和本のすすめ――江戸を読み解くために (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 116
レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004313366

作品紹介・あらすじ

手漉きの和紙を用いて作られた本を和本という。和本は近代以前の日本文化を理解するための最大のインフラであり、歴史上の時間にもどるための唯一のツールである。和本の歴史や作り方、出版事情などの基礎知識をていねいに述べながら、変体仮名を読み解くことにはじまる和本リテラシーの重要性を説く。

感想・レビュー・書評

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  • ワクワクする和本の世界へようこそ!と語りかけてくれるような本です。
    和本の情報が凝縮されていました。物の本、洒落本など和本の種類、出版事情、過程と経費、板元、出版条例、講、写本と板本、韻文と散文。この本を読んで和本…江戸の手触りを感じたくなりました。

  • 実際の書名が出るあたりがややこしいけれど、基本的な部分は参考になりました。

  • 目次:
    はじめに―いま、なぜ和本か。そして変体仮名のすすめ
    第一章 江戸の出版事情
     1 日本の出版略史
     2 本屋の誕生
     3 本屋の実体―京都を中心に
     4 学芸文化への貢献―丹波屋理兵衛のこと
     5 出版条例について
     6 出版に関わる経費
     7 版権・著作権
     8 原稿料について
     9 田舎版(地方版)のこと
    第二章 和本には身分がある
     1 写本と版本
     2 写本の世界
     3 江戸の写本
     4 写本と出版規制
     5 製版と活字版―営業と非営利の間で
     6 拓版のこと―『乗興舟』讃
     7 刷りものの世界
    第三章 和本のできるまで
     1 和本のつくり方
     2 和本の外型と名称
     3 彫り・刷り・修正について
     4 細部の名称について
    第四章 和本にはどんな本があるか
     1 和本の分類
     2 絵本・絵入り本・画譜
     3 江戸のサブ・カルチャー
     4 遊女評判記―『難波鉦』という本
     5 吉原細見
     6 洒落本の世界
     7 艶本(春本・わ印・埒外本)
    第五章 海外の和本事情
     1 韓国・台湾篇
     2 ロシア・ドイツ篇
     3 アメリカ篇
    おわりに―和本リテラシーの回復を願って
    あとがき
    索 引

  • (チラ見!/新書)

  •  古書であっても、板本しか知りませんでしたが、写本こそ真の書物という認識のあった文明はすでになくなっているのでしょう。「和本リテラシー」を持つにはやりたいことが多すぎて難しいと感じています。江戸の書誌学としてこの本を読むだけにします。
     なお、著者の他の本にもありますが、「写本や古文書の文字は、書き手によってすべて違ってくるので初心者にとっては最も読み難い」ので、「初心者は写本ではなく、江戸期の極く通俗的な木版本(板本)を読むことから始めるのが良いかと」いっているわりには例があまりよろしくありません。P12の『おくのほそ道』は「芭蕉門人の素龍という能書家が書いた自筆本をそのまま木版にしたものなので、板本とはいえ、写本と同レベルのもの」ですので読めなくても心配はいりません。ここから入るのは「いわばまったくの登山の初心者が、のっけからヒマラヤ登山を志しているようなものだ」ということになります。

  • 手漉き和紙でつくられた本である和本について、江戸時代の出版事情、和本の制作過程、和本の種類等について解説している。著者がこの本を書いた動機は、今は専門家以外では失われている和本リテラシーの回復である。普通の読書人が変体仮名と草書体漢字を習得し、和本がよめるようになることを夢見ている。なかなか魅力的な世界のようなので、著者のアジテーションに乗って変体仮名の練習をしてみようか。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。
    通常の配架場所は、1階文庫本コーナー 請求記号:022.31//N39

  • これを読めば変態かな文字が読めるようになるのかと期待したが、それには個人の努力が必要。明治まで読まれていた文字なのだから、読めないなんてもったいないね。和本は江戸の文化をたどれる最大のインフラだから。江戸の出版事情はなかなか勉強になる。

  • ・また和本である。中野三敏「和本のすすめ-江戸を読み解くために」(岩波新書)は近世文学の重鎮による和本入門である。古書店主橋口侯之介の入門と重なる部分もあるが、たぶん重ならない方が多い。研究者と商売人、実務家の違ひとでも言ふのであらうか。本書からは「江戸理解のインフラそのもの」(6頁)たる和本理解の喪失、あるいはそこから中野氏いふところの「和本リテラシーの回復」(8頁)を目指さんとする「何やら悲憤慷慨の態」(同前)がうかがへる。もちろんこの言は近世文学流のおどけなのだが、氏が本気で「和本リテラシーの回復」を願つてゐるのは他の著作からも明らかである。橋本氏も和本の分かる古本屋が減つたと嘆いてゐる。商売、やりにくいといふわけだが、中野氏の和本をめぐる状況に対する危機感はそれを遙かに上回る。それは私の想像を絶するものであるに違ひない。
    ・本書の和本を考へる基本的な態度は「和本には身分がある」(73頁)といふことであらう。これは第二章の章題である。江戸は身分制の時代である。その身分制ゆゑに「当然のこと人間が関わるものにはすべてに身分が付与されてくるわけで、なかでも書物は人間しか必要としないものだから必然的に強く意識される領域である。」(78頁)例へば大名の嫁入り豪華写本はその上位に位置し、「板本はいかほど豪華な作りであろうとも、しょせんは複製(中略)まぎれもない営業品の一種であるにすぎないので、身分としては下位に置かれて然るべきものであった。」(同前)これは少し考へればすぐに分かることなのだが、私はそんなことを考へもしなかつた。長屋の八つあんや熊さんが宣長本や篤胤本を読むとは、失礼ながら、思へない。あるいはご隠居さんなら、あるいは寺子屋の先生ならとは思ふ。これも和本の身分であらう。長屋の住人には草紙類がふさはしい。豪華な写本と版本、版本の中の物の本と草紙、更には三都と地方、かういふ本の身分が「そのままそれらを出版する本屋自体の身分」(79頁)となつてゐた。それが江戸の和本といふものであつた。正に蒙を啓かれる思ひである。ここから「身分制社会では、区別は何よりもまず外型に現われる。」(130頁)といふことになる。和本も同様である。「かつて長沢規矩也先生が『いちいち中身を読まなければわからないようでは駄目』と言われた」(131頁)といふ。「まず本の大きさと型、そして縦綴じか横綴じか、また綴じ方の種類、表紙の色や模様、題箋の型や貼り位置等々に少し気を配るだけで、その本の身分や大まかな成立年代がわかり、その素性は一目瞭然であるはずという。和本とはそもそもそういうものなのである。」(同前)私は和本をほとんど必要としない人間なので、和本体験とでもいふべきものは無きに等しい。従つて、かういふものを見ても素性は分からない。題箋がないとか、糸が新しいとかは誰でも分かる。私は刊記等を見ていつ頃の本だと見当はつけても、それが信用できないことも一応知つてゐる。私に分かるのはそこに加へて汚損、虫損の程度ぐらゐまでである。さう、これでは素性も何もあつたものではない。理解不能、「和本リテラシーの」欠如そのものである。しかし、これでもまだましな方かもしれない。当世、和本など見たこともないといふ人間の方が遙かに多からう。そんなわけで、和本に少しでも関心があり、しかも「和本には身分がある」ことを知らない人間に本書は必読の書である。写本にも触れ、書肆関連にかなりを割く。つまり版本書誌学である。江戸の身分で本を見る、本書はこの実践的入門書である。変体仮名同様、数をこなせばならぬのが辛いところ……。

  • 43番乗り。気になる。(2011/12/13)

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著者プロフィール

1935年(昭和10年)福岡県生まれ。九州大学名誉教授。近世文学研究。1998年に紫綬褒章、2010年に文化功労者を受章。著書に『和本の海へ 豊饒の江戸文化』 (角川選書、2009年)、『江戸の文字を楽しむ』全三巻(角川学芸出版、2010年)等。

「2012年 『江戸文化再考』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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