政権交代とは何だったのか (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 23
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004313472

作品紹介・あらすじ

政権交代への期待感は幻滅へと変わり、いまや政党政治に対する忌避感すら拡がっている。なぜ政治主導で「生活第一」への政策転換を進めることができなかったのか。政権交代後の二年間の軌跡をたどり、政策形成のあり方、政と官の関係、国会政治の形などから民主党政権の意義と限界を冷静に検証。大震災後の民主政治の課題を考える。

感想・レビュー・書評

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  • かつて民主党政権への期待を表明していた著者が、鳩山由紀夫、菅直人、野田佳彦の失敗を検証し、この国において成熟した民主主義が根付くために何が必要かを論じた本です。

    政治的には中道左派の立場を取ることを明確に表明している著者だけに、政治の理念と政策に関する議論は視点がブレることなく、問題点が非常にクリアにされています。

    その一方で、政権運営に関する議論では、著者自身の立ち位置があまりはっきりと見通せないように感じました。少なくとも「政権交代とは何だったのか」というタイトルを持つ以上、民主党の失敗だけでなく、政権交代論そのものに対してどのような問題が投げかけられているのかということも、併せて議論の対象とするべきでしょう。著者は「あとがき」で、「私にとっての責任の引き受け方は、政治の前向きの変化を的確に評価すると共に、政権交代以後の失敗を厳しく分析し、今後の政治のための素材を提供することである」と語っていますが、そのためにはもう少し息の長い議論が必要だったのではないでしょうか。

  • 2012年発行。政権交代によって民主党が何を変えることができ、何が変えられなかったのか。政権交代のみが目的となっていて、代わってから何をするかが具体的でなかった結果が今ってとこか。第1章の最初のページのCO2の25%減については自分の認識と随分異なる……。

  • 民主党の学者というイメージが強い、山口二郎教授による今回の政権交代の仮総括。橋下徹大阪市長にバンバン論破されていた山口先生・・・本当に「政権交代とは何だったのか」という思いであったようだ。

    本書は日本の現状の政治について分かりやすくまとめてあり、民主党の失敗を身内から記述している点が興味深い。と、言うより勇気ある著書であると感じた。また、それをふまえた国会の実際の運用については、確かに考えておかなければならない部分である。

    政治学の責任を論じている点からも、より具体的で行動的な学者であるということが分かった。ただ、最終的なまとめとして民主主義の帰結を論じている部分が散漫な感じだった。

    今回の政権交代って本当になんだったの?という答えは見つかりにくい。

  • 【要約】


    【ノート】

  • 前半は客観的に民主党政権の軌跡と失敗原因,評価できる点についてまとめている。後半はそこから離れて中道左派としての筆者の考えが書かれている。筆者のイデオロギーには興味がないので後半はよくわからなかったが,前半部分は冷静な分析がなされていて新書として一定の読み応えがあった。個人的には権力維持を第一義として理念が共有されない風土は変えて欲しいと思うが,その過渡期に政調を廃止したことが致命的だったように思った。積まれていた新書を消化するキャンペーンその13。

  • 著者は政権交代推進の立場のようで、民主党にはややひいき目の姿勢も感じられるが、3年間を振り返って評価する観点からは論点がわかりやすくまとめられている。

    自民党政治では、公共事業補助金、護送船団方式による業界保護が中心で、行政指導や補助金の箇所づけといった裁量的政策が最もよく発揮された。競争力の弱いセクターで雇用が確保されることによって、貧困、失業のリスクから守られたり、「国土の均衡ある発展」のスローガンによって、空間的・地理的な平等が進められた一方、ルールのない裁量的政策は政策の形成と実施の過程が不透明で、無駄や腐敗、既得権を生み出す弊害があった。政策形成過程は会員制クラブのようなもので、自民党を支える支持団体が会員となり、政官財の鉄の三角形を形成していた。補助金、減税、保護規制などの政策介入によって対象者にもたらされる超過利得、レントシーキングが横行した。

    橋本行革において、総合調整を行うための内閣府の設置、政策形成の司令塔としての経済財政諮問会議、規制改革会議、科学技術会議などの政策審議機関が設置され、内閣機能が強化された。小渕政権では、各省を指揮する政治家の役職として、副大臣、大臣政務官が置かれ、数も全体で70名程度に増えた。国会では官僚が答弁する制度が廃止され、与野党の党首が対面方式で議論する党首討論も取り入れられた。小泉政権では、これらの制度改革が定着し、特に経済財政諮問会議を活用し、経済界の首脳と学者が参加して打ち出された方針が予算編成や民営化の基本的枠組みとなった。

    2006年に民主党代表に小沢が就任すると、「国民の生活が第一」という社会民主主義的な政策を前面に掲げ、2000年代の新自由主義的構造改革の否定と政府機能の拡大という政策が込められた。

    本書の37ページでは、裁量的政策かルール志向的政策か、リスクの社会化か個人化か(平等か自由か)の2つの軸で政策を分類している。戦後の自民党政治はリスクの社会化と裁量的政策、小泉政権ではリスクの個人化が進められた。民主党は、リスクの社会化に戻して、裁量的政策からルール志向的政策に変えることを目指したと著者は考えている。すなわち、官僚のさじ加減や政治の力によって地域や弱者を支援するのではなく、制度的な再分配を目指した。

    政権交代によって鳩山政権が実現すると、母子加算の復活、子ども手当や高校無償化といった生活第一の政策が実施された。事業仕分けは、俎上に載せる事業の選定を財務省に依存していたため、財務省が予算を付けたことを後悔した事業を廃止に追い込むために利用された面があった。沖縄基地問題では、党内に幅広い意見が混在しており、党としてまとまった独自の解決策を共有していたわけではなかった。外務・防衛官僚は従来の日米関係を維持しようとしてアメリカ側への助言をするなど、抵抗と背信の対応をしたことがウィキリークスが暴露した情報によって明らかになっている。わざわざ最も難しい問題を最初に選んで時間を費やし、鳩山自らが結論を出す期限を設定して自縄自縛に陥るという状況と作り出した。

    菅政権は、参院選の敗北、党内対立、ねじれ国会、中国漁船の領海侵犯といった状況の中で、「国民の生活が第一」から経済成長の再現に修正して法人税減税とTPPへの参加というマニフェストにない政策を打ち出し、党内からの批判を招いた。原発事故を受けて脱原発の方向を打ち出したことは政治的リーダーシップを発揮したとも言えるが、政府与党の中でそうしたビジョンが共有されておらず、政策を追求するチームを作り、多くのスタッフの知恵を集めて物事を構築するマネジメントのリーダーシップを持たなかった。

    野田政権では、税・社会保障一体改革の推進と消費税率の引き上げ、普天間基地の名護市辺野古への移設といった、自民党政治の継承の面が見られた。

    民主党は、「自民党ではだめ」という否定系の命題を共有することによって共存しており、政治思想が異なる政治家の集団だったため、政権交代という目標以上を設定しようとすれば、党の結束は乱れた。小沢が掲げた生活第一というスローガンは党内の議論の蓄積ではなく、小沢にとっての権力闘争の道具として使われた。一方の小沢に対抗する菅や前原等のグループは、自民党政権と変わらない政策を主張していた。

    政治も国という組織を運営することに他ならない。政策を実現するためには、それを実行するための十分な体制が必要だし、大きな改革を実行するには時間をかけて少しずつ行うことが必要だろう。こうした基本的な教訓を国という大きな舞台で得なければならなかったことは、国民にとって不幸でしかない。現在の一強多弱と評されている状況や、自民党に対抗できる巨大野党を目指す動きを見ると、再度同じ失敗を繰り返すのは容易に予想できる。政治理念や政策でまとまり、民意を反映した政権による実行力のある政治を実現するには、政党政治のあり方、政党交付金、党議拘束、選挙制度といった根本的な問題に手を付ける必要があるように思えてならない。

  • 読了。

  • 政権交代を決して否定しない。
    その点については同感

  • 所在:展示架
    資料ID:11102103
    請求記号:312.1||Y24||1347

  • 政治の本は、分かりにくいと感じることが多かったが、ともも読み易い文章で、良く理解できた。
    筋の通ったぶれない政治を強く望む。

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著者プロフィール

法政大学法学部教授・行動する政治学者
1958年生まれ。東京大学法学部卒、北海道大学法学部教授、同大学院公共政策学連携研究部教授などを経て、2014年より現職。最初の著作『大蔵官僚支配の終焉』(岩波書店)により、自民党と財務省による政治・行政支配の構造・実態を暴き、1990年代から2000年代に続く政治改革の深い底流のひとつを形作る。2009年の民主党政権成立をめぐっては、小沢一郎、菅直人、仙谷由人各氏らとの交友を通じて政権交代に影響を与える。立憲主義の立場から安倍首相を痛烈に批判、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」の結成にかかわる。

「2018年 『圧倒的!リベラリズム宣言』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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