日本語の古典 (岩波新書)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312871

感想・レビュー・書評

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  • 奈良時代から江戸後期までのを駆け抜ける。ただ知識としての作品紹介ではなく、取り上げられている30作品を著者自身が本当に咀嚼した上で、作品の魅力を伝えてくれている。

    この本を読ませとけば、あとは何もせずとも生徒たちは古文の世界に引き込まれていく事だろう。

    古文の授業に限らず、動機付けや導入の上手い教師・授業が充実出来れば、日本の教育システムは大きく変わる事が出来るのではないだろうか?

  • 推薦理由:
    本書は古典文学の様々な作品を言葉という切り口で取り上げ、「ここが面白い」という点を分かりやすく述べている。それぞれの時代の価値観、習慣、宗教観などが表れている古典文学を読むことは、「物事を相対的に捉える目を養い、創造性を育む養分が蓄えられる」と著者も述べている。授業で習って試験のために勉強するだけでは気付き難い古典の面白さを、本書を読んで知って欲しい。

    内容の紹介、感想など:
    奈良時代から江戸時代までの古典文学30作品を取り上げ、文学性や思想性の追求という切り口ではなく、主に言葉との関わり合いからそれぞれの作品を考察し、その面白さを紹介している。
    言霊信仰の残っていた奈良時代に誕生した「古事記」に描かれているヤマトタケルの悲劇は、常に「言葉」の問題から起こっていること。「竹取物語」は平安時代の人々に親しまれていたファンタジックな物語だが、粗野な言葉が見られることや、かぐや姫が漢文を訓読しているような言葉遣いをすることから作者は男性だと考えられること。「源氏物語」の主な登場人物が、その人柄を象徴するような見事な比喩や擬態語を用いて描き分けられていること。「方丈記」は、平安時代末期から鎌倉時代初期の激動の時代を生きた鴨長明が残した写実的な記録文学であること。「徒然草」は、前半では女の魅力を肯定しながら後半では女への批判が炸裂するところに、出家してなお女性への関心を捨てきれない兼好法師の悪あがきが表れていること。江戸時代の「好色一代男」では、悩まず執着せず、明るくおかしく女と遊ぶプレイボーイの世之介を書き表すのに、主語も定まらずに横滑りしているような文体が最適だということ等々。知っている作品だと思っていたものが見せる新たな側面に、引き込まれるような面白さを感じる。
    どの作品も親しみのあるものばかりだが、「言葉」という切り口で語られているのが大変興味深く、今まで気づかなかった面白さを教えてくれる。「この古典を読んでみたい」と思わせる楽しい古典文学入門書である。

  • 古典というのはこんなにすごいものなのか、いい本だった。

  • 昔、犬を”びよ”と鳴かせた(笑)、山口先生の新刊です。
    日本の古典文学ガイドブックとして、最良の書ではないでしょうか。
    古典(古文)を学び始める現役中高生だけでなく、昔中高生だった人にもお奨めです。
    「えっ、この話って、こんなに面白いものだったの?!」という目からウロコ状態です。若かりし頃にこのような本があれば、もっと古典が好きになっていただろうと思える、素敵な本です。ま、今からでも遅くはないですが(笑)。
    ちょっと、古典文学を読みたくなってきました(とは言っても、古文が難敵なんですが…)。
    星印は10でも良いぐらいだと思います。

  • こういうのは、好き。
    学術研究のひとつの成果としても面白い。取り上げられているものも高校生のときに触れたことのあるおなじみのものばかりだし。日本語というものに重点をおいた見方は、斬新だと思う。日本語は美しい、とあらためて思うのだ。

  • すばらしい古典文学への招待でした。
    ある種の挑戦だったかもしれませんが、連著でないことが作者の息吹が感じ取れて、とてもよかった。
    とても読みやすく、日本の古典に興味がどんどん湧いてきました。

著者プロフィール

一九四三年生まれ。お茶の水女子大学卒業。東京大学大学院修士課程修了。文学博士。埼玉大学名誉教授。文化功労者。古典語から現代語までの日本語の歴史を研究。特に『犬は「びよ」と鳴いていた』(光文社)、『ちんちん千鳥のなく声は』(大修館書店)など、擬音語・擬態語の歴史的研究は、高く評価されている。論文「源氏物語の比喩表現と作者(上)(下)」で日本古典文学会賞、『平安文学の文体の研究』(明治書院)で金田一京助博士記念賞、『日本語の歴史』(岩波書店)で日本エッセイスト・クラブ賞受賞。また、「日本語に関する独創的な研究」が評価され、二〇二二年に日本学賞を受賞。二〇〇八年紫綬褒章、二〇一六年瑞宝中綬章を受章。

「2023年 『日本語が消滅する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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