原発訴訟 (岩波新書)

著者 : 海渡雄一
  • 岩波書店 (2011年11月19日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004313373

作品紹介・あらすじ

原発の建設・運転を止めるため、国や電力会社を相手に闘ってきた原発訴訟。原告勝利のもんじゅ訴訟控訴審や、係争中の浜岡原発訴訟など、三〇年間にわたり訴訟を手がけてきた弁護士が、その全体像について解説する。原発労災の実態や、福島原発事故後のADR(裁判外紛争解決手続)などについても説明する。

原発訴訟 (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • 日本の原発の安全基準は世界一厳しい。原発再稼働に関して日本国
    首相の安倍晋三はなんとかの一つ覚えのように言う。

    何がどう厳しいのか。具体的なことは一切言わないのでよく分からない
    のだが、地震列島・火山列島という日本列島に原発を「これでもか」と
    建設し、シビアアクシデントが発生したら国民が厳しい環境下に置か
    れるのは分かる。

    権力を監視するはずのメディアは、福島第一原発の事故が起きるまで
    安全神話の提灯持ちだった。そして、そんな提灯を持っていたのは
    司法も同じだったのが本書を読めば分かる。

    著者は福島みずほ氏のパートナーであり弁護士。30年に渡り原発訴訟
    に係わって来ただけあって、非常に分かりやすく書かれている。

    福島第一原発事故後の被災者への賠償を扱った章もあるが、興味深い
    のは事故以前の他の原発への建設中止や運転差し止め訴訟の流れだ。

    地裁で原告勝訴の判決が出ようとも、最高裁まで争われると「原告の
    言い分も分かるけど、でも安全なんじゃない?」ってことになってしまう。

    電力会社と行政の言い分をなぞるだけの司法なんて独立性ゼロだろう。
    国民の健康と国策をはかりにかければ、国策が優先されるんだな。

    原発の建設や運転に係わる訴訟だけではない。原発作業員の労災
    認定についてもおかしなことばかりだ。

    これは現在、福島第一原発で廃炉作業に従事している作業員の方
    たちや事故直後に全国から駆り集められた下請け・孫請けの作業員
    の方たちに言えることだが、彼らの被曝線量管理や内部被曝検査が
    完璧になされているとは言えない。

    被曝の影響はすべてが解明されている訳ではない。人によって個人差
    もあるだろう。影響が何年後・年十年後に表面化するかも分からない。
    その時に、「データがないから労災ではない」なんてことだって起きる
    可能性もある。

    それにして怖いのは青森県六ケ所村だ。核燃料サイクル施設が集まっ
    ている六ケ所村の周りって断層がいっぱいあるじゃないか。こわっ!

    これまでの原発訴訟と、今後の課題を考える良書である。

  • 原発訴訟を軸に、今までの司法の歴史について述べる。
    裁判所は行政へのおもねりがあり、且つ、さまざまな利権がからむ中、我々はどう行動していくべきか?
    筆者は以下の提言をする。
    1.科学裁判の方式をカンファランス尋問方式=意見を異にする専門家に対して裁判官が同時に証人尋問する=を採用せよ。

    2.環境省の外局として「原子力安全庁」を設置せよ
     ~現在の経済産業省のしたではチェック・バランスがきかない~

    3.再生エネルギーの活用を含めたエネルギー政策を出し住民投票を含めた地方自治体の意思を確認する制度を設けるべき。

    少なくとも3については投票や各政党への働きかけで個人として活動が可能なのではないか?

  • 2階岩波新書コーナー : 543.5/KAI : 3410154058

  • 著者は弁護士であるが、原発の説明をかなり詳細に書いているので、原発の仕組みを理解するための基本書である。原発推進が出版したパンフレットを、この本を参考にしながら分析することで、メディア教育のいい教材となる。さらに、この本を参考にした原発災害のメディア作品を作ることもできるであろう。

  • 社民党の福島瑞穂議員のパートナーである筆者が30年もの長きにわたった戦い続けた『原発訴訟』の記録をつづった手記です。この問題の根の深さと筆者の粘り強さに感服しつつ、一刻も早い収束を願って止みません。

    僕は筆者が国会議員の福島瑞穂さんのパートナーであることを最後まで知りませんでした。反省することしきりです。それはさておいて、この本は30年にも長きにわたり、もんじゅ。浜岡原発などをはじめとする数々の原発訴訟を手がけ、その軌跡を綴ったものです。

    こういう話を読んでいると、いかに原発の問題が根の深いものであるということを痛感させられます。作中には僕がこの問題について興味を持ったころから読み始めている高木仁三郎氏。石橋克彦氏、田中三彦氏などの説も参考にされてあって、筆者がいかに本気でこの問題に取り組んできたのか、ということが伺えました。

    さらに、いま問題になっている福島第一原発の問題も当然といえば当然ですが多くのページを割いていて、法的にもいかに思い問題であるということをうかがわせました。僕は法律に関してはまったくのシロウトですが、筆者の戦いには個人的にエールを送るともに、この問題が早急的速やかに解決することを心から願って止みません。

  •  著者は,原発訴訟をライフワークとしてきた日弁連事務総長。熱意がこもっているだけに危険の強調に傾いてて,誤解を招く記述も見られるが,伊方原発訴訟からの日本の原発訴訟の概要がまとまっている。
     やはり地震大国の日本に,53基もの原発を作ってしまったことを大きな問題として追及している。ただ,勝訴はまれで,もんじゅの原子炉設置許可処分の無効確認訴訟での控訴審判決,志賀原発二号炉の運転差止訴訟での地裁判決の二件のみ。いずれものちに逆転敗訴している。
     前半で扱われる原発事故の危険をめぐる話はともかく,ちょっとバイアスがきつかったのは後半部分。労災や脱原発へ向けての課題の箇所。「被曝労働者が労災認定されているケースでも、電力会社は、容易に責任を認めようとしない…裁判所は厳格な立証を求めて、労働者の救済を否定する」(p.195)と,70mSvの労働被曝で「多発性骨髄腫を発症した」とされるケースについて損害賠償を否定した最高裁判決を批判。労災は労働者の救済のため因果関係の証明を要せず広く認められるのに対し,損害賠償を認容するにはしっかりした因果関係の立証が必要なのは,別に不思議でも何ともないのだが。
     また,自然エネルギーの促進で脱原発につなげようとのくだりで,「ドイツにおける再生可能エネルギーの発展は原発の閉鎖計画と連動している。日本では原子力を温存するために再生可能エネルギーの発展を阻害する政策がとられてきた。」(p.239)としているけど,サンシャイン計画ってなかったっけ?
    もちろんいろいろ知らないことも書かれてて勉強になった。原子力損害賠償法では「責任集中の原則」がとられていて,原子力事業者にだけ賠償責任を負わせていることとか。電力会社だけが無過失・無限の責任を負い,メーカーや関連会社は免責。これは原発導入時,英米企業の利益を擁護するためにできた規定で,不合理で違憲の疑いもあり,廃止すべきとしている。現行法では,国の責任について明確な規定はないが,国を免責する解釈は成り立たないとも。
     もんじゅの裁判で,動燃が隠していた安全性に関する重大な報告書が古本屋から見つかったというエピソードには驚く。そんなこともあるのか…。

  • 原発設置や稼働にまつわる訴訟を軸に、今までの司法の歴史について述べられている。
    地裁で原告勝訴でも高裁や最高裁で敗訴になってしまった例(本書からは最高裁と国の距離の近さを感じる)があるものの、ひとつひとつの訴訟(勝訴でも敗訴でも)が礎となって進んできたという印象を受ける。

    原発をつくることは地方の雇用問題とも密接にリンクしてくるため、一度生活に入り込むと完全になくすことはとても困難なのだと思う。
    それでも訴訟を行う原告の方、弁護士、証人となる専門家の努力を感じた。
    原発関連の疾患の訴訟の難しさが、この国の体制を示しているように感じた。

    原発の安全性について、司法は「危険であることは証明できない」というスタンス。
    また、電力会社の免責も大きな問題。
    誰に、どのように責任を問うていくかは今後の大きな課題であり、司法が国民とどう向き合うかが問われるのだと思う。

  • 配架場所 : 新書
    請求記号 : SHIN@543@K100@1
    Book ID : 80100438733

  • 展示期間終了後の配架場所は、1階文庫本コーナー 請求記号:543.5//Ka21

  • フクシマについて漠然と「司法の責任」はどうよ・・・・と思っていました。直接的でなくても原告敗訴であり続けたことが、推進者の背中を押していなかったのか…。
    その思いが、この著書を読んで確信に変わった。
    著者自身の生き方、考え方にも共感を覚え、敬意を表したい。

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