日本語と時間――〈時の文法〉をたどる (岩波新書)

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レビュー : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312840

作品紹介・あらすじ

古代人は過去を表わすのに、「き」「けり」など六種もの「助動辞」を使い分けた。ひたすら暗記の学校授業を思い出し、文法を毛嫌いするなかれ。それら時の助動辞は、何と意味・音を互いに関連させ、一つの世界を作っていたのだ。では、なぜ現代は「〜た」一辺倒になったのか。哲学・言語学など大きな広がりをもつ刺激的な一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 古の日本語には、過去を表す助動辞(助動詞)が、6種<き、けり、ぬ、つ、たり、り>あった。そして、それぞれに、違った時制を持っていたのである。今の日本語が過去を表す助動辞は、<たり>の変化した<た>の1つだけだ。言葉が時を下ることで、簡易、単純化していくのは世界どこでも見られる傾向だが、簡易、単純化しているのは言葉だけなのだろうか。今日の自分たちは、時間を過去、現在、未来の3時称で捉えることを普通としているが、昔からそうだったとは限らない。もっと多元的な時空世界を生きていたのかも知れない。冒頭に上げた過去を表す助動辞も、”過去を表す”というのは、今の日本語からみた当て推量に過ぎないのである。筆者の”非過去”という呼称はとても興味深い。また”krsm四面体”なる野心的取り組みとあわせて示唆的である。

  • 自分の修士論文に関係する内容だったので、図書館入りを待たずに購入。
    詩人の感性って新鮮! 目を開かれた思いがしました。
    この本をきっかけに『言語学大辞典』も読むように。

  • 結局今ひとつ違いが分からない。

  • 昔の日本語には、過去形が6種類あり、「き」「けり」「ぬ」「つ」「たり」「り」それぞれが意味するところが違うという。かつて英語の授業で、過去形と完了形の違いを念入りに教えられたが、それ等よりもっと微妙でナイーブな違いがあるらしい。著者は、多くの例文で解説を試みるが、残念な事に読者(私)の方に、読みこなす力量がない。正直言うと、古文の解釈や文法論は、ほとんど理解できなかった。しかし、昔の日本語は、今よりも表現の幅が多かったこと、そして、それらが時を経て合理的(?)・機能的(?)な方向に収れんされて、現代日本語に至っている事はわかった。前述の6個の助動辞は、すべて「〜た」という現代の日本語になったようだが、世の中には、時制という仕組みがない言語もあるらしい。そんな言語はどうするかというと、やおら「昨日は〜」とか「〜の頃に〜」といって話し始める。なるほど、ある意味、かなり合理的だ。

  • 古典語の時に関わる助動詞(筆者は助動辞という)について、どういう整理がなされるのか、期待しながら読んだ。
    それに、近代の文法理論で捉えきれない論理があるのかも、と期待するところもあった。
    残念ながら、期待に応えてもらえなかった気がする。

    まず、私が躓いたのは、krms四面体のくだり。
    たしかに、けり/けむのように、「k-i」は過去に関わっているとは理解できる。
    「a-ri」が存在、ひいては継続相につながていくことも。
    推量に関わる「a-mu」も加わるのも、これまでの説明とそう大きく変わらない気がする。
    そこで語尾をつくる「-asi」を加え、これらを四面体の四つの頂点とする立体図を考えているのだが・・・
    ついていけないのは、それぞれの頂点となる要素は、語を構成する要素yだとしても、同等の地位にはないものが並列的に扱われてしまっていることだ。
    頂点kとrを繋いで、「けむ」が得られ、頂点sとrを繋いで「らし」が、同様にrとmで「らむ」、kとmで「けむ」なのだが、mとsを繋いでも何もできない。
    rも、mも、他の要素の下につくものだからだろう。
    しかし、本書41ページのように「立体図」にしてしまうと、不可解なことが出てきてしまう。
    線分krの周りの空間が時間域なのに対し、頂点sの周りが形容域、頂点mの周囲が推量域という領域の不統一も、このモデルのすっきりとしないところだ。
    説明の便宜のために考え出された図にすぎないのだろうが、かえっていろいろな誤解を与えそうな気がする。

    さらに、「けり」と「き」の説明も、どうもすっきりしない。
    「けり」には詠嘆の用法はないという部分は納得した。
    また、「あり」を要素として含むので、現在と関わりをもつものだという説明も理解できる。
    ただ、「き」は神話的過去というのはどうなのか?
    筆者自身も徒然草では、体験的過去の「き」と伝承や伝聞の「けり」で書かれていることにふれている。
    時代が下って、そのように用法が変化することもあるのだろうが、筆者の言う神話的過去と、そういった用法のギャップについては説明らしい説明がない。
    また、「大鏡」や「愚管抄」の使い分けにいたっては「省略に従うほかない」とされている!
    それは「神話的過去」という説明とは整合的な説明ができないということなのだろうか。

    本書を最後まで読むには読んだけれど、このような点が多くて、どうしても筆者の姿勢に信頼が置けなくなってしまった。

  • 新書としては、内容がちょっと固めでした。

  • 「き けり つ ぬ たり けむ たし」と呪文のように40年前に覚えた連用形接続の助動詞たちの取り扱う日本語の「時制」のなんと豊かなこと。技術系の仕事をしている時も、現代語にせめて「き」「つ」「ぬ」が残っていれば、と思うことがよくある。独断で展開される牽強付会な論理の展開もまた痛快。古典が好きな人には一読を進めたい。同じ著者の「古文の読み方」も読んでみよう。
    やっぱり大野先生の「係り結びの研究」と日本古典文学大系(旧体系)の源氏物語(山岸特平 校注)は、読んでから死ぬべきか。読まずに死ねるか!本がどんどん多くなって困る今日このごろ。

  • 私には難しくて殆ど理解はしていないが、面白かった。判らないのに何なんだという感じだが面白かったのだから仕方無い。
    日本語って詩なんだなあなんて思った。この、た、に、また感銘を受けてしまう……もっと賢くなりたいものだと思いながら今後もパラパラとめくるだろう。

  • 詩人の直感。日本語の時間を十分にろんじきったかというと、甚だ疑問。随所に乱暴な断定があるため、次第にシンクロできなくなった。日本語学的な部分をもっと刈り込んだほうが、論に魅力がでたのではないか。

  • 「もの」は動かない。「こと」は動く。

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