原発を終わらせる (岩波新書)

制作 : 石橋 克彦 
  • 岩波書店
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レビュー : 23
  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004313151

作品紹介・あらすじ

福島第一原発事故により、原発の安全神話は完全に崩れ去った。私たちには原発から脱却する以外に道はない。そしてそれは可能なのだ。これまでも原発の危険性に警鐘を鳴らしてきた一四名が、事故を徹底的に検証し、原発の問題性を多角的に考察。原発を終わらせるための現実的かつ具体的な道を提案する。

感想・レビュー・書評

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  • 原子力発電の仕組み、限界。普及のからくり。福島第一原発事故で何が問題だったか。今後の道筋。14人の著者の論考が並びます。断片的には理解していたつもりですが、これだけまとまっていると腹にずっしりときます。ほとんどの著者が冷静かつ真摯で、説得力をもって迫ってきます。彼らはたぶん、ずっと反原発運動をしてきた一方で、今回の事態に責任を感じている。そこがイエロージャーナリズムと違う。もちろん、責任は僕にもある。それを痛感させてくれました。読む価値のある一冊と思います。

  • 2011年刊行。フクシマ以降の原子力発電をめぐる問題状況を概括するには適した書。備忘録。①原発の脆弱さは、地震や津波のみならず、防護設備への中性子照射脆化に由来。旧式原発ほど問題が大。②放射性廃棄物の処理・旧式発電所の廃炉方法の未確立、費用の未算定(将来のマイナスに目を向けない人の心理的陥穽に陥らないこと)。③情報の不開示・不正確。④新エネルギーシステム開発に対する旧勢力の抵抗。特に、蓄電装置・小規模自家発電装置開発への妨害。⑤原子力発電所へのテロ。破壊のみならず、放射性廃棄物奪取→原爆開発に悪用の視点。

  • 2階岩波新書コーナー : 543.5/ISH : 3410154073

  • 『「反原発」の不都合な真実』(藤沢数希著)と並べて読んだ。こちらは、福島原発に思い切り寄った接写。対する藤沢本は思い切り引いたロングショット。感情はこちら、理屈は藤沢本に裂かれる。難しい。

  • 10年後までに原発をなくしながら、節電発電所で20%、自然エネルギーで30%を賄う。2050年までには化石燃料も全廃し、全廃発電所で50%、自然エネルギーで50%を目指してはどうか。

  • タイトルで損をしているのでは。

    原発の論点を、多角的に整理、概観していて、是非のポジショントークとならない議論の端緒となりうる。

  • この本は原発の危険性に警鐘を鳴らしてきた一四名が、事故を徹底的に検証し、原発の問題性を多角的に考察したものでございます。脱原発か?それとも推進か?今に至るまでにそんな議論があること自体にも驚きます…。

    この記事を書く前に新聞を読んでいると、原発推進派の学者と脱原発を標榜する学者が公開討論をするという記事があったことを知って、改めてその『意義』について考え込んでしまいました。

    この本は地震学者の石橋克彦教授をはじめとする十四人の著名人がそれぞれ、原発事故というものを徹底的に検証し、今後の具体策を提案したものです。しかし、この本は新書ながらかなり内容が専門的で、あまりオススメできるか?といったら疑問符が残りました。

    僕はほとんどテレビを見ないので、ここに記されていることがどれだけ報道されているのかがまったくわかりません。ただ、この本を読んでいて深刻だなぁと思ったことは『国策』の名の下に建てられた原発は基本的に過疎地に建設されているということで、原発が町の雇用や産業を支えてきたということで、『原発がなくなると困る』という声があるということでした。その辺はやっぱり『うまいなぁ』ということを思わずにはいられなかったことをここに付け加えておきます。

    仮に今止めたとしても廃炉までには何十年と時間がかかる。今回の事故で漏れた放射能はとてつもない年月、大地を汚染し続ける。重い命題をつきうけられますが、本格的にこの問題を突き詰めて考えたいかた向けの本で、万人ウケはあまりしないものでないかというのが、現在の読後感です。

  • 推薦理由:
    大規模な被害をもたらした福島第一原発の事故を多角的に検証し、これからの日本は原発からの脱却以外に道はないとしてその具体的な道筋を提案する本書は、エネルギー供給の将来性を考える上での必読書である。
    内容の紹介、感想など:
    2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震による東京電力福島第一原子力発電所の事故は、大量の放射性物質を環境にまき散らすという最悪の事態となり、未だに収束の目途も立たない。本書は、「今こそ日本は原発と決別しなければならない」と考える14名の執筆者による、原発事故の徹底的な検証、科学・技術的側面及び社会的側面からの原発の問題性の考察、そして日本を原発に依存しない社会にするための具体的な道筋の提案を述べたものである。
    第1章「福島第一原発事故」では、各原発の地震対策は十分であり、今回の事故の原因は地震の揺れではなく想定外の大津波であると主張する政府と東電の見解を検証し、事故の原因が地震の揺れである可能性を提示するとともに、原発事故を収束させることがいかに困難であるかを説く。
    「原発の何が原因か」について、科学・技術的側面から考察している第2章では、核分裂と放射能を扱う原発は不完全な技術であり、事故が起こればその被害が莫大なものになることや、使用済み燃料を安全に処分することができず、未来に負の遺産をもたらすものであること、地震列島の日本にある原発は常に大事故の危険性があることを述べる。原発の問題性を社会的側面から考察した第3章では、「原子力安全神話」が安全規制行政に欠陥をもたらし、「国策民営」体制が適切な原子力行政を阻害していたことが示される。また、原発が攻撃を受ければ放射能がばら撒かれるし、核物質や穂写生物質が盗み出され兵器として使用される可能性がある事も大きな問題点として挙げられている。
    第4章「原発を終わらせる」では、日本のエネルギー供給を、「石炭、石油、原子力」から「再生可能エネルギーと省エネ」に移行する具体的な道筋を示し、今我々は、核エネルギーを軍事はもとより民事にも使ってはならないという現実に直面していると訴えている。

  •  14人の論者が,原発の抱える本質的問題を指摘,脱原発の必要性を説く。どのようにそれを実現するかも。それほどヒステリックな感じではなく,現実的な解が示されている。
     四部構成で,第一部は今回の原発事故の真相。原子炉の元設計者(田中三彦・後藤政志)が執筆しててなかなか信憑性ある。一号機は,津波による外部電源喪失より前に,地震動で配管系が損傷し,冷却材が失われていった可能性が高いそうだ。
     原子力災害対策本部が,6月初めにIAEAに出した事故報告書には,一号機の事故後経過シミュレーションが記されていたそうだが,それを酷評(p.34)。シミュレーションと合わない水位データを信用できないと切り捨てててけしからんとのこと。
     第二部,第三部では,それぞれ原発の技術的問題点,社会的問題点を挙げる。放射性廃棄物の処分問題,中性子による照射損傷問題,「地震付き原発」という問題,労働被曝問題,立地自治体の財政・経済構造を破壊する問題,産生されるプルトニウムの兵器転用問題…。
     中性子の照射を受けて,炉壁の脆性遷移温度が上昇する問題が印象に残った。鋼鉄は低温になるとちょっとした外力で脆性破壊する性質をもつが,長年の運転で大量の中性子線を受けると,もっと高温でも脆性破壊するようになってしまう。その脆性遷移温度がどの程度上がるのか,というのがきっちりとは解明されていないらしい。それは危ない。執筆者の井野博満らの「原発老朽化問題研究会」が警告しているが,保安院の回答は「ひとを喰った官僚的回答」(p.92)だったそうだ。
     第四部は,脱原発をどのように実現するか。即時全面停止などという非現実的な話ではなく,徐々に全廃へというもの。「福島県はきわめて暴力的な形で『無原発』状態になった。他の原発立地地域は幸いにして、平和裏に原発依存脱却への道を歩む機会を手にしている。」p.206
     具体的にはやはり省エネと再生可能エネルギーが重要。ドイツなどの実績を挙げて,国民皆の電気料金の引き上げで,再生可能エネルギーの普及を図るのが有効とする。天然ガス火力もいいと思う。ロシアからパイプラインで輸入できるようになったら随分いいよなあ。
     原発立地自治体について。原発の作りだす雇用やもたらす補助金はかなりのもので,自治体にとって「麻薬」と言われてきた。一機作るともう一機、次々求めてしまう。これは原発受け入れを検討する地域へは意味のある警告かもしれないが,すでに立地した地域へはむごい表現だ,との指摘。
    「安全神話」は瓦解した。立地自治体も将来展望を描けるよう「麻薬神話」にも訣別しなくてはならない。「住民や自治体主体の『地域力』に、われわれはもっと信頼を置いていいのではないか」p.210。としているが,うまくいくだろうか。具体的方策は何が考えられるんだろう?
     確かに脱原発はやむなし,と思う。ただ「技術を捨てる」っていうのはなかなか難しいんだろうとも思う。地震国というせいで,日本はあきらめる。それは正しい選択かもしれないが,やめない国もあるわけで。人類は原子力をほんとにどうすればいいのかな。
     ちょっと疑問な記述も散見。例えば,「原発を動かす限り、放射線管理区域内での労働はなくならない。息子を被曝労働が原因でかかった白血病で亡くした…さんは…被曝労働の悲惨さ、不条理を訴えている。」(p.82)というくだり。本当に「被曝労働が原因でかかった白血病」と言い切れるのだろうか?原発で働く人は,直接の因果関係が立証できなくても労災が認められるという法的措置になっている。救済をより重視する制度だ。
     あと,p162に単位の間違い。「現在、私たち電力消費者が収める電気料金は、1000キロワット当たり375円が、電源開発促進税として電力会社から国に納入されている。」 これは「1000キロワット時」でしょう。同頁他の箇所も。

  • 原発について発言してきている、田中三彦、後藤政志、鎌田遵、石橋克彦、吉岡斉、飯田哲也氏ら15人ほどの筆者が、いろいろな角度から原発の問題に迫る。新書版でこれだけの筆者だと、掘り下げは限界がある。
    概要をつかむにはいい本だろう。

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