職業としての科学 (岩波新書)

著者 :
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レビュー : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312901

作品紹介・あらすじ

冷戦崩壊以来、科学は大きな転換期を迎えている。社会を巻き込んで突っ走る一方、科学技術創造立国政策の中で科学はリスキーな職業と化し、もはや聖域とも見られなくなった。この巨大な社会資源を生かすために、未来に受け継ぐべきものは何か。宇宙物理学に半世紀携わってきた著者が科学の歴史を縦横に語り、発想の転換を促す。

感想・レビュー・書評

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  • 制度としての科学と科学する精神との間の対立、緊張、協調が基底になっている。

    科学の西洋史を俯瞰した前半部分は、論点の整理も含めて、興味深く読んだ。

    最終部分の現代の科学者の生き残りに関しては、中途半端だ。提言の体をなしていない。

    ・physicist,scientistという言葉は、ウィリアム・ヒューエルが1833年頃作った。それまでman of scienceと言われていた。科学の担い手が巨匠から中産階級の職業に変化する19世紀末に普及した。
    ・切羽詰まると人間は一般に道理を見失い、思想の古層に里帰りする。それが「理」よりも「誠」に回帰する精神構造だ。

  • 2011年刊行。著者は京都大学名誉教授。主に18世紀以降の西洋における科学哲学に関する論争と、科学が必要とされる契機を解読することで、科学(大学などの教育機関の整備等を包含する制度科学も検討対象としている)のありようや、あるいは科学の必要性に関する将来像を提示する。現代社会は、冷戦終結後から徐々に進行しつつある国民国家における科学の必要性の低下と、科学者としてのアイデンティティの喪失傾向に直面しつつあるという分析を踏まえ、それに対する処方箋を歴史的経緯と論争から見出そうとする中々興味深い一書。
    フリーマン・ダイソン、相良亨を知れたのは個人的には有益(まぁ、私の勉強不足と言うほかないのだろうが…)、

  • 新書文庫

  •  科学の発展について、その歴史と今後の展望を述べた書。教養満載で、個々の内容はすごく面白かったのだけれど、本書を通じて何を伝えたかったのか・・・読む側の資質がありませんでした。ななめ読みしたのがいけなかったかも・・・
     本書を読んで、今でも科学技術振興の仕事がしたいと強く思っていることに気が付きました。

  • 科学政策の在り方や社会における科学の役割について、経済成長や実用に寄与するか否かという観点と、真理の探究の意義という観点のせめぎ合いがあるが、本書において筆者はもう少し大きな視点から科学の役割というものを捉えているように感じた。

    科学的思考とは何か、科学を基盤に据えた社会の在り方とはどのようなものかという視点で、科学史を振り返りながら議論を展開している。

    科学が「純粋」科学として社会とは完全に分離した形で理論の探求に突き進むことを、筆者は少なくとも科学政策の在り方としては肯定していない。科学はあくまで社会に寄り添い、社会に「役立つ」ことを求められているというのが、筆者の考えであると思う。

    ただ、その「役立つ」ということの意味合いとして筆者が思い描いているのは、単に経済成長のための道具としての科学ではない。過去の人間社会で繰り返し起こってきた「間違っているけど正しい」といった情緒的な判断がもたらしかねない危機的な結果を外からの「理」の視点を以て回避する、そういう役割が科学に求められており、そのような「科学的精神」を涵養し社会の基盤におくことが、科学政策全般に求められる大きな役割なのだと筆者は訴えていると思う。

    さらに本書の後段では、その上でそのような科学が幅広く社会の中に浸透するためには、科学者という職業がもっと広い位置づけで捉えられなければならないということにも触れている。科学自体がひとつの大きな産業・事業体として形作られているということを踏まえ、一部のスター科学者や先端研究テーマのみに注目するのではなく、科学研究を支える人々や会社を含めたより大きな視点で科学を捉え、今後も意欲を持った人がこの「業界」に継続的に入ってきてくれることが、社会と科学の健全な関係を保ち続けるうえでも大切だということなのだろう。

    筆者のように、宇宙物理学という「純粋科学」と一般的に分類される領域で実績を上げてきた科学者からこのような視点が提起されていることが非常に意義深いと思う。また、エルンスト・マッハ、マックス・プランクといった科学者やカール・ポパーといった思想家の間で交わされた議論も、まとまりよく紹介されている。

  • 歴史を辿りながら科学・科学者と社会や国家との関わりや制度について見ていく。話の行きつ戻りつが多いこともあり、理解できていない。大震災前の本であり、原発事故を踏まえると違う視座も必要かも。「科学技術エンタープライズ」は興味深いが、現実性には疑問があるなあ。

  • この本は震災前に書かれたものだが,震災後であったならば,どのような内容になったか非常に興味がある.

  • 実はこの本もタイトル買いしたのだった。ウェーバー風の科学技術本なのだろうと、さっと買い物カゴの中に入れた。ウェーバーの「○○としての~」シリーズより当然読みやすく、一気に読了した。著者はウェーバーと本書の関係をはじめにと3章でふれている。

    これは、やわらかい「科学史の教科書」と性格を持っている。類書ですぐに思い浮かんだのは、乾侑 『科学技術政策―その体系化への試み』東海大学出版会や、廣重徹『科学の社会史(上・下)』岩波書店の2冊だ。ただ何れも少し前にかかれたものとなっている。この「職業としての科学」は、今日の科学トピックと歴史的エピソードを関連付けさせながら、わかりやすく、科学技術やそれを生み出した科学者について述べている。結果として、「やわらか科学史」になったのではないか。そう感じる理由は、著者がメタ理論的な科学論は成功していないことが多いので、歴史に執着して論を展開しているからだろう。

    著者は、巨大な社会システムとなった科学技術は、専門家の気風と社会の期待により乖離が生じている、またまだまだ可遡的、と述べている点は、読者に思考の余地を与えてくれている。転換期の科学技術政策を考える機会を与えてくれる良書だ。

  • 主に欧米の科学史。科学技術の発展の歴史を追うようなかたちで書いている。昔、物理の授業で習った名前がどんどんと現れる。

    面白いのだけど、結論がわからなかった。

  • 職業として科学にたずさわる者にとってためになる本である。

    統計的には人口当たりの研究者数は日本は多いが,肩書きだけが研究者という人も多いからな。

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プロフィール

1938年、山形県生まれ。1960年京都大学理学部卒業。京都大学教授を経て、現在同大学名誉教授。専攻は一般相対論、宇宙物理学。トミマツ・サトウ解の発見など多くの業績をあげた。著書に『アインシュタインの反乱と量子コンピュータ』(京都大学学術出版会)、『孤独になったアインシュタイン』(岩波書店)、『量子力学は世界を記述できるか』(青土社)など。

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