新しい世界史へ――地球市民のための構想 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004313397

感想・レビュー・書評

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  • これまでの世界史がヨーロッパ中心だったことは事実だ.地球全体の歴史をまとめるという構想は素晴らしいアイデアだと思うが,具体的な記述を早く読んでみたいものだ.

  • 東京大学学術俯瞰講義2009を聴講して、羽田氏のことが
    気になり、手に取った一冊。

    日本史、特に幕末〜明治成立期への興味が強かったため、
    世界史は全く勉強してません。

    ただ、ふとしたことがきっかけで、現在の日本と世界の関係に
    興味を持ち、本を手に取ったりしてみるものの、サッパリ
    分からず(理解できず)、数年悩み続けていたとき。

    偶然、iTunesで羽田氏の講義を聴講し、「世界史」
    「世界史を理解する」ことに対する考え方が変わった気が
    します。

    まず、羽田氏が指摘する「ヨーロッパ中心視観」。

    「日本人」として「日本史を学ぶ」ことによる「日本人への
    意識の帰属」といおうか。

    「欧米」が創っている(創り出した?)歴史が、潜在的に
    意識の中に刷り込まれているのではないか、と感じた。

    まだ、全てを読み終えているわけではないけれど、講義を聴講
    して、氏の著書を読む過程での感想は、こんな感じです。

  •  現在の「世界史」を自他の相違を所与の条件とする自国中心史観、ヨーロッパ中心史観とみなし、それに代わり、「地球市民」「地球主義」に立脚し「世界はひとつ」と実感できる「新しい世界史」像を提起する。歴史叙述からのあらゆる中心性の排除(被支配者やマイノリティ中心の見方も危険視される)、時系列による通史の放棄など、従来の歴史学の常識を否定する大胆で野心的な試みである。

     問題は「世界はひとつ」という考え方、「地球市民」という帰属意識自体がある種の権力、イデオロギーとして機能する可能性に無自覚なことである。本書がヨーロッパ中心史観の例として攻撃する「世界システム」論が、「周縁」の立場からの新自由主義への批評性をもつのに対して、世界をフラットな存在として認識しようとする本書の考え方ではそうした批評性はなく、むしろグローバル化の諸矛盾を覆い隠し現状を追認する効果を与えている。英語での発信にこだわるのもその一例であろう。

  • 従来の、ヨーロッパ中心の世界史からの脱却を、という内容。

    面白かったのは、地球市民としては国史など必要ないのだが、一方で偏狭なナショナリズムを生みだすためではなく、複合的な帰属意識のうちのひとつとしての「日本」を意識させるための日本史はあってよいと言っているところ。
    それからオランダの東インド会社の行動が、長崎とインドネシアでの評価が正反対であったこと。見る角度と立場によって、評価が異なるのが歴史。
    以前、、日本、中国、韓国が東アジアで共通した歴史をつくるという試みを知ったとき、そんなの無理だし痛い目をみる、と正直思ったのだけど、この本を読むと「グローバル・ヒストリー」として価値があるものなのかもなと思う。もちろん、三方がきちんとした「新しい世界史観」をもっていないと成り立たないけど。

  • 「イスラム」とか「ヨーロッパ」とか適当に使ったらあかんなぁと思った!
    羽田さんの掲げる新しい世界史観は未完成のものではあるけど
    ぜひとも授業に取り入れさせていただきたい。

  • 試みは評価できると思う。

    羽田さんの他の文献も読んでみたい。

  • 算数はどこの国でも同じだが、歴史は国によって教える内容が相当に異なっている。
    中国の世界史のクラスでは、中国の歴史はやらない。世界史と中国のつながりがない。
    今の世界史は、バラバラ個別の地域史の集積。

    個人の研究は同じ学会に所属する他の研究者に評価され、彼らに学問上の影響を与えればよいとしばしば考えられている。しかし、今や学会そのものがはあしてどのように社会に貢献しているのかということが問われている時代である。

  • 全体の方向性としては、納得いくものではある。しかし、逆に言えば、さほど目新しい視点でもない。マクロな視点の歴史のあり方としては理解できるが、ミクロやミドルな視点での歴史はどのように位置づけられるかの疑念を覚える。そして、「世界はひとつ」・「地球市民」という表現には違和感を覚える。どのような意図での言葉の選択なのかは分からないが(本書にはその意図は書かれているが、どこまでの含意があるかは私には分からなかった)、やはり短絡的な印象を受けざるを得ない。むしろバラバラの「世界」のなかでどうやって「他者」を理解していくのか、あるいはその理解の不可能性を認識したうえで、つながっていく必要があるように思う。その答えと本書の内容は微妙にすれ違っているように思う。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。
    通常の配架場所は、1階文庫本コーナー 請求記号:209//H29

  • 概略はわかった。しかし見切り発車的なものを感じる。問いたいことはたくさんあった。
    求めるものが「世界史」である必要性はあるのだろうか。
    地球市民として何が必要かと問え、我々「人間」を知ることであり、その歴史を知ることなのだろう。
    著者はあくまで「現在の世界史の在り方」を問うているのであり、「新しい世界史の見方」を模索しているのである。
    従って「新しい世界史の必要性」を問うているのではないのだろう。

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著者プロフィール

1953年生まれ。東京大学名誉教授。専門は世界史。現在は東京大学東京カレッジ長を務める。従来のヨーロッパを中心とした世界史像からの脱却をめざし、国民国家やヨーロッパ対アジアという構図にとらわれない新しい世界史=「グローバル・ヒストリー」の方法による世界史理解を提唱し、各国の歴史学者との共同研究にとりくんでいる。著書に『新しい世界史へ』(岩波新書、2011年)、『輪切りで見える!パノラマ世界史』1~5(大月書店、2016年)、『グローバル化と世界史』(東京大学出版会、2018年)など多数。

「2022年 『角川まんが学習シリーズ 世界の歴史 全20巻+別巻1冊定番セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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