デスマスク (岩波新書)

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レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004313410

感想・レビュー・書評

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  • 「サケル」の意味の両義性(聖なるものと呪われたものの二重性)について、繰り返しが多いのが玉に瑕だけれど、なかなかに卓越した議論を展開している。デスマスク論というのもあまり見かけないのでそれだけでも独創的。古代ローマにおける蝋人形(イマギネス)から中世における王の葬儀の儀礼(王の二つの身体)、ポール・ロワイヤル(ジャンセニスト)、マリー・タッソー、近代における英雄・天才神話など、時系列にそってデスマスクの意味の変遷をたどった小著。革命期の重要人物たちが王権を否定しながらも、権威の正当化として王の儀礼を模倣せざるをえなかったという逆説的な事実が面白いと思った。
     ちなみに日本でデスマスクといったことが行われたのは明治に入ってから、大鳥圭介によるものが初めてらしい。

  • デスマスクという興味深いが、多分にイロモノ的な一ジャンルに限ってのややマニアックな評論——かと思いきや、「裏」西洋美術史とも言うべき、非常に刺激的な快著であった。

    西洋美術と聞かされると、ミロのヴィーナス、モナ=リザ、ダヴィデ像、絢爛華麗な宗教画や、豪奢で権威的な王侯貴族の肖像画などがまず思い浮かぶ。それらのとりすました美しさこそが西洋美術だという私の貧しい固定観念は、本書によってみごとに転覆させられた。
    為政者、富豪、革命家、天才、罪人、自殺者たちの生と死の軌跡を、くっきりと浮かび上がらせた石膏像。あの「お高くとまった」西洋美術に、かくもなまなましく、鮮烈な表現があったとは…これまで敬遠してきたジャンルに親近感が湧いた。
    終章の「名もなきセーヌの娘」など、特に私好み。彼女のことは寡聞にして知らなかったのだが、俄然興味をかきたてられた。

    2012/6/7読了

著者プロフィール

1954年広島県生まれ。1978年京都大学文学部卒業、1985年同大学大学院博士課程修了、岡山大学助教授を経て、現在京都大学大学院人間・環境学研究科教授。西洋美術史・思想史専攻。『モランディとその時代』で吉田秀和賞『フロイトのイタリア』で読売文学賞受賞。『処女懐胎』『マグダラのマリア』『キリストの身体』『アダムとイブ』『グランドツアー』『デスマスク』ほか著作多数。

「2018年 『映画と芸術と生と』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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