- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004313342
作品紹介・あらすじ
現在、法制審議会で民法改正のための議論が進んでいる。なぜ今、民法を変える必要があるのか。どのような手続きで変えるのか。ヨーロッパや東アジアにおける民法改正の歴史、最近の動向も紹介した上で、社会の構成原理としての民法典を根源的に考察する。
感想・レビュー・書評
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ちくま新書の『民法改正』に続いて読んだが,こちらはちょっと記載が抽象的・観念的でわかりにくかった。岩波らしいなという感じ。分量の半分が過去の民法改正(日本・諸外国)についての記述。今回の改正案については,「ルールの現代化」,「ルールの可視化」,「ルールの活性化」として紹介されているが,具体的な説明が乏しい。
改正については,その内容というより手続的な「どうやって民法改正を行なうか」という話が妙に詳しくて,誰を対象に書いた本なのか不思議だった。法律の知識が特にない人がこの本だけ読んでも,いったいどういう改正がなされようとしてるのか把握できないんじゃなかろうか。
「民法改正はどこへ」と題する第四章では,民法の役割を「財産の交換」から「人間性の開花=実現」に求める(p.176),とか,結章「民法典を持つということ」では,「来たるべき平成民法(二一世紀型の民法)においては目指されるのは、解体・分断されつつある戦後体制を言葉の真の意味での『共和国』…へと転換することであろう」(p.184)とか,なんだかふわふわした夢みたいのが強調されていて違和感あり。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2020年4月から施行された民法の改正をめぐる基本的な問題を、一般の読者に向けてわかりやすく解説している本です。
そもそも民法とはなにかということから、日本や諸外国の民法典の歴史についての概説、さらに民法改正の手続きにかんする問題を経て、ようやく民法改正の理論的な問題について説明がなされています。ただ、「制度から契約へ」「財産から人間へ」といったスローガン的な文句が提出されていて、やや具体性に欠ける印象があります。
個人的には、著者の民法観についてもうすこし突っ込んで語ってほしかったように感じました。 -
初めは<a href="http://amzn.to/uHHmqg" target="_blank">内田先生の民法改正</a>を読むつもりだったけど、内田民法は睡眠導入剤のイメージがあって、隣にあった岩波新書の表紙に惹かれて先に読んでみた。
日独仏以外にも世界の民法事情を並べた後で、「今の民法はこんなんですけど、どう考えますか?」風につらつら書いてある。あるべき論でない点に好感を持った。前から気になっていたけど、民法改訂はマスコミでは殆ど取り上げられない。大村先生もその理由を調査したいと、思わず苦笑。
意外だったのがナポレオン法典とナチス法の重要性。思えば、高校世界史は古川先生の寄り道が多過ぎて、卒業までに市民革命が起きなかったので・・・。 -
学生時代、内民を読んでわかった気になり、その後大村民法を読むと覆されて理解がガタガタになり、結局民法に苦手意識だけが残った私でも読めた。同じテーマでここまで違う話が書けるのが素晴らしい。
本筋ではないが各国の民法改正の経緯が説明されており、オランダとケベックがフランス法を参考にして独自の発展を遂げ、抽象的な人の概念を超えた特定の人=消費者が登場するという点、目から鱗だった。だからケベックが消費者保護が相当厳しかったり、オランダの個人情報保護法が緩そうなイメージの割に結構厳しかったりするんじゃないだろうか。と、一人で勝手に納得。
全体としては、今回の民放改正が、というよりも人が人としての尊厳を保障されて人間らしく生きて行くために、法として何ができるのか、を考えさせる本と言う意味での「民放改正を考える」だと思った。 -
{親権の存在が障害になって虐待に対する適切な措置がとれない}
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同じトピックでも書き手によってずいぶんと感じが違う。
内田先生の本がずいぶんスッと入ってきたのに比べ、本書には馴染めなかった。 -
12/22読了。数ヶ月前に読んだ内田貴「民法改正」に続いて民法改正本2冊目。いずれも基本トーンは改正推進なのですが、本書は対象を債権法に限っておらず家族法などにも言及し、大学での講義がベースにあるせいもあって、アカデミック色が強く、法制史・比較法や近時のメガトレンドをも交えて民法全般の改正を論じています。メインの読者は学生でしょうが、それでもこれからの民法はどうあるべきかという視点は非常に参考になりました。
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ほぼ同時期に、内田貴氏も『民法改正』(ちくま新書)を出版しているので、二冊をほぼ同時に読んで、比較検討してみた。
内田氏は、民法改正を債権だけに絞って、絞るがゆえにそれまでの経緯、そしてその後のことをストーリーをもって説明し、その上で民法改正の必然性を理論づけているように感じた。
それに比べて、本書の方は民法の歴史的に、地理的に(ドイツ、フランス、東アジア)等などを比較することで、民法という法律についての分析を行い、その上での改正をするための手続き等を詳細に解説している。元々留学生向けの講義を元にしているらしく、その意味では網羅的に解説しているのは本書の方だと思う。
私のように門外漢ならば、「民法改正」(ちくま新書)で、ある程度の民法の改正等の背景等の基礎を学び、本書「民法改正を考える」(岩波新書)でそれらの知識を、歴史的・地理的に整理するというのがよいような気がした。レビューに書かれているように、出版社の意向も反映しているだろう。 -
表題通り民法改正の意味を問うことが中心のようだ。財産から人格へ、「人」を中心とした民法を構想するの意図は印象に残った。平成民法の第一の役割は「財産の交換」ではなく「人間性の開花=実現」に寄与することだという。求められるのは人の多様性と尊厳を尊重しつつ「市民」が生きやすい暮らしやすい社会を作り出すことで国家はそのための調整者としての役割を担うことだという。