次世代インターネットの経済学 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004313106

作品紹介・あらすじ

世界一速くて安いブロードバンドを持ちながら、なぜ日本ではグーグルやアマゾンのような企業があらわれないのか。「コンテンツ」、「通信ネットワーク」、熾烈な競争が繰り広げられる「プラットフォーム」の三層構造を踏まえ、世界を席巻しているビジネスモデルを解き明かす。情報通信産業の課題も検討、ブロードバンド立国への道を提言する。

感想・レビュー・書評

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  • 2007年の著作『ブロードバンド・エコノミクス』でのFMC市場分析は、難解ではあるものの説得力があるものであった。『次世代インターネットの経済学』と題した本書を期待して手に取った理由でもある。

    本書は、まずコンテンツ、プラットフォーム、通信ネットワークの各レイヤに対する分析から入っている。全体としてのまとまりや切れに欠けるきらいはあるが、個々の分析は納得感がある。『ブロードバンド・エコノミクス』でも多用していたコンジョイント分析による支払い意志(Will-To-Pay)とロックイン効果の評価をベースにした分析も含まれている。日本という先端市場での実証的分析として価値があると思う。ただし、その数字の絶対値については実感が伴っていない部分もある。その意味で経年での相対評価に、より重要な事実が含まれているように思う。

    ともかく、これまでのブロードバンド市場のアカデミックな分析の第一人者としての経験から、日本は世界一のインフラを持っている一方、競争ダイナミズム、競争政策、市場ガラパゴス化の課題を抱えていると指摘して期待感と危機感をあおっている。特に規模の経済性と需要密度の経済性が強く働くFTTH市場の中で競争政策の手綱をどのように操るのかが重要だとしている。
    この主張につながる最終章の「光の道」の裏話的なエピソードは興味深い。筆者の考えでは、ソフトバンクが言うような「光の道」を取らずとも、アクセスチャージに契約者数方式の考え方を導入することで、FTTHの裾野を100%に近い形まで無理なく広げることができるというものである。そして、その上でFTTHの利活用として放送、医療、教育、スマートグリッドなど先行させて国際的競争力を確保するべきだという。この辺りはこの紙幅の範囲で説明するには総花的にならざるをえないのであろう。どことなく省庁作成の中長期方針に似ていなくもない。個々の話の具体化はそれぞれで責任を持ってやるしかないのだろうな。

    著者は、クリス・アンダーソンの『フリー』をブードーエコノミクスと批判し、日本の一般読者に対して正しい認識に基づいたメッセージを伝えるために新書形式を取ったのだという。その意味では、体裁だけの話ではないので結果としては成功していないのではないか。『フリー』を読むような一般読者に直接届くような内容にはなっていない(笑)。本としてのエンタメ性では(勝とうと考えているわけではないだろうが)完全に負けてしまっている。この内容であれば、新書よりも単行本形式にして、通信の専門家に向けてしっかりと書いて欲しいとも思った。

    ---
    論点からは、NTTのNGN(*FTTHインフラ施策ではない)にもっと批判的であってもよかったはずだとも思うのだが、どうなのだろう。

  • 行動経済学の第一人者が解き明かす、日本のブロードバンド政策。
    すべてが無料になるというクリス・アンダーソンのフリーはブードー・エコノミクス(魔術経済学)、これに腹をたて、入門書を書くと著者は決めた。
    - グローバルなクラウド化する世界に対して日本企業はどうあるべきか? 支配者にパラサイトするか、アメリカ企業の見向きもしないニッチに手を伸ばす。日本企業の競争優位は①世界一優れたインフラ、②世界で一番厳しい消費者、③そして携帯やインターネットは人類の生活を豊かにしたと断言できるような付加価値をまだ生んでいないこと。それを発見するチャンスが日本にもある。
    シャピロの「ネットワーク経済」の法則は要チェック。

  • 雑然

  • Internet

  • 【由来】
    ・アテネの最終日の100円セールで購入。

    【ノート】
    ・NTT東西の分割時や、その後のADSL、FTTHについての、競争を維持させるための議論や論拠について、経済学的な解説を織り込みながら解説している。NTTに対して厳しい意見が散見されるが、単なる批判ではなく、世界でも有数のブロードバンド先進国である日本として、今後、競争を続けながら力をつけていくために、という観点からの批判や提言だと著者自身が明言している。

    ・やはり経済に関する基礎知識がないと、本書で展開されている議論や提言の意味もイマイチピンとこないのだが、それでも、数字や式を我慢しながら追ってみることで、議論の具体的なステージがおぼろげながら見えてきたと思う。2011年の出版なので、本書で示されていた各指標の数値が今はどうなっているのかも調べてみたい。

    ・ただ、あまり本筋には関係ない「自分が、自分が」という記述が垣間見られたのが少し興ざめ。

  • 図書館
    経済
    インターネット

  • コンテンツ、ネットワーク、プラットフォームの3つの側面からビジネスモデルを述べている。なぜ日本でGoogleやAmazonみたいな企業ができないのか?みたいなことが幅広く書いてあって面白い。

  •  インターネットをめぐる全体像を理解するには良い本だと思う。しかし、スマートフォンの機能がここまで高まるとまた別の考察が必要となっているのかもしれないとも思えた。

  • 熟成肉が流行の昨今ですが、熟成本というのもありまして、時が経ち読むべき処だけが残ってすぐ読み終わるという、ある意味美味しいものです。

  • ADSLや光などのインフラ関連の話が中心だった。僕はある程度経済学を勉強したが、経済学は物事を解説するのに向いており、意思決定をするのには向いていないと思う。基本的に二元論で話をするからだ。歴史の勉強にはなったが未来のことは参考にならなかった。

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著者プロフィール

京都大学教授

「2017年 『スマートグリッド・エコノミクス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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