイット語では、雪の種類に応じて20以上の独立した単語があるとか。
数の数え方の影響で、一般的にアジア圏のこどもは欧米のこどもより小さいうちに計算ができるようになるとか。
そういうトリビアな雑学だけでも結構楽しい。
個人的に1番面白かったのは、空間認知能力にも、複数の情報を組み合わせて推論することにも、言語が影響していて、だから、「色」情報と「相対位置」情報をヒントに宝探しをさせる実験(たとえば『黒い壁に向かって左側の角』)で、言語野を機能させなくする(ヘッドホンから聞こえてくる文章をどんどん復唱させながら宝探しをさせる)と、成功率が低下するという話。
この実験を考えたのがまず、すごいと思う。
言語がいかに認知に影響するか、人間の言語習得プロセスの面白さ、そして、世界の広さに驚かされる。 -
異なる言語を話す日本人と外国人では、認識や思考のあり方は異なるのだろうか。「前・後・左・右」のない言語の位置表現など、調査・実験の成果を紹介しながら、認知心理学の立場から明らかにする。【「TRC MARC」の商品解説】
関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40136351 -
言語が思考を決定するか、
異なる言語の話者が異なる思考をしているか、
というのをいろいろな角度から考察した本。
いろいろな実験結果から話を進めていく。
個々の実験の話はわかりやすいのだが、そこからの考察は私にはちょっと難しかった。 -
私たちの思考は言語の枠組みの影響を受けている。だから異なる言語の話者同士は世界の認識や思考様式がまったく異なるのかもしれない、というある意味有名な仮説に対して最近の言語学がどこまでアプローチしているのかをわかりやすく解説する本。異言語間の差異と共通点だけでなく乳児幼児がどのように言語を習得していくのか、言語習得以前の認識のあり方に対して言語はどのように影響しているのかなど基本的な事柄を初心者向けに丁寧に解説していて良かった。さすが岩波新書と言うべきかとても新書らしい新書で安心して読めました。
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今井むつみさんの本はこれで3冊目ですが、この本は分けてもインパクトが大きいものでした。言葉を通じて世界を見たり、ものごとを考えるのですが、言葉が違うと、認識、思考のありようが違うのか、それにより相互理解はできないのかといった問題に認知心理学の成果を踏まえて分け入っていきます。外国語を学ぶことで認識の多様性への気づきといった思考の変容が得られるとか、言語が異なっても相互に分かり合えるとか、ある意味、感動的な知見の連続でした。
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"われわれは、生まれつき身につけた言語の規定する線にそって自然を分割する"
"世界が自分自身を分割し、名前をつけられるべく待っている"
先達のことばを引きつつ、ご自身の研究も紹介しながら、どうヒトは思考しているかを考えさせられる、良い本でした。 -
母国語が、ものの見方にいかに影響を与えるものであるか。衝撃的でした。一方で、異言語使用者間でも、共通する見方があるとのこと。非常に興味深いテーマでした。
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これは面白い。最初のうちは「それって必ずしも因果関係と言えないんじゃ?」とモヤモヤしたが、中盤に入って著者の専門分野である子供の言語習得のテーマになると俄然説得力が増して本質を掴むことができる。結論だけを見れば当たり前のことしか書かれていないが、それに至るまでの道筋が良く考えられていて自然と腑に落ちるようになっているのはさすが。
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外国語を学ぶということは、同じ側面から複数の角度で様々なことを知ることだという。単語帳で、別の単語なのに意味はどれも一緒、というようなことをよく見るが本当は少しずつニュアンスが変わってくるんだということが知れた。様々な対照実験をもとにして意見を述べているので、納得しやすかっただけでなく読んでいておもしろかった。ただ、難しくて途中からよくわからなくなってしまったので、次はもう少し難易度の下げた新書を読もうと思う。
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こんなにエキサイティングな本があるだろうか、というくらいに完璧におもしろかった。
誰もが、ぜひ一度は読んでおくべき内容だと思う。 -
801-I
小論文・進路コーナー -
英語独修法で、筆者の考えに興味を持ち、本書を手に取った。
言葉によって、人間の思考がどのような影響を受けているのか、その一端を理解する事が出来た。
言葉によって、思考が進み、色々な概念を作り上げる事ができ、それを伝える事が出来るようになる。
一方、言葉によって思考の方向性が制限を受ける事がある。
その事を意識しながら、自分の思考を進めたり、他の言語の人々とコミュニケーションしていこうと思う。 -
他言語に習熟しようと数ヶ月続けている英会話に、やや停滞期を感じる原因を探っていたとき、この本に出会う。
「言語を学ぶことの大半は、その言語の話者グループの考え方とか文化を学ぶこと」と考えていて、まさにそれが難しい日々が続いていたが、まさにそんな考え方を述べた本だった。
私が期待していたのはどちらかというと社会・文化的要素と言語のつながりだったが、「心理・認知」という視点から言葉を分解するもので、当初の期待を超えて、とても面白かった。
実験の内容の説明もわかりやすくかった。
言語による世界の切り分け方は非常に多用で、魅力的だと思った。また、多様性の中にも、何らかの秩序とか、ヒトが母語に染まる前に示す反応に見られる普遍性も神秘的に感じられた。
言葉が世界を広める一方で、思考を狭めてしまっているのではという気持ちにもなった。日本語は外国語に劣るというような考えはよく無いけど、外国語にしかない概念を知ってたら世の中もっと色鮮やかに楽しく見えたんじゃ無いだろうかとも思ったりする。(うまく組み合わせて学べたらいいのにね)
最後の章の、他言語を学ぶことの意味=「母語を通した認識だけが唯一の認識ではなく、同じもの、同じ事象を複数の枠組みから捉えることが可能であるという認識を持てる」という点に後押しを受け、また英語の勉強に戻る日々です。 -
- 異なる言語の話者は世界を異なる形で見ている - 『サピア・ウォーフの仮説』要約
違う言葉の国の人が自分とは違う世界を生きているとしたら、興味深くないですか?
『サピア・ウォーフの仮説』を元に、ことばと思考の関わりについて書かれた本
オーストラリアのアボリジニのある言語では、『前後左右』(相対座標)に相当することばを持たない代わりに、『東西南北』(絶対座標)
を瞬時に把握する能力に秀でているらしい。 -
多くの学びを得た。
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『#ことばと思考』
ほぼ日書評 Day596
Day591で上げた認知科学書の推薦本より。
世の中には、左右を示す言葉のない言語があるのだそうだ。左右がないから、位置関係を絶対関係で捉える、つまりAはBの北にあるという具合。時間軸についても左から右でなく、東から西のように並べる。
そのような言語を母語とする人たちは、我々なら容易に迷ってしまいそうな曲がりくねった道をかなりの距離進んだ後でも、出発地の方向を5度以内という驚くべき精度で指し示すことができる。
では、こうした能力は使用する言語によって後天的に獲得されるのか? 端的に言えば、どうもそうではないらしい。
むしろ、赤ん坊の時に誰でも持っている能力が、言語能力の獲得と共に徐々に失われる(というか寧ろ歪められると言う方が妥当に感じられた)。欧州言語に多い男性女性名詞の区別や冠詞・序数詞に認識が引っ張られる現象、あるいは日本人の苦手なLとRの区別等、すべて後天的な作用であることが、様々な実験で判明したという。
もちろん逆に、言語を獲得すること(言い換えれば抽象化すること)で、長く記憶に留められるといった側面が人類の文明発展に大きく寄与したことは言うまでもない。
即物的に役に立つというよりは、いわゆる教養書に属する本だが、「異文化コミュニケーション」が当たり前になった世界では、そうした教養を持っておくのも意味のあることだろう。
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タイトルの通り、ことばと思考の関係について述べた本。実験や具体例を用いて初心者にもわかるように書いてあり、著者は言語が違えば見える世界も変わるという主張について必ずしもそうとはいえないという態度をとっている。外国語学習において言語による認識の違いを理解することの大事さと難しさを感じた。
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言葉が世界の認識にどう影響するか
人は見たいものしか見ない。 -
言葉によって思考は違うとも言えますし,
大きな違いはないとも言えます。
そもそも「言葉によって思考は違う。YesかNoか。」という問い自体が
いまはもはや意味のない問いになっており,
どこがどのように違って,どこがどのように共通しているのか,
そこを明らかにする必要があるところにまで来ているようです。
「ことば」について深く考えたことはなかったのですが,
じっくり,しっかり考えなければならないほどの奥深さを感じさせてもらいました。
人間にしか「ことば」がないことを踏まえると,人間を考えるときに「ことば」について考えることは切っても切り離せないものです。
少しずつ考えてみたいと思いました。 -
文系的なアプローチではなく「実験によるデータに基づき、科学の視点から考え直す」というのが、言語学入門本の中では珍しいです。文系理系問わず、言語に関心のある人には手に取りやすいのではと思います。まず目次から、目にとまったところを読んでみてください。
大阪府立大学図書館OPACへ↓
https://opac.osakafu-u.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=2000842207 -
信号の「すすめ」は日本語では青だが英語ではgreen。英語の授業などでも語られるこの事象について筆者は、「厳密にいって、私たち日本人はほんとうに信号機の色を『青』とみなし、アメリカ人は『緑』とみなしているのだろうか。いいかえれば、信号の色を日本人とアメリカ人は『違う色』として認識しているのだろうか。」(p.11)と問題提起する。
「人の思考は言語と切り離すことができないものであり、母語における言語のカテゴリーが思考のカテゴリーと一致する」(p.61)というウォーフ仮説を、筆者は全面的に否定はしないものの、単純な一般化には慎重だ。
タイトル通り、「ことば」と「思考」の関係について興味深い実験例を紹介しつつ考察した好著