正岡子規 言葉と生きる (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
3.86
  • (6)
  • (8)
  • (5)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 100
感想 : 16
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312833

作品紹介・あらすじ

幕末に生れた子規は明治という時代と共に成長した。彼は俳句・短歌・文章という三つの面で文学上の革新を起こし、後世に大きな影響を与える。子規の言葉は新しくなろうとする近代日本の言葉でもあった。そのみずみずしい俳句・短歌・文章などを紹介しながら、三十四年という短い人生を濃く溌刺と生きぬいた子規の生涯を描きだす。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「正岡子規 言葉と生きる」坪内稔典著、岩波新書、2010.12.17
    212p ¥756 C0291 (2024.03.25読了)(2024.03.15借入)(2011.05.06/3刷)
    正岡子規の書き残した文章を引用しながら子規の生涯をたどった本です。評伝みたいなものです。
    正岡子規は、1867年10月14日、愛媛県松山市に生れました。戸籍上の名前は、常規(つねのり)です。亡くなったのは、1902年9月19日ですので、35歳にもう少しというところでした。
    1889年5月9日、血を吐いた。医者に行ったら、肺病と診断された。

    【目次】
    はじめに
    第一章 少年時代
    第二章 学生時代
    第三章 記者時代
    第四章 病床時代
    第五章 仰臥時代
    おわりに
    正岡子規略年譜

    ●俳句分類(11頁)
    古今の俳句を四季、事物、表現の形式、句調などによって分類した
    ●蕪村と万葉集(130頁)
    子規は俳句では与謝蕪村を、短歌では『万葉集』を発見したと言ってよい。つまり、それらを高く評価し、その価値を称賛したのである。
    ●写生(145頁)
    個人の感情に他者への通路を開くこと。それが俳句や短歌、そして写生文で子規が求めたことだった。
    その他者へ開く方法の一つが写生であり、写生に伴う客観的な見方や表現法であった。
    ●共に楽しむ(164頁)
    子規の俳句は、そして短歌も文章もだが、自分が面白いと思ったことが、読者にも面白いと思ってもらえるものであった。いつも読者がいて、読者と共に楽しむのである。

    ☆関連図書(既読)
    「松蘿玉液」正岡子規著、岩波文庫、1984.02.16
    「仰臥漫録」正岡子規著、岩波文庫、1927.07.10
    「坂の上の雲(一)」司馬遼太郎著、文春文庫、1978.01.25
    (アマゾンより)
    幕末に生れた子規は明治という時代と共に成長する。彼は俳句・短歌・文章という三つの面で文学上の革新を起こし、後世に大きな影響を与えた。子規の言葉は新しくなろうとする近代日本の言葉でもあった。そのみずみずしい文章を紹介しながら、34年という短い人生を濃く生きぬいた子規の生涯を生きいきと描きだす。
    (2024年3月28日・記)

  • さすが稔典先生、子規への敬愛ぶりが伺えます。子規の言葉とともに、子規の歩いてきた道をたどるのですが、最後は分かっているのだけれどやはりちと悲しい。子規の晩年の随筆をもう一度開きたくなりました。

  •  正岡子規の誕生から死までを時系列に沿って辿っているが、通例の評伝スタイルではなく、それぞれエピソードを定めた小節(必ず冒頭に子規の文章の抜粋が掲げられる)が連続するコラム集のようになっている。内容はコンパクトだが、子規の性格や人間関係や文学論・芸術論が明快に織り込まれており、子規の簡便な入門書と言えよう。豆知識的なネタ本としても使えるのではないか(子規の現存する最も古い文章の1つは、小学校の課題作文として書かされた「婚約破棄の書簡文」であるなど)。

  • 正岡子規といえば、まず「柿くへば 鐘が鳴るなり 法隆寺」が出てくる。  しかし、実際、子規の生前にはこの句はほとんど注目されなかったよう。
    万葉集を賞賛し、古今集(紀貫之)を批判し、芭蕉を崇める宗匠を批判し(「古池や…」などありきたりな句は批判、そうでない注目すべきところは評価している)、埋もれていた与謝蕪村を掘り出している。

    夏目漱石との密な関係や、夏目漱石にだからできたかもしれないハチャメチャな人間模様は面白い。
    また、晩年、病気で塞ぎこんでてはダメで、それすら笑い飛ばすかのように面白いと思えたり、草木こそは我が命と思えるような心境の変化も、文章を追っていくとよくわかって面白いなぁと思った。
    どんな人の心もやはり状況が変わると変わっていくもんだなと。

    ちなみに、浅はかとした中江兆民が、療養で堺の、それも浜寺で晩年を過ごしてたことを初めて知って驚いた。

  • 雪降る2日間、読みふける。
     前から気になっていた子規。やっと読めた入門書。34年間の生涯、少年、学生、記者、病床、仰臥の5時代5章に分け、その扉でその時代に書き残した言葉や歌を配する。「(俳句・短歌・文章の文学上の革新を起こした)子規の言葉は、新しくなろうとする近代日本の言葉」を、初心者にもわかるスタイルで構成。老後は漱石、と決めていたのも子規を読む理由。また、著者が「ねんてん先生」、坪内稔典さんだったことも。前から、屈託なく楽しい俳句、融通無碍な文章が好きだ。
                   
     子規の人間性、強烈な個性に惹かれる。自分を徹底して客観化・対象化し、滑稽さを愛する開放性に驚く。江戸幕府瓦解の年に生まれた子規、今から100年以上前に溌剌と生きた青年に、普遍的な人生の意味を考えさせられる。本物の知性とは何かを。生涯の友人、漱石を身近に感じるようにもなった。読み終えて直ぐ「墨汁一滴」と「病床六尺」を注文。久しぶりに「坊ちゃん」再開。

  • 子規の生涯を読むのに手に取りやすい本だと思う。
    野球のことも載っていたので、野球好きな人も読んでみるといいと思う。

  • 子規の名前がホトトギスを意味することは知っていましたが、11歳のときに初めて読んだ漢詩が「子規を聞く」、そして子規とは、ホトトギスの啼き方が、肺病の咳き込み方と似ているため、肺病をも意味することを知って覚悟して使っていたというのです!正に早熟の天才と言うべきですね。蕪村、万葉集が芭蕉、古今集に比べて不当に低い評価として再発見・復活したり、「柿」は、和歌では詠まれることがなかったが、彼の俳句により初めて秋の代表的風物になったなど、新しい発見でした。

  •  坪内稔典『正岡子規』(岩波新書)

     なんとなく手に取った子規の本です。
     子規といえば、痛烈な芭蕉批判と古今集批判が印象的だったのですが、とりあえず彼の批評は全て痛烈だったらしいという事がわかりました(笑)
     後、短歌のイメージしかなかったので、漢詩を好んでいたというのには少々驚きました。
     しかし、「言葉と生きる」と副題についているだけあって、最後まで言葉づくしでしたね(笑)
     それにしても虚子を見限っていたとは………

     病床時代に妹を批判しているのを見ていると、今の介護の問題が頭をよぎりました(…)

  • ネンテン先生の正岡子規論、学生時代古本屋で見つけた全集、俳句人生の原点、興味深く読んだ。

  • ネンテンさんの愛称で知られる俳人・坪内稔典による、正岡子規の評伝。
    子規の著作の一節を引き、その背景を数頁に渡って解説するという形式で、子規の幼少時から臨終までを追っていく。

    子規の入門書としてはコンパクトで手頃なのではないかと思う。
    書くこと・読むことを徹底した力業の勉強法。
    病に伏してからも執念のごとく書き、俳句の研究も止めない子規。病床で書くことに「憂さ晴らし」の意味があるという著者の指摘はおもしろかった。文字を書き、絵を描き、晩年には口述筆記させることで、ひととき、脊椎カリエスの痛みを紛らわせていたのだろうか。
    伏してなお、多くの人々を病床に引き寄せる誘因力もすごい。

    著者は基本、明るい人という感じがする。子規もまた、著者とは毛色が違うけれど、明るい人だったのだと思う。病を得ていなければ、どんな仕事をしたのだろう?
    それにしても辛い病だったようで、自殺を企てた後の小刀と千枚通しの絵は胸に迫る。

    *著者の俳句は「三月の甘納豆」と「河馬になりなさい」くらいしか知らないが。ちょっと前に読んだ歌人・河野裕子についてのエッセイがおもしろかったので、本書も読んでみた。

    *実を言うと、『病牀六尺』は、長年、ぽつりぽつりと読み進めるのみで遅々として進まず。「へぇ」と感心するところがところどころにあるのだが、何となく全体として頭に入ってこないんだよなぁ・・・。子規は自分には合わないのかもしれないなぁと思ったりしていた。この本を読んで、少しは読みやすくなるだろうか。

全16件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1944年4月22日、愛媛県伊方町生まれ。
2023年6月、ブログ「窓と窓」を中心に晩節の言葉を磨く場として「窓の会」を結成、主宰する。俳諧・俳句のコレクション「柿衞文庫」の理事長。市立伊丹ミュージアム名誉館長。大阪府箕面市在住。

「2024年 『リスボンの窓』 で使われていた紹介文から引用しています。」

坪内稔典の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
貴志 祐介
宮部 みゆき
池井戸 潤
又吉 直樹
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×